深夜のコンビニバイト始めたけど魔王とか河童とか変な人来すぎて正直続けていける自信がない

ガイア

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深夜のコンビニバイト三十二日目 金太郎来店

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深夜のコンビニバイト三十二日目。

ピロリロピロリロ。

「いらっしゃいま...せ」
 
「いやーん♡久しぶりぃ」

金髪ゆるふわショートヘアをふわつかせ、肩出しの華やかなひまわりのワンピースに身を包んだオカ...オネエの金太郎さんこと、金ちゃんが手を振って来店して来た。

「今日はどうしたんですか?」

「店長に会いに来たのぉ♡元気してるぅ?」

「元気ですよ...今は休憩室でいつものように寝てますけどね」

「あらぁ?そうなのぉ。お寝んね中?あらぁ、どうしようかしらぁ起こしちゃ悪いわよねぇ」

あらあら~と頰に手を当て首をかしげる金太郎さん。

「折角今日はおしゃれしてきたのにぃ。ほらみてぇ、今日口紅変えてきたの。んーまっ♡セクシーでしょー?」

俺の顔面間近でセクシーな唇を披露してくれた金太郎さんに、俺は目をそらしながら

「そうですね」
 
「会いたかったぁ...」

ひまわりのワンピースの裾を握りながらしゅんとする金太郎さん。
好きな人のためにおしゃれしたりとかメイクを変えたりとかいちいち行動が乙女で可愛いのにムキムキのビジュアルがそれら全てを破壊していくよなこの人。
なんだか折角きてくれたのに可哀想な気がしてきた。

「ちょっと待っててくださいね、折角来てくださいましたし、店長に一応声だけかけてきます」

「あら~♡ほんとぉ?ありがとうぉ♡うれしいわぁ」

両手で頰を挟んでくねくねと喜ぶ金太郎さんに思わずふっと微笑んだ。
俺は店長が大好きだけど、店長はあのビジュアルのせいでどこかやはり店員達に敬遠されているんじゃないかと気にしていたことがある。
顔が怖いから、俺に話しかけづらいんだろうなとか、店長なりに少し気にしている部分もあって、そういうのを見ていると、こうして真っ直ぐに店長を好いてくれる人を間近で見ると、俺は嬉しく思うようになった。
店長が好きな人にジェラシーを感じていた俺は子供だった。
店長は他の人と仲良くしたいと思っているんだ。
これからはシェア店長していかなくてはならない。

「店長、お客様です」

「お、親父さんか?」

「おや...確かにおっさんですけど違います。金太郎さんです。あのオネエの」

「金太郎?オネエ?」

金太郎やオネエというワードに、首を傾げ、頭をかきながら店長は休憩室を出ていった。
金太郎さん、喜ぶだろうな。
微笑みながら俺も、休憩室を出ると休憩室の扉の隣で店長が壁ドンされていた。

「村松君...タスケテ」

「店長ぉおおおお!?ちょ、何してるんですかいきなり!」

俺が割って入ると、

「店長の顔見たらぁ、こうしたくなっちゃったんだもん...」

頰に手を当ててくねくねする金太郎さんに、店長を守るように俺は前に立った。

「ダメですよ!店長は奥手で女の人と付き合ったこともないんですから!ちゃんと段階踏まないと!」

「そういえばそういってたわね...ふふ、そういうところも、可愛いのね♡らーぶ」

らーぶと手をハートの形にしてウインクする金太郎さんに、俺はげんなりしていた。

「段階ってぇ、まず何からすればいいのぉ?」

「そうですね...まずお互い二人のことをよく知る事から始めた方がいいかもしれないですね」

「村松君、何の話をしているんだ?」

「じゃあこっちでお話しましょお?店長♡るんるんのるんるん」

「わ、う、腕に抱きつくのはダメですよ女の人がそんな事気軽にしちゃ」

ぶりっこ走りで店長の腕に抱きついて、休憩スペースまであわあわしながら連れていかれている店長は何が起きているのかよくわからないという様子だった。

最強ボディビルダーが腕組んで歩いてるみたいな構図は後ろから見ても十分面白すぎた。

ピロリロピロリロ。

「久しぶりに顔を見に妾がきてやったぞ!妾の男よ!」

神の悪戯か悪魔の罠か、にっこにこで来店してきた久しぶりの吸血姫が、最悪のタイミングで金髪ゆるふわショートヘアのオネエと腕を組んで歩く店長にばったり遭遇した。

「何だ、お主、その趣味の悪い娘はお主と随分と仲が良さそうだが」

金太郎さん、バケモノとかオカマとかいわれてたけど趣味の悪い女なんて言われたのは初めてなんだろうな。

「あらなぁに?この下品な格好した女はぁ?」

相変わらず店長いわく乳丸出しの胸元の開いた黒いマーメイドドレスを着て現れた吸血姫に、金太郎さんも厳しい言葉が飛ぶ。
趣味の悪い女と下品な女、二人はバチバチ火花を散らしながら見つめ合い、店長は、

「どちらの方も大切なお客様です」

怯えながら満点回答する店長に、

「お客様?お客様はこんな事をするというのか?え?この浮気者」

店長の隣に回り込み、吸血鬼はむぎゅっと空いてる方の腕を組んだ。

「だ、ダメですよ。そんなこと気軽に男にしたら!」

あわあわする店長に、

「そうよ、ビッチよ。ビッチ、そんなかっこして恥ずかしくないっていうの?」

「其方こそ、そんな格好で恥ずかしくないというのか?此奴に気安く触るでない、汚れるわ」

「なぁんですってぇ!ちょっと若いからって調子に乗ってんじゃないわよ!店長の事はあたしの方があんたより百倍大大大好きなんだから!!」

プンスコ怒りながら店長の前に出て吸血姫を指差して怒り出す金太郎さんに、

「ふん!若くて綺麗で羨ましいであろう?妾の方が奴の方が好きだぞ!絶対に此奴を妾の下僕にするのだ!そして此奴の美味しい血を毎日毎日...はぁ、早く此奴を妾のモノにしたい」

親指を吸いながらうっとりとした表情をする吸血姫に、

「何よ!下僕って!店長は将来あたしと結婚して幸せな家庭を作るんだから!家族皆で遊園地に行ってアイスクリームを食べたり、毎朝キスで起こしてあげて、夜はおやすみのキスで眠るハッピーマリッジライフを送るんだから!」

どっちにしても店長が可哀想だからやめてあげて。
店長は、困った顔で俺を振り返った。
眠りを妨げられた上にこれだからな。

「店長が困ってますよ、やめてくださいよ二人とも。店長の意思がありますよ」

一斉に二人は店長を見て、

「どっちを選ぶの?」
「どっちを選ぶのだ?」

店長に詰め寄った。ごめん店長逆に追い詰めてしまった...。
店長は、困ったように上を向いて頰をかいた後、

「俺なんかをそんな風に好いてくださってありがとうございます。でも、俺ぁ、こんなべっぴんさん二人を幸せにする事ができる自信がねぇよ。俺なんかより、もっといい男探した方がいいんじゃないですかぃ...?」

「あたしにはあなたしかいないわ!」
「妾にはお主しかおらぬ!」

更に詰め寄られると、

「そうですかぃ...ありがとうございます。でも、俺...明日お見合いがあるんですよ。だから」

「お見合い!?店長が!?」
「お見合いって...嘘でしょ...」

俺は驚愕のあまりコンビニ中に響く声で叫んだ。
金太郎さんも、両手で口を押さえて目を見開いた。

「なんだオミアイというのは」

唯一よくわかってない吸血姫だけは、首を傾げた。
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