深夜のコンビニバイト始めたけど魔王とか河童とか変な人来すぎて正直続けていける自信がない

ガイア

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深夜のコンビニバイト四十三日目 はだかの王様来店

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深夜のコンビニバイト四十二日目。

ピロリロピロリロ。

「いらっしゃいま...せ!?」

あっ...あぁあああああ!!!!モノホンのやべえ奴来ちゃったよ!!!
金髪をオールバックにし、頭にはキラキラと輝く豪華な王冠。
美しい翠の瞳を細めドヤ顔する恐ろしく整った顔立ちに、引き締まった体、程よくついた筋肉。
でも、でも...何で、でパンツ一丁なの!?何でパンツだけ!?しかも何でブリーフ!?トランクスじゃなくて何で黒いブリーフ!?最低なんだけど!?
いやでも大事なところに目がいっちゃうんだけど!?

「そこのもの」

「ちょっと、ちょっ、し、少々お待ちください。只今110番に電話をかけさせていただきます」

受話器にすかさず手をかけると、

「ちょっと、ちょっとちょっと!待ちなさいよぉ!」

その男の後ろについていた丸眼鏡の初老、スーツを着た執事のような風貌のおじいさんが俺を全力で止めに来た。

「待ちなさいよぉ!はこっちのセリフですからね!?まずこんな爆弾を店内に連れて来ないでください!」

ビシッと裸の変態を指差すと、

「彼は王様ですぞ!挨拶しなさい!まず頭を下げるでしょう普通は!」

「王様...」

オールバックの髪を撫で付けながら、はぁ...やれやれと首を振る王様らしい変態は、俺をみて優雅に微笑んだ。

「仕方ないよじいや、平民には僕の地位が理解できないんだ。俺は王様。ティアスナーダ国の王様だよ」

「王様は何、裸でコンビニに来るのが趣味なんですか、全く理解できないし理解したくもないしそろそろ通報いいですか」

「裸?ハーッハッハッハー!プププのプー貴様は馬鹿なのだなー!ププー」

何こいつぶん殴っていい?
勇者と同レベルかそれ以下の煽りを見せて来るんだけど。
ププ王は、俺を指差して腹を抱えて大笑いしていた。何だこいつコンビニにブリーフ一丁で来るやつになんで馬鹿呼ばわりされなくちゃいかないんだよ俺。
俺は、死んだ目でじいやをみた。
じいやは、そっと目をそらす。

「いいか?この服はなぁ!頭のいい俺のような人にしか見えない特別製の服なのだ!!最近夏の暑さに耐えられなくなってな、仕立て屋に作らせたのだ。馬鹿には見えないみたいなんだがな?」

自信満々に腕を組んで笑う王様を見て気の毒になった。
あぁ、この人裸の王様だ。
それにしてもなんともいたたまれない。仕立て屋に騙され、トランクスではなく黒のブリーフ一丁でコンビニに買い物に行くことになるなんて、王様の威厳なんてもはやないだろ。
警察に公然わいせつ罪でよく捕まらなかったな...深夜でよかったな王様。

「どうだ?じいや。俺にこの服はよくにあっているだろう?とっても軽くて通気性も抜群!更に涼しいときた!もうこの服なしでは俺はこの夏の暑さを乗り切れるとは思えないな!ハーッハッハッ!」

軽いのは裸だから。
通気性がいいのも裸だから。
涼しいのはコンビニの空調だよ。しっかりしてくれ、目を覚ましてくれこっちが恥ずかしくなって来るだろ。
声高らかに笑うのやめて、店長が起きてこんなのみたらびっくりしてぶっ倒れるぞ。

「と、とりあえずその、ふざけた仕立て屋とやらを連れてきてもらっていいですか?」

じいやにひっそり耳打ちすると、

「お金を支払ったら姿を消したんですよ」

「騙されてるそれ!騙されてるから!」

絶対許さない仕立て屋...人を騙してお金をもらい、更にこのコンビニにブリーフ一丁の男が来店したという泥を塗ったからな。マジで許さないからな。

「騙されている...?そんなはずはありません。ほ、ほら、みてくださいわたしには見えますよ王様の着ていらしているあの、素晴らしいあの、洋服が」

「汗ダラッダラ出てますけど」

身振り手振りで洋服があります!見えますという風でニコニコしているじいやだが、もうそれもみていられない。

「何色なんですかその服は」

「あ、あー?え?なんの話ですか」

おい、目をそらしながら話もそらすのやめろ。
耳が聞こえないというように耳に手を添えて耳をこっちに傾けて難聴アピールをしてくるじいやも相当ムカつくな。

そこで俺は気がついてしまった。
仕立て屋は、この二人のこの態度にムカついてブリーフ一丁で街を歩かせるという考えに至ったのでは無いだろうか?
これは仕立て屋が、王様に恥をかかせるための策略?
だとしたら、仕立て屋相当いい性格してるな...。

「じいやさん、王様の今の服は何色に見えますか?ちなみに俺は少しずつ目を凝らすと赤色に見えるんですけど」

「あぁ、わたしも赤色に見えるよはっきりと赤色にね」

「王様、あなたが今着ている服は何色なんですか?」

「なんだやっぱり馬鹿には見えないのか?」

ドヤ顔で俺をみる王様とは対照的に後ろのじいやは汗がダラッダラだった。
汗っかきなのだろう、ハンカチで額を拭きながら目が泳ぎまくっている。

「この美しい青色が見えないのか?」

「服の設定ガバガバじゃねえか!じいやは赤色に見えると言っていたぞ」

じいやは、頰に手を押し当ててひぃと声をあげた。

「はぁ、やれやれこれだから平民は。仕立て屋はこう言っていた」

静かに王様は目を閉じた。

「この服は見る人によって形も色も変わる特別な服だと。すごいであろう。すごいであろう」

何でも屁理屈言えばいいと思いやがって仕立て屋ぁ...。

「ところで王様、今日は何を買いに来たんですか?」

ちょっと会話に疲れて来た俺は眉間を押さえながら聞くと、

「夜に寝るとき足を冷やすのはいけないから24時間やっているここでお気に入りのくるぶしまである白い靴下は買いに行こうと思ってな」

何この人裸ブリーフに、くるぶし靴下履くつもりなの?

「お腹も冷やすといけませんし、シャツも買っておきますか」

じいやの問いに、

「そうだな、シャツも買っておこう。寝るときに腹を冷やすといけないからな」

いや服の設定ガバガバなんだけど!着ているんじゃないの!?お腹冷やすからシャツ買うって...。

二人は、靴下とシャツを本当に買っていった。

「貴様も羨ましいと思うが、これは俺だけのオートクチュールなんだ。すまないなぁ、全く王様っていうのは罪」

「最後に言わせてもらいますけど、マジで普通に服着た方がいいですよ。明日ニュースに乗りますよ。本当に」

「羨ましいのか?全くこれだから平民は」

「もう二度と言いませんからね。じいやさんもこの格好で王様が日中外に出ようとしたら全力で止めに行った方がいいですよ。マジで」

力強い瞳と、声色で最後に俺ができるせめてもの二人への忠告は、届いたのだろうか。
王様はフッと俺を哀れむような顔で微笑んで背を向けた。
俺はそれでも構わないが、彼らは警察に見つかったら一発で捕まる爆弾だ。

こちらを見ずに手を振りながら悠々とコンビニを出ていった王様の後ろ姿を見つめながら、日が出るまでに無事に彼らが家に帰ることを祈るしかない。

次の日、深夜に街を巡回していた警官が、薄手のシャツに、黒いブリーフ、白い靴下を履いた信じられない不審者を見かけたのでこれから十分に気をつけてくださいと、昼頃、このコンビニに注意を呼びかけにきたらしい。

信じられなさすぎて立ち尽くしてしまったらしく捕まえられなかったらしいが、ほんと、怖いね誰だろうね。そんな人...俺は知らないよ。

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