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深夜のコンビニバイト九十六日目 深夜のコンビニバイト始めたけど魔王とか河童とか変な人が来すぎて正直続けていける自信がない
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深夜のコンビニバイト九十六日目。
「村松君、大事な話があるんだ」
仕事終わり、俺は、妙に真剣な店長の顔にドキドキしながら休憩室で店長の前に正座した。
「実は俺ね...今年中にこのコンビニの店長、辞めることにしたんだよねぇ...」
「は?」
間抜けな声しか出ない俺に対して、店長は、神妙な面持ちで続けた。
「それでね、次の店長は張山君にお願いしたいと思ってるんだけど、張山君が俺についていくって聞かなくてねぇ...だから」
「ちょ、ちょ、ちょっと、待ってくださいよ。冗談ですよね?」
変な汗が吹き出して、胸のところが気持ち悪い。なんだこれ、涙が出そうだ。
頭もかき回されて回らなかった。
「冗談じゃ、ないんだ」
「嘘...そんなの、認めませんよ。店長...嘘でしょう、俺は...俺は店長だから、仕事だって、頑張ってこれたのに。どうしてですか!」
俺は半ば店長に摑みかかる勢いで店長に詰め寄った。
「俺だからじゃないよ...村松君は本当によく頑張ってくれたよ。俺は、本当に感謝してるんだ」
ごくりと息を一つのみ、店長は続けた。
「実はね、俺は学生の頃花や植物の研究をしていてね。その研究が、ノーベル賞を取れそうなくらい素晴らしいものらしくてね。その研究が成功したら世界中の病気の人を救えてしまうくらいのものらしいんだ」
「そんなの、誰が言ったんですか」
半泣き状態で聞くと、
「俺が1番慕っている先生さ。今アメリカの有名大学の研究チームで研究してるらしくて。俺の研究で、世界の人を救えるのなら研究に参加してみようと思ったんだ」
「そんなの...なんで今更、その研究チームで勝手にやればいいじゃないですか!」
俺はもう目の前の事が理解できなくて取り乱して酷い事を言ってしまった。
「あぁ、俺も店長があるからって断ったんだけどね。でも、俺の知識や技術が難民の子供達を救う為に必要なんだって...こんな俺でもそんな世界を救えるような役に立てるならって思ってね」
「まずこのコンビニを救ってくださいよぉ、変な人ばっかしか来ないんですよ!!深夜とか、もうおかしいんですよ!店長にどれだけ俺が助けられたと思ってるんですか!」
俺はもう子供のように駄々をこね両手を床についてボロボロ泣いた。
店長は、俺の頭にポンと手をのせて、
「ありがとう...そんな風に言ってくれて。俺は、村松君に、君に会えて本当によかったよ。明日は村松君が休みだし、明後日急遽ゆかりさんが人を集めて人の少ないであろう深夜に送別会を開いてくれるんだって。村松君もよかったら来てくれるかな?」
俺は、何も言えなかった。
現実を受け入れられなくて、受け止められなくて。
沢口さんも、そうだった。俺の前からいなくなった。店長もだなんて...。
今年中って、今日12月27日じゃないですか。クリスマスも終わったばかりで何言ってんすか。店長...店長...。
明後日の送別会、深夜一時から。
今日の出勤時間は1時間後だったが、俺は参加したいと思えなくて、参加したらその現実を受け入れてしまったみたいで、真っ暗な中、川原に座り込んでいた。なんだかこうしてると落ち着くんだ。12月で寒いはずなのに、寒さなんて忘れかけている。
「どうしたんだよにいちゃん。こんな夜遅くによぉ」
聞き覚えのある声だ。振り返ると俺の膝にポンと前足を置いた人面犬さんがいた。
「店長が...店長、やめちゃうんです。俺、現実を受け入れられなくて」
「それでこんな風にこんなところでうずくまってんのかい?はぁ、全くよぉ。男は黙って前見ろよ!そんなに俯いてねぇでよぉ」
「そんなの...無理ですよ」
「そうじゃ!現実なんて受け入れられるわけなかろう!」
「愛しの店長がアメリカに行っちゃうのよ!どこかわかんないけど遠いとこ!無理よぉ!」
「うぉっ!いたんですか...」
携帯の灯りで照らすと、吸血姫さんと金太郎さんが泣いていた。
「俺だってよぉ!店長のいないコンビニは悲しいぜ?」
「あの清潔さは店長さんの綺麗好きでできていたようですからね」
後ろから狼男さんが俺の肩に腕を回して、死神さんが俺の頭にポンと手を置いた。
「いやどこからともなくみなさんでポンポン出てくるのやめてくれます?」
なんか、涙が止まらなくなってきた。
なんだよ、馬鹿...皆優しすぎるだろこういう時だけ。ふざけんなよ。
川原からザパッて音がして、ペタペタと河童がこっちに歩いてきた。
「まさるか...」
まさるは、俺にキュウリをぐいぐい押し付けると、
「なかないで」
その言葉で余計泣いた。
「皆悲しいんじゃ!お前がうじうじするのではない!」
「そうよぉ!あんた店長の1番近くでずっと働いてたんだから!」
金太郎さんにバンと肩を叩かれた。
「そうだぜ!お前はこんな所で泣いてるより、もっとやることがあるんじゃねえか?俺も向かうところなんだ」
「そうですね、貴方と彼のお陰であのコンビニの清潔は保たれていました。彼がいなくなった貴方に、彼から引き継ぐ仕事があるでしょう」
狼男さんと死神さんは、俺の後ろで肩を両方の肩をポンと叩いた。
「俺も招待されてるぜ。にいちゃんはあの店長に言いたいことがあるんじゃねえのか?」
「がんばれ、がんばれ」
人面犬さんと、まさるはにっこり笑って俺を見た。
俺は、涙をグッと袖で拭って笑った。
「なんですか皆さん...本当...ありがとうございます。本当に、俺、行きます」
走り出した。
皆が俺の背中を見守ってくれるのを感じた。深夜のコンビニに来たのは、なんだかんだ変な客ばっかりだったけど、それはこうして繋がっていて、俺を元気付けてくれたり、背中を押してくれたり。
なんだかんだ、いい人達ばっかりなんだ。
「ハル!遅いから心配したわ」
コンビニの前でおろおろしてる、綾女さんがいた。
「一番に来てると思ったから、待ってたのよ。どうしたの?泣いてたの?何があったの?大丈夫なの?」
俺に駆け寄ってくれて、心配してくれた。俺は、コンビニバイトをしていて綾女さんという恋人もできた。
「ありがとう、綾女さんもう大丈夫だよ」
俺は、綾女さんの手を取った。
「ひゃっ!は、ハル...?」
顔を真っ赤にする綾女さんに、
「行きましょう、店長の送別会」
ピロリロピロリロ。
俺は微笑んで、来店した。
全くなんだかんだこうして変な人達と過ごしてすんなりその日常を受け入れてコンビニバイト続けてた俺も変な人なんだろうなぁ。
「遅いぞ!ムラオ!」
「坊主、遅かったな」
マックが俺を指差した。勇者パーティと魔王パーティが一緒の空間にいた。
「おい、気安くムラオを呼ぶんじゃねえよ」
「貴様こそ坊主に馴れ馴れしいぞ」
喧嘩を始める二人。いつものことだと無視して話す勇者パーティと、紅茶を淹れるクロノアさんとケーキを食べるシェリィさん。
魔王の来店から始まって、勇者が友達になった。
「みて!赤ちゃんが生まれたのよ!」
ぽむぽむきっちょむさんと、おーたんさんが俺に赤ちゃんを見せてきた。
「ぽむぽむきっちょむに似て可愛いだろう?」
「おーたんに似てかっこいいでしょう?」
この人達には、本当にえらい目にあったよなぁ。
二本ツノのある赤ちゃんは、俺をみてニッコリ笑った。
「何かあったの?大丈夫だった?」
ゆかりさんが俺に声をかける。
「遅いわよ、ゆかりがどれだけ待ったと思ってるのよ」
「攻めの村松君!先に紅茶とケーキ頂いてるわよ」
サキュバスさんとマリーさんとゆかりさんは休憩室のテーブルを囲んでお茶していた。
そういや、夏に同人イベントに行ったっけ。店長と張山さんの同人誌買いに。
マリーさんは、一緒に働いて何気に年下なのに学ぶこと多かったなぁ。
「美味しいですね!このケーキ!始まるまでにフランケンさんに、一緒に首を探してもらって本当によかった!」
「よ...が....だ......」
デュラハンさんと、フランケンさんはニコニコケーキを食べていた。
この人達、今も仲良いんだなぁ。なんだか微笑ましくなった。
他にも、天使ちゃんや悪魔ちゃん、かぐや姫ちゃん達もいた。
こんなに俺接客してきたんだな。
真ん中で張山さんと話していた店長の元に俺は行こうと思ったが、いざとなると緊張して、震えてきた。
さっきみたいに泣いてしまったらどうしよう。ちゃんと伝えられるだろうか。
そんな俺の手を、綾女さんが力強く握った。
「好きよ、ハル」
「いきなり、どうしたんですか」
「私、このコンビニで貴方に出会えて本当によかった。気持ち悪がられた、嫌われた人生から私の事好きって愛してくれて、そんな貴方に出会えて、貴方に出会わせてくれたこの場所が大好きで。皆もそう思ってると思うわ。だから」
綾女さんは、俺の背中をトンと押した。
「貴方の本当に感謝を伝えたい人に、しっかり伝えてきて。泣いたってぐちゃぐちゃだってうまく言えなくたって、ハルはいつだってカッコいい私の恋人よ」
綾女さんの一言で更に泣きそうになった。俺の事を本当に、わかってくれてるな。
俺は大好きな恋人にも、かっこいいところを見せなくてはいけない。
大好きな店長にも──伝えなくてはいけないんだ。
「店長」
「村松君!」
店長は、心底嬉しそうな顔をした。
「店長、俺、就職うまくいかなくて絶望してた時に、このコンビニで沢口さんに出会って、このコンビニで働かせてもらって、本当によかったって思ってます。それは、接客で不安だった俺をこうして助けてくれた、救って教えてくれた店長のおかげです。店長の事本当に、本当に大好きです。本当は、本当は行って欲しくないです...でも、これから店長がその道に進むというのなら、俺は、大好きな店長を全力で応援したいです」
店長は、目に涙を溜めていた。
俺はもうボロボロ涙を流していた。
「店長、今度アメリカから帰ってきたときにはラーメン....俺から奢らせてください」
「村松君!!!!!!!」
店長と俺はがっしりと抱き合った。
「店長ぉ!!!うわぁああ!!!」
何故だか拍手が起こった。
俺は、こうして店長に無事、別れと感謝と、エールを送った。沢口さんには、出来なかったことだ。
吸血姫さんと、金太郎さんもボロボロ泣いて大変だったり、狼男さんと人面犬さんがやけ酒飲んだり、後半組の到着で結構どんちゃんしていたが、全く深夜には変わった人しか来ないらしい。
送別会は無事に終わった。
「俺がアメリカ行く前に、村松君に頼みがあるんだ」
「なんでしょうかなんでも聞きます」
死神さんと言う通り掃除とかの引き継ぎだろうか。
「張山君に店長頼むことにしたから。村松君、君に副店長をお願いしたいんだ」
「え?」
数年後──。
ピロリロピロリロ。
深夜の時間帯、こんな時間に来るお客様は大体変な人と決まってる。
「いらっしゃいませ!」
俺は、いつものように元気に挨拶をして──お客様を見て目を見開いた。
「ふふ、元気でやってるようだね。何?君副店長になったの?出世したね」
前より少し肌がやけたあの人が、来店してきた。
「.....はは、あなたに深夜のコンビニバイト押し付けられてから出世したでしょう?」
「まぁね、ところで深夜のコンビニバイトはどうだった?変わった人達多かったでしょう?」
「本当にそうですね。あなたみたいに変わった人が多かったですよ」
「はっはーよく言うようになったじゃん?でも、いい人達ばっかりだったでしょ?毎日飽きなかったでしょ?」
「はい」
「そっか、よかった。君、前と違ってよく笑うようになったね、よかった」
俺が深夜のコンビニを始めるきっかけになった沢口さんは、ニッコリと笑った。
「沢口さん、本当にありがとうございます。深夜のコンビニバイトから始めて、魔王とか河童とか、来店してくる人達相変わらず変な人達ばっかりでしたけど、なんだかんだ笑ったり、泣いたり、怒ったり、毎日楽しいです」
「村松君、大事な話があるんだ」
仕事終わり、俺は、妙に真剣な店長の顔にドキドキしながら休憩室で店長の前に正座した。
「実は俺ね...今年中にこのコンビニの店長、辞めることにしたんだよねぇ...」
「は?」
間抜けな声しか出ない俺に対して、店長は、神妙な面持ちで続けた。
「それでね、次の店長は張山君にお願いしたいと思ってるんだけど、張山君が俺についていくって聞かなくてねぇ...だから」
「ちょ、ちょ、ちょっと、待ってくださいよ。冗談ですよね?」
変な汗が吹き出して、胸のところが気持ち悪い。なんだこれ、涙が出そうだ。
頭もかき回されて回らなかった。
「冗談じゃ、ないんだ」
「嘘...そんなの、認めませんよ。店長...嘘でしょう、俺は...俺は店長だから、仕事だって、頑張ってこれたのに。どうしてですか!」
俺は半ば店長に摑みかかる勢いで店長に詰め寄った。
「俺だからじゃないよ...村松君は本当によく頑張ってくれたよ。俺は、本当に感謝してるんだ」
ごくりと息を一つのみ、店長は続けた。
「実はね、俺は学生の頃花や植物の研究をしていてね。その研究が、ノーベル賞を取れそうなくらい素晴らしいものらしくてね。その研究が成功したら世界中の病気の人を救えてしまうくらいのものらしいんだ」
「そんなの、誰が言ったんですか」
半泣き状態で聞くと、
「俺が1番慕っている先生さ。今アメリカの有名大学の研究チームで研究してるらしくて。俺の研究で、世界の人を救えるのなら研究に参加してみようと思ったんだ」
「そんなの...なんで今更、その研究チームで勝手にやればいいじゃないですか!」
俺はもう目の前の事が理解できなくて取り乱して酷い事を言ってしまった。
「あぁ、俺も店長があるからって断ったんだけどね。でも、俺の知識や技術が難民の子供達を救う為に必要なんだって...こんな俺でもそんな世界を救えるような役に立てるならって思ってね」
「まずこのコンビニを救ってくださいよぉ、変な人ばっかしか来ないんですよ!!深夜とか、もうおかしいんですよ!店長にどれだけ俺が助けられたと思ってるんですか!」
俺はもう子供のように駄々をこね両手を床についてボロボロ泣いた。
店長は、俺の頭にポンと手をのせて、
「ありがとう...そんな風に言ってくれて。俺は、村松君に、君に会えて本当によかったよ。明日は村松君が休みだし、明後日急遽ゆかりさんが人を集めて人の少ないであろう深夜に送別会を開いてくれるんだって。村松君もよかったら来てくれるかな?」
俺は、何も言えなかった。
現実を受け入れられなくて、受け止められなくて。
沢口さんも、そうだった。俺の前からいなくなった。店長もだなんて...。
今年中って、今日12月27日じゃないですか。クリスマスも終わったばかりで何言ってんすか。店長...店長...。
明後日の送別会、深夜一時から。
今日の出勤時間は1時間後だったが、俺は参加したいと思えなくて、参加したらその現実を受け入れてしまったみたいで、真っ暗な中、川原に座り込んでいた。なんだかこうしてると落ち着くんだ。12月で寒いはずなのに、寒さなんて忘れかけている。
「どうしたんだよにいちゃん。こんな夜遅くによぉ」
聞き覚えのある声だ。振り返ると俺の膝にポンと前足を置いた人面犬さんがいた。
「店長が...店長、やめちゃうんです。俺、現実を受け入れられなくて」
「それでこんな風にこんなところでうずくまってんのかい?はぁ、全くよぉ。男は黙って前見ろよ!そんなに俯いてねぇでよぉ」
「そんなの...無理ですよ」
「そうじゃ!現実なんて受け入れられるわけなかろう!」
「愛しの店長がアメリカに行っちゃうのよ!どこかわかんないけど遠いとこ!無理よぉ!」
「うぉっ!いたんですか...」
携帯の灯りで照らすと、吸血姫さんと金太郎さんが泣いていた。
「俺だってよぉ!店長のいないコンビニは悲しいぜ?」
「あの清潔さは店長さんの綺麗好きでできていたようですからね」
後ろから狼男さんが俺の肩に腕を回して、死神さんが俺の頭にポンと手を置いた。
「いやどこからともなくみなさんでポンポン出てくるのやめてくれます?」
なんか、涙が止まらなくなってきた。
なんだよ、馬鹿...皆優しすぎるだろこういう時だけ。ふざけんなよ。
川原からザパッて音がして、ペタペタと河童がこっちに歩いてきた。
「まさるか...」
まさるは、俺にキュウリをぐいぐい押し付けると、
「なかないで」
その言葉で余計泣いた。
「皆悲しいんじゃ!お前がうじうじするのではない!」
「そうよぉ!あんた店長の1番近くでずっと働いてたんだから!」
金太郎さんにバンと肩を叩かれた。
「そうだぜ!お前はこんな所で泣いてるより、もっとやることがあるんじゃねえか?俺も向かうところなんだ」
「そうですね、貴方と彼のお陰であのコンビニの清潔は保たれていました。彼がいなくなった貴方に、彼から引き継ぐ仕事があるでしょう」
狼男さんと死神さんは、俺の後ろで肩を両方の肩をポンと叩いた。
「俺も招待されてるぜ。にいちゃんはあの店長に言いたいことがあるんじゃねえのか?」
「がんばれ、がんばれ」
人面犬さんと、まさるはにっこり笑って俺を見た。
俺は、涙をグッと袖で拭って笑った。
「なんですか皆さん...本当...ありがとうございます。本当に、俺、行きます」
走り出した。
皆が俺の背中を見守ってくれるのを感じた。深夜のコンビニに来たのは、なんだかんだ変な客ばっかりだったけど、それはこうして繋がっていて、俺を元気付けてくれたり、背中を押してくれたり。
なんだかんだ、いい人達ばっかりなんだ。
「ハル!遅いから心配したわ」
コンビニの前でおろおろしてる、綾女さんがいた。
「一番に来てると思ったから、待ってたのよ。どうしたの?泣いてたの?何があったの?大丈夫なの?」
俺に駆け寄ってくれて、心配してくれた。俺は、コンビニバイトをしていて綾女さんという恋人もできた。
「ありがとう、綾女さんもう大丈夫だよ」
俺は、綾女さんの手を取った。
「ひゃっ!は、ハル...?」
顔を真っ赤にする綾女さんに、
「行きましょう、店長の送別会」
ピロリロピロリロ。
俺は微笑んで、来店した。
全くなんだかんだこうして変な人達と過ごしてすんなりその日常を受け入れてコンビニバイト続けてた俺も変な人なんだろうなぁ。
「遅いぞ!ムラオ!」
「坊主、遅かったな」
マックが俺を指差した。勇者パーティと魔王パーティが一緒の空間にいた。
「おい、気安くムラオを呼ぶんじゃねえよ」
「貴様こそ坊主に馴れ馴れしいぞ」
喧嘩を始める二人。いつものことだと無視して話す勇者パーティと、紅茶を淹れるクロノアさんとケーキを食べるシェリィさん。
魔王の来店から始まって、勇者が友達になった。
「みて!赤ちゃんが生まれたのよ!」
ぽむぽむきっちょむさんと、おーたんさんが俺に赤ちゃんを見せてきた。
「ぽむぽむきっちょむに似て可愛いだろう?」
「おーたんに似てかっこいいでしょう?」
この人達には、本当にえらい目にあったよなぁ。
二本ツノのある赤ちゃんは、俺をみてニッコリ笑った。
「何かあったの?大丈夫だった?」
ゆかりさんが俺に声をかける。
「遅いわよ、ゆかりがどれだけ待ったと思ってるのよ」
「攻めの村松君!先に紅茶とケーキ頂いてるわよ」
サキュバスさんとマリーさんとゆかりさんは休憩室のテーブルを囲んでお茶していた。
そういや、夏に同人イベントに行ったっけ。店長と張山さんの同人誌買いに。
マリーさんは、一緒に働いて何気に年下なのに学ぶこと多かったなぁ。
「美味しいですね!このケーキ!始まるまでにフランケンさんに、一緒に首を探してもらって本当によかった!」
「よ...が....だ......」
デュラハンさんと、フランケンさんはニコニコケーキを食べていた。
この人達、今も仲良いんだなぁ。なんだか微笑ましくなった。
他にも、天使ちゃんや悪魔ちゃん、かぐや姫ちゃん達もいた。
こんなに俺接客してきたんだな。
真ん中で張山さんと話していた店長の元に俺は行こうと思ったが、いざとなると緊張して、震えてきた。
さっきみたいに泣いてしまったらどうしよう。ちゃんと伝えられるだろうか。
そんな俺の手を、綾女さんが力強く握った。
「好きよ、ハル」
「いきなり、どうしたんですか」
「私、このコンビニで貴方に出会えて本当によかった。気持ち悪がられた、嫌われた人生から私の事好きって愛してくれて、そんな貴方に出会えて、貴方に出会わせてくれたこの場所が大好きで。皆もそう思ってると思うわ。だから」
綾女さんは、俺の背中をトンと押した。
「貴方の本当に感謝を伝えたい人に、しっかり伝えてきて。泣いたってぐちゃぐちゃだってうまく言えなくたって、ハルはいつだってカッコいい私の恋人よ」
綾女さんの一言で更に泣きそうになった。俺の事を本当に、わかってくれてるな。
俺は大好きな恋人にも、かっこいいところを見せなくてはいけない。
大好きな店長にも──伝えなくてはいけないんだ。
「店長」
「村松君!」
店長は、心底嬉しそうな顔をした。
「店長、俺、就職うまくいかなくて絶望してた時に、このコンビニで沢口さんに出会って、このコンビニで働かせてもらって、本当によかったって思ってます。それは、接客で不安だった俺をこうして助けてくれた、救って教えてくれた店長のおかげです。店長の事本当に、本当に大好きです。本当は、本当は行って欲しくないです...でも、これから店長がその道に進むというのなら、俺は、大好きな店長を全力で応援したいです」
店長は、目に涙を溜めていた。
俺はもうボロボロ涙を流していた。
「店長、今度アメリカから帰ってきたときにはラーメン....俺から奢らせてください」
「村松君!!!!!!!」
店長と俺はがっしりと抱き合った。
「店長ぉ!!!うわぁああ!!!」
何故だか拍手が起こった。
俺は、こうして店長に無事、別れと感謝と、エールを送った。沢口さんには、出来なかったことだ。
吸血姫さんと、金太郎さんもボロボロ泣いて大変だったり、狼男さんと人面犬さんがやけ酒飲んだり、後半組の到着で結構どんちゃんしていたが、全く深夜には変わった人しか来ないらしい。
送別会は無事に終わった。
「俺がアメリカ行く前に、村松君に頼みがあるんだ」
「なんでしょうかなんでも聞きます」
死神さんと言う通り掃除とかの引き継ぎだろうか。
「張山君に店長頼むことにしたから。村松君、君に副店長をお願いしたいんだ」
「え?」
数年後──。
ピロリロピロリロ。
深夜の時間帯、こんな時間に来るお客様は大体変な人と決まってる。
「いらっしゃいませ!」
俺は、いつものように元気に挨拶をして──お客様を見て目を見開いた。
「ふふ、元気でやってるようだね。何?君副店長になったの?出世したね」
前より少し肌がやけたあの人が、来店してきた。
「.....はは、あなたに深夜のコンビニバイト押し付けられてから出世したでしょう?」
「まぁね、ところで深夜のコンビニバイトはどうだった?変わった人達多かったでしょう?」
「本当にそうですね。あなたみたいに変わった人が多かったですよ」
「はっはーよく言うようになったじゃん?でも、いい人達ばっかりだったでしょ?毎日飽きなかったでしょ?」
「はい」
「そっか、よかった。君、前と違ってよく笑うようになったね、よかった」
俺が深夜のコンビニを始めるきっかけになった沢口さんは、ニッコリと笑った。
「沢口さん、本当にありがとうございます。深夜のコンビニバイトから始めて、魔王とか河童とか、来店してくる人達相変わらず変な人達ばっかりでしたけど、なんだかんだ笑ったり、泣いたり、怒ったり、毎日楽しいです」
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しかし、凄まじき組み合わせwwwwある意味幸せな光景をありがとうございます。きっと他にも仲間が集まってくるんだろうな( ´∀`)今度は同じ楽しみの元に仲良く暮らしてほしい……
忍者……
なんだろう。ちょっと昔の皆さんは現代のサブカルチャーにまさにカルチャーショックを受け、どっぷりはまったのだろうか>信長、桃太郎(一応室町のお人)、今回の忍者
コミュ障の忍者…依頼主に声すらも聞かせないとは、どんだけプロ意識が高いと思われているんだろう、なんて(笑)頑張れw