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二章 強さの道筋
五十七話 爆発の衝撃
しおりを挟む「ア……ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!」
「なんだ!?」
「大量の魔力が……!?」
厄介男は斬られた紋章を抑えるように叫びながら胸を押さえて体を丸くする。
その瞬間から男の体からあふれるようにドスグロい魔力が放出される。
「テル?!これも君の能力かい!?」
「違う!これは何かが起きる!遠隔攻撃を頼む!」
「……了解」
俺の声に反応してくれた弓使いが矢を放つ。その矢に反応した厄介男は紋章を守る様に腕をかざした。きっと今まで通り能力で止めようとしたのだろう。
「ッ!?アガァァ!!」
「……「!?」」
弓使いが放った矢はその腕に刺さる。そこから血が噴き出し、厄介男はその激痛に更なる叫び声をあげた。
レイも矢を放った本人の弓使いも、なんならこのドーム内に居た全員が驚く。
当たり前だろう。今までシエレベルの魔術でしかダメージを与えられなかったのに、ただの矢が当たり前のように刺さったのだから。
「よし!」
「いや、『よし!』では無いんだけど!?なんで攻撃が通ったの!?」
「お前らも見てただろ?俺は紋章を切れる。それがどういうことか、分かるだろ?」
「……今日一の衝撃」
「正直信じれないけど、それが目の前で実際に実演されたからには信じるしかないかぁ」
二人とも俺の能力を理解し、愕然とする。
信じ難いかもしれないが、実際に目の前で切ってあいつは能力を使えなかったのだからさっさと受け入れて欲しい。
「俺の能力を信じる信じないはこの際どうでもいい。今重要なのは、あいつは能力を使えなくなっているという事だ」
「そうか!つまり今ならなんの苦もなく攻撃が当てられる!」
「……この時を待ってた」
二人の目に怒りに似た感情が見える。余程ストレスが溜まっていたのだろう。
「あぁ……あぁ……ガァァァァ!!!」
「フン!能力の使えなくなったお前なんて怖くもなんともない!さっさと決着を付けようか!」
「……緊急事態発生。回収を放棄し、廃棄に変更します」
「っ!?待て!今のは……?」
今、確実にすぐ近くで誰かが喋ったのを感じた。
しかも何故か分からないが、この声は数回聞いたことのある声だ。しかもこの戦闘中に?
そんな事は無いはずなのに、確かに聞いた事がある声。
そしてその声が、刀と自分の目によって感じることが出来なのを理解した。
何だこの感じ。耳では何も聞こえないはずなのに聞こえている。
もしかして何かしらの能力で声を聞こえないようにしている?そしてそれを能力が発動中の刀が弱め、俺の目がそれを捉えているのか?
まだそれが俺の能力なのかは分からない。しかし、確実に厄介男が化け物かした原因に関わっているはずだ。
「テル?どうした?」
「いや、突然気になる声が聞こえてな……」
「解放」
「また……!?」
「グ、グ、グルォォォォアアア!!!!」
その声に合わせるように厄介男は更に体が膨張し始める。
さらに身長が伸び、筋肉は腫れ上がったように膨らみ、顔はその包丁に耐えられなかったのか、顔半分が崩れて一部肥大化し、斧は完全に手と一部になっていた。
「これはもう……完全に人ならざるものになってしまったね……。こうなったらもう殺すしかないし、生け捕りにする余裕も無い」
「だろうな。俺も覚悟を決める」
厄介男とは別に仲がいい訳ではなく、昨日あったばかりでいい思い出も一つもない。なんなら悪い思い出しかない。
しかし、心のどこかで殺す必要はないと思っていたことに今更ながらに気づく。
そのことを指摘された俺は、次は確実に仕留めると覚悟を入れ直した。
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!」
厄介男は今まで以上に狂ったように暴れ出す。そこには目的といったようなものは感じられず、ただただ溢れ出す魔力に身を委ねるように暴れ狂った。
「くっ!なんて破壊力!ほっといてもそのうち力尽きそうだが、このままだと確実に被害が出る!」
ただでさえ馬鹿でかい図体なのにそこから繰り出される攻撃は地面をえぐり、まるで爆発したかのような威力を生み出した。
ズガァァン!!
「はえ!?何の音!?」
「……シエ。まさか本当に寝てたのか?」
「……てへっ♪」
「いや、逆にすごいな……」
信用してくれていると言うべきか、緊張感が無いと言うべきか……。どちらにしろ、この状況で寝られるのはもはや才能だろう。
あ、そういえばコイツ天才だった。
「起きたならシエも戦え。今、魔力はどんな感じだ?」
「ん~、寝たって言っても全然回復してないなぁ。あ、でもでも。マジックポーション持ってるからそれなりの魔術は撃てるよ♪それに……」
シエは厄介男を一瞬見た後、ニコッと笑う。それはまるで全てが上手くいってる様な満面の笑みで。
「今なら魔術も直撃するでしょ?」
「はは……お嬢様は何を望みで?」
「ん♪」
シエは両手を差し出して広げる。どうやらウチのお嬢様はおんぶをご所望のようだ。
俺はシエの望み通りしゃがんでシエを背中に背負う。
一瞬、不満そうな顔をしたが無視だ。
「それで?何をすればいい?」
「私をあいつの顔面の近くまで運べ~♪」
「了解。ちゃんと掴まってろよ。二人共!援護を頼む!」
「……「了解!」」
俺は厄介男に向かって走る。
レイと弓使いが暴れる厄介男を抑えていたが流石にこれ以上は無理のようだ。
「一瞬だけでいいから私があいつに触れる隙を作って~!」
「全く、無茶な注文だね!」
「……同意」
シエのお願いに無茶だと言いながら何とかしようとしているのが分かる。それぐらいシエの攻撃は強力なのだ。
「ギュアァアアア!!」
「……『衝撃狙撃』」
「『旋天』!」
厄介男が振り下ろす斧を軽く避けて二人は攻撃をするが、その傷は浅く以上に加速している自己回復で簡単に治って行った。
「本当に化け物だな!」
「はァ!!」
俺は厄介男の大木かと思うほどでかい足を切り裂く。
しかし、その傷も一瞬で治りふらつく事もなく俺を認識してその足で蹴りを放つ。どの攻撃も即死級なのでこちらも油断出来ない。
「うぇぇぇ?!なにこの威力!?」
「テル!またあれが来る!」
「よし!シエ!行くぞ!」
「へ?ちょっ!?まぁぁぁ!?!?」
背負っていたシエを腕で持ち、そのまま全力で上に投げる。落下位置は厄介男の頭上。体重の軽いシエを投げる程度なら何とかなった。
「ガァァァ!!!」
「僕も本気を出すよ!」
「……私も」
厄介男の全身全霊の斧の振り下ろし。上にはシエが居て絶対に失敗できない。それは今まで以上の緊張感と威力を産んだ。
「ギュルァアアア!!」
「『稲光・落雷』!!」
「『深刃』!!」
「……『共鳴狙撃』!」
爆音にも似た音を鳴らしながら、四人の最大威力がぶつかり合う。その威力はこのドーム自体を揺らした。
結果は、三人がかりでも相殺。厄介男の異常な威力はここにいる誰もの想像を超えていた。
しかし、俺達の本来の目的は達成した。
「うわぁぁ!?!?」
「シエ!」
威力のぶつかり合いの反動でまともに対処出来ない厄介男の上にシエが降ってくる。
「ぁぁぁ!りゃぁあ!」
シエは落下しながらスティックを構え、その頭に振り下ろす。
ガキン!と、人体が鳴らしたとは思えない音が響く。そして、シエの魔術が発動する。
「『五属性大・爆・発☆』!!!」
その瞬間、厄介男の巨大な体が頭から地面に突っ込んだのだった。
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