113 / 223
三章 再開の灯火
百十二話 感情の強さ
しおりを挟む「刀の位置がわかった所で関係ねぇ!」
リシュアはそう叫びながら魔力を滾らせて両手を勢いよく広げる。それと同時に大量の刀がリシュアの周りに生み出される。
「見えるなら、無理やり見えないようにするだけだ!」
「一気に……!?」
そしてその大量の刀をリシュアは一斉に俺に放つ。さっきまでと少し違うのは、回転こそしていないもののり『剣響華輪』と同じような形で重なっていた。
それはつまり、刀の背景が全く見えなくなりほぼ完全に俺の視界が刀だけに覆われていた。
俺とユーミーの視界を防ぐ事に重点を置いているからか、今までのような勢いは無い。だが、透明化した刀を俺に飛ばす為ならばかなり有効的だ。
だが……。
「テルさん!前左下です!」
「わかった!」
「何!?」
俺はユーミーの指示通りの方向に刀を振るう。そうすれば刀を弾いた感覚を俺の手は感じ取った。
ユーミーの能力は単純に透明な刀を見ることが出来る能力ではない。例えユーミーの目が完全に防がれたとしても透明化した刀の方向を示すことが出来るだろう。
リシュアはそれを察したようで、次は視界を防ぐのではなく例え方向がわかったとしても対処出来なくするためか、数で攻めてくる。
だが、そういう手に出るのも予想通り。俺はこういう攻撃の際の隙も見抜いてた。
「ユーミー!見えた方向を言う時は方向だけ言ってくれ!」
「え?……は、はい!……後ろ右上!」
「ここだ!」
まだ透明な刀の扱いに慣れていないからか、それとも他に理由があるのか。透明な刀が俺を襲うその一瞬だけ俺を襲う刀の勢いが緩む。
俺はその隙を突いて刀の包囲網をぬけて透明な刀を避ける。そこから全力でリシュアに接近した。
「もう透明な刀は効かない!」
「テメェ……なら直接ぶち殺してやるだけだ!」
「うぉおおおお!!」
「無能がぁぁ!!!」
憎悪を!怒りを力に変えろ!恐れるものはもう何も無い!
俺はリシュアと全力で刀を撃ち合う。だが、能力を同時使用して戦うリシュアの手数の多さに俺の攻撃はなかなか当たらなかった。
「どうした!勢いだけか!?そのままだと時間切れになるぜ!」
「それは、お互い様だ!」
「前左下!」
「はぁ!」
「チッ!」
俺はユーミーの指示に従って透明な刀を防ぎながら、リシュアと戦い続ける。
俺もリシュアも耐久戦という選択はない。時間をかければ俺達諸共この場所が吹き飛ぶからだ。
だが、リシュアはその余裕を崩さない。いつどんな状況でも自分は勝つと信じるその才能に裏付けされた自信は、俺に精神的なダメージすらもたらす。
「……っ!シエさん!後ろ!」
「へ?……あぶぇ!?」
「ブルルン!」
「余計なことしやがって!」
ユーミーはシエの背後まで近づいていた刀を察知し、即座に教えることでレインが対応してはじき飛ばした。
生き物では無いため、気配が感じとれずに背後を取られたのだろう。
「あっちはもういい!先にお前を殺す!」
「死ぬのはお前だぁ!!」
「どらぁぁ!!」
「っ!?」
俺はリシュアに吹き飛ばされる。だが、こうやって何度も吹き飛ばされれば慣れるというもの。軽く着地をしてリシュアの方を向くと、リシュアは不敵な笑みを浮かべていた。
「なるほどなぁ。そいつの能力が分かったぜ!」
「ひ、左です!」
直ぐにリシュアに向けて走ろうとするがユーミーからの指示に即座に左に視線を向けて透明な刀を弾く。
そしてリシュアの方向に視線を戻すと……リシュアは目を閉じていた。
「なっ……!?」
「そいつの能力は『相手の視界を見る能力』だ!さっきお前は『見えた方向』って言ってたもんなぁ。俺自信には透明な刀が見える!なら、目をつぶればそいつは何も見えねぇ!」
「そ、そんな……!?」
「バレただと……!」
どうやら俺の言動やユーミーが能力を使った事で得られた情報から、ユーミーの能力を考えて答えを出したらしい。俺やユーミーの反応からも図星だと思い確信を深めたようだ。
リシュアは目をつぶった状態で刀を生み出して俺を襲わせる。たとえ目をつぶっていたとしても、気配で俺の場所は分かるので的はずれな所に刀が飛んでいくことは無いだろう。
「今度こそ死ねやぁ!」
リシュアは目をつぶった状態ではあるが、勝ち誇った笑みを浮かべてそう叫ぶ。
きっとリシュアの頭の中では、俺とユーミーが刀切り裂かれまくった姿でも想像している筈だ。
だが、そうはいかない。
「前右下!」
「了解!」
「……なっ!?」
俺はユーミーの指示通り剣を弾き飛ばす。リシュアは絶対にユーミーの能力が『相手の視界を見る能力』だと思っていたのに、それが違った時のショックとそこに生まれる隙はでかい!
「はぁぁ!!」
「ぐぁぁぁ!?」
俺は呆けて隙を晒しだリシュアに切り掛る。リシュアの殆ど反射で出しただろう左腕に阻まれてその命を狩りとるとまでは行かなかったが、左腕を使い物に出来なくなる程度に切り裂いた。
「グッ……!テメェ、よくも……!」
「馬鹿だな。敵の言葉を簡単に鵜呑みにするな」
「っ!?……無能ガァァァ!!」
それは先程リシュアが俺に言った言葉と殆ど同じ言葉。あえてリシュアにバレるような言葉や反応をする事で、違う能力だと誤認させたのだ。
実際、リシュアが導き出した能力もユーミー能力にかなり近い。だが、相手の視界を見ることはユーミーの能力において出来ることの一つだったということだ。
リシュアは怒りに満ちた表情で斬りかかってくる。
左腕はもうまともに使えないからか片手で刀を持って襲ってくるが、両手で持った状態で慣れた今なら速度も威力も落ちたリシュアを上回れる!
「調子にのんなぁぁ!!」
「っ!?何処からその馬鹿力が……!?」
上回れると思ったがその腕力は現在。俺はまたもや吹き飛ばされる。
「喰らえやぁ!」
「左上……っ!テルさん!」
「っ!?」
ユーミーが方向を指示した瞬間に真横から突き刺さる鋭い殺気。リシュア本人がそこにいる気配を俺は感じとった。
俺は頭をフル回転させてどうすればいいかを考える。この状況から逃げ出すことはもうできない。なら、両方を受け止めるしかない。
だが、透明化した刀を確実に受け止めるには技を使わなければならないし、それはリシュアも同様だ。だが、どちらかを無視すれば確実に致命傷を受ける。
どうすればいい。どうすれば避けられる?どうすれば……。
……違う。避けるんじゃない。受け止めるんだ!たとえどれだけのダメージが入っても、絶対に生き残るために!
心の憎悪を膨らませろ!恐怖なんて要らない!痛みを感じるな!勝つことだけに集中しろ!
今更怖気ずくな!死ななければ勝てる!勝てば生き残れる!そうすれば、絶対に次に進める!
こんな奴程度に、道を閉ざさせるなんて死んでも許さない!!
「死んで、たまるかぁぁぁ!!」
「何っ!?」
「これは……進化!?」
俺は即座に『結目の瞳』を使い、刀の位置を把握する。だが、こちらを対処してからではリシュアに間に合わない。なら……!
「……っ!!」
「何ぃ!?」
「テルさん!?」
「う、腕で受け止めた~!?」
俺は左腕を刀に差し出す。そうすれば腕を貫く透明な刀。だが、痛みなんて捨てた俺はそれよりもリシュアに集中する。
「はぁぁぁ!」
「なっ、力が上がって居るだと……!?」
「ザァァ!!」
「ガッハ!?!?」
進化することによって底上げされた俺の身体能力にリシュアは吹き飛ばさせる。
今の俺は左手に刺さる刀の痛みどころか全身の感覚はない。だが、意識はちゃんとあるし刀を持って地面に立っている。よし、まだいける!
俺は無理やり刀を引き抜き適当に投げる。左腕は完全に使えなくなったが、今は関係ない。
「……くそ、クソクソクソクソ!俺は天才だぞ!てめぇ如きに負ける訳が……!」
「うるさい。剣士なら、剣で、刀で語れ!」
俺は今にも崩れそうな脚に力を入れ、リシュアに向けて全力で走り抜ける。
リシュアも刀を構え俺の攻撃を受け止めるが、先程までのような攻撃にキレがない。もしや精神的に崩れかかっている?
「そいつが……そいつが居なけりゃ俺は圧倒的だったんだ!!『波核長波核長』!」
「ヒッ……!?」
「ユーミー!?」
リシュアはサンガシ剣術の技の一つである鞘を使って相手の装備を弾く技を使う。
不意打ちで使われたその技を俺は防ぎきれず、鞘の先端はユーミーの腕を突いて俺の背から離れた。
「ブルルン!」
「レイン!助かった!」
「チッ、だがそいつは気絶したみてぇだな!」
ユーミーが地面に落ちる寸前、レインが現れて何とか口で服を掴むことで地面とぶつかること防ぐ。
だが、魔力切れか精神的ダメージか。ユーミーは俺の背中から落ちてレインに捕まえられた時には、もう気絶していた。
むしろ、今まで戦闘経験が皆無だったユーミーがここまで気絶しなかったことの方が奇跡に近いのだ。
きっと、落下という痛みというわかりやすいストレスをこれ以上貯めるのを回避するために気絶したのだろう。
「もう、お前を守るもんはねぇ!」
「……なら」
リシュアは俺と少し距離を取って腕を俺に突きつける。それは刀を操るときの合図。
「自分で自分を守るだけだ!」
「……は?」
俺は『結目の瞳』を使って透明な刀の場所を把握して簡単に弾き飛ばす。
この一番重要な時の為に、俺はこの能力を明確に使わなかったんだ!
「……な、なんなんだよお前はぁ!!」
「俺は……」
俺はリシュアが飛びかかって来るのを感じながら、刀を納刀する。そして深く集中し、最後の一撃に全てを乗せる。
「あんたより強い剣士になる男だ!!」
「……ごはっ!」
俺の一撃はリシュアの刀をはじき飛ばし、リシュア自体を壁まで吹き飛ばす。
壁に打ち付けられたリシュアは気絶したようで、その場からピクリとも動かなくなった。
「はぁ、はぁ……勝った。勝ったぞ……!勝ったんだ!!」
俺は数秒の間を置き、その実感をじわじわと感じ始める。
俺は、今まで俺の事を見下していたリシュアに勝利した。それは俺にとって上位に類するほどの衝撃であった。
「やったねテル君~♪」
「ブルルン!」
「……はっ!?気絶してました!?」
俺はシエ達の歓声を聴きながら、何とか動く右手を握りしめて勝利を噛み締めるのであった。
♦♦♦♦♦
面白い!続きが読みたい!と思ったら是非お気に入り登録等をよろしくお願いします!
『女神様からもらったスキルは魔力を操る最強スキル!?異種族美少女と一緒に魔王討伐目指して異世界自由旅!』という作品も連載してます!ぜひ読んでみてください!
0
あなたにおすすめの小説
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
拾った子犬がケルベロスでした~実は古代魔法の使い手だった少年、本気出すとコワい(?)愛犬と楽しく暮らします~
荒井竜馬@書籍発売中
ファンタジー
旧題: ケルベロスを拾った少年、パーティ追放されたけど実は絶滅した古代魔法の使い手だったので、愛犬と共に成り上がります。
=========================
<<<<第4回次世代ファンタジーカップ参加中>>>>
参加時325位 → 現在5位!
応援よろしくお願いします!(´▽`)
=========================
S級パーティに所属していたソータは、ある日依頼最中に仲間に崖から突き落とされる。
ソータは基礎的な魔法しか使えないことを理由に、仲間に裏切られたのだった。
崖から落とされたソータが死を覚悟したとき、ソータは地獄を追放されたというケルベロスに偶然命を助けられる。
そして、どう見ても可愛らしい子犬しか見えない自称ケルベロスは、ソータの従魔になりたいと言い出すだけでなく、ソータが使っている魔法が古代魔であることに気づく。
今まで自分が規格外の古代魔法でパーティを守っていたことを知ったソータは、古代魔法を扱って冒険者として成長していく。
そして、ソータを崖から突き落とした本当の理由も徐々に判明していくのだった。
それと同時に、ソータを追放したパーティは、本当の力が明るみになっていってしまう。
ソータの支援魔法に頼り切っていたパーティは、C級ダンジョンにも苦戦するのだった……。
他サイトでも掲載しています。
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?
猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」
「え?なんて?」
私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。
彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。
私が聖女であることが、どれほど重要なことか。
聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。
―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。
前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。
最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)
みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。
在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる