紋章斬りの刀伐者〜無能と蔑まれ死の淵に追い詰められてから始まる修行旅〜

覇翔 楼技斗

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四章 罪の元凶

百五十一話 遊びの相手

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「……なるほど。噂には聞いておりましたが、まさかそれがテル殿だとは」
「しかもサンガシ家の人達もこの街に来るのと同時って……ものすごい確率ですよね」
「お~、案外あっさり信じてくれるんだね~♪執事さんとかてっきりスパイとか何とか言うのかと思った~」

 俺達は今誰にも聞かれていないであろう休憩所に移動し、俺の過去について話した。

 と、言っても本当に最低限だけで、俺がサンガシ家に生まれて才能が無くて追放された経緯を軽く話しただけだ。

 正直、シエの言う通りこんなにあっさり信じてくれるとは思わずなんだか拍子抜けな感覚を覚える。
 噂があったとはいえ、それを利用して近づいたとか思わないのだろうか?

「その可能性も少しは考えましたが、それならばわざわざテル殿の事を『兄』とは呼ばないでしょう」
「そうです!それにこの数日間一緒にいてテルさんがそんなことをする人だとは感じませんでした!だからテルさんは信用できます!勿論シエさんも!」
「……そうか。ありがとう」
「お~、見る目あるね~♪」

 エメルドの無邪気な信頼に俺の心は少し救われながら、次の事について考える。
 
 あいつらの事だ、俺やエメルドが居るとわかった以上何かしらのちょっかいはかけてくるだろう。むしろかけて来ない筈がない。
 
 そして、ポルルが最後に残して行った言葉。あれは一体どういう意味なのか……。

「やっぱりテルさんが考えてるのってポルルさんのことですか……?」
「ああ。あいつらは確実に何か仕掛けてくる。それに暇潰しは終わったと言っていたが、それはまた暇になったら暇潰しを始めるということだ」
「へ~……」

 ポルルは人間を、この世の全てが玩具か何かに見えている明らかな異常者だ。少なくとも、人を壊すことを娯楽感覚で行っている。

 ポルルが人を人として扱うのは当主と長男だけだろう。

 まぁ、流石に王族ならばちゃんと対応するだろうが……するよな?

「エメルド達が滞在するのって、今日合わせてあと三日だよね~?そんな短期間でしかけてくるかな~?」
「絶対に来ないとは限らない。下手をすれば今日中……いや、今すぐ来てもおかしくない」
「いや、流石にそれは警戒しすぎですよテルさん。さっき離れたばっかりじゃないですか!」
「その通りです。護衛として警戒するのは良いですが、気の張りすぎも体に毒ですぞ」
「そうそう♪そんな事ある訳~……」
「た、大変でさぁ!」
「「「「!?」」」」

 まるで俺達の話を聞いていたかのようなタイミングで慌てたウェルが休憩所に入ってくる。その様子から見てただ事では無さそうだ。
 
 そんなウェルに全員が嫌な予感を覚えつつ、何があったかウェルに問いかける。

「ウェル!一体どうしたんだ?!」
「ば、馬車が……!」
「馬車?も、もしかして!」
「さ、さっき馬車を見に行ったんでやすが、原型もないくらいぶっ壊されてたんでさぁ!」
 
 ウェルはあまり俺の話に興味が無いらしく、話の最初の方を聞いた後すぐに休憩所を出て周りの様子を見て回っていた。
 どうやらあの襲撃(?)で色々警戒していたらしい。

 その途中に俺達が乗っていた馬車が破壊されていたのを発見して急いでここに来たらしい。

「こっちでさぁ!早く早く!早く来てくだせぇ!」
「わかったからそう急かすな!」
「壊されたって、誰に壊されたの~?」
「そ、そうだ!馬さんの方は大丈夫ですか!?」
「わ、分からないでさぁ!とにかくこっちに!……って、あれ?」

 俺達はウェルに急かされるままに急いで馬車を止めてい場所に向かうと……そこには、何一つ様子の変わっていない馬車があった。

 それを見て呆然とするウェル。それもそうだろう。きっと彼は本当に崩壊した馬車を見たのだから。

「多分、ポルルに見せられた幻覚だな」
「え!?ってことは……」
「気分が変わったってとこか。なぁ、ポルル」
「正解。一緒に遊びましょ?……アハハ!」

 まるで隣に居るかのような声が響き渡る。ここで馬車に乗ってここを離れるのは……悪手だな。馬に幻覚を見せられたら一溜りも無い。

 ならばポルルが飽きるまで遊びに付き合うか、直接撃退するか……。エメルド達の安全を考えるなら、撃退すべきだろう。

「……シエ、魔力の気配とかするか?」
「ん~、わかんないなぁ。やっぱり天才ってやつだからかな?」
「そうだね~、なんだかこの空間自体魔力で包まれてる気がする~」
「そうか……。ん?」

 俺は周りを警戒しながらシエにポルルの位置が分かるか質問するが、なんとシエから返答が二人分も帰ってきた。
 
「ええええ!?し、シエさんが二人居ますよ!?」
「ど、どうなってるんですかぁ!?」
「む!?エメルド坊っちゃまも増えてますぞ!?」
「……これは困りましたな。私も増えてます」
「「ど、どうなってるんでさぁ!?」」
「どうやら俺ものようだな」
「ああ、そのようだな」

 気がつけばシエだけでなくこの場にいる全員が二人に増えており、勿論俺の目の前にも自分が立っていた。

 凄いな。まるで鏡を見ているかのように完璧に同じ自分が目の前に立って俺と同じ声で同じ様なことを喋っている。
 こんなことは中々体験できない事だろう。
 
 中々体験できない事だが……即座に対処すべき案件だ。

「「『深印切』」」

 俺と同時に放たれる高速の抜刀。速さも威力もタイミングも完全に同じだが……能力までは真似出来ないようだ。

 抜刀した刀は目の前の俺の刀を切り裂き、そのまま首をも切り飛ばす。

 それが能力による効果なのか、そもそも幻覚なので触れられるのか分からない。けれど、幻覚は首が飛ぶのと同時に消え去った。

 脳に作用しているのでは無い?今片方のシエが言った言葉を信じるなら、幻覚というより幻像か?

 俺は即座に『結目の瞳』を発動して全員を見据え、刀に少量の魔力と能力を乗せて極限まで殺傷能力を抑えた斬撃を全員に当たるように横向きで放つ。

 そうして放った斬撃がぶつかった瞬間、現像だけが消え去った。
 
「ありがとうございますテルさん。今のは……?」
「幻覚……と言うには斬撃が当たっていた。ということは、能力によって生み出された形ある像ということ。つまり……」
「もうこの空間丸ごと幻覚……いや、幻像になってるみたいだね~。あっ、どちらかと言えば夢の世界って言った方が近い感じかな~♪」



  ♦♦♦♦♦



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『【短編】殺戮に嫌気が刺した死神様は、純白少女に契約を持ち掛けられる』という作品も投稿してみました。
 二千文字程度なので良ければ見てみてください!

 
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