紋章斬りの刀伐者〜無能と蔑まれ死の淵に追い詰められてから始まる修行旅〜

覇翔 楼技斗

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五章 帝国の洗礼

百六十八話 時間のすれ違い

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 魔物に成り果てた『トンテ』という人物を俺がトドメを刺した後、主に『ネル』がまともに会話できる状態では無いという理由で解散となった。

 トドメをさせなかった代わりに埋葬はしてやりたいというガイスの頼みで死体の回収はしてない。
 代わりに俺はトンテの背中に生えてある植物だけを回収して死体はガイスに渡すことになった。

 植物は案外簡単に体から回収することが出来た。
 トンテの死亡と同時に枯れたように萎んでいたので、魔力や生命力に寄って状態が変わるのかもしれない。

「で、回収したのはいいけど、それをどこに持ってくの~?」
「それが問題なんだよな。冒険者ギルドに持ち込んだとしても、どういう対応をされるかが予測できない」

 噂を混じえて話しても俺達が冗談を言っているように見られるかもしれないし、謎の植物は枯れた木の根っこにしか見えない。

 なんとなく紋章に収納するのが嫌で瓶に入れて保管している植物を袋にしまい、路地裏から大通りに出て人の波に流される。

 何の目的もなくそのまま漂うのも非効率なので、俺達は冒険者ギルドに向かう事になった。
 『我仰団』という窃盗集団について何か情報が冒険者ギルドならあるだろう。

 ……それにしても、冒険者がやけに多いな?

 何となくその事に疑問を持ちつつ、誰にも邪魔されることなくギルドには入る。すると外と比べギルドの中はあまり冒険者がいなかった。

 今の時間帯的にまだ他の冒険者は依頼で帰ってきてないのだろう。

「ふわぁ……眠い……」
「ちょっといいか。受付をして欲しいのだが」
「あ?この時間帯にもう依頼から帰ってきたのか?」
「いや、朝方に護衛依頼でこの街に来た」
「ああ、なるほど。じゃあさっさと依頼の達成確認をするから冒険者カードを出しな。はぁ、めんどくさ」

 俺は予め準備しておいた冒険者カードを受付嬢に渡す。
 俺は気だるげ且つ男勝りな喋り方をする受付嬢を初めて見た事による内心の動揺をなんとか表に出さないように我慢した。

 王国での受付嬢と言えば、皆真面目そうで礼儀正しい女性ばかりでありそれが普通だった。
 
 だが、目の前の女性からは少なくとも礼儀正しそうな雰囲気は無い。
 服もかなり着崩しているし口調も適当でどちらかと言えば『ガサツ』であった。

 文化によってこんな所まで変わるのか……!?

 異国の文化に対して勝手に衝撃を受けていると、受付嬢がさっさと依頼達成を確認し報酬を取り出した。

「ほらよ、報酬だ。ちゃんと冒険者カードも返したな。用事が終わったならさっさとここから離れな」
「すまないが、まだ用事は終わってない。少し情報が欲しい」
「情報だぁ?あのな、そういうのは自分で集めるかどっかで買ってきな。ここはそういう場所じゃない」
「ああ、わかってる」

 俺は事前に探して欲しいと頼んでおいた依頼を探すシエの方に振り返る。
 そんな俺の視線に気がついたシエは俺に向かって罰を作り、首を大きく横に振った。

 やっぱりなかったか。とはいえ、直接依頼について聞いてみれば何か教えてくれるかもしれないので聞いてみる事にする。

「あ?お前の仲間か?」
「ああそうだ。話を戻すが、情報というのは少し正しくなかったな。俺が欲しかったのは『我仰団』についての依頼だ」

 直後、受付嬢から殺気にも似た鋭い視線が突き刺さる。
 その鋭さは明らかに一般人が気軽に出せる強さの殺気ではなく、彼女が実力者であることがわかった。
 
 ……なるほど、受付嬢とは何かしら勉強をしてなるものだと思っていた。しかし、この殺気から考えるに彼女は元冒険者なのだろう。

「お前、その名前をどこで知った?今日この街に来たばかりだろ?」
「……実は、さっきまで窃盗にあっていた。情けないことに、人混みと知らない街が故に窃盗犯を見失い今も盗まれたままだ。だから今まで情報を集めていたんだが、その結果に『我仰団』の話を聞いて来たというわけだ」

 嘘をつく時には真実も混ぜるのが常套手段。『窃盗犯を見失い今も盗まれたまま』という部分だけ嘘をついて、後は殆ど本当の話だ。

 嘘をつくのは俺よりシエの方が得意だとは思うが、俺はできる限り感情を表に出さないように無表情を徹底して受付嬢に話す。

「……なるほど。一体何を盗まれたんだ?」
「腕輪状の装飾品の一つだ」
「腕輪?なんでそんなもん盗まれるんだよ。腕に着けてたんだろ?もしくは紋章に収納しとけよ」
「俺の仲間を見ればわかる通り、今は依頼で倒した魔物の素材を収納するために物を取り出していたんだ。だから、その隙をつかれた」

 シエには瓶が入った袋を持たせているため、多少は俺の言ったような状況に見えるはず。魔物もこの後売りに出す予定だ。

 予めこの嘘は軽く考えてはいたが、ちゃんと文章に矛盾がないか考えながら口に出したのでほぼ即興。上手くいくか?
 
「……そういや、最近は観光者にまで被害が出てるって話か。チッ、お前のランクは『青』だったよな?」
「ああ」
「なら大丈夫か。……ちょっと待ってろ」

 そう言って受付嬢は受付を離れてギルドの奥に入っていく。何か取りに行ったのか?
 
 改めて自分の冒険者カードを見返し、自分のランクを再認識する。そうだ、俺は青ランクだったんだ。……なのに武器を盗まれたのか。

 自分の情けなさに自己嫌悪して気分を落としながら受付嬢を待っていると、受付嬢が何かを持って帰ってくる。遠目で見るに依頼書だろうか?

「期限は切れてるが、人数は多いに越したことは無いからな。これを受けろ」
「『集団討伐依頼』?」

 俺は受付嬢からやはり依頼書であったものを受け取る。
 そこに書いてあるのは、『青』ランク以上の冒険者が条件の書かれてある討伐依頼であった。

 依頼の詳細については省かれており、報酬の日時だけが書かれている。このタイプの依頼ということは、事前に説明会のようなものがあったのか?

「これはな、数日前に現状を危険視した領主が出して他の街からも人を集めた大型の依頼だ」
「他の街からもか……。かなり危険視しているな」
「どういう訳か、この街には闇商人やら窃盗団。それにやらの犯罪集団が集まってるからな。それを一斉に叩くって訳だ」

 俺は受付嬢の言葉に一瞬だけ思考が停止してしまう。その直後、依頼書に書かれた依頼のが重なるのであった。
 

 ♦♦♦♦♦


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『【短編】殺戮に嫌気が刺した死神様は、純白少女に契約を持ち掛けられる』という作品も投稿してみました。
 二千文字程度なので良ければ見てみてください!
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