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六章 伝説の湖
二百七話 二人目のご老人
しおりを挟む「これ……どれも魔物の素材じゃない!?しかも、どれも魔物を倒さないと回収できない素材よね?」
「うむ、牧場の魔物はあまり殺せないからのぉ。ピースに取ってきて欲しいのじゃ」
「む、無理よ!私戦った事とかないし……」
爺さんの提案に驚いたのはピースだけでは無い。ピースは見るからにただの町娘で、戦闘経験どころか武器すら持ったことがなさそうであった。
そんな彼女に魔物と戦ってこいなんて言うのは酷にも程がある。
まぁ、魔物素材を戦わずに得る方法なんて幾らでもあるし、チェックさんは驚いてなかったので事前に計画していた事なのだろう。
「ほっほ、可愛い孫娘にそんなことさせる訳がなかろうて。とはいえ、素材は新鮮な物が欲しいからのぉ。店で買うのはダメじゃ」
「じ、じゃあどうすればいいの……?」
「それは、横にいるお友達に聞けば分かるじゃろう」
ピースは数秒間思考が停止したように固まった後、ハッとしたように俺達の顔を見る。魔物の素材が欲しいなら冒険者に頼む。それはほぼ常識かと思ったが、この街では少しだけ違うらしい。
観光書によると、この街では危険な魔物もいないし犯罪率も低いので高ランク冒険者が居ないらしく、居たとしても殆ど俺達の様な観光目当ての人ばかりだ。
定住しているのはせいぜい冒険者崩れぐらいだろう。
なので、魔物を討伐してもらうのは冒険者ではなく、この街の領主が雇った狩人だったりする。
「という訳で、頼まれてくれんかのぉ二人共。どうしても素材が欲しいのじゃ」
「お願い!会ったばかりなのに図々しいかもしれないけど、おこずかい全部使って報酬も出すわ!」
「もしかして集める素材の中に、ピースちゃんが欲しい素材も入ってたり~?」
「そうよ、だからこの気は逃したくないの!」
ピースは俺達に頭を下げてまで頼み込んでくる。さっきも言った通り、魔物の狩りは雇われた狩人が行う。
そして解体された素材は時間が経って市場に出回る頃には、新鮮ではなくなっているのだろう。
魔物の素材で何をするのかは知らないが、魔物の研究なので魔物を使うのは当然か。
依頼を受けた際に生じる俺達の利益を考えながら、俺はピースに返答する。
「……申し訳ないが、俺達は今とある事で謹慎を受けててな。金銭の発生する依頼は受けられない」
「あっ……ご、ごめんなさい。こんな提案めいわく……」
「だから、この街の観光案内を頼むとするか」
「……え?」
「あは~♪いいねそれ~♪」
そもそも個人間での依頼はあまり推奨されていないので、ここで行うのはあくまで個人的な約束だ。
俺達がピースの素材集めを手伝う代わりに、この街の観光名所を案内してもらう。現地民ならきっと観光書に載っていない素晴らしい場所を知っていることだろう。
爺さんはご満悦のようでうんうんと頷き、ピースは二度目の呆然から意識を取り戻して感謝の念を伝えてくる。期待されている分の働きはしなくてはな。
「あ、ありがとう!ウィントレレの案内なら任せて!有名所から知る人ぞ知る隠れ名所までなんだって知ってるわ!」
「それは楽しみだ。もしかして、爺さん探しで詳しくなったのか?」
「その通り!偶にはおじいちゃんにも感謝しなきゃね!」
そりゃ半日近く街を探索していれば嫌でも知識が着くだろう。何となくピースに同情しながら、俺は爺さんに真意を問う為に話しかける。
俺達との出会い。俺達が冒険者である事。ピースが欲している物。そしてタイミング。……本当に偶然なのか?
「なぁ、爺さん。どこまで計画通りだ?」
「ほっほ、ワシは細い女子より少しふっくらした女子の方が好きじゃ」
「……」
「冗談じゃよ。ワシは……赤身より白身の方が好きじゃ」
……ダメだこのジジイ、話にならない。なんか俺と話してる時だけ言葉が通じてない気がするんだが?
本当に声が届いていないのか、それとも話をはぐらかされたのか。キャッキャッと騒ぐ二人の女子を見ながら、依頼を受けたのは少し安易だったかなと思慮を深めるのであった。
その後、ピースと少しだけ日程の打ち合わせをしてその日は解散となった。
魔物の素材を集めに行くのは三日後。何やら魔物を狩るのに準備が必要らしく、余裕を持って三日後にしたらしい。
「やっぱり湖の街って感じだね~♪」
「あぁ、湖に沿った家々や住宅街の中にある水路に掛かる橋。最大の観光名所が故に湖まで直進できる大通り。どちらかと言うと湖の為の街だな」
外はまだ日の昇っているちょうどいい時間。俺達は時間が経ってまた違う見え方のする美しい湖に近ずいていた。
遠目から見た美しさだけに目がいっていたが、改めて見ると湖には船は幾つか浮かんでいるのが見える。恐らく漁猟をする船と、観光客が乗った船だろう。
ウィントレレ湖では許可のない釣りや生身で湖に入る事は危険なので禁止されている。
基本的に攻撃性は無いとはいえ、魔物も生き物なので命の危険を感じれば暴れるし、最悪の場合は人の命を奪う事もあるからだ。
「伝説のドラゴンや『湖の精霊』!見てみたいね~♪」
「あぁ、出来ればこの街の不思議な現象に着いて聞いてみたいな」
この湖には何度も言ったが幾多の伝説がある。初代勇者が呼び出したドラゴンを始め、湖を守る精霊や湖の底に眠る伝説の剣、異世界の扉なんて物もある。
どこまでが本当なのか正確なことはわかっていないが、そんな話が幾つもあるほど奇跡が多く起きた湖なんだろうな。
「わっひゃっひゃっ!見える、見えるぞ!運命の時が!」
「ん?どうしたの怪しげなおばあちゃん?」
「……爺さんの次は婆さんか」
「お前さん、さっき『精霊』と言ったな!逆じゃ逆!」
気がつけばまたも俺達の隣にご老人が立っており、意味不明な事を呟いている。どうやら今日はご老人に好かれる日のようだ。
無視して通り過ぎようかと思ったが、シエが明らかに占い師の様な姿をした婆さんに興味を示して話を聞く。
婆さんは水の入ったガラス玉を覗き込むように両手で抱え、震える声で丸で大予言このように言い放つ。
「精霊でもドラゴンでもない、『悪魔』が現れる!新たな伝説の誕生じゃあ!!わっひゃっひゃっ!!」
♦♦♦♦
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