紋章斬りの刀伐者〜無能と蔑まれ死の淵に追い詰められてから始まる修行旅〜

覇翔 楼技斗

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六章 伝説の湖

二百十五話 言い争いの鎮静

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 無事に街に帰宅した俺達は飯を食いに行くよりも前にピースの家に向かう。先に無事を報告して起きたいらしい。

 ピースの案内で最短の帰路を進めば見えてくる牧場とその出入口でもあるピースの家。
 家の扉にピースが手を掛けた瞬間、建物内から消えた微かな音に少しだけ違和感を覚えた。

「ピース、待て」
「ただい……って、何を……むぐっ!?」
「……やはり、中で誰かが言い争ってる」
「それってピースちゃんの親戚とかじゃ~……?」

 俺は咄嗟にピースの腕と肩を掴んで怪我をさせないように少し後ろに引き、口元に人差し指を置くことで「静かにしろ」という無言の指示を出しながら耳を澄ます。

 すると鮮明に聞こえてくる言い争いにも似た会話。人数はおそらく四人で、一人はバウフ爺やとピースの母であるチェックさん。そして聞き覚えのない声の男二人のようだ。

 俺の行動の意味を即座に察したシエは後ろに下げたピースを後ろから捕まえて口を塞ぎ、小声で疑問を投げかけてくるが俺は会話の内容を聞き取ることに専念する。

『……いつになったら……だ!もう契約……だぞ!』
『そうだ!……もお怒りだ!あと一週間……なら……わかってるだろうな?』
『何とか……ですか?……なんですよ~。まぁ、売れるかはわからないですけど』
『確信が……かよ!』
『そう声を……でない。ワシでも……から飯はまだかの?』
『聞こ……じゃねぇか!』
『もう限界だ!調子……な!』
 
 家族や親戚間において、喧嘩や言い争いが起きないとは限らないし仲の良い家族だろうと起きて当然だ。
 しかし、扉越しに聞こえる怒鳴り声にも近いそれには親しいからこそするべき礼儀のような物は一切感じられない。それどころか明らかな悪意さえその口調からは感じられた。

 ……まぁ、俺の家族から遠慮なんて感情は一切感じなかったが。それは今どうでもいい。

 男が言葉を切った直後、俺の耳に届く床が力強く踏みつけられた音。そこに躊躇の様なものは感じられない。

 更に追加とばかりに刃物を取りだした音が聞こえた瞬間、俺は扉を開け二人が反応するよりも早く彼等の首元に刀と短刀を添えた。

「「っ!?」」
「何をしているのか知らないが、一般人に対する一方的な暴力は許容できないな」
「だ、誰だテメェは!部外者が介入すんじゃねぇ!」
「この一家は俺の友人達だ。全くの無関係じゃない」
「お、俺達は契約に則って請求……説得してるだけだ!」
「そうか、お前達は説得に刃物を使うのか。なら俺も刃物でお前達を説得するとしよう」
「「ひっ!?」」

 首のギリギリにある刃物をさらに近ずけると、薄皮が切れて流れ落ちる血液。これ以上近づければ命に関わるだろう。

 俺としても無駄な殺生はしたくない。勿論、悪人なら人だろうと殺める覚悟はあるが、ここはピース達が住む家の中なのもあって余計にやりたくは無い。

 だが、友人達にこれ以上の危害が与えられる可能性があるならばこの刃へと更に力を入れる事に抵抗はなかった。

「お、覚えてやがれ~!!」
「助っ人なんて呼びやがって……!『親父』に報告してやるからな~!」
「……ふぅ、大丈夫か?」
「ほっほ、ワシはまだ現役じゃ」
「えぇ、助かりました!定期的にやってきて困ってたんですよぉ。しかもあの人達、厄介な事にお父さんが居ない時に来るんです。だからテルさんには感謝です」
「そうか、怪我がないなら十分だ。まぁ、それだけで満足してない奴も一人いるけどな」

 どうやらさっきの奴等はこの家に定期的にやってくる迷惑な二人組……というより、二人が残した捨て台詞的に二人が所属する組織から定期的に何かの催促をされているらしい。

 なんとなく察しは着くが、しっかりと説明して貰わないと気が済まない人物が二人の目の前に進み出る。そして有無を言わせない態度で二人に命令を下す。

「……お母さん、おじいちゃん。あの二人、誰?」
「あっ……えーっとぉ……。おじいちゃん、お願いします!」
「ふぉっ!?わ、ワシ!?あ~……そ、そうじゃ!今からクルワンの散歩が……」
「おじいちゃん?」
「ヒョエッ!?あ、いや違うんじゃ。決して逃げようとした訳では……」

 爺さんは露骨な話の切り替えで逃げようとするが、とてつもなく冷たいピースの声にビビり散らかす。俺達からはピースの後ろ姿しか見えないが、二人の様子からピースの表情がどれ程恐ろしいのかがよくわかる。

 その後も何とか話を逸らそうとした二人だが、ピースの意思は固く逸らそうとする度に凍えるような声で強制的に元通り。
 流石に諦めたチェックさんは一度ため息を吐き、観念したように話し始める。

「……はぁ、頑固な所とか怒ったら怖い所とか。一体誰に似たんでしょう」
「ほっほ、多分お主じゃろうて」
「もう、お父さんったら……。そうね、ピースももう大人だし、そろそろこの牧場に関わる大切な事もしっかりと話すべきよね」
「牧場に関わる大切な事……?」

 どうやらかなり重要な事のようなので俺達は聞くべきではないと家を出ようとするが、視線で大丈夫だチェックに言われた気がしたので開いたままの扉を閉めるだけで部屋に留まる。

 そしてその口から出た言葉は、凡そ予想したものと一緒だがピースにとってはかなり衝撃的であろう言葉だった。

「実はね、私達はあの人達から……いえ、沢山の人から多額の借金をしてるの」
「魔物達を飼育する為にのぉ」


 ♦♦♦♦


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『【短編】殺戮に嫌気が刺した死神様は、純白少女に契約を持ち掛けられる』という作品も投稿してみました。
 二千文字程度なので良ければ見てみてください!
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