婚約保留!?私が貴方に劣るとでも?!!いざ尋常に勝負ですわ!

りっか

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レーバンと皇太子の出会い(番外編)

レーバンとアルジオ1

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《レーバンサイド》


当時、レーバンには今の妻ではなく、別の婚約者がいた。
爵位が上位なほど政略結婚が殆どで、レーバンも当然そうだった。
貴族の義務を当たり前のように受け止め、婚約者をレーバンなりに大切にしていたが、相手はそうではなかった。

ある時、隣国のアルジオ皇子がレーバンに言った。


「君の婚約者、浮気しているよ」


と。
しかも初対面で、通りすがりに呼び止められて、最初はなんて失礼な!とレーバンは思った。
途中入学でクラスも違うし、会話もしたことないのに、いくら隣国の大帝国の皇太子だとしても不躾過ぎだろうと。
けれど。


「信じる信じないのは君の勝手だけど、明日の放課後、旧校舎の資料室に行ってみるといいよ。結婚前の浮気は気にしないって言うなら構わないけどね」


それだけ言って、アルジオは離れていった。
まさかまさか、そんなはずはない!
そう、婚約者を信じたくてもやはり不安で放課後、帰ったふりしてレーバンは資料室近くに隠れていた。

もともとレーバンは公爵家嫡男として当主教育や執務の手伝いで忙しく、学園の勉学と生徒会の仕事もあったから、婚約者との時間をなかなか取れず申し訳ないと思っていた。
それに、自分が実直な性格でそっち方面は不器用なため、一般的な恋人のような関係を築くことが難しく、他の婚約者同士よりは距離があるような気がしていた。
だから、確かに不安要素はあったものの、それでも相手も侯爵家の令嬢で、貴族なのだから政略結婚の義務と責任は持ってるはずだと、そう思っていた。

だが、結果は……


「はあぁ……あっ、いや、激し……」

「これが良いのだろう?自分から誘ったくせに」

「だ、だって、気持ちよすぎて……」

「純情ぶっても今更だぞ?ほら、もっと声をだしてみよ」

「はああ!もっと……お願い……殿下……」

「良かろう!褒美にもっと責めてやろう!」


服が擦れるような音と何かを打ち続ける音、荒い呼吸と漏れる吐息。
そして会話を聞けば、ほぼ間違いないわけで。
それでも、扉の隙間を開けて最終確認してみれば、婚約者の裏切りを認めるしかなかった。
しかも、まさかのこの国の第一王子。

レーバンは噂で女癖が悪いとか、頻繁に女が変わる等は聞いていた。
実際に女を侍らせ、街に繰り出しているのも何度か見かけた。
それでも、婚約者のいる女性には手を出さないだろうと、最低限の侮蔑は王子にも婚約者にも貴族としての義務としてあるだろうと思っていたのだ。


レーバンは何もかもが嫌になった。
全てがどうでもいいとさえ思った。
いっそ放棄してしまいたかったが、公爵家と侯爵家との政略結婚であり、貴族としての義務と責任を考えると簡単に逃げるわけにはいかず、自分だけでも公爵家嫡男としての誇りを失いたくはなかったから、このまま放置も出来なかった。
真面目だったからこそ、その反動は大きかった。



その日は生徒会の仕事もなく、真っ直ぐ公爵家に帰るつもりだったが、気持ち的に無理だった。
学園の屋上で少しだけ黄昏、夕日が沈むのを見てから馬車にのって帰った。


「お帰りなさい。今日は遅かったのね、何かあったの?心配したのよ」

「お帰りレーバン。今日は早く帰ってこれる日じゃなかったか?何か学園で問題でもあったのかい?心配事があるならいつでも相談に乗るから、無理はするなよ」


予定では早く帰ると言っていたのに、予想以上に遅かったらしく、家族にとても心配されて申し訳なく思いつつも、家族の暖かさに心が少しだけ軽くなる。

他の家族は分からないが、クロックベル公爵家はとても家族思いの家だった。
両親だって政略結婚だったのにとても仲が良く、後継者はレーバンただ一人だったけれど、愛人もおらず、父は母だけを大切にした。
そんな両親のように、燃えるような恋愛結婚でなくとも、お互いを想いあえる暖かい家族を作れたらと思っていたのに、婚約者はあっさりレーバンを裏切っていた。

学園の間だけと割りきってるのかもしれないが、レーバンには無理である。
それに、王位継承権を持っている第一王子と関係を持ってる時点で、絶対に面倒ごとになる確率は高くなる。

婚約破棄以外考えられないが、公爵家と侯爵家との業務提携があり、婚約者を除く侯爵家の家族とは仲が良いのでどうしても渋ってしまう。
それに、婚約者の兄は2つ上の先輩で学友だ。
気さくなお人好しで、妹と違って婚約者にも誠実に対応している大事な友達だ。
出来れば大事おおごとにしたくなかった。

婚約者の裏切りを見た瞬間は冷静になれなかったが、時間がたったのと、両親の優しさ暖かさに触れて、冷静に考えられるようになっていた。

レーバンは一つの考えが浮かび、明日に備えて早めに寝ることにした。
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