婚約保留!?私が貴方に劣るとでも?!!いざ尋常に勝負ですわ!

りっか

文字の大きさ
3 / 18
レーバンと皇太子の出会い(番外編)

レーバンとアルジオ3

しおりを挟む

💮

3学年が終わる一ヶ月前に、レーバンは婚約者を学園内の人の少ない場所に呼びだした。
そして放課後、彼女が来たところで本題を切り出した。


「イスペラント帝国の皇太子と仲良くなってね、来年は帝国の帝都学園に留学してこないかと誘われたんだ。だからアルジオ皇太子が帰国すると同時に留学することになったんだけど、知らせるのが遅くなって申し訳ない」

「待って!私そんなこと聞いてないわ!それにご両親や私達の家族には許可をとってるの!?」


婚約者は信じられないと憤慨して、レーバンに詰め寄った。
レーバンはただ、静かに彼女を見下ろし淡々と説明する。
今更何の感情も動かないし、心は何も感じない。


「両親の許可も、君のご両親の許可も既に了承を頂いているよ。陛下にもね。むしろ繋がりが強化されるなら、1年と言わず多少伸びても構わないとまで言って下さったよ」

「そんな!私とあなたの結婚は学園を卒業して直ぐの予定だったのよ!それなのに……。それに、ドルテア王立学園はどうするの?まだ1年残ってるのに留学だなんて、卒業はどうするの!?」

「それに関しては学園側と相談して1年分を前倒しして試験を受けて合格することで、特別に飛び級として卒業できるようにしてもらった」

「な!まさか……」

「うん、無事に試験をクリアーして、卒業証書ももらっている」

「うそ……何で!?お兄様も知ってるの?もしかして知らなかったのは私だけ?」

「……その、試験が受からなかったら行けなくなるから、合格が確定するまでは恥ずかしくて。君に心配もかけたくなかったから」


少しだけ困ったように眉を下げ、すまなさそうにレーバンは謝った。
ぶっちゃけ大嘘である。
実際は説明が面倒なのと、あの裏切りを見てから関わりたくなくて、ギリギリまで内緒にしようと決めていた。
ついでに、アルジオに協力してもらいながら、彼女の不貞の詳細を調べたりもしていた。

その結果、彼女は第一王子以外とも遊び仲間と呼ばれる男子生徒数人と関係があることがわかった。
全員貴族であり婚約者はいなかったので、そこは気を付けていたのかと多少の安堵はしたけれど、多数の不貞をしていたことがわかって、余計に気持ち悪さを覚えるだけだった。
本当にアルジオに忠告してもらわなければ、来年の今頃には誰の子かもわからない子供をレーバンと子だと偽って押し付けられていたかもしれない。

ちなみに婚約者の家族もこの事実を知っているのか探ってみたが、白だった。
彼女の兄も全く知らないようで、もうすぐ家族になれると思うと嬉しいよと、屈託なく言われた。
よほど彼女は巧妙に隠すのが上手いのだと思った。


「じゃあ……帰ってくるのは一年後なの?こっちの卒業式にはもう出ないの?」

「向こうの学園の予定だと難しいかな。ドルテア王立学園の卒業式の3ヶ月後くらいになると思う」

「てことは、学園の卒業パーティーは私一人なの?パートナーがいないなんて最悪!!」


本気で自分を待つ気なのだろうかとレーバンは思った。
アルジオの言葉通りなら、その頃にはお腹が多少はでかくなっているだろうから、レーバンがいなければそれどろこじゃないだろう。
それに、パーティーでのエスコート役としてレーバンを指名したいのは婚約者の自慢をしたいだけのような気がした。
普段から、侯爵令嬢の自分が未来の公爵夫人になることを他の令嬢に自慢しているのを何度か見かけたから。
もしかしたら、その向上心から第一王子の妾か愛人でも狙ってるのかもしれない。
もしくは、あわよくば第一王子に気に入られて婚約の確約を取れたら、レーバンとの婚約を解消したいのかもしれない。
けれど、第一王子はまだ王太子ではないから、レーバンもキープしておきたいのかもしれない。

どちらにしても、レーバンにはどうでも良い。
レーバンが留学している間に、勝手に取り返しのつかないことになっているような気がするから。


「すまない。卒業パーティーには君の家族の誰かに頼んでほしい。そのかわり、戻ってきたら君の言うことを何でも聞くよ」


たとえアルジオの言葉通りの出来事がおこらなかったとしても、既に証拠は十分にそろっている。
彼女との婚約の継続はありえないからこそ、偽る事に胸の痛みは感じない。
そもそも守る必要がないのだから。


「本当ね?約束よ!帰ってきたらいっぱいおねだりしちゃうんだから♪我慢して待ってるんだから当然よね?ふふ、どんなドレスやアクセサリーを頼もうかしら~」


現金なもので、高価なものを買ってもらえると思ったとたん、上機嫌になった。
本当に自分は見る目がなく、彼女の本心が透けて見えてくるたびに、気持ち悪さが増していく。
でもこれで、問題なくイスペラント帝国に行けるだろう。


そうして、レーバンはドルテア王立学園の4学年に上がる前に卒業し、イスペラント帝国の帝都学園に留学した。




彼女は妊娠が発覚したらどうするのだろうか?
ふと、そんな事を考えながら。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

『二流』と言われて婚約破棄されたので、ざまぁしてやります!

志熊みゅう
恋愛
「どうして君は何をやらせても『二流』なんだ!」  皇太子レイモン殿下に、公衆の面前で婚約破棄された侯爵令嬢ソフィ。皇妃の命で地味な装いに徹し、妃教育にすべてを捧げた五年間は、あっさり否定された。それでも、ソフィはくじけない。婚約破棄をきっかけに、学生生活を楽しむと決めた彼女は、一気にイメチェン、大好きだったヴァイオリンを再開し、成績も急上昇!気づけばファンクラブまでできて、学生たちの注目の的に。  そして、音楽を通して親しくなった隣国の留学生・ジョルジュの正体は、なんと……?  『二流』と蔑まれた令嬢が、“恋”と“努力”で見返す爽快逆転ストーリー!

家の全仕事を請け負っていた私ですが「無能はいらない!」と追放されました。

水垣するめ
恋愛
主人公のミア・スコットは幼い頃から家の仕事をさせられていた。 兄と妹が優秀すぎたため、ミアは「無能」とレッテルが貼られていた。 しかし幼い頃から仕事を行ってきたミアは仕事の腕が鍛えられ、とても優秀になっていた。 それは公爵家の仕事を一人で回せるくらいに。 だが最初からミアを見下している両親や兄と妹はそれには気づかない。 そしてある日、とうとうミアを家から追い出してしまう。 自由になったミアは人生を謳歌し始める。 それと対象的に、ミアを追放したスコット家は仕事が回らなくなり没落していく……。

【12月末日公開終了】これは裏切りですか?

たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。 だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。 そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?

【完結】公爵令嬢は、婚約破棄をあっさり受け入れる

櫻井みこと
恋愛
突然、婚約破棄を言い渡された。 彼は社交辞令を真に受けて、自分が愛されていて、そのために私が必死に努力をしているのだと勘違いしていたらしい。 だから泣いて縋ると思っていたらしいですが、それはあり得ません。 私が王妃になるのは確定。その相手がたまたま、あなただった。それだけです。 またまた軽率に短編。 一話…マリエ視点 二話…婚約者視点 三話…子爵令嬢視点 四話…第二王子視点 五話…マリエ視点 六話…兄視点 ※全六話で完結しました。馬鹿すぎる王子にご注意ください。 スピンオフ始めました。 「追放された聖女が隣国の腹黒公爵を頼ったら、国がなくなってしまいました」連載中!

悪役令嬢として断罪? 残念、全員が私を庇うので処刑されませんでした

ゆっこ
恋愛
 豪奢な大広間の中心で、私はただひとり立たされていた。  玉座の上には婚約者である王太子・レオンハルト殿下。その隣には、涙を浮かべながら震えている聖女――いえ、平民出身の婚約者候補、ミリア嬢。  そして取り巻くように並ぶ廷臣や貴族たちの視線は、一斉に私へと向けられていた。  そう、これは断罪劇。 「アリシア・フォン・ヴァレンシュタイン! お前は聖女ミリアを虐げ、幾度も侮辱し、王宮の秩序を乱した。その罪により、婚約破棄を宣告し、さらには……」  殿下が声を張り上げた。 「――処刑とする!」  広間がざわめいた。  けれど私は、ただ静かに微笑んだ。 (あぁ……やっぱり、来たわね。この展開)

《本編完結》あの人を綺麗さっぱり忘れる方法

本見りん
恋愛
メラニー アイスナー子爵令嬢はある日婚約者ディートマーから『婚約破棄』を言い渡される。  ショックで落ち込み、彼と婚約者として過ごした日々を思い出して涙していた───が。  ……あれ? 私ってずっと虐げられてない? 彼からはずっと嫌な目にあった思い出しかないんだけど!?  やっと自分が虐げられていたと気付き目が覚めたメラニー。  しかも両親も昔からディートマーに騙されている為、両親の説得から始めなければならない。  そしてこの王国ではかつて王子がやらかした『婚約破棄騒動』の為に、世間では『婚約破棄、ダメ、絶対』な風潮がある。    自分の思うようにする為に手段を選ばないだろう元婚約者ディートマーから、メラニーは無事自由を勝ち取る事が出来るのだろうか……。

これで、私も自由になれます

たくわん
恋愛
社交界で「地味で会話がつまらない」と評判のエリザベート・フォン・リヒテンシュタイン。婚約者である公爵家の長男アレクサンダーから、舞踏会の場で突然婚約破棄を告げられる。理由は「華やかで魅力的な」子爵令嬢ソフィアとの恋。エリザベートは静かに受け入れ、社交界の噂話の的になる。

処理中です...