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レーバンと皇太子の出会い(番外編)
レーバンとアルジオ3
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3学年が終わる一ヶ月前に、レーバンは婚約者を学園内の人の少ない場所に呼びだした。
そして放課後、彼女が来たところで本題を切り出した。
「イスペラント帝国の皇太子と仲良くなってね、来年は帝国の帝都学園に留学してこないかと誘われたんだ。だからアルジオ皇太子が帰国すると同時に留学することになったんだけど、知らせるのが遅くなって申し訳ない」
「待って!私そんなこと聞いてないわ!それにご両親や私達の家族には許可をとってるの!?」
婚約者は信じられないと憤慨して、レーバンに詰め寄った。
レーバンはただ、静かに彼女を見下ろし淡々と説明する。
今更何の感情も動かないし、心は何も感じない。
「両親の許可も、君のご両親の許可も既に了承を頂いているよ。陛下にもね。むしろ繋がりが強化されるなら、1年と言わず多少伸びても構わないとまで言って下さったよ」
「そんな!私とあなたの結婚は学園を卒業して直ぐの予定だったのよ!それなのに……。それに、ドルテア王立学園はどうするの?まだ1年残ってるのに留学だなんて、卒業はどうするの!?」
「それに関しては学園側と相談して1年分を前倒しして試験を受けて合格することで、特別に飛び級として卒業できるようにしてもらった」
「な!まさか……」
「うん、無事に試験をクリアーして、卒業証書ももらっている」
「うそ……何で!?お兄様も知ってるの?もしかして知らなかったのは私だけ?」
「……その、試験が受からなかったら行けなくなるから、合格が確定するまでは恥ずかしくて。君に心配もかけたくなかったから」
少しだけ困ったように眉を下げ、すまなさそうにレーバンは謝った。
ぶっちゃけ大嘘である。
実際は説明が面倒なのと、あの裏切りを見てから関わりたくなくて、ギリギリまで内緒にしようと決めていた。
ついでに、アルジオに協力してもらいながら、彼女の不貞の詳細を調べたりもしていた。
その結果、彼女は第一王子以外とも遊び仲間と呼ばれる男子生徒数人と関係があることがわかった。
全員貴族であり婚約者はいなかったので、そこは気を付けていたのかと多少の安堵はしたけれど、多数の不貞をしていたことがわかって、余計に気持ち悪さを覚えるだけだった。
本当にアルジオに忠告してもらわなければ、来年の今頃には誰の子かもわからない子供をレーバンと子だと偽って押し付けられていたかもしれない。
ちなみに婚約者の家族もこの事実を知っているのか探ってみたが、白だった。
彼女の兄も全く知らないようで、もうすぐ家族になれると思うと嬉しいよと、屈託なく言われた。
よほど彼女は巧妙に隠すのが上手いのだと思った。
「じゃあ……帰ってくるのは一年後なの?こっちの卒業式にはもう出ないの?」
「向こうの学園の予定だと難しいかな。ドルテア王立学園の卒業式の3ヶ月後くらいになると思う」
「てことは、学園の卒業パーティーは私一人なの?パートナーがいないなんて最悪!!」
本気で自分を待つ気なのだろうかとレーバンは思った。
アルジオの言葉通りなら、その頃にはお腹が多少はでかくなっているだろうから、レーバンがいなければそれどろこじゃないだろう。
それに、パーティーでのエスコート役としてレーバンを指名したいのは婚約者の自慢をしたいだけのような気がした。
普段から、侯爵令嬢の自分が未来の公爵夫人になることを他の令嬢に自慢しているのを何度か見かけたから。
もしかしたら、その向上心から第一王子の妾か愛人でも狙ってるのかもしれない。
もしくは、あわよくば第一王子に気に入られて婚約の確約を取れたら、レーバンとの婚約を解消したいのかもしれない。
けれど、第一王子はまだ王太子ではないから、レーバンもキープしておきたいのかもしれない。
どちらにしても、レーバンにはどうでも良い。
レーバンが留学している間に、勝手に取り返しのつかないことになっているような気がするから。
「すまない。卒業パーティーには君の家族の誰かに頼んでほしい。そのかわり、戻ってきたら君の言うことを何でも聞くよ」
たとえアルジオの言葉通りの出来事がおこらなかったとしても、既に証拠は十分にそろっている。
彼女との婚約の継続はありえないからこそ、偽る事に胸の痛みは感じない。
そもそも守る必要がないのだから。
「本当ね?約束よ!帰ってきたらいっぱいおねだりしちゃうんだから♪我慢して待ってるんだから当然よね?ふふ、どんなドレスやアクセサリーを頼もうかしら~」
現金なもので、高価なものを買ってもらえると思ったとたん、上機嫌になった。
本当に自分は見る目がなく、彼女の本心が透けて見えてくるたびに、気持ち悪さが増していく。
でもこれで、問題なくイスペラント帝国に行けるだろう。
そうして、レーバンはドルテア王立学園の4学年に上がる前に卒業し、イスペラント帝国の帝都学園に留学した。
彼女は妊娠が発覚したらどうするのだろうか?
ふと、そんな事を考えながら。
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