婚約保留!?私が貴方に劣るとでも?!!いざ尋常に勝負ですわ!

りっか

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レーバンと皇太子の出会い(番外編)

レーバンとアルジオ7

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レーバンが婚約者に返事を送って一ヶ月後、婚約者からまた手紙が送られてきた。
イスペラント帝国からドルテア王国に行くには2週間ほどかかる。
手紙もほぼ同じ期間かかり往復で1ヶ月かかるから、届いて直ぐに返事を出したことになる。


「今度は何だって?」

「簡潔に言うなら不平不満ですかね。どうして一時帰国すら出来ないのという不満と、婚約者がこんなにお願いしているのに聞いてくれないなんて酷い、婚約者なのだから何においても私を優先すべきではないのか、という愚痴ですね」

「相変わらずだな、君の婚約者殿は」


いつも通り帝都学園の生徒会室にある応接間で、テーブルを挟んで向かい合う状態でソファーに座り、アルジオとレーバンは話あっていた。
防音設備は整っているし、生徒会室なら鍵をかけられ関係者以外を入れないように出来るから、密談するにはうってつけだ。
テーブルにはレーバンが慣れた手つきで滝いれた紅茶が置いてあり、アルジオはカップを手にして口つける。


「また腕を上げたんじゃない?香りといい味といい、素晴らしいね」

「……有り難いことに、ここで雑用係りとして生徒会を手伝っているうちに慣れました」

「従者として欲しいくらいだよ」

「お褒めの言葉として受け取っておきます。ですが、私はドルテア王国に戻りますので、貴方の側近は無理ですよ」

「わかってるよ。本当にこの国の貴族だったら即スカウトするのにね」


残念だ~と、アルジオは冗談まじりに言う。
レーバンはあくまでも留学生の下位貴族ということで学園に通っているため、イスペラント帝国の貴族でなくては入れない生徒会役員にはなれず、かわりに雑用係りとして生徒会を手伝っていた。
だが、あまりにも有能だったので、ダメだとわかっていてもついついアルジオはレーバンを事あるごとに勧誘していた。


「で、他には?まさか、愚痴を言うためだけに手紙を送ってきた訳じゃないよね?」

「よくお分かりで。どうやらよほど切羽詰まったのか、『これから私がイスペラント帝国に向かうから、入国の許可を取っておいてよ!』だそうです」

「ほぼ命令じゃないか。まぁ選択しもないし時間もないからそうなるか」


アルジオの未来通りなら、今頃つわりが酷くなる頃か。
隠しとおすのもギリギリだろう。


「強引に強行してくると思いますか?」

「したとしても、イスペラント帝国側は許可を出していないから、国境で止められるとは思うけどね。念のため、レーバンの婚約者が来たら国境は通さず足止めして連絡がくるようにはしてあるから」

「なら、様子見した方が良さそうですね」

「そうだね。もし国境から連絡が来れば、君の婚約者の両親に手紙で知らせよう」

「私からも彼女から相談の手紙が来たことを伝えたいので、私にも知らせてもらえますか?」

「了解した。動きがあったらレーバンにも知らせるよ」


これで一旦お開きになったのだが、その一週間後にレーバンの両親からも手紙が届いた為、レーバンがアルジオに連絡し、また生徒会室の応接間で密談をすることになった。


「まさか、君のご両親から連絡があるとはね」

「びっくりはしましたけど、彼女が突然行方不明になったと連絡が入って、一緒に私兵も使って彼女を捜索したらしいから、まぁ、そうなりますよね」


レーバンの両親も彼女の行方不明事件に巻き込まれたのだから、婚約者であるレーバンに連絡が来るのも当然と言えた。


「君の両親からの手紙の内容は何だったの?」

「彼女が突然行方不明になって大変だったということと、婚約者のご両親から連絡を受け心配で私達も捜索を手伝って何とか国外に出る前に見つけることが出来たけれど、『レーバンに会いに行くんだから!邪魔しないでよ!!』と喚くばかりで此方の話を聞かず、暴れてとても大変だったらしいです」

「うわ~本性だしまくってるね。猫を被るのをやめたのかな」

「というより、それどころじゃないと言った感じですかね」


個別に母と父それぞれの手紙も入っており、母からは『よほど寂しくて貴方に会いたかったのかしらね?そうだとしても、レーバンの立場からすれば帝国の皇太子にお世話なっているのだから、いきなり行ったらご迷惑になるのに、そういうのは考えないのかしら?』と書かれていた。
父からは『こんなに我が儘な令嬢だっただろうか。お前は大丈夫か?』と心配してくれていた。

まさか本当に自分の家族に内緒でイスペラント帝国に来るつもりだったのかと呆れつつも、レーバンを心配してくれる両親の内容に心が暖かくなる。


「良い両親だね」

「ええ、自慢の両親です。アルの両親だって息子想いの優しい方達ではありませんか」

「そうだね。お互いに恵まれると思うよ」


どちらの両親も、何時だって自分達の味方をしてくれる。
そんな両親だからこそ、レーバンもアルジオも感謝を忘れたことはない。


「最後に、彼女の両親の方は娘が見つかって、勝手にイスペラント帝国に行こうとしたので、流石に激怒したみたいです。今は部屋に閉じ込めて監視しているらしいと書かれていました。どうやら彼女は私の返事を見て怒りで我慢できなかったのか、それとも焦りすぎていたのか。私に返事だけして両親には書き置きもせずに飛び出したみたいです」

「それはまた。婚約者のご両親もさぞ肝を冷やしただろうね」


いきなり行方不明になった娘の両親からしてみれば、何かの事件に巻き込まれたのではと心配するだろうし、(レーバンの両親も含む)他家にも連絡して、四方八方と大捜索までして漸く見つけたと思ったら、実は娘の独断で勝手に婚約者のレーバンに会いに行こうとしていただけという、しかもレーバンの許可も帝国の許可も取らずにだ。
婚約者の家族からしたらおお恥をかかされた上に、下手したら国際問題にもなりかねなかったのだから、事実を知ったときは気が気ではなかったのかもしれない。


「今度はどう対処するつもりなんだい?」

「そうですね、今回は一応、婚約者が帝国に来ることを阻止してもらえましたが、また勝手に面倒なことをされては困りますので、彼女からもらった手紙も添えて彼女のご両親に手紙を送ろうと思います」

「ふむ。それが良いだろうね。ここまでされたら娘が何故レーバンに会いたかったのか、知る権利はあるし、そろそろ動いてもらうべきだろうしね」


こうしてレーバンは、今度は婚約者の両親に手紙を送ることにしたのだった。




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