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第二章 『厄介な日常』
何でも知りたい=友情?
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「もしもし? 多田だよ。元気?」
『まあな。急にどうした?』
「その、大切な話があってだな」
『大切な話? お前が、僕に?』
「勿論」
どうせ大した話じゃないだろうとやや興味なさげな香山。
お前はいつだってそうだ。重大な話やのろけ話は聞き流して、俺が不幸な目に遭った時はいじり倒すんだ。そういう性格のねじ曲がった奴なんだよ、お前という者は。
だがそんな香山も、俺が今から口に出す単語を聞いたら、どきりとすることだろう。
「今日俺たまたま見ちゃったんだよ。お前が完甘先輩に、告られてるところ」
『⁉』
受話器越しでも、驚いた雰囲気は怖いくらいに伝わってくる。
(なんて言われるんだろ。「覗き見するなんて」とかか? 香山のことだから)
プライバシーの面に関して少々厳しい香山。返答はあらかた予想ができてしまう。
『み、見てたのか!? ど、どこからどこまでだ、一体!』
「え……。お前が返事する前までだけど」
う~~ん、んん?
『そうか、良かった。いや別に何か特別なことがあった訳ではないのだがな、そのまあちょっとしたアレだまあその……アレだ』
「いや、絶対特別なことあっただろ。お前普段そんな動揺しないじゃん」
『いやするぞ? 結構いつも沢山のことに慌てて生きてるぞ僕は』
なんだこの予想外過ぎる反応は。
まさかあの香山が完甘先輩にオチたのか!? 高校生までずっと恋愛を知らないで生きていたのに、初めに惚れる女がそんな人気者なのか!?
(もっと特殊な人を好きになると思ってたのに……残念だな。いやでも、幸せはちゃんと祈ってるけどね。そりゃ親友だし)
「そういう言い訳いいから。ていうかこんな可愛い反応返ってくるなら電話じゃなくて直接聞けば良かったわ。失敗した」
『ハァ? 多田まで僕のことを可愛いと言うのか!』
「多田“まで”って。完甘先輩にも言われたの? もしかして」
『い、いいいや。全然言われてないぞそんなこと。これはその言葉の綾というかその類のものでな、つい口から出てしまっただけに過ぎないんだ。誤認するなよ』
こんなに必死で弁解しようとする余裕のない香山は初めてだ。相当本気というか何というか、恋してるって感じだ。
「はいはい。珍しいお前を聞けたし、もう切るよ。幸せにな。また明日~」
『えっ。ちょっ、お前幸せって何言──』
(ハー、いい気分いい気分。本来の目的からは逸れたけど、まあ良いか。振り方とかもはや直接聞きゃいい話だし)
最後の最後まで何か反論をしようとしていたけれども、それも拗ねた幼稚園生の声みたいに聞こえてきて笑みがこぼれてしまった。
香山に関連することでこんなにも心が暖かくなったのはこれが初めてだ。完甘先輩恐ろしや。
「おはよう、皆」
「「おはようございます」」
「……」
やはりあの電話の後でいつも通り、とはいかないみたいだ。香山は俺と目も合わせてくれない。
(今回のことは俺にも非があることにはあるし、変に絡まないでおくか)
そう、心の中で決めていた時。
「……多田。お前、勘違いしてるぞ」
俺の服をクイと引っ張って力無く呟く香山。
(コイツ、まだ言うか)
完甘先輩とお付き合いしているという事実が、香山にとってそんなにも恥ずかしいことだとは。
「何をだよ。というかいくら恥ずかしいからって頑なに認めないでいたら、先輩の方が可哀想だぞ」
「おまっ……! 声が大きいっ」
グイッ。
「イタタ。ごめんごめん。でもさ、俺はお前の親友なんだし、事実偽らなくてもいいんじゃない?」
香山の手によって俺の顔は香山の美顔と共に勢いよく下へ。窘められたので声のボリュームも下げる。
「だから、そもそも多田のその思い込みが勘違いだと言ってるんだろうが! 恋人ができたら真っ先に教えるという約束は小6の時に交わしただろう」
「え? た、確かにそうだけど……。昨日のあの態度で付き合ってないのはおかしくない?」
「だから、その……。お詫びとして秘密を暴露した、みたいな感じでだな。いやまあその直接お詫びとしてではなく何というか流れでつい口から零れたというかそのつまり……」
また昨日の電話と同じような、悪戯がバレた幼児のような喋り。でもやっぱり、嘘をついている感じではないな。
(う~ん、でもなんだろうな。まだなにか隠してるみたいに見える)
「まあいいよ。そこまでは追及しない。ただ、1つ気になることがある。先輩に話しちゃった秘密って、一体何なの?」
「やはりそれか……。だが申し訳ない。それを言うことは不可能だ。今の僕には」
「え~。お前の心変わりを待たなきゃならないってこと?」
「いや、心変わりというより……覚悟の問題だな、これは」
香山が俺に伝えるのに覚悟を要する『秘密』……。どんなものなのだろうか。
しかし今の自信皆無な香山の様子じゃ、知るのは当分先だな、きっと。
「お二人、仲良しですね。見ていて微笑ましくなります♪」
愛ちゃんがそう言ったので、ここが登校中の車内であることに気が付いた。夢中になり過ぎてしまったみたいだな。
「アハハ、まあね。これでもずっと一緒に居るから」
「──そしてこれからも、ずぅっと隣で支え合う。そんな関係でいてほしいものです」
「当然だよ。な、香山!」
「……多分な」
「素直じゃないなぁ」
「ずっと一緒」と言葉にしてしまえば簡単だけれど、10年という長い期間共に歩んできたと考えると、なんともこそばゆい。
でもそんな仲だからこそ言えないことも、きっとあるんだろうな。むしろ大して親しくないような人の方が話しやすい場合だってある。おそらく。
大事なのは全てを知ろうとするんじゃなくて、相手をしっかり信じようとする心なのだ。
(なんか、良いことに気付けたな)
『まあな。急にどうした?』
「その、大切な話があってだな」
『大切な話? お前が、僕に?』
「勿論」
どうせ大した話じゃないだろうとやや興味なさげな香山。
お前はいつだってそうだ。重大な話やのろけ話は聞き流して、俺が不幸な目に遭った時はいじり倒すんだ。そういう性格のねじ曲がった奴なんだよ、お前という者は。
だがそんな香山も、俺が今から口に出す単語を聞いたら、どきりとすることだろう。
「今日俺たまたま見ちゃったんだよ。お前が完甘先輩に、告られてるところ」
『⁉』
受話器越しでも、驚いた雰囲気は怖いくらいに伝わってくる。
(なんて言われるんだろ。「覗き見するなんて」とかか? 香山のことだから)
プライバシーの面に関して少々厳しい香山。返答はあらかた予想ができてしまう。
『み、見てたのか!? ど、どこからどこまでだ、一体!』
「え……。お前が返事する前までだけど」
う~~ん、んん?
『そうか、良かった。いや別に何か特別なことがあった訳ではないのだがな、そのまあちょっとしたアレだまあその……アレだ』
「いや、絶対特別なことあっただろ。お前普段そんな動揺しないじゃん」
『いやするぞ? 結構いつも沢山のことに慌てて生きてるぞ僕は』
なんだこの予想外過ぎる反応は。
まさかあの香山が完甘先輩にオチたのか!? 高校生までずっと恋愛を知らないで生きていたのに、初めに惚れる女がそんな人気者なのか!?
(もっと特殊な人を好きになると思ってたのに……残念だな。いやでも、幸せはちゃんと祈ってるけどね。そりゃ親友だし)
「そういう言い訳いいから。ていうかこんな可愛い反応返ってくるなら電話じゃなくて直接聞けば良かったわ。失敗した」
『ハァ? 多田まで僕のことを可愛いと言うのか!』
「多田“まで”って。完甘先輩にも言われたの? もしかして」
『い、いいいや。全然言われてないぞそんなこと。これはその言葉の綾というかその類のものでな、つい口から出てしまっただけに過ぎないんだ。誤認するなよ』
こんなに必死で弁解しようとする余裕のない香山は初めてだ。相当本気というか何というか、恋してるって感じだ。
「はいはい。珍しいお前を聞けたし、もう切るよ。幸せにな。また明日~」
『えっ。ちょっ、お前幸せって何言──』
(ハー、いい気分いい気分。本来の目的からは逸れたけど、まあ良いか。振り方とかもはや直接聞きゃいい話だし)
最後の最後まで何か反論をしようとしていたけれども、それも拗ねた幼稚園生の声みたいに聞こえてきて笑みがこぼれてしまった。
香山に関連することでこんなにも心が暖かくなったのはこれが初めてだ。完甘先輩恐ろしや。
「おはよう、皆」
「「おはようございます」」
「……」
やはりあの電話の後でいつも通り、とはいかないみたいだ。香山は俺と目も合わせてくれない。
(今回のことは俺にも非があることにはあるし、変に絡まないでおくか)
そう、心の中で決めていた時。
「……多田。お前、勘違いしてるぞ」
俺の服をクイと引っ張って力無く呟く香山。
(コイツ、まだ言うか)
完甘先輩とお付き合いしているという事実が、香山にとってそんなにも恥ずかしいことだとは。
「何をだよ。というかいくら恥ずかしいからって頑なに認めないでいたら、先輩の方が可哀想だぞ」
「おまっ……! 声が大きいっ」
グイッ。
「イタタ。ごめんごめん。でもさ、俺はお前の親友なんだし、事実偽らなくてもいいんじゃない?」
香山の手によって俺の顔は香山の美顔と共に勢いよく下へ。窘められたので声のボリュームも下げる。
「だから、そもそも多田のその思い込みが勘違いだと言ってるんだろうが! 恋人ができたら真っ先に教えるという約束は小6の時に交わしただろう」
「え? た、確かにそうだけど……。昨日のあの態度で付き合ってないのはおかしくない?」
「だから、その……。お詫びとして秘密を暴露した、みたいな感じでだな。いやまあその直接お詫びとしてではなく何というか流れでつい口から零れたというかそのつまり……」
また昨日の電話と同じような、悪戯がバレた幼児のような喋り。でもやっぱり、嘘をついている感じではないな。
(う~ん、でもなんだろうな。まだなにか隠してるみたいに見える)
「まあいいよ。そこまでは追及しない。ただ、1つ気になることがある。先輩に話しちゃった秘密って、一体何なの?」
「やはりそれか……。だが申し訳ない。それを言うことは不可能だ。今の僕には」
「え~。お前の心変わりを待たなきゃならないってこと?」
「いや、心変わりというより……覚悟の問題だな、これは」
香山が俺に伝えるのに覚悟を要する『秘密』……。どんなものなのだろうか。
しかし今の自信皆無な香山の様子じゃ、知るのは当分先だな、きっと。
「お二人、仲良しですね。見ていて微笑ましくなります♪」
愛ちゃんがそう言ったので、ここが登校中の車内であることに気が付いた。夢中になり過ぎてしまったみたいだな。
「アハハ、まあね。これでもずっと一緒に居るから」
「──そしてこれからも、ずぅっと隣で支え合う。そんな関係でいてほしいものです」
「当然だよ。な、香山!」
「……多分な」
「素直じゃないなぁ」
「ずっと一緒」と言葉にしてしまえば簡単だけれど、10年という長い期間共に歩んできたと考えると、なんともこそばゆい。
でもそんな仲だからこそ言えないことも、きっとあるんだろうな。むしろ大して親しくないような人の方が話しやすい場合だってある。おそらく。
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