最近の美少女はお金で俺を買うらしい

鍵山 カキコ

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第三章 『嫌な展開』

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 俺だけの胸に閉じ込めておくにはあまりにも大きな絶望。
 話だけでも誰かに聞いてもらわないと明日きっと学校に行けないと感じた俺は、部屋に入ると同時に香山に電話をかけた。
『もしもし? 折角の休日に何の用だ?』
「香山ぁ~。愛花ともう関われなくなった~!!」
『ハァ? ──というかお前、泣いてないか?』
「そりゃ泣くだろ。愛花の方から直々に言われたんだぞ」
『?? 一体何があった?』
 なんだかスマホの向こうが騒がしいな。友達と遊んでいるのだろうか。
 そんな時に少し重い話をしてしまうのは申し訳ない気もするが、こんな愛花の話は香山か家族にしかできないのだ。仕方ない。
「実はさっき……」
 涙を垂れ流しながらの事情説明。自分の口から事の全てを発していると、改めて事実を再認識させられる。こんなに辛いことがあるだろうか。
『なるほどな。……えっ? あぁ分かった。今多田と電話してるから少し待っててくれ』
 他の人と喋る声。やはり誰かと出掛けていたみたいだ。
「ごめん、邪魔して」
『いや、まあ今回ばかりは仕方ない。お前が長いこと愛花を想っているのを一番近くで見ていたのは僕だからな』
「香山……」
 やはり親友はいいな。いざという時はからかったりせずに優しく包み込んでくれる。香山の人間味に触れられる、貴重な瞬間だ。
『とりあえず今日は思い切り悲しんで、あまり明日に引きずらないようにしておいた方が良い。それと羽衣さんにはきつく言っておくべきだな』
「分かった、ありがとう。今日は全力で涙を流すことにするよ。友達と仲良くね」
『あ、あぁ。頑張れよ。じゃあな』
「また明日」
 ふぅ。
 辛い時、それを受け止めてくれる者の存在とは偉大だな。普段はあんなでもやっぱり憎めない。
(さて、目から水をしぼり出すとするか)

     ● ● ●

 ズーン……。
 引きずるなと言われたにもかかわらず、机に突っ伏してしまう俺。
「ど、どうされたのですか晃狩さん!?」
「一体何があったのよ!」
「多田様、大丈夫ですか!?」
 皆の困惑の声が耳に響いてくる。
 この子等(小熊さんは除く)は俺のことになると過剰に心配してくるからな、香山はこれを懸念していたのだろう。
「やれやれ、仕方ない……。多田、僕が全部話すぞ。彼女達なら笑いも馬鹿にもしないだろうし、大丈夫だろう」
 顔は上げずに親指を立てて「OK」の意を伝える。
(ハァ、愛花……)
 どうしても今はそれだけしか考えられない。
 高校生になってから会えうことすら容易ではなくなり、それ故に少し壁ができて遊びに誘いづらい関係性になってしまった愛花。しかしそれでも気持ちが揺らぐことは、なかった。
 あのおっとりとした容貌。それとは裏腹にスポーティーなポニーテール。
 その場のノリでする意味不明な行動も、呂律が回らなくなって飛び出た爆弾発言も、全てが愛おしくて。見ているだけでも、聴いているだけでも、心はいつも溢れそうなまでに満たされていた。
「……ということがあったんだ。かなりの長期間愛花が好きだったものだから、この上なく落ち込んでいる」
「そうだったのですか。愛花さんも晃狩さんも、苦しかったでしょうね」
「……その手紙や電話って、もしかしてふ──」
「あ、良かった。どうやら思い描いた通りになったみたい」
「やっぱりアンタがやったの? 冬」
「え? うん」
(? なんかうるさいな)
 愛ちゃん達は廊下で香山の話を聞いていたはずなのだが、どうも様子がおかしい。というより、変に騒がしいのだ。
(ちょっと行ってみよう)
 純粋な好奇心がかすかに芽生えたので、無理矢理体を動かしてドシドシ重い足取りで皆の元へ向かった。
「「うん」じゃないわよ。何でそんなことをしたの!? 多田さんが悲しむ確率100%だというのに!」
「報われない恋に縋っていても、しょうがないから。晃狩様にはもっと、相応しい相手がいる」
「はぁ!?」
 俺の予想通り、犯人は羽衣さんだったみたいだ。やれやれ。
「あんな女、晃狩様の隣に居ては駄目。駄目なの、晃狩様には私じゃなくちゃ」
 カチン。
(あり得ない、この人)
「わっ」
 体が勝手に動いたかと思えば、羽衣さんの胸ぐらを掴んで離さない。
「愛花のこと何も知らないくせにっ、気安く貶すな!」
「……っ!」
 羽衣さんは初めて、弱々しい女の顔をあらわにさせた。
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