召喚魔王×召喚勇者 世界を滅ぼす気も救う気もない二人は共に旅に出る

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第3章 火山と思い出の街

残された手段

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『うん、想定内だよ。次──!』


 再び一帯を凍らせようとする魔将、しかしリオンは何かに気付く。

「おい待て! 下だ──!」

 リオンがそう叫んですぐ、下から噴き上がった複数のマグマが氷の足場を貫通した。

 声に気付いた魔将は咄嗟に身をかわし、次々の足場を作ながらリオンと共に移動する。

『やっぱり狙ってくるか、でも──』



「いいの? そっちばっかりで」

 何やら恐ろしい気配を感じ取り、思わず前方に目を向ける。
 どす黒いオーラと威圧感を放ちながらそこに立っていたのは、離れた場所に作られたもう一つの足場の上で、禍々しい炎を掲げるアキトだった。

 魔将を狙った攻撃が途端に向きを変えて曲がり。
 さらに、下やら壁やらと次々と噴き上がったマグマが、まるで触手のように夥しくアキトに襲いかっていく。

 (この炎を怖がって僕を狙ってくる、作戦で言ってた通りだね)


「すげぇ…… ほとんどの攻撃が向こうに集中してやがる」

『リオりん、今の内に──!』

「ああ── わかってる!」

 火山からの攻撃の手が緩んだ隙に、魔将は岩の周辺にあるマグマと床を凍らせようとするが……

『なかなか凍らない!? さっきよりも、温度が高いのか──!?』

 移動したリオンは炎の魔物が繋がれた左手の魔石装置を切り裂く。

「もう一回!」

 魔法を使うことなく、リオンはもう一度剣を振りかぶる。

『無茶だ! 危ない──!』

 魔将が魔法を放つ前に、火山は岩と魔物を守るよう、無差別にマグマを噴き上げた。

 ──が、それをあの禍々しい炎が全て焼き払う。

「これで大丈夫?」

「十分だ!!」

 道が開けた一瞬を逃さず、リオンは続けざまに両足を繋ぐ装置を破壊した。


『これが…… 今の魔王と勇者の実力──』

 魔将は彼らを力量を見誤っていた事に気付く。

 魔法の中で最も危険と言われる、闇魔法の最上位。"死霊の炎"を操る魔王と。
 完成された剣さばきと転送魔法により、空間を自在に移動しながら戦う勇者。

 そしてこの二人が見せる完璧な連携は、今で見てきたどの存在よりも恐ろしい。
 正直言って敵に回したくないと本気で思う、ホントに──

 ──君たちが味方で良かった』


「おい、大丈夫か? 心の声全部出てんぞ」

 振り向けば、転送魔法で戻ってきたリオンが呆れたように笑っていた。

『────!? 読心魔法だから思ってること全部喋っちゃう! ああもう、こうゆう時、不便だな!!』

 自分の右耳についた魔石装置に文句を言いながら、魔将は恥ずかしそうに両手で顔を覆う。

「気ぃ抜くなって、ラスト一個なんだ、ちゃんと前見ろ」

『うるさいな、わかってるよ──!』

「だったら良いけどな、っと──!」

 攻撃の勢いが増し、避けるだけで精一杯になる中、アキトが何かに気付く。

「ねぇ──! あの人、岩の中に沈んでいってない?」

 そう聞いて岩の方を見れば、マグマをせき止めていた岩が、熱で崩れ始め── 解放した魔物の体が上半身と顔だけを残して沈んでいた。


『あっ──!?……

 その姿に気を取られた魔将は、一瞬判断が遅れ、攻撃が右耳を掠り、着けていた魔石装置が外れて落ちていく。
 再び火山による地震が起こり、活発になったマグマが洞窟内を更に暴れ回る。

「クソッ! このままじゃ崩れる……!」

 マグマは暴走しながら壁や天井に次々とぶつかり、いつ崩れてもおかしくない状況は、まさに地獄絵図だった。


「アキクン──!」

 魔将に呼ばれたアキトは、迫りくるマグマを掻い潜りながら何とか辿り着く。

「なに?」

「コレ以上、ボクの魔法ジャ抑エられナイ。アイツごと、キミの魔法デ全部燃やシテ欲しイ」

「いいの? 親友をここから解放したいって言ってたのに」

「……今ハ、そんなコト言っテられル状況ジャ……」
『嫌だよ、嫌に決まってる! ボクはアイツを、火山の一部になったままで終わらせたくない!!』

「──!?ナンデ……!?」

 後ろを振り向けば、落とした筈の魔石装置を耳に近づけながらこちらを睨むリオンがいた。


「思っても無いこと言うな、反吐が出る」

『でも……』

 リオンは外れた装置を再び魔将の耳に取り着ける。
 その間、何かに気づいたアキトは洞窟の壁を崩れない程度に破壊し、壁に穴が開く。

「それ、なんとかなるかもしれないよ」

 開けた穴から夜空が映った直後、悪魔のような翼の影が現れた。


「ケケッ、待たせたなぁ! 忘れてたとは言わせねぇぞ」


 穴から姿を現したのは、空を飛ぶガーゴイルと、それに抱えられた人狼。

「アキト様! 私に例の物を──!!」

「これだよね、せーのっ、と!」

 虚空から大きな袋を二つ取り出したアキトは、それを勢いよく人狼に投げつける。

「よし、ナイスキャーッチ。 ケケッ、素人には使えないって所が一番ネックだが……」

「その分効果は絶大だ、だろ? 準備出来たぞ」

「ケケッ、派手にぶちかましてやろーぜ!」

「「いくぞ!!」」

 中に入った二体は、袋から複数の小さな魔石装置を取り出し、それらをばらまきながら飛行する。
 そして起動した装置から放たれた氷魔法が氷柱を立てながら、洞窟全体をあっという間に氷漬けにしていく。

『凄い……』

「やっぱ、あいつらが魔将やってないって、おかしいよな?」

「うん、僕もそう思う」

 気分の良くなったガーゴイルは高々と笑い、人狼を抱えたまま、凍りつく空気の中を旋回していた。


「ケケケケケッ、反撃開始! ってなぁ!!」

「……お前が言うな、アホンダラ……」

 二体の活躍によって火山の揺れが止まり、その場は一旦、振り出しに戻る。

『行こう、二人とも……ってもう行ってるし』

 魔将が見たのは、既に走り出していく二人の背中だった。

 それを追いかける様に魔将も後に続く。


『待ってて、イフ── 絶対に君を一人にはしない!!』




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