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第4章 にぎやかなイカれた町
勝負どころを見極めて
しおりを挟む───これは昨日の記憶だ
「なあシャーク! 君の知ってる魔石装置について教えてくれよ、興味があるんだ!」
「あー……」
反逆同盟の連中が集う宿の中、今まさに、一緒にポーカーをしている隣の青年に絡まれていた。
そうだよな、よく考えたら……
(何で俺とあいつが、人間が知らない魔石装置の存在を知ってるんだ、って話だよな)
完全に墓穴を掘った…… 、と落胆するリオンを気にすることなく青年は話し続ける。
「おれたち機械いじりが趣味なんだ。今作ってるやつがあるんだけど、もしよかったらその知識を参考に……」
リオンが困っていると、後ろから別の青年が話を遮るように野次が飛ぶ。
「何言ってやがる! そういうのは勝ってから言えっての!!」
途中で会話を挟めるような、緩い空間で行われているゲームであるが故に、他の同盟者たちからの野次がやいやい飛び交い、隣の青年は考えを改め直した。
「た、確かにそうだよな…… よっし、このゲーム、勝って見せるぜ!」
そう言って青年は勢いよく「レイズ!」と賭け金を三倍にするが、リオンがその倍になる"オールイン"を宣言すると、青年はわかりやすく苦い顔をした。
──────────
頑丈そうな檻の中、高そうなカーペットの上で眠っていたリオンはハッと夢から覚める。
(マジかよ、俺、こんな時に寝てたのか……! )
眠ったおかげか少し身体が動かせるようになり、リオンはゆっくりと上半身を起き上がらせる。
(そうだ! 状況は──!!)
前を見れば、アキトは二枚のカードと真剣に向き合っていて、機械仕掛けの女との決着はまだついていないようだった。
「あ、起きたんだ。おはよ」
「ああ、おはよう…… って、大丈夫なのか──お前!?」
「んー、ちょっと疲れたかな」
閉じられたカーテンの隙間から外を覗けば、朝方だったはずの空には太陽の日差しが高く昇っていた。
「な~に話し込んでんだ、まだ勝負はついてねーぞ☆ 」
機械仕掛けの女は左目部分のレンズをいじりながら、こちらをじっと見つめて挑発する。
アキトの目の前には [♦️7]と[♣️6]のカード。そしてさらに、真ん中には[♠️A] [♥️2] [♠️Q] [♠️5]のカードがあった。
──ベット3,000☆
──コール
魔力の塊から、最後のカードが現れる
[♠️A] [♥️2] [♠️Q] [♠️5] [♦️9]
するとこのタイミングで、向こうから仕掛けてくる。
──オールイン☆
「んー…… 」
深く考えた末、手札のカードが強くないアキトは降りることを選択した。
「なんだよ、つまんねーな…… 。もっと勝負しろよ~☆」
リオンは、相手の挑発にも乗ることもないアキトを見て、自分が寝ている間、彼は動じることなく堅実にゲームを進めてきたのだろうと思った。
「お姉さん、こういうゲーム……苦手なの?」
「誰がお姉さんだ! とっくに300越えてんだよ!! ババアおちょくってんじゃねーぞ!!」
「えぇー……」
「あんた……ホントに人間か?」
アキトが若干もの言いたげな表情をする中、リオンは驚きを見せる。
到底信じられないような言葉だが、理不尽に当たりちらかすあの女の言動はどうやらホントらしい。
「あ゛ぁ? ウチに言ってんのか若造」
女はかつてない程鋭い目付きでリオンを睨みつける。二人を嘲笑っていたような余裕は無くなり、地団駄を踏みながら怒鳴り声を上げた。
「んだよ、何でも見据えたようなツラして見てんじゃねーよ!! あー!!イライラする!! テメェら見てっと、勇者のヤローを思い出しちまう!!!」
(勇者? 前の勇者のこと知ってるんだ)
(勇者……? 何か関係があるのか?)
「あのヤロー……! やることやって、期待させるだけさせやがって、ウチのこと置いてどっか行きやがった!! 絶対に許さねぇーー!!!」
「「…………」」
(もしかして……)
(それで忘却魔法の研究を……?)
まさかの内容に、アキトとリオンはただ黙る。
「あ゛ぁ!? 何だよその目…… 憐れんでんじゃねーよ!!」
「いや、べつに」
「いや、別に」
「そこは何か思え!!!」
特に興味の無い話に、二人の思いが重なった。
(なにがしたいんだろ? この人……)
(何がしてぇんだよ? こいつ……)
結局、女が怒り狂う中ゲームは再開された。
アキトは表情を変えることなく、配られたカードを見る。
(ハートのKとA……これなら)
──レイズ 2,000
まだ怒りの治まらない女は、二人をじっと睨みつけ、感情のままに声をあげる。
「舐めんな!! 」──リレイズ6,000!
どうやら向こうも強気に出るようだ。
アキトは静かにコールを返す。
緊迫する状況の中、間に刺さった杖から現れる三つの魔力の塊が、三枚のカードになる。
[♣️8] [♦️A] [♥️5]
(Aだ、これでスリーカード)
賭け金を釣り上げるため、さらにベットを増やす。
──ベット1,000
──コール!!
ゲームは続行され、魔力の塊から四枚目のカードが現れる。
[♣️8] [♦️A] [♥️5] [♦️Q]
「ベット3,000」
「レイズ9,000!」
「……コール」
女の手札を予想し、アキトは相手が降りようとしない理由を考える。
そして、魔力の塊から最後のカードが現れた。
[♣️8] [♦️A] [♥️5] [♦️Q] [♠️Q]
「……チェック」
「あ~あ もったいねーよなー☆ ベット5,000追加だ」
「えっと……」
アキトが行動を起こさず立ち尽くしていると、やっと起き上がれるようになったリオンが傍によって代わりに宣言した。
「"フォールド"でいいよな?」
「あ、うん」
「ちょっとどころか、結構疲れてんぞお前」
「……そうかも」
相手の特徴として、強気であまり降りようとはしないプレイスタイルだ。だが内容自体は素直であり、仕掛け方も単調である。
(それに、さっきこのゲームに苦手意識があることは否定しなかった、おそらく嘘の可能性は低い)
「あ~つまんね~、テメェら降りるの好きすぎだろ。気持ちよく勝たせろってんだ」
そして降りた理由はもう一つ、リオンは何故相手がこんなにも強気に出られるかを探るため、女に話しかけた。
「……だったら、こっちのカードを覗き見するのを止めたらどうだ?」
「はぁ゛!?」
ゲームが始まる直前に感じた違和感と、女がやたらこちらばかりをじっと見つめてくる不自然な行動を信じてかまをかけてみたが、今の反応でそれを確信する。
「何だ、図星かよ」
「チッ──! 捕まってるってのに、随分生意気じゃねーか!!」
女は歯ぎしりをしながら、左目の部分にあるレンズを握り潰す。激昂すると同時に、檻の中の二人に向かって叫んだ。
「いいぜ──! こっから先はちゃーんと遊んでやるよ!!」
その瞬間── リオンに違和感が走る。
(嘘だ──! こいつ、まだ何か!)
「……なーんてな☆ これで全部忘れちまえ──!!!」
女がニヤリと笑い、その直後、左目の潰れたレンズの奥から謎の光が放たれる。
直感的に見てはいけないものだと感じ、二人は目をつむるが、それでも白い光は強さを増していく。
薄暗い部屋の中に眩い光が満たされる、二人は魔法による光の中へと呑み込まれていった。
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