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小話
火山の街 一日目 (後半)
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※試験的にチャットGPTを使わず、原文そのままで投稿しています。ご注意下さい
無事に装備を購入した彼らは、装備付与に必要な魔石を見つけるため、ようやく火山周辺へと向かう道に辿り着いた。
『この道を真っ直ぐ行けば火山の入り口だよ』
枯れた草木の道を、奥に見えるそびえ立つ火山に向かって進んでいくと、やがて火山の麓にある、既に所々から蒸気が吹き出しているような洞窟が見えてくる。
「うわ、 見るからに暑そう…… てか熱そうなんだが……」
「うん、おんなじだけどわかるよ」
『大丈夫、今日はそっちじゃなくて、この近くにいる……』
すると突如地面から、彼らの倍以上の大きさを持つ、全身がマグマの滴る岩が積み重なった姿をした魔物が現れる。
『この魔物を倒せばいいから』
そして魔物は標的を見つけるな否や、マグマを纏った大きな身体を突きだしながら、こちらに向かって突進してきた。
「おい! サラッと言うにはデカ過ぎんだろ!!」
「とまって── は、くれないみたいだね」
彼らは魔物からの攻撃を回避した後、魔将は自身を透過させつつその場から下がり、アキトとリオンは反撃の構えを取った。
「フフッ、二人のお手並み、拝見かな」
魔物は勢いのまま地面に倒れこむが、腕のように連なった岩がすぐに身体を起こし、標的をリオンに定めると続けざまに突進を繰り出す。
(こっちに来るか、 だったら──!)
立ち止まったリオンは、ぶつかるギリギリのところで転送魔法を使い攻撃を避けると、魔物は巨大な身体を支え切れず転倒し、岩の身体があちこちに散らばり動かなくなった。
「よっし! どう考えても今だろ!!」
魔物から少し離れた場所に移動したリオンは、剣を構えて走り出す。
「まぁ、そう上手くは出来てねぇか」
だが、魔物の身体に滴るマグマによって、今のままでは太刀打ち出来ないことに気づき速度が緩む。
「リオン、離れて!」
その掛け声に従い、リオンは魔物から離れると、同じく走り出していたアキトが複数の魔法陣から水流を繰り出し、マグマに覆われた魔物の身体へと直撃させた。
「これなら……!!」
リオンは再び加速し、魔物から滴るマグマが冷えたことを確認すると、岩の巨体をもろともせず、縦真っ二つに斬ってみせた。
「うん、さすがだね」
「……岩って斬れるもんなんだな」
リオンは自身が行った業に驚きつつも、隣にいるアキトと一息つこうとしたその時……
『二人ともー! まだ終わってないよー!!』
いつの間にか側にあった枯れ木の上に座っていた魔将から、何やら不穏な知らせが届く。
それを聞いた二人は倒したはずの魔物を見れば、斬れた断面を下に向け、歪な形をした岩の魔物が二体に増えていた。
『中にある魔石を採らないと動き続けるから、気をつけてー!』
「ホントだ、分裂しているね」
「……それもっと早く言えよなぁ」
二人は分裂した魔物を確認していくと、その中からもう一体、透き通った赤色の魔石が剥き出しになっている小さな個体を発見した。
(あ、あれかな──?)
(よし、あれだ──!)
合図なんてなしに、二人は同時に駆け出すと、核となる魔石を守るべく分裂した別の個体が行方を阻む。
「行って」
「了解!」
アキトは岩の魔物たちを禍々しい炎をで焼き払い、リオンが進む道を開ける。
『今の魔法は──!?』
見物していた魔将が驚いてるとも知らず、リオンは逃げる岩の魔物に一太刀入れ、魔物と赤色の魔石を完全に分離させた。
「これで── いいだろ」
斬った際に飛んだ魔石を片手でキャッチすると、魔物の身体は崩れ始め、ただの溶岩石と化した。
「おつかれ」
「ああ、お前もな」
空いているもう片方の手で拳を作りアキトに向ける。意味を理解したアキトも拳を向け、二人はグータッチを交わし、この喜びをわかち合った。
『二人ともお疲れ様、何はともあれ、これで装備付与が出来るね』
魔将が枯れ木の上から飛び降り、傍までやって来ては二人に拍手を送った。
「なぁ、これで足りるのか?」
「ううん、あと二つくらいはいるけれど、そこはボクに任せて」
魔将は地面を凍らせ、先ほどと同じ岩の魔物二体をあぶり出すと、魔物は敵を見つけた瞬間、魔将に向かって突進してくる。
『これだけあれば十分』
そして指を鳴らした途端、二体の魔物の内側から氷が侵食し、すぐに氷の塊として砕け散った後、赤色の魔石だけが地面に残った。
「「…………」」
『それじゃあ帰ろっか、お腹空いたでしょ?』
魔将にそう告げられて、ようやく夕日が沈み始めてきたことに気づいた二人は、少し沈黙した後、静かに魔将に話しかけた。
「うん、そうだと思うけど……」
「……あんた一人でいいんじゃないか?」
『そういうワケにもいかないんだよね、これが』
これ程の強さを持っているなら、何故自分たちの協力がいるのか疑問に思うが、こちらを振り向く穏やかな瞳に嘘は無いように見えた。
辺りが暗くなってきた頃、色々あった彼らは、やっと魔将の経営するバーに辿り着いた。
「ついたー」
「疲れたー」
『二人とも、これで火山への行き方はわかったかな?』
「うん、でもちょっと遠いんだね」
「何か…… 今までで一番歩いて気がする……」
今日一日、街や火山までの道を散々歩き回ったはずなのに何故かアキトは平然としていて、その隣にいるリオンは頭を抱えながらため息をついていた。
「それに…… 今日の宿、まだ取ってねぇんだが」
「あ、たしかに…… どうしよう?」
『フッフッフ、それは心配ないよ。良いところがあるからね』
「あんた、何言って……」
すると突然目の前で話していた魔将が姿を消し、振り返ると魔将はすぐ後ろでこちらの背中に手を添えながら、いたずらっぽい笑みを浮かべていた。
『二人とも、ボクたちの店においで』
魔将は見えない魔法を使って店の扉を開けると、二人は魔将に背中を押され、カウンター席の突き当たりの奥に向かっていく。
「ちょ……!? 何なんだよ急に!」
「ねぇ、どこに行けばいいの?」
『階段が見えるからそこを上って』
そして奥にある二階へ続く階段を上がり、年季の入った二つあるうち一つのドアを開けた。
『よかったらこの部屋使ってよ、お金は取らないからさ』
ドアの先にはシワ一つないシーツが敷かれた同じ二つのベッドが置いてあり、普段泊まっているような宿と遜色ないような部屋が用意されていた。
「この部屋、あんたが……?」
『そうだよ、前の勇者がよく遊びに来てたから、その名残さ』
突然の提案にリオンは一瞬戸惑ったが、タダより高いものはないと、二人はその場ですぐに決断した。
「よかったね、リオン」
「……ああ、是非とも使わせてくれ」
『フフッ、よかった。じゃあ晩御飯作ってくるから、ちょっと待ってて』
二人があっさり承諾すると、魔将は微笑みながらご機嫌な様子で部屋をあとにしていった。
「予想どおり…… ってことなのかな?」
「そうだな、おそらく経験によるものだと思う」
「なるほどー」
今までの様子から、相手を貶めるような違和感は感じられなかった。きっと前の勇者とも、こんなやり取りをしていたのだろう。
『二人ともー! ご飯出来たよー!』
「思ったよりはやかったね」
「流石に速すぎじゃねぇか?」
お腹が空いていたこともあるが、二人はその真偽を確かめるため、こちらを呼ぶ声が聞こえる一階の店内へと向かっていった。
一階へと降りる途中、リオンは馴染み深い爽やかな肉の香りにまさかと思い、カウンター席に置いてある二つの皿を確認した。
「こ、これは──!」
『フフッ、驚いたでしょ? あらかじめ漬け込んでおいたのを焼いたんだ』
「あ、しょうが焼きだ」
そこには薄く切られた肉に、玉ねぎと生姜の入った醤油ベースのタレが絡んだ、定番の中の定番といった二人分のしょうが焼きが盛られていた。
「白飯と味噌汁まであるし、マジで店で食う定食じゃねぇか……!」
「そっか、リオンはこういうのが好きなんだね」
二人は席に座り、美味しそうな料理に目を輝かせるリオンを横目に、アキトはぽつりと小さく呟いた。
『二人とも、冷めないうちに食べて食べて』
「いただきまーす!!」
「いただきまーす」
しょうが焼きを口に入れた瞬間、甘辛味付けと生姜の爽やかな香りが口いっぱいに広がり、リオンは二度と食べられると思っていなかった旨味を精一杯噛み締める。
「ヤベェな! めちゃくちゃ美味ぇ!!」
「うん、美味しいね」
『良かった、やっぱり勇者はみんなこれが好きなんだね。作って正解だったよ』
目の前で微笑みながら肘をついて見守る魔将を見て、ふとリオンにある疑問が浮かび上がる。
「なあ、生姜焼きは焼くだってのはわかるが、この白飯と味噌汁はどうやって……?」
『えっと、ご飯は一週間前に冷凍したやつで、味噌汁も凍られたものを乾燥させて保存しておいたんだ。前の勇者が教えてくれたんだよ』
「へぇー…… 前の勇者って、一体どんなヤツだったんだろう……?」
考え込むように呟いたリオンは、この魔将に冷凍とフリーズドライの技術を与えたことに感謝しつつ、それがどんな人物だったのか少し気になった。
『そうだなー、一言で表すのは難しいけど…… 』
「ほう」
『毎晩若い女の子を引き連れて、遊んでいるような人だったよ』
「うわマジかよ…… 聞くんじゃ無かった」
自分で聞いておいて頭を抱えてしまった彼に、魔将はいたずらに微笑みかける。
「…………」
そんな中、隣で夕食を食べ終えていたアキトは、魔将と和やかなやり取りを見せるリオンを、ただひたすらに見つめていた。
まだ人間たちが寝静まっている真夜中、魔将は一人明日の仕込みをしていると、カウンター席から妙な人影が現れる。
『あれ、起こしちゃった? ごめんね』
「ううん、たまたま起きただけ、それにちょうどいいかなって」
人影の正体は、偶然夜中に目を覚ましたアキトだった。
席を少し回って魔将のいる奥にある厨房に入り、仕込み途中であるアイスの原料を確認すると、防具屋で買った小さな箱型の魔石装置を取り出した。
「ねぇ、隣で見てていいかな? どうやって作ってるかを知りたいんだ」
『もちろん、あの時記録装置を買っていたのは、このためだったんだね』
アキトがどこか近未来的な装置を起動させると、罫線の引かれたノートの一ページが、まるで普段見ているステータス画面の空欄のようにが浮かび上がってくる。
『どう? 小さくて使いやすいし、モノづくりにはピッタリでしょ?』
「うん、そう思うよ。勧めてくれてありがと」
『フフッよかった、これで君も街の一職人だね』
魔将曰く、街に集う職人たちのマストアイテムであるこの装置を使いながら、アキトは魔将を観察し、料理の材料や作り方などを書き込み丁寧にまとめていく。
『ちょっとやってみなよ。コツは色が変わるまでよく混ぜること、そして冷やした後もよく混ぜると美味しくなるんだ』
「へぇ、そうなんだー」
アキトは卵黄と砂糖が入ったボウルを混ぜ続け、魔将が牛乳と生クリームを合わせて加熱したものを少しずつ加えていく。
『そうそういい感じ、これで彼もきっと喜んでくれるよ』
「うん、……あれ? 僕、リオンに食べさせてあげたい、って言ったっけ?」
『フフフッ、ただの推測だよ。やっぱりそうだったんだ!』
きょとんと首をかしげるアキトとは逆に、魔将は少し興奮気味な様子でさらに問いかけた。
『ねえ、どうして彼のためにそこまでするの?』
「どうして…… んー……」
ボウルの中身が混ぜ終わり冷ましている間、アキトは魔将による質問に深く考え込んでしまう。
「……わからない」
『えっ?』
「わからないよ、でも……」
今度は魔将が首をかしげる中、アキトは顔をあげながら確信を持って伝えた。
「笑っていて欲しい、って思うんだ。ずっと、なにがあっても」
『それは……
と言いかけたところで、魔将は自身の右耳についていた魔石装置を外し、自分の言葉で彼に伝えた。
「ソッカ、そノ理由…… ちゃんト見つかルといいネ」
たとえ形がどんなものであろうと、それは彼が自分自身で気づくべきだと思い、魔将は魔石装置を付け直した後もこれ以上踏み込むようなことはしなかった。
『君…… 名前は?』
「アキト」
『なるほど、それじゃあ"アキ君"かな?』
魔将は彼にあだ名を付けた後、厨房に隠されていた見えない魔法から次々と食材が現れていく。
『これであと33種類だけど…… 全てを覚える覚悟はある?』
「うん、そのつもりだよ。あと、しょうが焼きの作り方も教えて」
『フフッ、いいね、その意気だ』
「フフッ、いいネ、そノ意気ダ」
このあとの三日間、魔将はスラスラとレシピをマスターしていくアキトをいいことに、他にもさまざまな料理を教えていくのだが。
「ZZ…の……ちに ZZ…が……のに」
そんなことになっているとも知らず、リオンは一人ベッドの中で静かに眠っているのだった。
無事に装備を購入した彼らは、装備付与に必要な魔石を見つけるため、ようやく火山周辺へと向かう道に辿り着いた。
『この道を真っ直ぐ行けば火山の入り口だよ』
枯れた草木の道を、奥に見えるそびえ立つ火山に向かって進んでいくと、やがて火山の麓にある、既に所々から蒸気が吹き出しているような洞窟が見えてくる。
「うわ、 見るからに暑そう…… てか熱そうなんだが……」
「うん、おんなじだけどわかるよ」
『大丈夫、今日はそっちじゃなくて、この近くにいる……』
すると突如地面から、彼らの倍以上の大きさを持つ、全身がマグマの滴る岩が積み重なった姿をした魔物が現れる。
『この魔物を倒せばいいから』
そして魔物は標的を見つけるな否や、マグマを纏った大きな身体を突きだしながら、こちらに向かって突進してきた。
「おい! サラッと言うにはデカ過ぎんだろ!!」
「とまって── は、くれないみたいだね」
彼らは魔物からの攻撃を回避した後、魔将は自身を透過させつつその場から下がり、アキトとリオンは反撃の構えを取った。
「フフッ、二人のお手並み、拝見かな」
魔物は勢いのまま地面に倒れこむが、腕のように連なった岩がすぐに身体を起こし、標的をリオンに定めると続けざまに突進を繰り出す。
(こっちに来るか、 だったら──!)
立ち止まったリオンは、ぶつかるギリギリのところで転送魔法を使い攻撃を避けると、魔物は巨大な身体を支え切れず転倒し、岩の身体があちこちに散らばり動かなくなった。
「よっし! どう考えても今だろ!!」
魔物から少し離れた場所に移動したリオンは、剣を構えて走り出す。
「まぁ、そう上手くは出来てねぇか」
だが、魔物の身体に滴るマグマによって、今のままでは太刀打ち出来ないことに気づき速度が緩む。
「リオン、離れて!」
その掛け声に従い、リオンは魔物から離れると、同じく走り出していたアキトが複数の魔法陣から水流を繰り出し、マグマに覆われた魔物の身体へと直撃させた。
「これなら……!!」
リオンは再び加速し、魔物から滴るマグマが冷えたことを確認すると、岩の巨体をもろともせず、縦真っ二つに斬ってみせた。
「うん、さすがだね」
「……岩って斬れるもんなんだな」
リオンは自身が行った業に驚きつつも、隣にいるアキトと一息つこうとしたその時……
『二人ともー! まだ終わってないよー!!』
いつの間にか側にあった枯れ木の上に座っていた魔将から、何やら不穏な知らせが届く。
それを聞いた二人は倒したはずの魔物を見れば、斬れた断面を下に向け、歪な形をした岩の魔物が二体に増えていた。
『中にある魔石を採らないと動き続けるから、気をつけてー!』
「ホントだ、分裂しているね」
「……それもっと早く言えよなぁ」
二人は分裂した魔物を確認していくと、その中からもう一体、透き通った赤色の魔石が剥き出しになっている小さな個体を発見した。
(あ、あれかな──?)
(よし、あれだ──!)
合図なんてなしに、二人は同時に駆け出すと、核となる魔石を守るべく分裂した別の個体が行方を阻む。
「行って」
「了解!」
アキトは岩の魔物たちを禍々しい炎をで焼き払い、リオンが進む道を開ける。
『今の魔法は──!?』
見物していた魔将が驚いてるとも知らず、リオンは逃げる岩の魔物に一太刀入れ、魔物と赤色の魔石を完全に分離させた。
「これで── いいだろ」
斬った際に飛んだ魔石を片手でキャッチすると、魔物の身体は崩れ始め、ただの溶岩石と化した。
「おつかれ」
「ああ、お前もな」
空いているもう片方の手で拳を作りアキトに向ける。意味を理解したアキトも拳を向け、二人はグータッチを交わし、この喜びをわかち合った。
『二人ともお疲れ様、何はともあれ、これで装備付与が出来るね』
魔将が枯れ木の上から飛び降り、傍までやって来ては二人に拍手を送った。
「なぁ、これで足りるのか?」
「ううん、あと二つくらいはいるけれど、そこはボクに任せて」
魔将は地面を凍らせ、先ほどと同じ岩の魔物二体をあぶり出すと、魔物は敵を見つけた瞬間、魔将に向かって突進してくる。
『これだけあれば十分』
そして指を鳴らした途端、二体の魔物の内側から氷が侵食し、すぐに氷の塊として砕け散った後、赤色の魔石だけが地面に残った。
「「…………」」
『それじゃあ帰ろっか、お腹空いたでしょ?』
魔将にそう告げられて、ようやく夕日が沈み始めてきたことに気づいた二人は、少し沈黙した後、静かに魔将に話しかけた。
「うん、そうだと思うけど……」
「……あんた一人でいいんじゃないか?」
『そういうワケにもいかないんだよね、これが』
これ程の強さを持っているなら、何故自分たちの協力がいるのか疑問に思うが、こちらを振り向く穏やかな瞳に嘘は無いように見えた。
辺りが暗くなってきた頃、色々あった彼らは、やっと魔将の経営するバーに辿り着いた。
「ついたー」
「疲れたー」
『二人とも、これで火山への行き方はわかったかな?』
「うん、でもちょっと遠いんだね」
「何か…… 今までで一番歩いて気がする……」
今日一日、街や火山までの道を散々歩き回ったはずなのに何故かアキトは平然としていて、その隣にいるリオンは頭を抱えながらため息をついていた。
「それに…… 今日の宿、まだ取ってねぇんだが」
「あ、たしかに…… どうしよう?」
『フッフッフ、それは心配ないよ。良いところがあるからね』
「あんた、何言って……」
すると突然目の前で話していた魔将が姿を消し、振り返ると魔将はすぐ後ろでこちらの背中に手を添えながら、いたずらっぽい笑みを浮かべていた。
『二人とも、ボクたちの店においで』
魔将は見えない魔法を使って店の扉を開けると、二人は魔将に背中を押され、カウンター席の突き当たりの奥に向かっていく。
「ちょ……!? 何なんだよ急に!」
「ねぇ、どこに行けばいいの?」
『階段が見えるからそこを上って』
そして奥にある二階へ続く階段を上がり、年季の入った二つあるうち一つのドアを開けた。
『よかったらこの部屋使ってよ、お金は取らないからさ』
ドアの先にはシワ一つないシーツが敷かれた同じ二つのベッドが置いてあり、普段泊まっているような宿と遜色ないような部屋が用意されていた。
「この部屋、あんたが……?」
『そうだよ、前の勇者がよく遊びに来てたから、その名残さ』
突然の提案にリオンは一瞬戸惑ったが、タダより高いものはないと、二人はその場ですぐに決断した。
「よかったね、リオン」
「……ああ、是非とも使わせてくれ」
『フフッ、よかった。じゃあ晩御飯作ってくるから、ちょっと待ってて』
二人があっさり承諾すると、魔将は微笑みながらご機嫌な様子で部屋をあとにしていった。
「予想どおり…… ってことなのかな?」
「そうだな、おそらく経験によるものだと思う」
「なるほどー」
今までの様子から、相手を貶めるような違和感は感じられなかった。きっと前の勇者とも、こんなやり取りをしていたのだろう。
『二人ともー! ご飯出来たよー!』
「思ったよりはやかったね」
「流石に速すぎじゃねぇか?」
お腹が空いていたこともあるが、二人はその真偽を確かめるため、こちらを呼ぶ声が聞こえる一階の店内へと向かっていった。
一階へと降りる途中、リオンは馴染み深い爽やかな肉の香りにまさかと思い、カウンター席に置いてある二つの皿を確認した。
「こ、これは──!」
『フフッ、驚いたでしょ? あらかじめ漬け込んでおいたのを焼いたんだ』
「あ、しょうが焼きだ」
そこには薄く切られた肉に、玉ねぎと生姜の入った醤油ベースのタレが絡んだ、定番の中の定番といった二人分のしょうが焼きが盛られていた。
「白飯と味噌汁まであるし、マジで店で食う定食じゃねぇか……!」
「そっか、リオンはこういうのが好きなんだね」
二人は席に座り、美味しそうな料理に目を輝かせるリオンを横目に、アキトはぽつりと小さく呟いた。
『二人とも、冷めないうちに食べて食べて』
「いただきまーす!!」
「いただきまーす」
しょうが焼きを口に入れた瞬間、甘辛味付けと生姜の爽やかな香りが口いっぱいに広がり、リオンは二度と食べられると思っていなかった旨味を精一杯噛み締める。
「ヤベェな! めちゃくちゃ美味ぇ!!」
「うん、美味しいね」
『良かった、やっぱり勇者はみんなこれが好きなんだね。作って正解だったよ』
目の前で微笑みながら肘をついて見守る魔将を見て、ふとリオンにある疑問が浮かび上がる。
「なあ、生姜焼きは焼くだってのはわかるが、この白飯と味噌汁はどうやって……?」
『えっと、ご飯は一週間前に冷凍したやつで、味噌汁も凍られたものを乾燥させて保存しておいたんだ。前の勇者が教えてくれたんだよ』
「へぇー…… 前の勇者って、一体どんなヤツだったんだろう……?」
考え込むように呟いたリオンは、この魔将に冷凍とフリーズドライの技術を与えたことに感謝しつつ、それがどんな人物だったのか少し気になった。
『そうだなー、一言で表すのは難しいけど…… 』
「ほう」
『毎晩若い女の子を引き連れて、遊んでいるような人だったよ』
「うわマジかよ…… 聞くんじゃ無かった」
自分で聞いておいて頭を抱えてしまった彼に、魔将はいたずらに微笑みかける。
「…………」
そんな中、隣で夕食を食べ終えていたアキトは、魔将と和やかなやり取りを見せるリオンを、ただひたすらに見つめていた。
まだ人間たちが寝静まっている真夜中、魔将は一人明日の仕込みをしていると、カウンター席から妙な人影が現れる。
『あれ、起こしちゃった? ごめんね』
「ううん、たまたま起きただけ、それにちょうどいいかなって」
人影の正体は、偶然夜中に目を覚ましたアキトだった。
席を少し回って魔将のいる奥にある厨房に入り、仕込み途中であるアイスの原料を確認すると、防具屋で買った小さな箱型の魔石装置を取り出した。
「ねぇ、隣で見てていいかな? どうやって作ってるかを知りたいんだ」
『もちろん、あの時記録装置を買っていたのは、このためだったんだね』
アキトがどこか近未来的な装置を起動させると、罫線の引かれたノートの一ページが、まるで普段見ているステータス画面の空欄のようにが浮かび上がってくる。
『どう? 小さくて使いやすいし、モノづくりにはピッタリでしょ?』
「うん、そう思うよ。勧めてくれてありがと」
『フフッよかった、これで君も街の一職人だね』
魔将曰く、街に集う職人たちのマストアイテムであるこの装置を使いながら、アキトは魔将を観察し、料理の材料や作り方などを書き込み丁寧にまとめていく。
『ちょっとやってみなよ。コツは色が変わるまでよく混ぜること、そして冷やした後もよく混ぜると美味しくなるんだ』
「へぇ、そうなんだー」
アキトは卵黄と砂糖が入ったボウルを混ぜ続け、魔将が牛乳と生クリームを合わせて加熱したものを少しずつ加えていく。
『そうそういい感じ、これで彼もきっと喜んでくれるよ』
「うん、……あれ? 僕、リオンに食べさせてあげたい、って言ったっけ?」
『フフフッ、ただの推測だよ。やっぱりそうだったんだ!』
きょとんと首をかしげるアキトとは逆に、魔将は少し興奮気味な様子でさらに問いかけた。
『ねえ、どうして彼のためにそこまでするの?』
「どうして…… んー……」
ボウルの中身が混ぜ終わり冷ましている間、アキトは魔将による質問に深く考え込んでしまう。
「……わからない」
『えっ?』
「わからないよ、でも……」
今度は魔将が首をかしげる中、アキトは顔をあげながら確信を持って伝えた。
「笑っていて欲しい、って思うんだ。ずっと、なにがあっても」
『それは……
と言いかけたところで、魔将は自身の右耳についていた魔石装置を外し、自分の言葉で彼に伝えた。
「ソッカ、そノ理由…… ちゃんト見つかルといいネ」
たとえ形がどんなものであろうと、それは彼が自分自身で気づくべきだと思い、魔将は魔石装置を付け直した後もこれ以上踏み込むようなことはしなかった。
『君…… 名前は?』
「アキト」
『なるほど、それじゃあ"アキ君"かな?』
魔将は彼にあだ名を付けた後、厨房に隠されていた見えない魔法から次々と食材が現れていく。
『これであと33種類だけど…… 全てを覚える覚悟はある?』
「うん、そのつもりだよ。あと、しょうが焼きの作り方も教えて」
『フフッ、いいね、その意気だ』
「フフッ、いいネ、そノ意気ダ」
このあとの三日間、魔将はスラスラとレシピをマスターしていくアキトをいいことに、他にもさまざまな料理を教えていくのだが。
「ZZ…の……ちに ZZ…が……のに」
そんなことになっているとも知らず、リオンは一人ベッドの中で静かに眠っているのだった。
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