怪獣特殊処理班ミナモト

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第2章 王族親衛隊

精神の格

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「はは、油断しちまった。お前の勝ちだぜ、ジーク」

 アーサーは腕を引き抜かれると、その場に膝から崩れ落ちた。それを見て女怪人は言った。

「素晴らしい拳筋でした。思わず見惚れてしまうほどに。冥土の土産に教えて差し上げます。私の名は、カイネス・シレン・アミネレア。もう一人はエルギネ・キリウ・テトランタ。貴方の名前は?」

「アーサー……アレキサンドラだ」

「ふふ、素敵な名ですね。その身体も顔も、大事に使って差し上げます」

「嫌だね、クソビッチ」

 その瞬間、カイネスの頭が地面に落ちた。ジークの投げた短刀が首を切断したのだ。

「ジーク、少し遅いぞ……」

「このアマが名前を言ってる途中だっただろうが」

「…そうかよ」

 アーサーは口から流れる血を乱雑に拭うと、すぐに立ち上がった。すでに胸の穴はふさがっている。

「課金ってのはな、なにもお前らの特権じゃない。お前の再生能力は俺も持ってる」

 アーサーはまず落ちた頭を拾うと頭蓋を握りつぶし、その中のコアを浄化した。

「さて、あとはカートマンに加勢するだけだな」

 そう言ってアーサー達が振り返ると、目の前にカートマンが横たわっていた。

「……おい、カートマン。そりゃダサいんじゃねえの」

「何も言うな」

「嫌だね、ぜってえ後で話のネタにしてやる」

 ジークは刃の欠けた短刀を投げ捨てると、軍靴に隠していたナイフを取り出した。

「来いよお喋りバカ女。そこの黒人じゃあ物足りないだろ」

「…愚者めが。そこな男と同じにしてくれようぞ!」

 エルギネは懐から短刀を取り出すと、逆手に持ち替えた。

「毒か、カートマン」

「そうだ。かすっただけでこのザマだぜ」

「まあ俺との相性はよさそうだ」

 その瞬間、エルギネとジークの間に火花が散った。エルギネの短刀をジークがナイフで受け止めたのだ。

「速いだけでパワーがねえな」

 ジークはじりじりとエルギネを橋の欄干に追い詰めると、すぐさま短刀を持つ二の腕を自分の空いた手で掴み、そのまま握りつぶした。

「ッ……!」

「これで死ね」

 ジークはナイフを一振りしエルギネの首を掻き切った。そして体を離すと、心臓に向けて鋭い回し蹴りを食らわせ、橋の欄干ごと川に蹴り飛ばした。

「貴様!覚えていろよ…!」

 エルギネはそう捨て台詞をはくと、川の濁った流れに飲まれた。

「……なあアーサー。俺だけ雑魚を回されてねえか」

「それは俺たちに共通するだろ。こいつら、どうにも手ごたえがねえ。俺がやりあった奴もコアの片方が転送されてる。まるで最初から勝つ気が無かったみたいに…」

『カートマン、聞こえるか』

 不意にアーノルドから無線が入った。

「カートマンです。敵怪人を全て撃退しました」

「そうか。ではすぐに戻ってこい。すぐにだ」

「一体何が?」

『…日本のゲンブ討伐部隊が全滅した。神獣協会の襲撃によるものだ』

「クソ!俺たち奴らの罠にはまったってことかよ!」

 ジークは歪んだ欄干を乱暴に殴った。

『いいか、我々はウツノミヤの検問に後退する。そこでゲンブと神獣協会を向かえ撃つぞ』

「了解」



 札幌市外、横たわる戦車の上で、15歳ほどの少女が腰を下ろして目の前の凄惨な景色を見下ろしていた。

「兄さん、ここにいたんですか」

 ふいに下から声がした。そこには若い男が立っていた。

「……どうした、アンバー」

「ここにはもう生存者はおりません。山の向こうを捜索してみては?」

「つまらん。其の様な雑魚は他のものに任せよ。我は興が削がれた。こやつら、我をあろうことか庇護の下におこうとしてきたのだ」

「では人間たちの検問まで向かいましょう。兄さんの言っておられたアカモトという男がいるはずです」

「……ほう、アカモトか。奴ら、トラグカナイを浄化するつもりであるな?」

「はい。米軍も同行しているそうです」

「ふむ、あの不愉快な小僧のいる組織か。中々楽しめそうではないか!」

 少女は見た目にそぐわぬ豪快な声でそう叫ぶと、戦車から飛び降りた。

「ついてこい、アンバー。まずは殿下に御目通しだ」

「は、もちろんでございます」

 2人は火の燻る山の麓を跳躍し、その山を飛び越えた。その向こうには、もう一つさらに巨大な山が聳え立っていた。それも上下に揺れるけわしい甲皮の一部に過ぎず、ビルのように太い足が四本、その甲羅から生えていた。そしてもう一つ、龍のような鋭い牙と鋭い瞳が強靭に輝く、長い頭部が目の前の景色を見据えていた。

「これで中々威厳のある風貌よな。やはり精神の格が他とは一線を画しているか」

「後期型の、しかも改良版を4基搭載していますからね。彼女は王家から好かれていた」

「そう、この我よりもな」

 2人はそのまま玄武の背に飛び乗ると、その頂上に毅然として立つ金城の姿があった。側には野鹿が控えている。

「殿下、お時間宜しいか」

「…レストアか。随分な変わりようだね」

「は。容姿を違えた無礼をお許し下さい」

「別に構わないよ。その素体を選択したのは君なりの理由があるんだろう?」

「この肉体が最も馴染むゆえに御座います。しかして、殿下の慧眼にはつくづく感服いたしました」

「そうかい。ああそれと、君には頼みたいことがあるんだ。多分君の用件というのは、人間の中に見つけた精鋭と剣を交えるために、前線に出ることだろう?そこでだ…」

 金城はレストアに何か策を施した。

「…我がそのような重要ごとを任されて宜しいのですか?」

「君が1番の適任なんだ。今の君がね」

「畏まりました。このレストア、必ずや殿下のご期待に応えましょうぞ」

「ああ、期待している。部下は何人連れて行くのかな?」

「我が愚弟と奴隷共、そして人間の端兵を幾らか」

「こちら側の人間はまだ少ない。損害は最小限にしてくれ」

「心得ております。では」

 レストアとその弟、アンバーは玄武の背から跳躍すると山の向こうに姿を消した。

「……ユガル」

「いるぜ。どうかしたかい?」

「レストアたちを監視してくれ」

「こりゃまた物騒な。あの兄弟が信用できねえのか?」

「なに、些末な疑問だよ。だがその真偽が明らかではない。私はその不確かさが嫌いでね」

「まあ分からなくもない。どうする、儂の部下からいくらか割くか?」

「君にお願いしたい。並みの監視ではすぐに見つかってしまう」

「いいぜ。儂もちっとは働かねえとな」

 ユガルと呼ばれたロン毛の男は、風でたなびく髪を結わえるとその場から姿を消した。その間、金城はその存在を声でしか認識できなかった。

「全く、彼が味方で良かったよ」

 金城は甲羅の上を移動すると、その頂から玄武の顔を見下ろした。

「さて、メインに移ろうか」



『神獣協会はそのような事を…』

『そうです。特にアシュキル、あの男は地球にとどまり続けています。恐らくは天上分離の日から、いえ、それよりもさらに前からの計画かと思われます」

『その可能性も高い。とりあえずは博士からの助言を仰ぐ。お前たちは日本の助力をしろ。今日本を失うわけにはいかん』

『了解しました』

 アーノルドは電話を切ると、今度は東郷に無線を繋いだ。

『東郷3佐、後どれくらいで検問につく』

『あと5分弱だ。何か急用でも?』

『追手が複数来ている。とりあえず電波灯台の有効圏内に入ってくれ』

『…下道を通る。悪路だが我慢してくれ』

『恩に着る』

 そこで無線を切り、後ろのアーサー達を見た。

「お前たち、他に怪人から聞いたことはあるか?」

「あれで全部ですよ。にしても、ミナモトのデバフがなけりゃあ1人くらいは死んでた。あれに正しい力の使い方を教えれば…」

「俺は超えるだろうよ」

 アーサーは面白く無さそうに銃をいじっている。

「ミナモトに関しては気になるところもあるだろうが、今の段階ではまだどうとも言えない。まずは目の前の敵に専念しろ」

「でもよ隊長、この波長はレストアだぜ?もしかして真正面からぶつかるつもりか?」

「なに、私たちはほんの少し時間を稼げばいい。その間にゲンブを浄化する」

「じゃあ俺の出番だ」

 ジークが嬉しそうに膝を叩いた。

「…そうだな。ジークとミナモトに浄化を任せよう。それが1番安全だ」

 それから3分後、日米両軍の車列は電波灯台の庇護下に入った。宇都宮の検問には在日米軍が待機していた。

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