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番外編
もう一つの未来(ifストーリー)
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そろそろ就寝しようと思い、ベッドに入ろうとした矢先。
枕元に置いてあったスマホが震えた。
こんな時間に誰だろうと思いつつも、スマホを確認する。
『今、出てこれるか? 場所は、近くの公園だ』
──望からのLINEメッセージだ。どうしたんだろう?
『別にいいけど、なんで?』
『大事な話があるんだ』
『なんだかよくわからないけど、とりあえず行くね』
そんなわけで、望に呼び出された私は寮を飛び出して急いで公園に向かったのだけれど……。
余程切り出しづらい話なのか、望はずっと無言(かれこれ五分以上)でいるため、中々話が進まない。
夜の公園はほんの少し街灯がついているだけで暗いし、辺りも静寂に包まれているので正直、不気味だ。
ちょっと怖いなぁ……と思いつつ待っていると、目の前にいる望がようやく口を開いた。
「そ、その……好きだ。俺と付き合ってほしい」
「……え!? す、好き……!?」
「ああ、そうだ。ずっと好きだった。一人の女性として。だから、付き合ってほしい。姉弟としてではなく、恋人として」
望は精一杯の勇気を振り絞ったかのように、私に告白する。
その真剣な表情から、彼が冗談を言っているわけではないことは伝わってきた。
「何度でも言ってやる。ずっと、千鶴のことが好きだった」
「……!」
再び強い口調でそう言われ、思わず目を瞬かせる。
──望から……実の弟から、告白されてしまった……。
以前から、望が私のことを溺愛してくれているのは知っていたけれど……それはあくまでも『姉』としてだと思っていた。
だから、実は両思いだったことが判明してかなり面食らってしまったのだ。
こういう時……まともな姉なら、「ごめんね、気持ちは嬉しいけど……」と弟を傷つけないようにやんわり断るのだろう。
私自身、そうするのがベストだと思う。
けれど、私は──
「ありがとう、望。実は、その……私も、ね……ずっと前から望のことが好きだったんだ。でも……こんな感情、絶対に許されるはずがないって、そう思って。望を諦めた気になって……ずっと、自分を偽りながら生きてきて……」
気づけば、顔が火照るのを感じながら、そう返事をしていた。
恥ずかしすぎて、望の顔をちゃんと見れない。
それでも、何とかこの恋心を伝えたくて、辿々しいながらも精一杯に好意を伝えた。
自分でも、まともじゃないことくらいわかってる。
こんなこと、許されるはずがない。何しろ、自分達は実の姉弟なのだ。
これから恋人として付き合っていくにしても、きっと色んな逆境が待ち受けていると思う。
普通のカップルのように親しい人達に祝福されながら結婚して、家庭を築いて子供を育てて──という幸せな未来は当たり前だけれど望めない。
でも、私は……それでも構わないから、望と一緒に生きていきたい。
「ほ……本当か!? 嘘じゃないよな!?」
望は「信じられない」といった様子で私の両肩を掴み、再確認する。
私は、そんな望を安心させようと頷いてみせた。
「うん、嘘じゃないよ? だって……私、子供の頃からずっと望のこと異性として意識してたし、大好きだったもん」
「で、でも……俺と恋人になるってことは、デートだけじゃなく、キスとかセッ……そ、それ以上のこともしないといけないんだぞ! その……気持ち悪くないのか!? 俺はお前の実の弟なんだぞ!?」
公共の場で言うと少々問題のある単語をうっかり口走りそうになった望は、狼狽しつつも何度も私に確認した。
そんな彼を見て、私は思わず吹き出す。お陰で、少し緊張感が薄れた。
「ふふっ……それじゃあ、望は私が『イヤー! 気持ち悪いから近寄らないでー!』って拒絶したとしても納得できるのかな?」
「そ、それは……できない……な……」
言いながら、望はバツが悪そうに頬をポリポリとかく。
「でしょ? 望、私のこと大好きだもんね。拒絶なんてしたら、気に病んで私のこと監禁しちゃいそう」
「うっ……それは否定しないでおこう……」
望は、さらにバツが悪そうに俯く。
私が自分の本心に気づいたのは、友人の佳菜子にあることを指摘されたからだ。
『千鶴ってさ、いつも望のこと目で追ってるよね。シスコンすぎて困っちゃうって言ってる割には、自分もブラコンっていうか』
『え!? そ、そんなことないよ……』
『またまた~そんなこと言っちゃって。本当は弟が可愛くて仕方ないんでしょ?』
『うぅ……そんな風に見えるかなぁ?』
『見える、見える。なんかねー……こう、望を目で追う時の千鶴って、まるで恋人を見るような目つきだし、望は望で同じような感じだし、傍から見ててちょっと嫉妬しちゃうくらいだもん』
『な、何言ってるの……? いくらなんでも、実の弟をそんな目で見るわけないでしょう? それに、望だってシスコンの度が過ぎるだけで、実の姉をそんな目で見てるわけが──』
『いやいや! だから、例えだって! それくらい仲がいいんだろうから、望に片思いしてる私としては嫉妬しちゃうなーって意味!』
『それなら、いいけど……』
確か、こんな感じの会話だったけれど……その時、私は気づいてしまったのだ。自分の本当の気持ちに。
ずっと、自分の心に蓋をして、自分が『普通』であることを証明するために他の男性を好きになろうとして……今思えば、本当に無理をしていたと思う。
それでも、暫くの間は自分の本心を受け入れられなかった。
でも、要から「付き合ってほしい」と告白を受けた時、ようやく自分の気持ちに素直になることができた。
私が本当に好きなのは、望なんだ。私は彼と恋人同士になることを望んでいるんだ、と。
だから、ちゃんと理由を伝えて断った。
正直、絶縁される覚悟でカミングアウトしたのだけれど……要は「千鶴の好きな相手が誰であろうと、僕は応援するよ」と言って背中を押してくれた。
「とにかく……私、本気だからね?」
「……わかった。信じる」
「私のこと、ちゃんと幸せにしてね?」
「もちろん。俺を受け入れてくれたお前を、幸せにしないわけがないだろ?」
「それじゃあ……せっかく恋人になったんだし、ちょっと公園でイチャイチャしてから帰ろっか?」
「え!? あ、ああ……!」
そんな会話をしながら、私達はベンチに座り手を繋ぐ。もちろん、恋人繋ぎで。
チラリと望の顔を見やると、彼は私と目を合わせられないほど恥ずかしいのか、俯きながら赤面していた。
そんな弟の可愛い反応を見た私は、思わず口元が綻ぶ。
──こうして、私と望は晴れて両思いになった。
あと、これは余談だけど……あの日、公園を出てすぐの所にある横断歩道で事故があったらしい。
なんでも、暴走した車がガードレールに突っ込んだのだとか。運転手は亡くなったと聞いた。
タイミングが悪ければ、私達も事故に巻き込まれて死んでいたかもしれない──そう思ったら、背筋がゾッとした。
◆
あれから数ヶ月が経った。
私達姉弟は、順調に交際している。
もちろん、この事は友人である要以外誰も知らない。
あの日以来、私達は将来のことについてたくさん話し合うようになった。
その結果、高校を卒業したらお世話になっていた叔母夫婦の元を離れて二人きりで暮らそうということになった。
とはいえ、やっぱり前途多難だ。
表向きは仲のいい姉弟が一緒に暮らしているだけだし、私達もバレないように振るう舞うつもりでいるけれど……。
やっぱり、近所の人に勘づかれて変な噂を流されたり、後ろ指を指されたりすることになるかもしれない。
とにかく、この数ヶ月間の私達の会話は暗い内容ばかりだった。
望は、両思いになってからもたびたび不安そうに「本当に俺でいいのか?」と訊ねてきた。
だから、そのたびに私は「望と一緒ならどんな辛いことだって乗り越えられるよ」と返し、彼を安心させてあげた。
そんなこんなで、一段落ついて。やがて、夏休みがやってきた。
私と望は、夏休みを利用して温泉旅行(旅行といっても、一泊二日の小旅行だけど)に行くことにした。
旅館に到着した私達は、早速仲居さんに客室へと案内される。
とりあえず、靴を脱いで中に足を踏み入れる。部屋自体は、畳が敷かれたよくある和室だった。
ただ、奥のほうにある窓からの眺めはかなり良さそうだ。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
「ああ、そうそう。今日は花火大会があるんですって。きっと、この部屋からもよく見えますよ」
「へえ……そうなんですか!」
仲居さんが親切に教えてくれたので、感謝しつつも話題に乗る。
「きっと、彼氏さんも気に入ると思いますよ。ねえ、彼氏さん?」
「……!?」
一足先に部屋の奥まで入って荷物の整理をしていた望は、仲居さんに話しかけられて肩をびくっとさせた。
直後、彼はニヤニヤと破顔する。なんだか、嬉しそうだ。『彼氏』と言われたのが余程嬉しかったらしい。
まあ、確かに外見はあまり似ていないし……傍から見たら、違和感なくカップルに見えるのかもしれない。
「ああ、えーと……私達、双子の姉弟なんです」
嘘をついても仕方がないので、とりあえず本当のことを言う。
ふと望のほうを見ると、不貞腐れたように口を尖らせていた。うぅ……ごめんね。
「まあ、双子なんですか! すごくお似合いだったから、てっきりカップルなのかと思いましたよ。それにしても、珍しいですねぇ……男女の双子なんて」
「あはは……よく言われます」
「そうでしょう? ……っと、長話してごめんなさいね。それでは、ごゆっくりおくつろぎください」
そう言って、仲居さんが出ていったので、一先ず私達は温泉に入ることにした。
◆
「あー美味しかった! やっぱり、旅館の料理は最高だね!」
心ゆくまで温泉に浸かって、美味しい料理を食べて、すっかり満足した私はコテッと布団の上に寝転がる。
──布団も柔らかくて、気持ちいいなぁ。ベッドとはまた違った良さがある。
なんて思いながら、窓付近の椅子に座って外を眺めている望を見やる。
次の瞬間、望が「始まったみたいだな」と小さく呟いた。
それにつられるように、私も窓の外に視線を移す。
「あ……」
前触れもなく、突然夜空に打ち上がったのは色取り取りの花火だった。
凄く綺麗だ。やっぱり、夏と言えば花火だなぁ。
──私達の道ならぬ恋も、華々しく煌めいて散っていく花火のように、いつかは燃え尽きて……。
ふとそんな考えが頭をよぎり、ブンブンと首を横に振る。
いやいや、今から弱気になってどうする。
そうならないためにも、今からしっかりと将来のことを話し合っているのに。
「ねえ、望。膝の上、座ってもいいかな……?」
「膝の上……? 別に構わないが……」
「本当? じゃあ、座るね!」
「って……うわ!」
望の膝に座った瞬間、私は彼の首に手を回して抱きついた。
「ぎゅー!」
「……花火が見えない」
「酷いなぁ……私よりも花火が大事なの?」
「……そんなわけないだろ」
「じゃあ、どうして顔を背けるのかな?」
「そ、それは……」
「もっと、ぎゅーっとしちゃお!」
「なっ……」
これでもかと言うほど望を抱きしめて、その体温を感じる。
温かい。トクン、トクンという心臓の拍動が心地いい。それに、風呂上がりだからか、すごくいい匂いがする。
……いや、よく考えたら、普段からいい匂いだった。望って、男の子なのにいつもいい匂いがするんだよね。
普通は、思春期になると異性のきょうだいの体臭を嫌うようになるらしいけれど、私は弟の匂いが大好きだ。すごく落ち着くし、性的な魅力だって感じる。
そういうところからして、やっぱり自分は異常なのかなぁ……なんて思うけど、好きなものは好きだから仕方ない。
「その……胸が……」
「んー?」
「胸を押し付けられている上、顔まで近いと……その……我慢できなくなる……」
「あー……そういうことか……!」
「というか……千鶴、また胸大きくなっただろ。無駄に育ったその胸の所為で四六時中、悶々としてるんだぞ。少しはこっちの身にもなってくれ」
「す、好きで大きくなったんじゃないよ! それに、望だって大きいほうが好きでしょ!? ほら!」
言いながら、さらにむにゅーっと胸を押し付ける。
「よし、もう我慢できない。我慢できないから、襲う。襲ってやる」
半ばヤケクソ気味になった望が、浴衣の襟に手をかけて脱がせようとしてくる。
「ひぁ! ま、待って! 布団、行こ……?」
「……わかった」
提案を受け入れた望は私を横抱きすると、赤面しながら布団まで運んだ。
「ま、待って……浴衣、自分で脱ぐから……」
「駄目だ。俺が脱がす」
言って、望は私を布団の上に寝かせると、再び襟に手をかけ一気に浴衣を脱がした。
躍り出た双丘を見て、彼は「もう我慢できない」と言わんばかりに谷間に顔を埋める。
「ねえ、望。私のおっぱい、そんなに好きなの……?」
「ああ、好きだ。胸だけじゃなく、その唇も、髪も、手足も──全部大好きだ。俺だけしか知らないこの身体を、一生俺だけしか触れないように独占したい」
「もう……独占欲、強すぎだよ。もしかして、医者や看護師に触らせることすら嫌なのかな? 私だって、この先、怪我や病気になることだってあるだろうし……そんなの、無理だよ?」
「……それでも。誰にも触らせたくないんだ。ずっとずっと、触れることすらできなくて、ひたすら我慢して……ようやく手に入ったお前を、他人になんて触らせたくない」
私は、胸の谷間に顔を埋めながら苦しくなるくらいぎゅうっと抱きしめてくる望の頭を撫でる。
「怖かったんだ。お前が、俺を置いてどんどん遠くに行ってしまうことが。でも……お前は要の告白を断って、俺を選んでくれた。俺と一緒にいる未来を選んでくれた」
「望……」
「本当にありがとう、千鶴」
言いながら、望は私に唇を寄せる。
ちゅっとリップ音が聞こえたかと思えば、唇を割られ、口内に舌を入れられた。
望は、そのまま滑り込ませた舌で私の口内をいやらしく舐め回す。
「ふ、ぁ……」
気持ちよすぎて、頭がぼーとする。
望を喜ばせたくて、積極的に舌を絡ませたいのに、頭がふわふわしてうまく舌を動かせない。
そうやって成すがままになっていると、やがて望はショーツの中に右手を入れ、グッショリと潤った私の秘所につぷっと人差し指と中指を入れてきた。
「あっ……」
何度となく彼に抱かれ、すっかり慣れきったそこは、すんなりと二本の指を飲み込んでしまった。
──うわ……入っちゃった。初めてした時は、指一本でもきつかったのに……。
そのまま、人差し指と中指でグチュグチュと中をかき回され、いよいよ私は声を押さえきれなくなる。
「ん……あぁん! 望、気持ちいいよぉ……! いっちゃうぅ!」
「千鶴のここ、いやらしい汁がどんどん溢れてきてるぞ。タオルを敷かないと、シーツに染みができてしまいそうだ」
「あんっ……だって、だって……望がいっぱい弄るから……!」
「弟相手にこんなにグショグショになって……千鶴は本当にエッチな女の子だな」
「うぅ……弟じゃないもん。望は、私の彼氏だもん……」
耳元で言葉責めをされ、秘所からはますます卑猥な蜜が溢れ出してしまう。
愛液で濡れた指で裂け目をなぞられ、同時に肉粒をコリコリと弄られれば、ビクンッと大きく腰が浮く。
望はそんな私を満足げに見下ろすと、やがて自分の浴衣の帯を外し、怒張したペニスを私の秘所にあてがった。
「……千鶴、そろそろいいか? さっきから、もう限界なんだ」
そう言われ、上体を起こしてペニスに視線を移してみれば、私の秘所にぴったりと密着した鈴口は透明な液でグチャグチャになっていた。
私は自分でショーツを脱ぐと、望を受け入れる準備をする。
「うん……いいよ。来て」
「挿れるぞ」
「んっ……は、ぁ……」
望はゆっくりと膣内に侵入すると、最奥まで自身を押し込み、鈴口と子宮口を密着させた。
「動くぞ」
「あんっ、やん、ふ、ぁ……」
太い杭を最奥まで打ち込まれ、激しく揺さぶられ、頭が真っ白になる。
もう、何も考えられない。どうしてこんなに体の相性がいいのか疑問に思うくらい、気持ちいい。
──やっぱり、姉弟だから気持ちいいのかな……?
「望ぅ……すごく、すごく気持ちいいよぉ……!」
「俺もだ、千鶴」
半脱ぎになった浴衣がさらに乱れて、互いの呼吸が荒くなる。
太い杭で膣を強引に押し広げられて、一番気持ちいいところを突かれて──快感のあまり、頭がおかしくなりそうだ。
「はぁ、はぁ……千鶴……もう出そうだ」
「ん……は、ぁ……いいよ、望。私の中……出して?」
懇願するように、上目遣いでおねだりをしてみせる。
膣内に精を放たれる瞬間が、一番好きだ。望の全部を受け入れた気分になれるから、とても満たされる。
この満足感を噛みしめるためにも、私は避妊薬を手放せない。
「千鶴……!」
望が私の名を呼んだかと思えば、すぐに膣内に彼の欲望が放たれた。
ビクンビクンと脈打つペニスは、堰を切ったように私の子宮に精液を注ぎ込んでいる。
「あ……出てる……出てるよぉ……望の精液が、私の中に……」
「気持ちよかったか? 千鶴」
「……うん。私、今すっごく幸せだよ」
幸福感で満たされた私は、そう言って望の背中に手を回した。
◆
「花火、綺麗だね」
「ああ」
愛し合った余韻に浸りながら、私達はそれぞれ椅子に座って再び花火を眺める。
「予定通り、ここに来れて──花火を見ることができて、本当に良かった」
「……? どうしたの? 急に」
突然、神妙な顔つきになった望に私はそう問いかける。
一体、どうしたんだろう?
「……昨夜、怖い夢を見たんだ」
「どんな夢だったの……?」
「俺と千鶴が事故に遭って、何故か貴族として異世界に転生する夢だった」
「へえ……異世界かぁ。面白そうな夢だけど、どこが怖いの?」
私の質問に対して、望はゆっくりと首を横に振った。
「全然、面白くなんかない。その世界でも、やっぱり俺達は双子の姉弟だったんだ。いや、そこまではまだいい。その後、どういうわけか、要も同じ世界に転生してきたことがわかって……色々あって、お前はあいつを選んだんだ」
「え……?」
「夢の世界だと、そもそも前世でも付き合ってたみたいだけどな。それで、嫉妬に狂った俺は日に日におかしくなって、いよいよ感情のコントロールができなくなって……」
そこまで言って、望は苦悶の表情を浮かべる。
「……お前を屋敷に監禁して、子供ができるまで犯し続けた。どんなに拒絶されても、犯し続けた」
「屋敷に監禁かぁ……すごい夢だね」
「ああ。誰よりも、何よりも大切なお前に酷い仕打ちを与え続けたんだ。もう、このまま夢から覚めないんじゃないかって、本気で焦った。それで、夢から覚めても、俺は夢の中の俺が自分の一部のような気がして仕方なくて……すごく怖くなったんだ」
そう言って、望は辛そうに目を伏せる。
そんな望を見ていられなくなった私は、思わず椅子から立ち上がって彼のそばまで歩み寄り、肩を抱いた。
「大丈夫。ただの夢だよ。私が愛しているのは、望だけだよ。だから、安心して?」
「……ああ、そうだな。夢……なんだよな」
「うん。そんな夢、気にする必要ないよ」
「千鶴」
「何?」
「これから先も、ずっと俺のそばにいてくれるよな?」
「もちろん。寧ろ、『もう別れたい!』って言われても、絶対別れてあげないんだから」
「はは……それなら、安心だ」
自然と、望に笑顔が戻る。良かった、安心できたみたいだ。
ふと、窓の外に目をやる。その途端、美しい特大の花火が打ち上がった。
「見て、望。すごく綺麗……」
「フィナーレ花火だな」
「……来年の夏も、ここに来ようか?」
「ああ、そうだな。そうしよう」
私達は、顔を見合わせて頷き合う。
──来年も、再来年も、その先も……ずっと、二人で楽しい思い出を作っていこう。
そう思いながら、私は夜空に咲いた色鮮やかな花火を見つめた。
枕元に置いてあったスマホが震えた。
こんな時間に誰だろうと思いつつも、スマホを確認する。
『今、出てこれるか? 場所は、近くの公園だ』
──望からのLINEメッセージだ。どうしたんだろう?
『別にいいけど、なんで?』
『大事な話があるんだ』
『なんだかよくわからないけど、とりあえず行くね』
そんなわけで、望に呼び出された私は寮を飛び出して急いで公園に向かったのだけれど……。
余程切り出しづらい話なのか、望はずっと無言(かれこれ五分以上)でいるため、中々話が進まない。
夜の公園はほんの少し街灯がついているだけで暗いし、辺りも静寂に包まれているので正直、不気味だ。
ちょっと怖いなぁ……と思いつつ待っていると、目の前にいる望がようやく口を開いた。
「そ、その……好きだ。俺と付き合ってほしい」
「……え!? す、好き……!?」
「ああ、そうだ。ずっと好きだった。一人の女性として。だから、付き合ってほしい。姉弟としてではなく、恋人として」
望は精一杯の勇気を振り絞ったかのように、私に告白する。
その真剣な表情から、彼が冗談を言っているわけではないことは伝わってきた。
「何度でも言ってやる。ずっと、千鶴のことが好きだった」
「……!」
再び強い口調でそう言われ、思わず目を瞬かせる。
──望から……実の弟から、告白されてしまった……。
以前から、望が私のことを溺愛してくれているのは知っていたけれど……それはあくまでも『姉』としてだと思っていた。
だから、実は両思いだったことが判明してかなり面食らってしまったのだ。
こういう時……まともな姉なら、「ごめんね、気持ちは嬉しいけど……」と弟を傷つけないようにやんわり断るのだろう。
私自身、そうするのがベストだと思う。
けれど、私は──
「ありがとう、望。実は、その……私も、ね……ずっと前から望のことが好きだったんだ。でも……こんな感情、絶対に許されるはずがないって、そう思って。望を諦めた気になって……ずっと、自分を偽りながら生きてきて……」
気づけば、顔が火照るのを感じながら、そう返事をしていた。
恥ずかしすぎて、望の顔をちゃんと見れない。
それでも、何とかこの恋心を伝えたくて、辿々しいながらも精一杯に好意を伝えた。
自分でも、まともじゃないことくらいわかってる。
こんなこと、許されるはずがない。何しろ、自分達は実の姉弟なのだ。
これから恋人として付き合っていくにしても、きっと色んな逆境が待ち受けていると思う。
普通のカップルのように親しい人達に祝福されながら結婚して、家庭を築いて子供を育てて──という幸せな未来は当たり前だけれど望めない。
でも、私は……それでも構わないから、望と一緒に生きていきたい。
「ほ……本当か!? 嘘じゃないよな!?」
望は「信じられない」といった様子で私の両肩を掴み、再確認する。
私は、そんな望を安心させようと頷いてみせた。
「うん、嘘じゃないよ? だって……私、子供の頃からずっと望のこと異性として意識してたし、大好きだったもん」
「で、でも……俺と恋人になるってことは、デートだけじゃなく、キスとかセッ……そ、それ以上のこともしないといけないんだぞ! その……気持ち悪くないのか!? 俺はお前の実の弟なんだぞ!?」
公共の場で言うと少々問題のある単語をうっかり口走りそうになった望は、狼狽しつつも何度も私に確認した。
そんな彼を見て、私は思わず吹き出す。お陰で、少し緊張感が薄れた。
「ふふっ……それじゃあ、望は私が『イヤー! 気持ち悪いから近寄らないでー!』って拒絶したとしても納得できるのかな?」
「そ、それは……できない……な……」
言いながら、望はバツが悪そうに頬をポリポリとかく。
「でしょ? 望、私のこと大好きだもんね。拒絶なんてしたら、気に病んで私のこと監禁しちゃいそう」
「うっ……それは否定しないでおこう……」
望は、さらにバツが悪そうに俯く。
私が自分の本心に気づいたのは、友人の佳菜子にあることを指摘されたからだ。
『千鶴ってさ、いつも望のこと目で追ってるよね。シスコンすぎて困っちゃうって言ってる割には、自分もブラコンっていうか』
『え!? そ、そんなことないよ……』
『またまた~そんなこと言っちゃって。本当は弟が可愛くて仕方ないんでしょ?』
『うぅ……そんな風に見えるかなぁ?』
『見える、見える。なんかねー……こう、望を目で追う時の千鶴って、まるで恋人を見るような目つきだし、望は望で同じような感じだし、傍から見ててちょっと嫉妬しちゃうくらいだもん』
『な、何言ってるの……? いくらなんでも、実の弟をそんな目で見るわけないでしょう? それに、望だってシスコンの度が過ぎるだけで、実の姉をそんな目で見てるわけが──』
『いやいや! だから、例えだって! それくらい仲がいいんだろうから、望に片思いしてる私としては嫉妬しちゃうなーって意味!』
『それなら、いいけど……』
確か、こんな感じの会話だったけれど……その時、私は気づいてしまったのだ。自分の本当の気持ちに。
ずっと、自分の心に蓋をして、自分が『普通』であることを証明するために他の男性を好きになろうとして……今思えば、本当に無理をしていたと思う。
それでも、暫くの間は自分の本心を受け入れられなかった。
でも、要から「付き合ってほしい」と告白を受けた時、ようやく自分の気持ちに素直になることができた。
私が本当に好きなのは、望なんだ。私は彼と恋人同士になることを望んでいるんだ、と。
だから、ちゃんと理由を伝えて断った。
正直、絶縁される覚悟でカミングアウトしたのだけれど……要は「千鶴の好きな相手が誰であろうと、僕は応援するよ」と言って背中を押してくれた。
「とにかく……私、本気だからね?」
「……わかった。信じる」
「私のこと、ちゃんと幸せにしてね?」
「もちろん。俺を受け入れてくれたお前を、幸せにしないわけがないだろ?」
「それじゃあ……せっかく恋人になったんだし、ちょっと公園でイチャイチャしてから帰ろっか?」
「え!? あ、ああ……!」
そんな会話をしながら、私達はベンチに座り手を繋ぐ。もちろん、恋人繋ぎで。
チラリと望の顔を見やると、彼は私と目を合わせられないほど恥ずかしいのか、俯きながら赤面していた。
そんな弟の可愛い反応を見た私は、思わず口元が綻ぶ。
──こうして、私と望は晴れて両思いになった。
あと、これは余談だけど……あの日、公園を出てすぐの所にある横断歩道で事故があったらしい。
なんでも、暴走した車がガードレールに突っ込んだのだとか。運転手は亡くなったと聞いた。
タイミングが悪ければ、私達も事故に巻き込まれて死んでいたかもしれない──そう思ったら、背筋がゾッとした。
◆
あれから数ヶ月が経った。
私達姉弟は、順調に交際している。
もちろん、この事は友人である要以外誰も知らない。
あの日以来、私達は将来のことについてたくさん話し合うようになった。
その結果、高校を卒業したらお世話になっていた叔母夫婦の元を離れて二人きりで暮らそうということになった。
とはいえ、やっぱり前途多難だ。
表向きは仲のいい姉弟が一緒に暮らしているだけだし、私達もバレないように振るう舞うつもりでいるけれど……。
やっぱり、近所の人に勘づかれて変な噂を流されたり、後ろ指を指されたりすることになるかもしれない。
とにかく、この数ヶ月間の私達の会話は暗い内容ばかりだった。
望は、両思いになってからもたびたび不安そうに「本当に俺でいいのか?」と訊ねてきた。
だから、そのたびに私は「望と一緒ならどんな辛いことだって乗り越えられるよ」と返し、彼を安心させてあげた。
そんなこんなで、一段落ついて。やがて、夏休みがやってきた。
私と望は、夏休みを利用して温泉旅行(旅行といっても、一泊二日の小旅行だけど)に行くことにした。
旅館に到着した私達は、早速仲居さんに客室へと案内される。
とりあえず、靴を脱いで中に足を踏み入れる。部屋自体は、畳が敷かれたよくある和室だった。
ただ、奥のほうにある窓からの眺めはかなり良さそうだ。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
「ああ、そうそう。今日は花火大会があるんですって。きっと、この部屋からもよく見えますよ」
「へえ……そうなんですか!」
仲居さんが親切に教えてくれたので、感謝しつつも話題に乗る。
「きっと、彼氏さんも気に入ると思いますよ。ねえ、彼氏さん?」
「……!?」
一足先に部屋の奥まで入って荷物の整理をしていた望は、仲居さんに話しかけられて肩をびくっとさせた。
直後、彼はニヤニヤと破顔する。なんだか、嬉しそうだ。『彼氏』と言われたのが余程嬉しかったらしい。
まあ、確かに外見はあまり似ていないし……傍から見たら、違和感なくカップルに見えるのかもしれない。
「ああ、えーと……私達、双子の姉弟なんです」
嘘をついても仕方がないので、とりあえず本当のことを言う。
ふと望のほうを見ると、不貞腐れたように口を尖らせていた。うぅ……ごめんね。
「まあ、双子なんですか! すごくお似合いだったから、てっきりカップルなのかと思いましたよ。それにしても、珍しいですねぇ……男女の双子なんて」
「あはは……よく言われます」
「そうでしょう? ……っと、長話してごめんなさいね。それでは、ごゆっくりおくつろぎください」
そう言って、仲居さんが出ていったので、一先ず私達は温泉に入ることにした。
◆
「あー美味しかった! やっぱり、旅館の料理は最高だね!」
心ゆくまで温泉に浸かって、美味しい料理を食べて、すっかり満足した私はコテッと布団の上に寝転がる。
──布団も柔らかくて、気持ちいいなぁ。ベッドとはまた違った良さがある。
なんて思いながら、窓付近の椅子に座って外を眺めている望を見やる。
次の瞬間、望が「始まったみたいだな」と小さく呟いた。
それにつられるように、私も窓の外に視線を移す。
「あ……」
前触れもなく、突然夜空に打ち上がったのは色取り取りの花火だった。
凄く綺麗だ。やっぱり、夏と言えば花火だなぁ。
──私達の道ならぬ恋も、華々しく煌めいて散っていく花火のように、いつかは燃え尽きて……。
ふとそんな考えが頭をよぎり、ブンブンと首を横に振る。
いやいや、今から弱気になってどうする。
そうならないためにも、今からしっかりと将来のことを話し合っているのに。
「ねえ、望。膝の上、座ってもいいかな……?」
「膝の上……? 別に構わないが……」
「本当? じゃあ、座るね!」
「って……うわ!」
望の膝に座った瞬間、私は彼の首に手を回して抱きついた。
「ぎゅー!」
「……花火が見えない」
「酷いなぁ……私よりも花火が大事なの?」
「……そんなわけないだろ」
「じゃあ、どうして顔を背けるのかな?」
「そ、それは……」
「もっと、ぎゅーっとしちゃお!」
「なっ……」
これでもかと言うほど望を抱きしめて、その体温を感じる。
温かい。トクン、トクンという心臓の拍動が心地いい。それに、風呂上がりだからか、すごくいい匂いがする。
……いや、よく考えたら、普段からいい匂いだった。望って、男の子なのにいつもいい匂いがするんだよね。
普通は、思春期になると異性のきょうだいの体臭を嫌うようになるらしいけれど、私は弟の匂いが大好きだ。すごく落ち着くし、性的な魅力だって感じる。
そういうところからして、やっぱり自分は異常なのかなぁ……なんて思うけど、好きなものは好きだから仕方ない。
「その……胸が……」
「んー?」
「胸を押し付けられている上、顔まで近いと……その……我慢できなくなる……」
「あー……そういうことか……!」
「というか……千鶴、また胸大きくなっただろ。無駄に育ったその胸の所為で四六時中、悶々としてるんだぞ。少しはこっちの身にもなってくれ」
「す、好きで大きくなったんじゃないよ! それに、望だって大きいほうが好きでしょ!? ほら!」
言いながら、さらにむにゅーっと胸を押し付ける。
「よし、もう我慢できない。我慢できないから、襲う。襲ってやる」
半ばヤケクソ気味になった望が、浴衣の襟に手をかけて脱がせようとしてくる。
「ひぁ! ま、待って! 布団、行こ……?」
「……わかった」
提案を受け入れた望は私を横抱きすると、赤面しながら布団まで運んだ。
「ま、待って……浴衣、自分で脱ぐから……」
「駄目だ。俺が脱がす」
言って、望は私を布団の上に寝かせると、再び襟に手をかけ一気に浴衣を脱がした。
躍り出た双丘を見て、彼は「もう我慢できない」と言わんばかりに谷間に顔を埋める。
「ねえ、望。私のおっぱい、そんなに好きなの……?」
「ああ、好きだ。胸だけじゃなく、その唇も、髪も、手足も──全部大好きだ。俺だけしか知らないこの身体を、一生俺だけしか触れないように独占したい」
「もう……独占欲、強すぎだよ。もしかして、医者や看護師に触らせることすら嫌なのかな? 私だって、この先、怪我や病気になることだってあるだろうし……そんなの、無理だよ?」
「……それでも。誰にも触らせたくないんだ。ずっとずっと、触れることすらできなくて、ひたすら我慢して……ようやく手に入ったお前を、他人になんて触らせたくない」
私は、胸の谷間に顔を埋めながら苦しくなるくらいぎゅうっと抱きしめてくる望の頭を撫でる。
「怖かったんだ。お前が、俺を置いてどんどん遠くに行ってしまうことが。でも……お前は要の告白を断って、俺を選んでくれた。俺と一緒にいる未来を選んでくれた」
「望……」
「本当にありがとう、千鶴」
言いながら、望は私に唇を寄せる。
ちゅっとリップ音が聞こえたかと思えば、唇を割られ、口内に舌を入れられた。
望は、そのまま滑り込ませた舌で私の口内をいやらしく舐め回す。
「ふ、ぁ……」
気持ちよすぎて、頭がぼーとする。
望を喜ばせたくて、積極的に舌を絡ませたいのに、頭がふわふわしてうまく舌を動かせない。
そうやって成すがままになっていると、やがて望はショーツの中に右手を入れ、グッショリと潤った私の秘所につぷっと人差し指と中指を入れてきた。
「あっ……」
何度となく彼に抱かれ、すっかり慣れきったそこは、すんなりと二本の指を飲み込んでしまった。
──うわ……入っちゃった。初めてした時は、指一本でもきつかったのに……。
そのまま、人差し指と中指でグチュグチュと中をかき回され、いよいよ私は声を押さえきれなくなる。
「ん……あぁん! 望、気持ちいいよぉ……! いっちゃうぅ!」
「千鶴のここ、いやらしい汁がどんどん溢れてきてるぞ。タオルを敷かないと、シーツに染みができてしまいそうだ」
「あんっ……だって、だって……望がいっぱい弄るから……!」
「弟相手にこんなにグショグショになって……千鶴は本当にエッチな女の子だな」
「うぅ……弟じゃないもん。望は、私の彼氏だもん……」
耳元で言葉責めをされ、秘所からはますます卑猥な蜜が溢れ出してしまう。
愛液で濡れた指で裂け目をなぞられ、同時に肉粒をコリコリと弄られれば、ビクンッと大きく腰が浮く。
望はそんな私を満足げに見下ろすと、やがて自分の浴衣の帯を外し、怒張したペニスを私の秘所にあてがった。
「……千鶴、そろそろいいか? さっきから、もう限界なんだ」
そう言われ、上体を起こしてペニスに視線を移してみれば、私の秘所にぴったりと密着した鈴口は透明な液でグチャグチャになっていた。
私は自分でショーツを脱ぐと、望を受け入れる準備をする。
「うん……いいよ。来て」
「挿れるぞ」
「んっ……は、ぁ……」
望はゆっくりと膣内に侵入すると、最奥まで自身を押し込み、鈴口と子宮口を密着させた。
「動くぞ」
「あんっ、やん、ふ、ぁ……」
太い杭を最奥まで打ち込まれ、激しく揺さぶられ、頭が真っ白になる。
もう、何も考えられない。どうしてこんなに体の相性がいいのか疑問に思うくらい、気持ちいい。
──やっぱり、姉弟だから気持ちいいのかな……?
「望ぅ……すごく、すごく気持ちいいよぉ……!」
「俺もだ、千鶴」
半脱ぎになった浴衣がさらに乱れて、互いの呼吸が荒くなる。
太い杭で膣を強引に押し広げられて、一番気持ちいいところを突かれて──快感のあまり、頭がおかしくなりそうだ。
「はぁ、はぁ……千鶴……もう出そうだ」
「ん……は、ぁ……いいよ、望。私の中……出して?」
懇願するように、上目遣いでおねだりをしてみせる。
膣内に精を放たれる瞬間が、一番好きだ。望の全部を受け入れた気分になれるから、とても満たされる。
この満足感を噛みしめるためにも、私は避妊薬を手放せない。
「千鶴……!」
望が私の名を呼んだかと思えば、すぐに膣内に彼の欲望が放たれた。
ビクンビクンと脈打つペニスは、堰を切ったように私の子宮に精液を注ぎ込んでいる。
「あ……出てる……出てるよぉ……望の精液が、私の中に……」
「気持ちよかったか? 千鶴」
「……うん。私、今すっごく幸せだよ」
幸福感で満たされた私は、そう言って望の背中に手を回した。
◆
「花火、綺麗だね」
「ああ」
愛し合った余韻に浸りながら、私達はそれぞれ椅子に座って再び花火を眺める。
「予定通り、ここに来れて──花火を見ることができて、本当に良かった」
「……? どうしたの? 急に」
突然、神妙な顔つきになった望に私はそう問いかける。
一体、どうしたんだろう?
「……昨夜、怖い夢を見たんだ」
「どんな夢だったの……?」
「俺と千鶴が事故に遭って、何故か貴族として異世界に転生する夢だった」
「へえ……異世界かぁ。面白そうな夢だけど、どこが怖いの?」
私の質問に対して、望はゆっくりと首を横に振った。
「全然、面白くなんかない。その世界でも、やっぱり俺達は双子の姉弟だったんだ。いや、そこまではまだいい。その後、どういうわけか、要も同じ世界に転生してきたことがわかって……色々あって、お前はあいつを選んだんだ」
「え……?」
「夢の世界だと、そもそも前世でも付き合ってたみたいだけどな。それで、嫉妬に狂った俺は日に日におかしくなって、いよいよ感情のコントロールができなくなって……」
そこまで言って、望は苦悶の表情を浮かべる。
「……お前を屋敷に監禁して、子供ができるまで犯し続けた。どんなに拒絶されても、犯し続けた」
「屋敷に監禁かぁ……すごい夢だね」
「ああ。誰よりも、何よりも大切なお前に酷い仕打ちを与え続けたんだ。もう、このまま夢から覚めないんじゃないかって、本気で焦った。それで、夢から覚めても、俺は夢の中の俺が自分の一部のような気がして仕方なくて……すごく怖くなったんだ」
そう言って、望は辛そうに目を伏せる。
そんな望を見ていられなくなった私は、思わず椅子から立ち上がって彼のそばまで歩み寄り、肩を抱いた。
「大丈夫。ただの夢だよ。私が愛しているのは、望だけだよ。だから、安心して?」
「……ああ、そうだな。夢……なんだよな」
「うん。そんな夢、気にする必要ないよ」
「千鶴」
「何?」
「これから先も、ずっと俺のそばにいてくれるよな?」
「もちろん。寧ろ、『もう別れたい!』って言われても、絶対別れてあげないんだから」
「はは……それなら、安心だ」
自然と、望に笑顔が戻る。良かった、安心できたみたいだ。
ふと、窓の外に目をやる。その途端、美しい特大の花火が打ち上がった。
「見て、望。すごく綺麗……」
「フィナーレ花火だな」
「……来年の夏も、ここに来ようか?」
「ああ、そうだな。そうしよう」
私達は、顔を見合わせて頷き合う。
──来年も、再来年も、その先も……ずっと、二人で楽しい思い出を作っていこう。
そう思いながら、私は夜空に咲いた色鮮やかな花火を見つめた。
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