土方歳三ら、西南戦争に参戦す

山家

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第6章 激闘、田原坂

第5話

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 このような伝習隊の苦戦を、決して海兵隊は看過してはいなかった。
 3月7日、長崎にいる海兵隊の幹部は、大鳥圭介を半分取り囲むような状況で、激論を交わしていた。

「新選組を行かせてくれ」
 土方歳三は、半分叫ぶように力説した。
「いや、ここは衝鋒隊が行くべきだ」
 滝川充太郎が反論した。
「両方行ければ、最善なのですが、薬莢の問題が解消していませんからね」
 本多幸七郎が、土方と滝川を半分なだめるように発言する一方、林忠崇と北白川宮殿下は、土方と滝川の激論に口を挟めない状況だった。

 伝習隊の苦戦の状況は、長崎にいる海兵隊の幹部間でも把握されていた。
 陸軍と海兵隊の関係が良好とは言いかねる現在、速やかに海兵隊の増援を田原坂に送り込まねばならない。
 問題は、その増援の内容だった。

 シャスポー銃の薬莢問題が、解決していない現状で、大規模な増援を海兵隊が送り込んでも、射撃不能の部隊が増えるだけだった。
 現状は伝習隊の弾薬を賄うだけなら余裕があるが、更に2個大隊を送り込んだら、弾薬というか薬莢不足はどうにもならなくなるというのが海兵隊幹部の共通認識だった。
 それ故に長崎に到着した薬莢の乾燥を待った上で、8日に1個大隊が増援として出発ということに決まった。
 次の問題は、どの大隊を出すかということに移った。

 大鳥は、沈思黙考をしばし続けた後に、意を決して発言した。
「新選組に行ってもらう」

「衝鋒隊ではダメなのか」
 その言葉を聞いた瞬間、滝川は叫んだ。

「違う。西郷軍を釣るためには、新選組の方が向いているからだ。
 衝鋒隊でも釣れないことはないが、新選組の方が西郷軍に与える影響が大きい」
「確かにな」
 大鳥の言葉に、滝川は無念の思いがこみあげるのを感じたが同意した。
「ありがたい。最善を尽くさせてもらう」
 逆に土方は喜んだ。

 3月8日、編制を完結した新選組こと第3海兵大隊は長崎を出発した。
 その先頭には誠の旗が掲げられており、土方がその傍に立って進んでいた。
 砲兵を伴っていないことや、伝習隊救援のために、前線へと急行軍した結果、3月10日夕刻に。新選組こと第3海兵大隊は、田原坂前面に到着した。

 田原坂の激戦当時、従軍記者として、それを報じていた福地源一郎は、新選組こと第3海兵大隊の田原坂への到着を、次のように記事において報じている。

「夕闇が迫る頃、北方から旗を掲げた千人近い部隊が、自分のいる所に迫ってきた。
 何者ぞ、と誰何する声が、何処からか上がるが、その部隊が更に迫ると、誰何する声を上げた者たちは一様に沈黙して、更にその部隊が迫るにつれ、道路脇に整列しよう、と自分の近くにいた将兵は動き出し、多くの者が道路脇に自然と整列して、無言のうちに敬礼を始めた。

 やがて、私の視界の中に、その旗には誠の1字が書かれていて、その傍を1人の偉丈夫が進み、更にその後を明らかに最精鋭とみえる男たちが無言のまま、行進してくるのが入った。
 その偉丈夫は無言のまま答礼し、それに続く男たちも無言のままに答礼して行進を続け、熊本鎮台救援に向かう第1旅団司令部へと向かった。

 私はその姿を見た後もしばらく声が出なかったが、勇を振るって、近くにいた兵に尋ねることにした。
 あの部隊は何者か。
 私の問いに、兵は畏怖を滲ませた声で即答した。
 あれこそ新選組に相違ない、その先頭に立つ偉丈夫は、土方歳三殿。

 私も大いに畏怖した。
 あれほどの男と、それに続く男たちを、目にしたのは、生まれて初めてだった。
 そして、それが味方であることに、心から感謝の念を私は抱いた、いや、抱かざるを得なかった。
 もし、あれが敵軍だったら、その思いが頭をかすめるだけで、りつ然とする思いに私は囚われる有様だった」
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