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第1部 メアリー・グレヴィル
第32話
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そんな風に、私が肚の中を決めた翌日、チャールズは、憂い顔で北山の別荘から帰宅してきた。
私がチャールズを誘い、小部屋で二人きりになった後、私から何があったのか、どうだったのか、全てを問い質そうと想った瞬間、チャールズは心の堰が切れたようで、涙を零しだした。
私は、どうにも声が出ず、チャールズの涙が止まり、気が落ち着くのを待つしかなかった。
暫く経って、ようやくチャールズは、ポツリポツリと言葉を絞り出した。
アンは完全に歪んでしまっていた。
自分のしたことが、あそこまでアンを傷つけていたとは思わなかった。
アンの誘い、脅迫をどうにも断れなかった。
自分が本当に嫌になった。
北山の別荘で、アンと密会したときのことを、チャールズは正直に語った。
それを見ながら、私はため息を(内心で)吐くしかなかった。
ため息を表に出したら、原作との違いを、思わずチャールズに話してしまいそうだった。
(もっとも、そんなことを聞いても、チャールズにとっては、訳の分からない話だろうが)
原作だと、アンはそんなことをしなかった。
むしろ、チャールズの暴走を止め、再度の関係をできる限り拒んだのに、何でこうなったのだろう。
それにしても、アンとチャールズが、再度、関係を持つとは。
ヘンリー大公や私の父に、私は何と言えばいいだろうか。
もっとも。
アンはおそらく気付いていないだろうが、私の父は、今回の一件に知らずに加担している。
私は、アンの乳母ソフィアを救い、父も救えるのではないか、と考えて、父にソフィアを召人として、よりを戻すことを勧めたのだ。
それで、お互いに合意したら、父にソフィアを第二夫人に迎えたらどうか、とまで私は言った。
ソフィアは母の身分こそ低いが、侯爵の娘なのは間違いない。
皇族公爵の正妻なら身分的に問題だが、既に父が隠棲している以上、ソフィアを父が第二夫人にしても、問題視する人はいないでしょう、とまで私は父に勧めた。
アンの荒み方に傷心した父は、私の勧め、甘言にのり、ソフィアとよりを戻そうとし、アンの振る舞いに傷心していたソフィアも、父との関係に癒しを求めたという次第だ。
それで、父とソフィアからのアンへの監視が緩んでいたのだが、アンは気づいていないだろう。
そんなことを考えているうちに、チャールズの私への懺悔、告解は終わった。
私は、チャールズに短く、
「正直に話してくれて有難う。後は私が全て処理するわ」
とだけ言った。
チャールズは、怯えながら言った。
「処理するって」
「終わったら言うわ」
私は怒りのオーラをまといながら言い、チャールズを黙らせた。
私は、チャールズの話を聞いた後、一晩、独りで考え込んだ。
ちなみにチャールズは、私の怒りのオーラの前に、自分から召人のエスメラルダの下に、半ば逃げ込んでいる。
翌日、ヘンリー大公の下に、私は結婚式の打合せ名目で赴いた。
勿論、真実は別の話、アンとチャールズの密会の話をするためだ。
ヘンリー大公は、私と二人きりで会ってくれた。
ヘンリー大公は、私の怒りの気配から何があったのか、直感したのだろう。
その必要は無いのに、わざと声を潜めていった。
「アンとチャールズが密通でもしましたか」
「その通りです。全く義兄にして義子と密通をするとは。しかも自分から積極的に誘うとは」
私は、わざと吐き捨てるように言った。
チャールズは大公世子であり、アンは大公妃になる身だ。
だから、義理の母子と言っても、あながち間違いでは無いのだ。
それに、言うまでもなく私の妹である以上、チャールズとアンは義理の兄妹になる。
「厳罰に処する必要がありますな」
「その通りです」
私達は、アンに対する罰について、どうすべきか話し合った。
私がチャールズを誘い、小部屋で二人きりになった後、私から何があったのか、どうだったのか、全てを問い質そうと想った瞬間、チャールズは心の堰が切れたようで、涙を零しだした。
私は、どうにも声が出ず、チャールズの涙が止まり、気が落ち着くのを待つしかなかった。
暫く経って、ようやくチャールズは、ポツリポツリと言葉を絞り出した。
アンは完全に歪んでしまっていた。
自分のしたことが、あそこまでアンを傷つけていたとは思わなかった。
アンの誘い、脅迫をどうにも断れなかった。
自分が本当に嫌になった。
北山の別荘で、アンと密会したときのことを、チャールズは正直に語った。
それを見ながら、私はため息を(内心で)吐くしかなかった。
ため息を表に出したら、原作との違いを、思わずチャールズに話してしまいそうだった。
(もっとも、そんなことを聞いても、チャールズにとっては、訳の分からない話だろうが)
原作だと、アンはそんなことをしなかった。
むしろ、チャールズの暴走を止め、再度の関係をできる限り拒んだのに、何でこうなったのだろう。
それにしても、アンとチャールズが、再度、関係を持つとは。
ヘンリー大公や私の父に、私は何と言えばいいだろうか。
もっとも。
アンはおそらく気付いていないだろうが、私の父は、今回の一件に知らずに加担している。
私は、アンの乳母ソフィアを救い、父も救えるのではないか、と考えて、父にソフィアを召人として、よりを戻すことを勧めたのだ。
それで、お互いに合意したら、父にソフィアを第二夫人に迎えたらどうか、とまで私は言った。
ソフィアは母の身分こそ低いが、侯爵の娘なのは間違いない。
皇族公爵の正妻なら身分的に問題だが、既に父が隠棲している以上、ソフィアを父が第二夫人にしても、問題視する人はいないでしょう、とまで私は父に勧めた。
アンの荒み方に傷心した父は、私の勧め、甘言にのり、ソフィアとよりを戻そうとし、アンの振る舞いに傷心していたソフィアも、父との関係に癒しを求めたという次第だ。
それで、父とソフィアからのアンへの監視が緩んでいたのだが、アンは気づいていないだろう。
そんなことを考えているうちに、チャールズの私への懺悔、告解は終わった。
私は、チャールズに短く、
「正直に話してくれて有難う。後は私が全て処理するわ」
とだけ言った。
チャールズは、怯えながら言った。
「処理するって」
「終わったら言うわ」
私は怒りのオーラをまといながら言い、チャールズを黙らせた。
私は、チャールズの話を聞いた後、一晩、独りで考え込んだ。
ちなみにチャールズは、私の怒りのオーラの前に、自分から召人のエスメラルダの下に、半ば逃げ込んでいる。
翌日、ヘンリー大公の下に、私は結婚式の打合せ名目で赴いた。
勿論、真実は別の話、アンとチャールズの密会の話をするためだ。
ヘンリー大公は、私と二人きりで会ってくれた。
ヘンリー大公は、私の怒りの気配から何があったのか、直感したのだろう。
その必要は無いのに、わざと声を潜めていった。
「アンとチャールズが密通でもしましたか」
「その通りです。全く義兄にして義子と密通をするとは。しかも自分から積極的に誘うとは」
私は、わざと吐き捨てるように言った。
チャールズは大公世子であり、アンは大公妃になる身だ。
だから、義理の母子と言っても、あながち間違いでは無いのだ。
それに、言うまでもなく私の妹である以上、チャールズとアンは義理の兄妹になる。
「厳罰に処する必要がありますな」
「その通りです」
私達は、アンに対する罰について、どうすべきか話し合った。
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