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第1部 メアリー・グレヴィル
第33話
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とは言え、実際問題として、ヘンリー大公が結婚して、アンが新しい大公妃になるという直前に、このような大公家の大醜聞を公表できるものではない。
だから、私は却って陰湿なことを考えた。
とことん高みに昇らせた後、どん底にアンを突き落としてやる。
悪魔は人間を悦楽で堕落させた後、地獄に追い落とすのよ。
私はどす黒い気持ちで、ヘンリー大公に、自分が考えたアンへの罰を説明した。
流石にヘンリー大公は、気の毒な表情を浮かべながら言った。
「そこまでのことを、アンにしなくとも」
「いいえ、今後のことがあります。アンにきちんと罰を受けさせるべきです」
私は、ヘンリー大公の説得に懸命に当たり、ヘンリー大公を納得させた。
アンに対して、罰を加えるのは、来年の5月と、基本的に決まった。
更に言うならば。
この時ならば、私の父が、仮にアンの罰の軽減を頼んでも、私とヘンリー大公が手を組めば、拒絶できる。
既にアンは大公家に嫁いでいる、アンへの罰は、大公家内部で大公妃に対して罰を与えるものであり、実父と言えども、大公家内部の問題に口出しをしないで欲しい、と公然と拒絶できるからだ。
私は、その時が愉しみでならなかった。
(私は、父に敢えて現段階では、アンとチャールズが再度、関係を持ったことを伝えないことにした。
下手に伝えて、まず無いとは想ったが、父に親心を出されては困るからだ。
アンに罰を与えた後、父に事後報告で、アンへの罰を伝えることに私はした)
そんな一大事が陰であったが、時間は容赦なく流れ、ヘンリー大公とアンの結婚式の日が来た。
結婚式から披露宴が、滞りなく行われる一方で、帝都内は少し騒然とした雰囲気が満ちることになった。
何故か、というと。
「ここまで騎士が帝都に溢れるのを見るのは、初めての気がしますな」
「大公家もやり過ぎでは」
「いや、帝都を見たことが無い騎士が多くて、この際に帝都見学をしたい、と多くの騎士が希望したので、ここまで騎士が増えた、と私は聞きましたぞ」
そんな無責任な帝都市民のさえずり声が、結婚式が執り行われた教会から、披露宴が行われる大公家の邸宅へと移動する馬車の隊列の中にいる私の耳にまで届いてくる。
私は、その噂話を心地よく聞きながら想った。
欺瞞工作は、それなりに成功しているようだ。
帝都制圧作戦の予行演習として、この結婚式の警備計画は事実上は立案されている。
そして、先程の噂話には、真実が一部含まれており、帝室に油断を誘う筈だった。
ヘンリー大公とアンの結婚式の警備に参加したいのなら、旅費から滞在費から負担し、日当まで払う、とマイトラント子爵家は、警備のための騎士を勧誘した。
言うまでもなく、実際に負担するのは、大公家なのだが。
この勧誘は、多くの騎士にしてみれば、無料どころか金を貰って帝都見物ができる絶好の機会に他ならなかった。
そのために多くの騎士が勧誘に応じた一方で。
私とマイトラント子爵は、実際に警備に参画する騎士を、できる限りは有力な騎士で固め、それ以外を、既に十分な騎士が集った、という理由で排除した。
それは有力な騎士は、必然的に騎士達の小頭にもなるからだ。
士官、下士官がしっかりしていれば、徴兵されたばかりの新兵でも、それなりに戦えるものだ。
そして、いざという際、つまりクーデター実行時に、騎士達の小頭が帝都のことを知っていれば、それに従う騎士達も戦力として戦える、という判断を、私とマイトラント子爵で下し、そのように警備計画を動かしたのだ。
戦場を知らない私だが、私が受けた軍事教育を参照する限り、今、警備に当たっている騎士達は十二分に役立つように、私には見えた。
実戦でも役立つように、私は念じた。
だから、私は却って陰湿なことを考えた。
とことん高みに昇らせた後、どん底にアンを突き落としてやる。
悪魔は人間を悦楽で堕落させた後、地獄に追い落とすのよ。
私はどす黒い気持ちで、ヘンリー大公に、自分が考えたアンへの罰を説明した。
流石にヘンリー大公は、気の毒な表情を浮かべながら言った。
「そこまでのことを、アンにしなくとも」
「いいえ、今後のことがあります。アンにきちんと罰を受けさせるべきです」
私は、ヘンリー大公の説得に懸命に当たり、ヘンリー大公を納得させた。
アンに対して、罰を加えるのは、来年の5月と、基本的に決まった。
更に言うならば。
この時ならば、私の父が、仮にアンの罰の軽減を頼んでも、私とヘンリー大公が手を組めば、拒絶できる。
既にアンは大公家に嫁いでいる、アンへの罰は、大公家内部で大公妃に対して罰を与えるものであり、実父と言えども、大公家内部の問題に口出しをしないで欲しい、と公然と拒絶できるからだ。
私は、その時が愉しみでならなかった。
(私は、父に敢えて現段階では、アンとチャールズが再度、関係を持ったことを伝えないことにした。
下手に伝えて、まず無いとは想ったが、父に親心を出されては困るからだ。
アンに罰を与えた後、父に事後報告で、アンへの罰を伝えることに私はした)
そんな一大事が陰であったが、時間は容赦なく流れ、ヘンリー大公とアンの結婚式の日が来た。
結婚式から披露宴が、滞りなく行われる一方で、帝都内は少し騒然とした雰囲気が満ちることになった。
何故か、というと。
「ここまで騎士が帝都に溢れるのを見るのは、初めての気がしますな」
「大公家もやり過ぎでは」
「いや、帝都を見たことが無い騎士が多くて、この際に帝都見学をしたい、と多くの騎士が希望したので、ここまで騎士が増えた、と私は聞きましたぞ」
そんな無責任な帝都市民のさえずり声が、結婚式が執り行われた教会から、披露宴が行われる大公家の邸宅へと移動する馬車の隊列の中にいる私の耳にまで届いてくる。
私は、その噂話を心地よく聞きながら想った。
欺瞞工作は、それなりに成功しているようだ。
帝都制圧作戦の予行演習として、この結婚式の警備計画は事実上は立案されている。
そして、先程の噂話には、真実が一部含まれており、帝室に油断を誘う筈だった。
ヘンリー大公とアンの結婚式の警備に参加したいのなら、旅費から滞在費から負担し、日当まで払う、とマイトラント子爵家は、警備のための騎士を勧誘した。
言うまでもなく、実際に負担するのは、大公家なのだが。
この勧誘は、多くの騎士にしてみれば、無料どころか金を貰って帝都見物ができる絶好の機会に他ならなかった。
そのために多くの騎士が勧誘に応じた一方で。
私とマイトラント子爵は、実際に警備に参画する騎士を、できる限りは有力な騎士で固め、それ以外を、既に十分な騎士が集った、という理由で排除した。
それは有力な騎士は、必然的に騎士達の小頭にもなるからだ。
士官、下士官がしっかりしていれば、徴兵されたばかりの新兵でも、それなりに戦えるものだ。
そして、いざという際、つまりクーデター実行時に、騎士達の小頭が帝都のことを知っていれば、それに従う騎士達も戦力として戦える、という判断を、私とマイトラント子爵で下し、そのように警備計画を動かしたのだ。
戦場を知らない私だが、私が受けた軍事教育を参照する限り、今、警備に当たっている騎士達は十二分に役立つように、私には見えた。
実戦でも役立つように、私は念じた。
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