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第2部 アリス・ボークラール
幕間(キャロラインー1)
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私は、表向きは直接の血縁上は極めて遠縁(私の父の従弟)に過ぎないエドワードが、それこそお互いに幼い頃から好きでならなかった。
一応、共に現チャールズ大公とメアリー大公妃の間の養子として姉弟として育ったからだ、だから好きになったのだ、と私は想って育った。
だが、成長していく内に、私は気づいた。
エドワードは、恐らく私の実の弟、異父弟なのだ。
だから、好きになり、魅かれ合ったのだ。
何故に、そう想うようになったのか。
「本当に養子でも、実子のように似てくるということがあるのですね」
「本当にメアリー大公妃殿下の実の娘のよう」
「それよりも、薨去されたアン大公妃殿下に似ていませんか」
「そう言われてみれば」
そんなある意味、陰口を何度、聞いたことだろう。
一番、露骨だったのが、義祖母になるソフィア・グレヴィルだった。
「本当に大きくなられるにつれて、似てこられる」
誰に似ているのか、決して義祖母は言わない。
だが、その瞳の奥に、アン大公妃が写っているのが、聡い私には、いつか分かってしまった。
そして、私は聡すぎた。
このことは、決して口に出してはいけないことだ。
恐らく、私は、チャールズ大公とアン大公妃の間の秘密の子なのだ。
実父も、養母も、義祖母も、真実を知っているのだ。
だが、このことが明るみになっては、大公家の大醜聞だ。
何しろ、私が産まれた時期からすれば、私の真実の両親、チャールズとアンが、お互いの関係を知らずに関係を持ってもおかしくない時期だが、そんなこと世間はお構いなしに、真実の関係を知って、関係を持ったと騒ぐに違いない話だ。
だから、皆、口を拭っているのだ。
更に成長して、15歳になった時に私は入内した。
だが。
夫のジョンは、内心では、私を厭った。
私が「帝国大乱」の直接の導火線になった、傾国の美女、アン大公妃に似ていたからだ。
(アン大公妃が薨去したのと、ほぼ同い年になった現在、私はアン大公妃殿下の生まれ変わりのように似ている、という噂が立つ有様にまで、私は似て育ってしまった)
それでも、夫婦の義務として、夫は私を抱いて。
私はすぐに息子トマスを産んだ。
でも、それが却って夫の愛を、更に失わせることになった。
夫は、息子トマスへの譲位を迫られ、実父ジェームズ元皇帝のように退位させられるのでは、と想ったからだ。
邪推にも程がある、と思って、私は、息子をマーガレット皇后の養子に差し出したが。
夫は、実の息子を養子に出すとは、と更に私への愛を冷めさせた。
私は、どうすればよかったのだろう。
もし、離婚ができるのなら、離婚したいが、教会は離婚を認めない。
(結婚を実際に管轄しているのは教会であって、離婚は禁止されている)
そうした中、私にとって、心の癒しになったのが、エドワードだった。
エドワードは、真実を知っているかのように、私を姉として慕った。
いや、恋人のように、というべきかもしれない。
本当に(異父)姉弟でなければ、私から誘ってしまうような気がする。
でも、それは二重の意味で赦されないことなのだ。
お互いに配偶者のいる身だし、更に姉弟でもあるのだから。
私のすぐ傍で屈託なく、牛肉のカレーを食べているエドワードを見て、そんなことを私が想っていると。
「侍女に声を掛けてもいいですか」
エドワードが言った。
「ダメよ。大事な侍女だから」
私は即答した。
全く妻のキャサリンと、エドワードが上手く行っていないのは本当らしい。
こっそり、私はため息を吐いた。
「侍女に声を掛ける」
愛人として声を掛けたい、とエドワードは暗に言っているのだ。
私は宮中の規律維持を建前に断ったが。
エドワードが他の女に手を出すのが、その時の私には許せなかったのだ。
一応、共に現チャールズ大公とメアリー大公妃の間の養子として姉弟として育ったからだ、だから好きになったのだ、と私は想って育った。
だが、成長していく内に、私は気づいた。
エドワードは、恐らく私の実の弟、異父弟なのだ。
だから、好きになり、魅かれ合ったのだ。
何故に、そう想うようになったのか。
「本当に養子でも、実子のように似てくるということがあるのですね」
「本当にメアリー大公妃殿下の実の娘のよう」
「それよりも、薨去されたアン大公妃殿下に似ていませんか」
「そう言われてみれば」
そんなある意味、陰口を何度、聞いたことだろう。
一番、露骨だったのが、義祖母になるソフィア・グレヴィルだった。
「本当に大きくなられるにつれて、似てこられる」
誰に似ているのか、決して義祖母は言わない。
だが、その瞳の奥に、アン大公妃が写っているのが、聡い私には、いつか分かってしまった。
そして、私は聡すぎた。
このことは、決して口に出してはいけないことだ。
恐らく、私は、チャールズ大公とアン大公妃の間の秘密の子なのだ。
実父も、養母も、義祖母も、真実を知っているのだ。
だが、このことが明るみになっては、大公家の大醜聞だ。
何しろ、私が産まれた時期からすれば、私の真実の両親、チャールズとアンが、お互いの関係を知らずに関係を持ってもおかしくない時期だが、そんなこと世間はお構いなしに、真実の関係を知って、関係を持ったと騒ぐに違いない話だ。
だから、皆、口を拭っているのだ。
更に成長して、15歳になった時に私は入内した。
だが。
夫のジョンは、内心では、私を厭った。
私が「帝国大乱」の直接の導火線になった、傾国の美女、アン大公妃に似ていたからだ。
(アン大公妃が薨去したのと、ほぼ同い年になった現在、私はアン大公妃殿下の生まれ変わりのように似ている、という噂が立つ有様にまで、私は似て育ってしまった)
それでも、夫婦の義務として、夫は私を抱いて。
私はすぐに息子トマスを産んだ。
でも、それが却って夫の愛を、更に失わせることになった。
夫は、息子トマスへの譲位を迫られ、実父ジェームズ元皇帝のように退位させられるのでは、と想ったからだ。
邪推にも程がある、と思って、私は、息子をマーガレット皇后の養子に差し出したが。
夫は、実の息子を養子に出すとは、と更に私への愛を冷めさせた。
私は、どうすればよかったのだろう。
もし、離婚ができるのなら、離婚したいが、教会は離婚を認めない。
(結婚を実際に管轄しているのは教会であって、離婚は禁止されている)
そうした中、私にとって、心の癒しになったのが、エドワードだった。
エドワードは、真実を知っているかのように、私を姉として慕った。
いや、恋人のように、というべきかもしれない。
本当に(異父)姉弟でなければ、私から誘ってしまうような気がする。
でも、それは二重の意味で赦されないことなのだ。
お互いに配偶者のいる身だし、更に姉弟でもあるのだから。
私のすぐ傍で屈託なく、牛肉のカレーを食べているエドワードを見て、そんなことを私が想っていると。
「侍女に声を掛けてもいいですか」
エドワードが言った。
「ダメよ。大事な侍女だから」
私は即答した。
全く妻のキャサリンと、エドワードが上手く行っていないのは本当らしい。
こっそり、私はため息を吐いた。
「侍女に声を掛ける」
愛人として声を掛けたい、とエドワードは暗に言っているのだ。
私は宮中の規律維持を建前に断ったが。
エドワードが他の女に手を出すのが、その時の私には許せなかったのだ。
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