R18 硝子少女は夢を見る

前世

みんなが知ってるかわかんないからここで言うけど、女の子は消耗品なの。

私がそれを理解したのは中学生になりたての頃だった。

桜が咲き誇る4月のこと。
私の母は急にこの世を去った。37歳だった。
車に轢かれそうになった子供を庇ったそうだ。

母は子供の私から見てもとても美しい女性だったが、母の遺体を確認したとき、その美しさはかけらも残っていなかった。

母の顔が確認できないのだ。死を受け入れることなどできるはずもない。

お葬式では涙も出なかった。
父と2人で母の死を受け入れることができずにいた。

「りさちゃん、お父さんのことを支えてあげるのよ。困った時はいつでも訪ねてきてね。」

おばあちゃんにそう言われた。

なぜ私たちがこんな目に合わなければいけないのかさっぱりわからなかった。

周りの人達から労いの言葉をもらうたびに母の死が証明されていくようだった。

母の骨を拾う時、初めて涙が一粒溢れた。

もう会えない。それがはっきりとわかるまでこんなにも時間がかかった。

父は葬式では涙を流さなかったが、家に帰った後夜中にお酒を飲みながら1人泣いていた。

聞こえてしまった。

それを聞いて私はまた涙を流した。

今まで当たり前だったものがなくなっていく。

当たり前だったからこそこんなことを想像したこともなかった。

家族での幸せな日々がいつまでも続くと思っていたのだ。なんの保証もないのに。

馬鹿だよなあ。私って。

もうこれ以上、何も失いたくない。
そう思った。



しかし



現実ははるかに厳しく、私のものを次々と奪っていった。

最初は父だった。

父は母をとても、とても愛していた。

私の前では悲しみを態度に出さないように振る舞ってはいたが、日に日に表情が暗くなっていった。