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貴様はこれから俺に尽くすことが生きがいになるんだ。
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見よう見まねで釣り具を作ってみると、身体が覚えていたように自然に作ることができた。
間宮は作業机の上で手作りのルアーを摘まみ上げて手遊びしていた。自分では興味が無いが、海堂にあげれば喜ぶかもしれない。木材を加工して銀色と群青色に塗装した小魚型のルアーは手の中できらきらと光った。
時計を見る。深夜二時を過ぎた頃だ。眠れなくて、つい手遊びする癖がついてしまった。間宮は一つ大きく伸びをしながらベッドに戻ろうか思案し、机の上に頬杖をつき、時計の針が進むのを眺めていた。当たり前のように同じ速度で一定の方向に進んでいくこの時計が、いつからこの場所で動いているのかよく覚えていない。自分で置いたのかも覚えていない。
霧野はどうやら姫宮のところに居るらしかった。先日二条の車のタイヤを交換させられた時に、修理業者でも気が付かないであろう場所にしこんでおいたGPSが日中そう物語っていた。
別にバレたって良い。敢えてバレる位置につけたって良かったが、あまりにあざとすぎるだろう。それよりも、どうして気が付いてくれないのかと悶々としている方が長い間愉しむこともできる。実用的かつ趣味的。間宮は傍らのスマートフォンの画面に表示されたGPSのピンを眺めて薄っすらとほほ笑み、笑顔を消す。
無様にも病院送りにされた霧野の情けない姿を見舞いに行って追い打ちをかけてやろうと何度か思い立って、近くまで行くのだが足がすくみ、入っていけないのだった。
「一目見ただけで肋骨がバキバキなのがわかる。一体何をやったらこうなるんだよ。」
「一回り大きい相手と戦わせてみただけだ。勝てると思ったから出したのに。とんだ期待外れだぜ。」
「お前なぁ……」
朦朧とした意識の中、光の中で姫宮と二条が何か言い争っていた。どうでもいいから、早く鎮痛剤が欲しかった。呼吸するだけで骨がずれてこすれ合い、痛い。頭がキーンとして、声が聞こえなくなってくる。姫宮のところに来るのは何度目になるかわからなかったが、進んで来たい場所ではなかった。姫宮が無遠慮に身体を触ることはもちろん、治療も、検査も、投薬も、手術も、入院も、セックスも、調教も、彼の奴隷と戯れさせられるのも、身体は反応するけれど、神経にこたえるのだった。
本能的に姫宮がどこか怖いのだ。人を検体として扱うことに慣れすぎている。それから、彼の優しさもこたえるのだ。最初こそ、彼の優しさに感激してすがりかけたものの、それが罠なのだ。そうやって嘘のやさしさで人の神経を蝕むのが彼のやり方だ。食虫植物のような男だった。嘘などいらない。真実の痛みだけが欲しい。二条は意味のない嘘はつかない。意味のある嘘はついても。それは真の優しさである。今だって、わざわざ聞こえるように大きな声で罵ってくれている。
しかし、間宮がこたえるということは、二条が悦ぶのである。これらの記憶は断片的にだが、はっきりと思い出せるのだから、脳は都合よくできている。彼の元に運ばれるのが嫌で、通常の仕事では細心の注意を払うようになったのも事実だ。診療所には最近めっきり立ち寄っていないが、思い出がありすぎる場所でもある。
霧野があの変態医者にいじくられてると思うと少しはいい気分になる気もするが、頭の中が悶々とし、気晴らしに携帯ゲームや自慰をする気にもなれず、家にいるのも嫌になって外に出た。
無意味に近所のコンビニに立ち寄った。立ち読みをしながら、ふとガラスに映った自分の姿が気になった。深夜ということもあり、首元を覆うのを忘れて刺青をむき出しにしてきてしまった。別に常に隠している必要も無いのだが。
外から騒々しい若い一団がコンビニに入ってきたが、間宮の姿を見ると一瞬場が静かになり、大騒ぎが小騒ぎくらいの騒ぎに変わった。最近では慣れたものなのでそのまましていると、何か熱い視線を感じた。視線の方を振り向くと女の店員がこちらをみて意味深に微笑んでいた。ミディアムウルフの裾にくすんだピンク色が入っていた。派手な髪にあわないどこかひずみのある微笑み方。女に会うのは初めてではなく何度か見たことがあった。シフトの関係か間宮が立ち寄る時間によく被る。
女から視線を外し、手に持っていたコミック誌を置き、あからさまに今は取り扱いも少なくなったアダルト誌の前に移動して中を見始めた。
くだらない。あまりにもくだらなすぎて、逆にわらけてくる。さっき流し読んだギャグマンガの10倍は面白い。く、く、と声が漏れるのをさっき入ってきた一団が遠巻きに気味悪そうに見て、さっさと買い物を済ませて去っていく。いつの間にかコンビニの客は間宮一人になり、女と二人きりになった。
間宮は爆乳をうたった女の表紙をした雑誌を手に、コンドームを1箱さらい、ちょうど切れていた牛乳を一パック抱えてレジの前に立った。女の顔を初めてしっかりと見た。一重で細い切れ長の目が、さっきと同じように微笑んでいる。名札に「白井」とある。見下げながら、乱暴に、投げるようにして商品を女の前に置いた。表紙の女の乳に比べてると目の前の女の胸などあってないようなものだった。先に女が「あなたが来てくれると変な客がいなくなって楽なんですよ。この時間帯変なの多くて。その分時給も高いんですけど。」と口を開き、動じた様子も無く淡々と商品をレジに通し始めた。
「ま、貴方もちょっと変だけどね。」
先手を取られた間宮は呆然と黙ったまま女を見降ろしていた。
「こ」と間宮が言いかけるのと同時に「す」と白井が言ったので、間宮は口をつぐんで居心地悪そうに目を逸らした。人となど接しなければよかった。興味も無い。
「あててあげましょうか。」
白井の目が細まった。もともと細かった目がきつねのように。
「あ?」
「何を言おうとしたか、あててあげます。」
彼女の口角があがる。
「こわくないのか?じゃない?」
「……」
「当たった?怖くないですよ。私はね、すてきですねあなたの首って言おうとしたんだから。前からずっと言おうと思ってた。それ、どこでしたんです?私もしようかな。」
「やめたほうがいい。」
咄嗟にそんな言葉が出たことに間宮自身も戸惑った。
「ええ?あなたの口からそんな風に言うなんて思わなかった。スタジオの名前教えてくれません?」
頭が回らなくなってきて、間宮は面倒になり、聞かれるがまま、海堂の店の名前を言い、笑われ、言ってから言わなければよかった、もし店であったら気まずく、海堂にも一言二言言われるだろうと思って悶々し始めた。
首を自分で絞めるようにして撫でた。じんと喉の奥、頭の奥の方が濡れるように痛んだ。皮膚の一部はざらざらとして、刺青の下に隠された古い傷口に爪を入れてガリガリとほじくった。
霧野。霧野の白い首筋を思い出す。これよりまだ浅いが同じ傷、「印」が、ほとんど同じ位置に鬱血してついていた。触り心地も似ている。彼が誰に何をされたかどんな感覚に陥るか間宮だけが身をもってわかる。アレは俺か?じゃあここにいるのは誰なんだ?彼の首筋に噛みついて頸動脈を切って殺したらどんな味がするだろうか。徐々に指先に力が入ってきて爪の先にぬるりとした温かい感触が触れた。
「痒いの?」
「別に、」
ポケットに生で入れていた1000円札を叩きつけるようにおいた。釣り銭も受け取らずエロ本とコンドームと牛乳で膨れたビニール袋をひっつかむようにして手に取り、逃げるようにしてコンビニを出た。白井が何か言っていたような気がしたが無視だ。
釣り銭のことが後になって気になり始めた。ポケットに手を突っ込むと札の感触がもう無く指先に額の小さいコインが当たる感じがした。
これだから!見ず知らずのカタギと話すのは嫌なのだった。白井、彼女のことは早く忘れなければいけないだろう。
首元の病んだ傷口が熱を持って痛み始めた。
初めての刺青だった。
「お前にプレゼントをやろう。」
はるか高みから二条が言った。プレゼント?死か?
朦朧とした意識の中、ベッドの上で間宮は喘ぎながら二条から遠ざかろうと身体を動かしていたが、まるでゲームのコントローラーをさかさまにしてゲームをさせられているかのようにうまく動かない。夢の中で走ろうとするとうまく走れないように、うまく動かない。これが夢だったら。何度そう思ったかわからないが、痛みが現実だと物語る。痛みが止まらない。上から踏みつけられ、苦痛に呻くと上からのしかかられ、固められた。彼の手に見慣れない銀色の太いペンのような物が握られ、ペンの尻からはコードのような物が伸びていた。
「……てぇ、やめ、て、ぇ゛……っ、もう…‥‥っ」
口から無意味な鳴き声が出ていた。「やめて」などと言えば、もっと彼を煽ることになるとようやくわかってきたとのいうのに、つい、癖になって止まらない。ぁぁ、と口の端から涎がでていくのを二条の親指が拭きり、口を開かせた。
「ん~?何をやめるんだよ?プレゼントだって言ってんだろ。ありがとうございますの間違いだろ?」
キュイイイと嫌な音が銀色のペンから鳴り始めた。
「ぁ……ぁ…‥‥っ、」
悟り、音のする方から目が離せなくなり、じわ、と目に涙が浮かぶのをこらえ二条を半ば睨み半ば懇願するように見た。あ、につづく、りがとうございます、など言えるわけもなく、口が言葉を失って、半開きになっていた。二条の表情が一切変わらず、厭より一層楽し気になってくるのを見ていると、こちらの顔から表情が消えてくる。呆然としながら代わりに「顔は……やだ、……」と呟いた。ペンが投げ置かれ、頬を打たれる。
「やだじゃないだろ?」
「…ぁっ、ぁ」
反対側を倍の強さで打たれ、もう一度反対側をさらに倍の強さで打たれるのが繰り返された。「がとう、ございますっ」と応えるとビンタが止まり代わりに顔を鷲づかまれた。息がかかるほど彼が近く、瞳に囚われた。
「そうだな。よくできました。」
人間の顔を直視することは苦手だったが、彼の瞳は別だった。見ることができた。常々、何故かと思っていたが、動物に近いのだ。形は人間の瞳を装っているが、その奥の仄暗い無感動な輝きは獣に近い。少しして顔が乱暴に離され、彼はペンを持ち直した。
「顔になどやらない。ここだ。」
チリ、と首元に刺すような痛みが走った。反射的に身体が驚いて浮くと、ペンがガリッと音を立てて引っ掻くようにしてずれた。焦げた匂いが充満し始めた。
「ああ!!!うあああ!」
「ああっ!!……と言いたいのはこっちだ!さっそくずれたじゃねぇかよ!はぁ……俺だってこんなことあまりしないんだ。下手するとペンでお前の喉を突き刺して殺してしまうかもしれない。それから、線がガタガタになって、顔にまでずれて、とりかえしのつかないことになるかもな!それはそれで面白いからいいけどよ、俺は。お前の顔見るたび笑ってやる。……喉が動いてやりづらいんだよ、もう喋るな。」
がっ、と、猛禽が獲物を捕る時の様に口元を押さえつけられ、彼の手の中で呼吸をしながら、皮膚の表面を削られていくのに耐えた。焦げた匂いに交じって彼の匂いと自分の匂いがする。息を強く吐く度、喉が熱い、痛い、痒い。
息をするたびに軽い嗚咽が漏れて、身体を動かす代わりに、指をぐーぱーと動かして苦痛を逃がした。身体が熱く、のしかかれて首にとりかえしのつかない何かをいれられているというのに、ゆっくりと首筋を舐められているかのような変な気分。コリコリと喉を掻かれていると普段の鉄球を身体に打ち込まれるような暴力と比べて甘やかな感触さえ覚える。二条を見上げる、彼は自分の手元に真剣だったが、たまに間宮の目を見上げるように見て、微笑んだ。頭の奥に何か針でも打ち込まれたような痺れる感覚がある。力の入っていた身体から徐々に力が抜けていき、二条の手の下で小さく悲鳴をあげるにとどまると、口から手がのけられた。涎でべとべととしているのを二条がシーツで拭きとっていた。彼も汗ばんていた。
「後ろ。」
「……」
見惚れるように彼を見上げていると、腹にボーリングの球でも落とされたかのような衝撃が走った。何かが逆流したらしく口の中が血生臭い。そのまま腸を上からゴリゴリと踏みしだかれベッドの上を蟲の様にのたうった。手を突くとシーツの表面が湿っている。喉が熱く脈打ち、踏まれながら首を絞められているようだ。
「後ろをやるんだよ。言われなくても察して動けるようにしろ。屑。いいか、貴様はこれから俺に尽くすことが生きがいになるんだ。」
身体を折り曲げながら怠い身体をベッドの上で転がして彼に背中を見せた。首がじんじんする。今度はうなじに同じく焼ける痛みが走り始めた。うつ伏せになることで顔が二条から見えなくなると、堪えていた涙が静かにシーツを濡らし始めた。
ついに、とりかえしのつかないことになったと思った。傷ならまだ時間をかけてゆっくり癒していくことができたが、これでは。しかし、また甘美な感覚が、正面よりももっと如実に首筋に走り、耳まで熱くなる。首筋から耳まで赤く仕上がっているだろう。はっ、はっ、と息が漏れると、尻の窪み、湿った溝に、熱い感覚が生まれ、芽吹くような感覚が身体に走り声が漏れた。指が突っ込まれ中を親指でぐりぐりと弄られ始めていた。
身体を浮かしそうになるが、耐え、目を細め、ふぅと息をつく。ペンが止まり、間宮の顔のすぐそばに転がった。インクがこぼれてシーツに黒い血のような染みを作った。背後に大きな獣の気配が湧きたった。一瞬で背後から突きさされ、大きな身体に押しつぶされそうになりながら、受け止めた。身体ごとベッドに沈んでいきそうだ。はぁ、と息が漏れ身体が弛緩し、汗がじわりと噴き出た。二条の手が探るようにして、再びペンをとりながら、密着した上半身を起こした。身体の中には彼が入ったままだ。彼の息が首筋にかかった。全身に彼の息遣いを感じていた。
「このまま、」
耳のすぐ近くから声がして、耳の穴から脳を犯されたかのようになって全身鳥肌だった。汗ばんだ身体がさらにベッドの中に溶け込んでいく。鼻の奥で甘い匂いがする。視界がぼやけていく。息を吐くと身体が勝手に震えた。
「このまま続きをしてやるからな。気持ちよくたって動くなよ。」
……、そうして、歪などす黒く太い模様が首一周に巻き付くようにして仕上がっていた。一番最初の刺青だった。
二条が背後に立ち、鏡を見せられた。あまり良い出来とは言えない、よく言えば歪んだチョーカー、悪く言えば首に切り取り線をいれられたようだった。かつて刺青が刑罰のひとつして用いられたことを思い出す。軽く指で触れれば痛み、熱く、消えることもなく、刻印された線が、元々引き攣って赤黒く鬱血していた皮膚の上に走っていた。
頭の中に、いや、身体の記憶が、痛みと甘美な感覚をよみがえらせ、厭という気持ち、ふざけるなという気持ち、なんてことをという気持ちと拮抗し、鏡の中で泣き笑いのような表情になっていた。
「お前が動くから悪い。」
「……」
「お前が動くから悪いな?」
「は、はい……」
「気に入ったか?お前が俺の奴隷として一歩近づいた証だ。」
半ば絶望していたはずなのに、何故か身体の奥の芯のような部分がくすぐったくなった。なんとも形容できず黙っていたが、二条は叱らなかった。
「なんだ、感動して声も出ないか?」と冗談なのか本気なのかよくわからないことを呟き、機嫌よさそうにしていた。
そのまま二条は海堂を呼びだした。細かいところを上から修正、飾りの様に広げることで二条が描いた線の面影を残しつつ幾何学の、昆虫が羽を広げて張り付いたような形の、見ようによってはグロテスクな、しかし、美しい黒の紋様ができあがった。首を前面から掴まれた時のように痛み、脈打つ。考えすぎると呼吸が詰まった。溜まっていた唾液を飲み込むと模様が一緒になって上下に動いた。
「これではもう、カタギと名乗るには厳しいでしょうね。」
海堂が淡々と残酷な事実を二条に向かっていい、彫られた張本人の心臓をぎりぎりといじめた。
「そうだろうな、だから一番目立つところにしたんだ。」
鏡越しに二条と目が合う。
「これでお前は戻れないな。」
彼の口が大きく開いて笑っていた。
家に帰る。何故かコンビニ袋の持ち手が赤くなっていた。いつの間にか首から出たらしい血が指に付着していたらしい。何を考えていたのか忘れた。指をちゅうちゅうと舐めながら、ベッドに飛び込み、うつ伏せになってエロ本をめくった。
霧野が好きそうな巨乳デカが犯罪者に股を開き、尻デカナースが変態医者に媚びていた。澄ました顔して、こんなもので家で息を荒げシコっていたとは。自分の尻の方がでかいくせに。
趣味ではないが、ベッドと身体の間が少しだけムズムズし始めた。そうだ、婦警はもうやったし、せっかくあのイカレ腐った病院にいるのだからナース服でも着せてやったらどうだろうか。ついでに姫宮の白衣やメスを拝借したって良い。自然と笑みがこぼれた。ムズムズは大きな波と合流して下半身を滾らせた。
間宮は作業机の上で手作りのルアーを摘まみ上げて手遊びしていた。自分では興味が無いが、海堂にあげれば喜ぶかもしれない。木材を加工して銀色と群青色に塗装した小魚型のルアーは手の中できらきらと光った。
時計を見る。深夜二時を過ぎた頃だ。眠れなくて、つい手遊びする癖がついてしまった。間宮は一つ大きく伸びをしながらベッドに戻ろうか思案し、机の上に頬杖をつき、時計の針が進むのを眺めていた。当たり前のように同じ速度で一定の方向に進んでいくこの時計が、いつからこの場所で動いているのかよく覚えていない。自分で置いたのかも覚えていない。
霧野はどうやら姫宮のところに居るらしかった。先日二条の車のタイヤを交換させられた時に、修理業者でも気が付かないであろう場所にしこんでおいたGPSが日中そう物語っていた。
別にバレたって良い。敢えてバレる位置につけたって良かったが、あまりにあざとすぎるだろう。それよりも、どうして気が付いてくれないのかと悶々としている方が長い間愉しむこともできる。実用的かつ趣味的。間宮は傍らのスマートフォンの画面に表示されたGPSのピンを眺めて薄っすらとほほ笑み、笑顔を消す。
無様にも病院送りにされた霧野の情けない姿を見舞いに行って追い打ちをかけてやろうと何度か思い立って、近くまで行くのだが足がすくみ、入っていけないのだった。
「一目見ただけで肋骨がバキバキなのがわかる。一体何をやったらこうなるんだよ。」
「一回り大きい相手と戦わせてみただけだ。勝てると思ったから出したのに。とんだ期待外れだぜ。」
「お前なぁ……」
朦朧とした意識の中、光の中で姫宮と二条が何か言い争っていた。どうでもいいから、早く鎮痛剤が欲しかった。呼吸するだけで骨がずれてこすれ合い、痛い。頭がキーンとして、声が聞こえなくなってくる。姫宮のところに来るのは何度目になるかわからなかったが、進んで来たい場所ではなかった。姫宮が無遠慮に身体を触ることはもちろん、治療も、検査も、投薬も、手術も、入院も、セックスも、調教も、彼の奴隷と戯れさせられるのも、身体は反応するけれど、神経にこたえるのだった。
本能的に姫宮がどこか怖いのだ。人を検体として扱うことに慣れすぎている。それから、彼の優しさもこたえるのだ。最初こそ、彼の優しさに感激してすがりかけたものの、それが罠なのだ。そうやって嘘のやさしさで人の神経を蝕むのが彼のやり方だ。食虫植物のような男だった。嘘などいらない。真実の痛みだけが欲しい。二条は意味のない嘘はつかない。意味のある嘘はついても。それは真の優しさである。今だって、わざわざ聞こえるように大きな声で罵ってくれている。
しかし、間宮がこたえるということは、二条が悦ぶのである。これらの記憶は断片的にだが、はっきりと思い出せるのだから、脳は都合よくできている。彼の元に運ばれるのが嫌で、通常の仕事では細心の注意を払うようになったのも事実だ。診療所には最近めっきり立ち寄っていないが、思い出がありすぎる場所でもある。
霧野があの変態医者にいじくられてると思うと少しはいい気分になる気もするが、頭の中が悶々とし、気晴らしに携帯ゲームや自慰をする気にもなれず、家にいるのも嫌になって外に出た。
無意味に近所のコンビニに立ち寄った。立ち読みをしながら、ふとガラスに映った自分の姿が気になった。深夜ということもあり、首元を覆うのを忘れて刺青をむき出しにしてきてしまった。別に常に隠している必要も無いのだが。
外から騒々しい若い一団がコンビニに入ってきたが、間宮の姿を見ると一瞬場が静かになり、大騒ぎが小騒ぎくらいの騒ぎに変わった。最近では慣れたものなのでそのまましていると、何か熱い視線を感じた。視線の方を振り向くと女の店員がこちらをみて意味深に微笑んでいた。ミディアムウルフの裾にくすんだピンク色が入っていた。派手な髪にあわないどこかひずみのある微笑み方。女に会うのは初めてではなく何度か見たことがあった。シフトの関係か間宮が立ち寄る時間によく被る。
女から視線を外し、手に持っていたコミック誌を置き、あからさまに今は取り扱いも少なくなったアダルト誌の前に移動して中を見始めた。
くだらない。あまりにもくだらなすぎて、逆にわらけてくる。さっき流し読んだギャグマンガの10倍は面白い。く、く、と声が漏れるのをさっき入ってきた一団が遠巻きに気味悪そうに見て、さっさと買い物を済ませて去っていく。いつの間にかコンビニの客は間宮一人になり、女と二人きりになった。
間宮は爆乳をうたった女の表紙をした雑誌を手に、コンドームを1箱さらい、ちょうど切れていた牛乳を一パック抱えてレジの前に立った。女の顔を初めてしっかりと見た。一重で細い切れ長の目が、さっきと同じように微笑んでいる。名札に「白井」とある。見下げながら、乱暴に、投げるようにして商品を女の前に置いた。表紙の女の乳に比べてると目の前の女の胸などあってないようなものだった。先に女が「あなたが来てくれると変な客がいなくなって楽なんですよ。この時間帯変なの多くて。その分時給も高いんですけど。」と口を開き、動じた様子も無く淡々と商品をレジに通し始めた。
「ま、貴方もちょっと変だけどね。」
先手を取られた間宮は呆然と黙ったまま女を見降ろしていた。
「こ」と間宮が言いかけるのと同時に「す」と白井が言ったので、間宮は口をつぐんで居心地悪そうに目を逸らした。人となど接しなければよかった。興味も無い。
「あててあげましょうか。」
白井の目が細まった。もともと細かった目がきつねのように。
「あ?」
「何を言おうとしたか、あててあげます。」
彼女の口角があがる。
「こわくないのか?じゃない?」
「……」
「当たった?怖くないですよ。私はね、すてきですねあなたの首って言おうとしたんだから。前からずっと言おうと思ってた。それ、どこでしたんです?私もしようかな。」
「やめたほうがいい。」
咄嗟にそんな言葉が出たことに間宮自身も戸惑った。
「ええ?あなたの口からそんな風に言うなんて思わなかった。スタジオの名前教えてくれません?」
頭が回らなくなってきて、間宮は面倒になり、聞かれるがまま、海堂の店の名前を言い、笑われ、言ってから言わなければよかった、もし店であったら気まずく、海堂にも一言二言言われるだろうと思って悶々し始めた。
首を自分で絞めるようにして撫でた。じんと喉の奥、頭の奥の方が濡れるように痛んだ。皮膚の一部はざらざらとして、刺青の下に隠された古い傷口に爪を入れてガリガリとほじくった。
霧野。霧野の白い首筋を思い出す。これよりまだ浅いが同じ傷、「印」が、ほとんど同じ位置に鬱血してついていた。触り心地も似ている。彼が誰に何をされたかどんな感覚に陥るか間宮だけが身をもってわかる。アレは俺か?じゃあここにいるのは誰なんだ?彼の首筋に噛みついて頸動脈を切って殺したらどんな味がするだろうか。徐々に指先に力が入ってきて爪の先にぬるりとした温かい感触が触れた。
「痒いの?」
「別に、」
ポケットに生で入れていた1000円札を叩きつけるようにおいた。釣り銭も受け取らずエロ本とコンドームと牛乳で膨れたビニール袋をひっつかむようにして手に取り、逃げるようにしてコンビニを出た。白井が何か言っていたような気がしたが無視だ。
釣り銭のことが後になって気になり始めた。ポケットに手を突っ込むと札の感触がもう無く指先に額の小さいコインが当たる感じがした。
これだから!見ず知らずのカタギと話すのは嫌なのだった。白井、彼女のことは早く忘れなければいけないだろう。
首元の病んだ傷口が熱を持って痛み始めた。
初めての刺青だった。
「お前にプレゼントをやろう。」
はるか高みから二条が言った。プレゼント?死か?
朦朧とした意識の中、ベッドの上で間宮は喘ぎながら二条から遠ざかろうと身体を動かしていたが、まるでゲームのコントローラーをさかさまにしてゲームをさせられているかのようにうまく動かない。夢の中で走ろうとするとうまく走れないように、うまく動かない。これが夢だったら。何度そう思ったかわからないが、痛みが現実だと物語る。痛みが止まらない。上から踏みつけられ、苦痛に呻くと上からのしかかられ、固められた。彼の手に見慣れない銀色の太いペンのような物が握られ、ペンの尻からはコードのような物が伸びていた。
「……てぇ、やめ、て、ぇ゛……っ、もう…‥‥っ」
口から無意味な鳴き声が出ていた。「やめて」などと言えば、もっと彼を煽ることになるとようやくわかってきたとのいうのに、つい、癖になって止まらない。ぁぁ、と口の端から涎がでていくのを二条の親指が拭きり、口を開かせた。
「ん~?何をやめるんだよ?プレゼントだって言ってんだろ。ありがとうございますの間違いだろ?」
キュイイイと嫌な音が銀色のペンから鳴り始めた。
「ぁ……ぁ…‥‥っ、」
悟り、音のする方から目が離せなくなり、じわ、と目に涙が浮かぶのをこらえ二条を半ば睨み半ば懇願するように見た。あ、につづく、りがとうございます、など言えるわけもなく、口が言葉を失って、半開きになっていた。二条の表情が一切変わらず、厭より一層楽し気になってくるのを見ていると、こちらの顔から表情が消えてくる。呆然としながら代わりに「顔は……やだ、……」と呟いた。ペンが投げ置かれ、頬を打たれる。
「やだじゃないだろ?」
「…ぁっ、ぁ」
反対側を倍の強さで打たれ、もう一度反対側をさらに倍の強さで打たれるのが繰り返された。「がとう、ございますっ」と応えるとビンタが止まり代わりに顔を鷲づかまれた。息がかかるほど彼が近く、瞳に囚われた。
「そうだな。よくできました。」
人間の顔を直視することは苦手だったが、彼の瞳は別だった。見ることができた。常々、何故かと思っていたが、動物に近いのだ。形は人間の瞳を装っているが、その奥の仄暗い無感動な輝きは獣に近い。少しして顔が乱暴に離され、彼はペンを持ち直した。
「顔になどやらない。ここだ。」
チリ、と首元に刺すような痛みが走った。反射的に身体が驚いて浮くと、ペンがガリッと音を立てて引っ掻くようにしてずれた。焦げた匂いが充満し始めた。
「ああ!!!うあああ!」
「ああっ!!……と言いたいのはこっちだ!さっそくずれたじゃねぇかよ!はぁ……俺だってこんなことあまりしないんだ。下手するとペンでお前の喉を突き刺して殺してしまうかもしれない。それから、線がガタガタになって、顔にまでずれて、とりかえしのつかないことになるかもな!それはそれで面白いからいいけどよ、俺は。お前の顔見るたび笑ってやる。……喉が動いてやりづらいんだよ、もう喋るな。」
がっ、と、猛禽が獲物を捕る時の様に口元を押さえつけられ、彼の手の中で呼吸をしながら、皮膚の表面を削られていくのに耐えた。焦げた匂いに交じって彼の匂いと自分の匂いがする。息を強く吐く度、喉が熱い、痛い、痒い。
息をするたびに軽い嗚咽が漏れて、身体を動かす代わりに、指をぐーぱーと動かして苦痛を逃がした。身体が熱く、のしかかれて首にとりかえしのつかない何かをいれられているというのに、ゆっくりと首筋を舐められているかのような変な気分。コリコリと喉を掻かれていると普段の鉄球を身体に打ち込まれるような暴力と比べて甘やかな感触さえ覚える。二条を見上げる、彼は自分の手元に真剣だったが、たまに間宮の目を見上げるように見て、微笑んだ。頭の奥に何か針でも打ち込まれたような痺れる感覚がある。力の入っていた身体から徐々に力が抜けていき、二条の手の下で小さく悲鳴をあげるにとどまると、口から手がのけられた。涎でべとべととしているのを二条がシーツで拭きとっていた。彼も汗ばんていた。
「後ろ。」
「……」
見惚れるように彼を見上げていると、腹にボーリングの球でも落とされたかのような衝撃が走った。何かが逆流したらしく口の中が血生臭い。そのまま腸を上からゴリゴリと踏みしだかれベッドの上を蟲の様にのたうった。手を突くとシーツの表面が湿っている。喉が熱く脈打ち、踏まれながら首を絞められているようだ。
「後ろをやるんだよ。言われなくても察して動けるようにしろ。屑。いいか、貴様はこれから俺に尽くすことが生きがいになるんだ。」
身体を折り曲げながら怠い身体をベッドの上で転がして彼に背中を見せた。首がじんじんする。今度はうなじに同じく焼ける痛みが走り始めた。うつ伏せになることで顔が二条から見えなくなると、堪えていた涙が静かにシーツを濡らし始めた。
ついに、とりかえしのつかないことになったと思った。傷ならまだ時間をかけてゆっくり癒していくことができたが、これでは。しかし、また甘美な感覚が、正面よりももっと如実に首筋に走り、耳まで熱くなる。首筋から耳まで赤く仕上がっているだろう。はっ、はっ、と息が漏れると、尻の窪み、湿った溝に、熱い感覚が生まれ、芽吹くような感覚が身体に走り声が漏れた。指が突っ込まれ中を親指でぐりぐりと弄られ始めていた。
身体を浮かしそうになるが、耐え、目を細め、ふぅと息をつく。ペンが止まり、間宮の顔のすぐそばに転がった。インクがこぼれてシーツに黒い血のような染みを作った。背後に大きな獣の気配が湧きたった。一瞬で背後から突きさされ、大きな身体に押しつぶされそうになりながら、受け止めた。身体ごとベッドに沈んでいきそうだ。はぁ、と息が漏れ身体が弛緩し、汗がじわりと噴き出た。二条の手が探るようにして、再びペンをとりながら、密着した上半身を起こした。身体の中には彼が入ったままだ。彼の息が首筋にかかった。全身に彼の息遣いを感じていた。
「このまま、」
耳のすぐ近くから声がして、耳の穴から脳を犯されたかのようになって全身鳥肌だった。汗ばんだ身体がさらにベッドの中に溶け込んでいく。鼻の奥で甘い匂いがする。視界がぼやけていく。息を吐くと身体が勝手に震えた。
「このまま続きをしてやるからな。気持ちよくたって動くなよ。」
……、そうして、歪などす黒く太い模様が首一周に巻き付くようにして仕上がっていた。一番最初の刺青だった。
二条が背後に立ち、鏡を見せられた。あまり良い出来とは言えない、よく言えば歪んだチョーカー、悪く言えば首に切り取り線をいれられたようだった。かつて刺青が刑罰のひとつして用いられたことを思い出す。軽く指で触れれば痛み、熱く、消えることもなく、刻印された線が、元々引き攣って赤黒く鬱血していた皮膚の上に走っていた。
頭の中に、いや、身体の記憶が、痛みと甘美な感覚をよみがえらせ、厭という気持ち、ふざけるなという気持ち、なんてことをという気持ちと拮抗し、鏡の中で泣き笑いのような表情になっていた。
「お前が動くから悪い。」
「……」
「お前が動くから悪いな?」
「は、はい……」
「気に入ったか?お前が俺の奴隷として一歩近づいた証だ。」
半ば絶望していたはずなのに、何故か身体の奥の芯のような部分がくすぐったくなった。なんとも形容できず黙っていたが、二条は叱らなかった。
「なんだ、感動して声も出ないか?」と冗談なのか本気なのかよくわからないことを呟き、機嫌よさそうにしていた。
そのまま二条は海堂を呼びだした。細かいところを上から修正、飾りの様に広げることで二条が描いた線の面影を残しつつ幾何学の、昆虫が羽を広げて張り付いたような形の、見ようによってはグロテスクな、しかし、美しい黒の紋様ができあがった。首を前面から掴まれた時のように痛み、脈打つ。考えすぎると呼吸が詰まった。溜まっていた唾液を飲み込むと模様が一緒になって上下に動いた。
「これではもう、カタギと名乗るには厳しいでしょうね。」
海堂が淡々と残酷な事実を二条に向かっていい、彫られた張本人の心臓をぎりぎりといじめた。
「そうだろうな、だから一番目立つところにしたんだ。」
鏡越しに二条と目が合う。
「これでお前は戻れないな。」
彼の口が大きく開いて笑っていた。
家に帰る。何故かコンビニ袋の持ち手が赤くなっていた。いつの間にか首から出たらしい血が指に付着していたらしい。何を考えていたのか忘れた。指をちゅうちゅうと舐めながら、ベッドに飛び込み、うつ伏せになってエロ本をめくった。
霧野が好きそうな巨乳デカが犯罪者に股を開き、尻デカナースが変態医者に媚びていた。澄ました顔して、こんなもので家で息を荒げシコっていたとは。自分の尻の方がでかいくせに。
趣味ではないが、ベッドと身体の間が少しだけムズムズし始めた。そうだ、婦警はもうやったし、せっかくあのイカレ腐った病院にいるのだからナース服でも着せてやったらどうだろうか。ついでに姫宮の白衣やメスを拝借したって良い。自然と笑みがこぼれた。ムズムズは大きな波と合流して下半身を滾らせた。
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