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Ⅰ.主食編
4.僕、こんなに美味しいの初めてです①
今日からヴァルは、『しばらく遠出』だ。
僕はヴァルに内緒でこっそりと後をつけて一緒に遠出する計画を立てた。
ヴァルは気配に敏感だ。
だけど、僕だってだてに竜はやってない。
見つからないように気を付ければきっと大丈夫だ。
ヴァルがどこに行くのか、何しに行くのかはわからないけど……。
ただでさえいつも死にそうなのに、さらに何をさせようって言うんだろう。
もし、ヴァルが死んじゃったらどうするつもり?
僕の計画はこうだ。
朝早く起きて、神殿の前で気づかれないように出待ちすれば、あとは気配を消してついていくだけ。
もし、ヴァルが大変そうなら陰ながらお助けするつもりだし、ヴァルが怪我しそうなら、その前に相手をサクッとヤっちゃうつもりだ。
うん、とってもシンプルかつ完璧な計画だ。
いや………完璧な計画のはず、だった。
いつもの寝床で涎垂らして、いつもよりずっと遅い時間に目を覚ました時の、僕の衝撃と言ったら……。
ああーーっ!僕のバカ!!
ダメじゃん!ダメダメじゃん!
僕、完全に置いていかれちゃったじゃん!!
でもっ……でもね!これにはちゃんとしたわけがあって!!
ヴァルが孤児院の敷地内に用意してくれた僕の寝床は、ヴァルが手づから作ってくれた箱状の犬小屋だ。
実際に住んでるのは竜だから、竜小屋だけどね。えへへ。
単純な完成予想図?設計図?をぱぱっと書いた後は、ギコギコ手際よく木を切って、トントン釘を打って、ものの一刻で出来上がった。
ヴァルってホントに器用だよね!
地面にはヴァルのおさがりの毛布が敷いてあって、ちょっと狭い囲われた空間が秘密基地みたいで、気に入っている。
隙間も歪みもない見事なつくりのおかげで、中に入れば昼間でも割と真っ暗で。毛布からはヴァルの残り香が香ってきて。
つまり、よく眠れちゃうってこと!
しかも昨日は、生ヴァルと一緒に寝入っちゃったからなぁ。
ヴァルは僕を抱っこしていると楽らしいのだけど、僕もヴァルに抱っこされるとどうにも心地よくて、ちょっとお腹が満たされたような気がして、いつもより良く眠れてしまう。
睡眠導入剤よろしく、僕はいつもよりさらに深い眠りの国へといざなわれてしまったようだ。
もう寝ちゃったよね。そりゃあ、もうぐっすりと。日が昇っちゃうまで一度も起きることなく。
あー……しかも、なんか美味しいものを食べるステキな夢まで見た気がする。
じゅるり。ヴァルって本当に最高だなぁ。
結果、寝過ごして、ヴァルがいつの間にかどこかに行っちゃう、という失態をおかしてしまったのだ。
寝床に移動した記憶もないから、きっとあの後ヴァルがわざわざ運んでくれたんだろう。
ヴァルってば、安定の優しさだなぁ。美味しそうな上に、優しいとかどうなってんのさ。
……でも今は、そのヴァルの優しさが憎い。
ふぅ……。
こうなったら、嘆いていても仕方がないよね!
今からでもあの美味しそうな匂いを頼りに探すしかない。
大丈夫。
あんなイイ匂いなのは、ヴァルしかいないから、絶対に見つけられるはず!
そう意気込んで、僕はただひたすら、ヴァルの美味しい匂いを頼りに、クンクンと鼻を鳴らしながら、森へと分け入った。
――で、あっという間に日が暮れた。
あうう……もう、真っ暗になっちゃったよぉ。
ヴァル、どこにいるの?どこまでいっちゃったの?
真夜中の森は、本当に暗い。
だけど、大丈夫。竜は目も耳も鼻もいいからね!
まぁ、それでもヴァルを見つけられてないんですけど。
ヴァルをこっそりつけるなら、がっつり気配を消すところだけど。
もはや合流することが最重要だから、ヴァルにも見つけてもらうため、逆に気配を残したままで進んでいく。
僕に気づいたヴァルが保護?してくれるかもしれないもんね!
たまに野生の獣が襲ってくるけど、サクッとヤって、先を急ぐ。
あぁ、もったいない。時間があれば、キレイに処理してヴァルに美味しく料理してもらうのになぁ。さっきのイノシシ?とか、その前のクマ?みたいなやつとか、絶対美味しいと思う。
ああ、もったいない。
でも、今はヴァルを見つけるのが最優先事項だから。ぜんぶ我慢する。
「あんな役立たずはもう必要ない。竜の神子である、ユーリがいるのだから」
竜の神子?
僕は不意に聞こえてきた人の声と、竜の神子、という言葉に足を止めた。
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