【本編完結】迷子の腹ぺこ竜はお腹がいっぱいなら今日も幸せ〈第10回BL小説大賞エントリー〉

べあふら

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Ⅱ.体に優しいお野菜編

1.僕、役に立つ竜です①

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 僕、ルルド。ちょっと大人になった竜です。
 いかがお過ごしですか。

 先日のクラーケンの一件、青銀竜の長テティと会ってから、3週間が過ぎた。
 あの後、僕とヴァルは二人、無事に街へと帰った。

 神殿に報告に行く、と言ったヴァルは、何事も無かったように帰ってきて……。

 それだけだった。

 つまり、ヴァルはこれまでと変わらない待遇で、毎日神殿へお仕事に行っているわけで……。
 何事も無かったように神官してる。


 もうっ!ちょっとまってよ!!僕、全然納得いかないんですけどっ!!

 だってそうでしょ。神殿の人たちって糞野郎なんだよ?
 クラーケンの調査だか退治だかに行った時だって、怪我して動けなくなったヴァルを、あんな人気のないところに一人放置して帰っちゃうような人たちなんだよ?

 あのまま僕がヴァルを見つけなかったら……。
 ああ、もう!ムカムカする!
 
 だって、あれって、ヴァルが死んでもかまわないってことなんだから。

 なんでそんな人たちと一緒にいなきゃいけないの!?

 どういう経緯でそうなったのかは知らない。ヴァルが教えてくれないから。

 うう~~~、意味わかんない!!絶対これおかしいよね!?

「馬鹿。竜の情報に関しては、ほぼ神殿が独占してるからな。
 竜の長に会おうなんて考えてんなら、神殿を離れんのは愚策だろ。俺が神官でいた方が都合がいいんだよ。
 お前は絶対に近づくなよ」

 なんて言われちゃうと……責任の一端どころか、元凶である僕には何も言えなくなっちゃうわけで。

 ヴァルは、「あんな奴ら、もうどうでもいいんだよ」なんて言ってるけど。

 僕は絶対に許さない。

 …………まぁ、その許さない相手のことを僕ってば全然覚えてないから、どうしようもないんだけど。

 あーあ。こんなことなら、森ですれ違ったとき、サクッとヤっとけばよかったな。
 そんなことしたら、きっとヴァルに怒られちゃったんだろうけど。

 いずれにせよ。

 ヴァルは僕を一人前の竜にしようと考えてくれて、頑張ってくれてるってこと!

 だから僕も、早く成熟した竜になって自分で自分の竜気を取り込めるようになる!てことを、当面の目標にした。 

 ヴァルが神殿とかの伝手で色々と調べるなら、僕は僕で別行動で色々調べた方が、効率がいいと思うんだけど……。

 僕がそう言っても、

「お前ひとりにしてると、何しでかすかわからねぇ。
 いいか。余計なことはせずに大人しく俺といるんだ。わかったな?」

 て、言われて。

 それはもう、真剣なまなざしで、あの強い握力でぎりぎりと肩を痛いくらいにつかまれた。

 ヴァルの熱烈なお誘いに、僕は肩がみしみし痛むのも忘れて、きゅんとしちゃって、思わずうなずいちゃった。

「そもそも、これまでお前が自分の成長に関する何かしらを自分で見つけることができてるなら、とっくにできてるはずじゃねーか。
 俺からする美味そうな匂いにつられるみたいに」

 確かにその通りなんだよね。

 あーあ、テティも他の竜の長がどこにいるか教えてくれたらいいのに。

 ヴァルがテティに確認したら、知らないって言われたんだって。
 
 竜の長って仲が悪いのかな……。

 だって、よくよく考えたら、僕が青銀竜の長、黄金竜の長、赤銅竜の長の3人の子供みたいな存在ってことはだよ。

 これってつまり、完全に三角関係じゃない?

 ヴァルにもそう言ってみたら、

「…………………は?意味わからん。つーか、興味ねぇよ」

 て、一蹴された。 
 あの時のヴァルの呆れた顔と言ったら。

 いつものヴァルだなって。あのしかめっ面で、人を蔑んだ感じの悪人みたいな鋭い視線の怖い顔。

 うんうん。これぞ、ヴァルの標準形態だよ!

 僕の大好きな、ヴァルのすっとした睨むような瞳。うーん、尖ってるね!とってもかっこいいよ!!

 ヴァルはなんだかずっと、ずーんと沈んでて、元気なかったから心配してたけど、元気になって本当に良かった。



 で、『余計なことはせずに大人しく俺といるんだ』なんて、プロポーズみたいなことを言われた僕は、最近どう過ごしているかというと……。

 僕は、『出先で拾った記憶喪失の子』として、一時的に孤児院に保護された。ことになっている。

 ちょっと待って。さすがにこれは、意見の相違じゃ片づけられない。
 
 保護ってどういうこと?
 僕、これでも200歳だよ。200歳で保護される人なんて、いる?

 ………………うーん、いるね。むしろ、保護されちゃうね。確実に。
 そんでもって、最高齢で表彰されちゃうね。これ。

 そんなこんなで、人型になってこれまでみたいに孤児院の番犬としていられなくなってしまったけど、相変わらず孤児院で過ごしてる。

 でも、僕は竜だから。
 当然、「僕は保護されなくても一人で大丈夫だよ」って主張した。実際、これまでだって僕は一人で大丈夫だったんだから。

 それどころか、僕はテティに青銀竜の竜気をもらって、ヴァルに黒い竜気をもらうようになって、ヴァルの言うところの“竜気術”を使えるようになった。

 つまり、前よりもっと色々たくさんなことができるようになったのだ。

 だから、何も心配することなんて無いのにね?ヴァルってば、本当に心配性なんだから。


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