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Ⅱ.体に優しいお野菜編
46.僕、またちょっと成長します②
しおりを挟む降誕の地。
だって、そこに行けば、竜の卵があるってことでしょ。
竜の卵って、美味しいのかな?
なんて考えていると、グノがじっと僕を見ていた。
グノの紅いはずの瞳は見えないのに。僕は、不思議と視線に射抜かれている心地がして、こくっと勝手に喉が鳴る。
「ルルド。僕たちの大切な子。黒い竜気を司る唯一の存在。
どうか今、ボクの竜気、受け取って。
今、ルルドが成長する。この人の子にとっては、きっと意味のある事。
大丈夫、今のルルドなら自分の竜気、足りてるから。
ボクの竜気を受け取っても、気を失ったりはしないはず。
そのまま、君たちは君たちの目的を果たせばいい」
うーん。つまり、今、僕が成長すると、ヴァルにとって何かいいことがあるんだね。
「わかった。グノ。あなたの竜気、僕にちょうだい」
正直、グノの話、難しくてよくわからなかったけど。
僕が竜として成長して、それで少しでもヴァルの役に立てるなら、僕が迷うことは何もない。
テティの竜気をもらったときのことを考えると……もやっと不快な戸惑いがわいてくるだけで。
僕は受け取る覚悟を決めて、グノと向かい合った。
僕より背の低いグノが、両手を僕へと伸ばす。ひんやりとした小さな手が僕の両頬を包む。
ヴァルは今、どんな顔をしてるんだろう。何を考えてる?
僕は何だかヴァルの顔が見たいのに、見るのが怖くなった。
じっとグノを見つめていると、厚い金髪の前髪からちらりと真っ赤な瞳がのぞいた。
うわぁ……本当に、本物のルビーみたい。
深紅の深い色に吸い込まれるような心地がする。深い深い何かに体が引きずられていくような……不思議な感覚だ。
どのくらいそうしていただろうか。
「終わったよ」
短い終了の言葉と共に、グノの手が僕の頬から離れた。
「え………?」
終わった……?
僕がきょとんとしていると、グノは不思議そうに首を傾げている。
「どうしたの?何か変調がある?」
「えーっと……ホントに終わったの?」
「うん」
「もう、グノの竜気僕がもらったってこと?終わり?」
「そう」
ええぇぇぇ………どういうこと?
だって、テティの時はぶちゅっとして、舌も入ってきて、もうそれはなんていうか……ねぇ?
だから今回も、同じことをされると思って、意を決して覚悟を決めたのに。
「グノ……その、竜気をくれる方法は、さ。口づけ、じゃないの?」
「口づけ?」
「だって、テティは……僕に口移しで、テティの竜気を……青銀竜の竜気をくれたから……」
あ。それとも、竜気の種類によって渡し方が違うとか?
僕の言葉に、グノはふむ、としばし考えて、
「竜が、他者に竜気を与えるのに、口づけは必要ない」
と言った。
「…………へ?」
「特にルルドは特別だから。ボクたちとの繋がりが深い。尚の事必要ない」
「ええーっ!?そうなのー!!?」
「そうでなければ、卵のときはどうやって竜気あげるの?」
「あ。そっか……そうだよね」
ごもっともです。
ええ……何それ。じゃあ、僕何のためにあんなディープなキスをされたわけ?
「あいつ……煽りやがったな」
あおる?どういう意味?
「じゃ、……じゃあもしかして、僕がヴァルから黒い竜気をもらうのに……その、セッ……せい、」
「性交が必要っていう話は?それも嘘なのか?」
言い淀む僕に、ヴァルが平然と言う。
「それは、本当。竜気を与える行為、普通は竜から人だから」
「あ……えー……確かに」
そうだよね。だって、竜は竜気の塊なんだもんね。
「竜が竜気与えるとき、触れなくとも可能。
早く多く与える場合は触れた方が効率いい。さっきボクがルルドに触れたように。
人から竜に竜気与える、普通しない。ルルドが竜として未熟だから。この人の子の黒い竜気濃いから、可能なこと。特別なこと」
「だよねぇ……」
そっか……そっちは本当なのか。
うーん……それは残念なような、良かったような。
………ん?良かったって、何?
いやいや、何って、ナニって……いや!違うくって!!
ていうかっ!さっきの僕の覚悟はなんだったのっ!?
誰かと……ヴァル以外の人と口づけしてるとこなんて、ヴァルに見られたく無いな、なんて思って。
だけど、それがヴァルの役に立つのに必要なら仕方ないな、と思って。
我慢して、受け入れようと覚悟したのにさ!!
………というか、ヴァル以外の人と、あんなぶちゅーっとしたく無いし。
そう思ってヴァルの方を見ると、ヴァルは額に右手をあて、深くため息をついているところだった。
ちらりと上向いた紫色の視線とぶつかって、僕の心臓がドキリと跳ねる。
あれ?今、僕……また、何考えた?え……何これ。これって……どういうこと?
え?ええ?僕……ヴァルとだったらしてもいい、みたいに思ってるってこと?
いや、思ってるけどね?い、いやさ。そりゃあ、そうだよ。今更だもん。
だってもう、何回もしまくってるからね!それ以上のこともねっ!!
ほら、気持ちいいし、美味しいしねっ!!
うわぁ、いや、もう……なんていうかっ!考えれば考えるだけ、カッカと熱くなって、ドキドキしてくるのは、どういうことなの!?
ああぁぁぁ~~~っっ……もう、僕、この気持ちどうしたらいいの!!?
顔にこもった熱がじんじんと耳まで赤く染める。自分の頬を自分の手で冷やしながら、うーうーと唸っていると、ヴァルにおでこをぴんと弾かれた。
「うっ……痛いよ、ヴァル」
「何、一人で百面相してんだ」
「……だって」
「全部含めて、まんまと青銀竜の長にからかわれたんだよ。俺もお前も」
「えー……なんで?」
何の意味があるの、そんなことして。
僕の疑問に、グノが答えてくれる。
「テティは移ろうものに惹かれる性質。変化、動揺、困惑すべてに寄り添う」
「つまり?」
「人の言葉でいえば、ただ人を揶揄うのが好き、それだけ」
な、なるほどぉ……。単純明快だ。何の意味も無かった。
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