【本編完結】迷子の腹ぺこ竜はお腹がいっぱいなら今日も幸せ〈第10回BL小説大賞エントリー〉

べあふら

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Ⅱ.体に優しいお野菜編

46.僕、またちょっと成長します②

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 降誕の地。

 だって、そこに行けば、竜の卵があるってことでしょ。
 竜の卵って、美味しいのかな?

 なんて考えていると、グノがじっと僕を見ていた。
 グノの紅いはずの瞳は見えないのに。僕は、不思議と視線に射抜かれている心地がして、こくっと勝手に喉が鳴る。

「ルルド。僕たちの大切な子。黒い竜気を司る唯一の存在。
 どうか今、ボクの竜気、受け取って。
 今、ルルドが成長する。この人の子にとっては、きっと意味のある事。
 大丈夫、今のルルドなら自分の竜気、足りてるから。
 ボクの竜気を受け取っても、気を失ったりはしないはず。
 そのまま、君たちは君たちの目的を果たせばいい」

 うーん。つまり、今、僕が成長すると、ヴァルにとって何かいいことがあるんだね。

「わかった。グノ。あなたの竜気、僕にちょうだい」

 正直、グノの話、難しくてよくわからなかったけど。
 僕が竜として成長して、それで少しでもヴァルの役に立てるなら、僕が迷うことは何もない。

 テティの竜気をもらったときのことを考えると……もやっと不快な戸惑いがわいてくるだけで。

 僕は受け取る覚悟を決めて、グノと向かい合った。
 僕より背の低いグノが、両手を僕へと伸ばす。ひんやりとした小さな手が僕の両頬を包む。

 ヴァルは今、どんな顔をしてるんだろう。何を考えてる?

 僕は何だかヴァルの顔が見たいのに、見るのが怖くなった。
 じっとグノを見つめていると、厚い金髪の前髪からちらりと真っ赤な瞳がのぞいた。

 うわぁ……本当に、本物のルビーみたい。
 深紅の深い色に吸い込まれるような心地がする。深い深い何かに体が引きずられていくような……不思議な感覚だ。

 どのくらいそうしていただろうか。

「終わったよ」

 短い終了の言葉と共に、グノの手が僕の頬から離れた。

「え………?」

 終わった……?

 僕がきょとんとしていると、グノは不思議そうに首を傾げている。

「どうしたの?何か変調がある?」
「えーっと……ホントに終わったの?」
「うん」
「もう、グノの竜気僕がもらったってこと?終わり?」
「そう」

 ええぇぇぇ………どういうこと?
 だって、テティの時はぶちゅっとして、舌も入ってきて、もうそれはなんていうか……ねぇ?
 だから今回も、同じことをされると思って、意を決して覚悟を決めたのに。

「グノ……その、竜気をくれる方法は、さ。口づけ、じゃないの?」
「口づけ?」
「だって、テティは……僕に口移しで、テティの竜気を……青銀竜の竜気をくれたから……」

 あ。それとも、竜気の種類によって渡し方が違うとか?

 僕の言葉に、グノはふむ、としばし考えて、

「竜が、他者に竜気を与えるのに、口づけは必要ない」

 と言った。

「…………へ?」
「特にルルドは特別だから。ボクたちとの繋がりが深い。尚の事必要ない」
「ええーっ!?そうなのー!!?」
「そうでなければ、卵のときはどうやって竜気あげるの?」
「あ。そっか……そうだよね」

 ごもっともです。
 ええ……何それ。じゃあ、僕何のためにあんなディープなキスをされたわけ?

「あいつ……煽りやがったな」

 あおる?どういう意味?

「じゃ、……じゃあもしかして、僕がヴァルから黒い竜気をもらうのに……その、セッ……せい、」
「性交が必要っていう話は?それも嘘なのか?」

 言い淀む僕に、ヴァルが平然と言う。

「それは、本当。竜気を与える行為、普通は竜から人だから」
「あ……えー……確かに」

 そうだよね。だって、竜は竜気の塊なんだもんね。

「竜が竜気与えるとき、触れなくとも可能。
 早く多く与える場合は触れた方が効率いい。さっきボクがルルドに触れたように。
 人から竜に竜気与える、普通しない。ルルドが竜として未熟だから。この人の子の黒い竜気濃いから、可能なこと。特別なこと」
「だよねぇ……」

 そっか……そっちは本当なのか。
 うーん……それは残念なような、良かったような。

 ………ん?良かったって、何?
 いやいや、何って、ナニって……いや!違うくって!!

 ていうかっ!さっきの僕の覚悟はなんだったのっ!?
 誰かと……ヴァル以外の人と口づけしてるとこなんて、ヴァルに見られたく無いな、なんて思って。
 だけど、それがヴァルの役に立つのに必要なら仕方ないな、と思って。

 我慢して、受け入れようと覚悟したのにさ!!

 ………というか、ヴァル以外の人と、あんなぶちゅーっとしたく無いし。
 
 そう思ってヴァルの方を見ると、ヴァルは額に右手をあて、深くため息をついているところだった。
 ちらりと上向いた紫色の視線とぶつかって、僕の心臓がドキリと跳ねる。

 あれ?今、僕……また、何考えた?え……何これ。これって……どういうこと?
 え?ええ?僕……ヴァルとだったらしてもいい、みたいに思ってるってこと?

 いや、思ってるけどね?い、いやさ。そりゃあ、そうだよ。今更だもん。
 だってもう、何回もしまくってるからね!それ以上のこともねっ!!
 ほら、気持ちいいし、美味しいしねっ!!

 うわぁ、いや、もう……なんていうかっ!考えれば考えるだけ、カッカと熱くなって、ドキドキしてくるのは、どういうことなの!?

 ああぁぁぁ~~~っっ……もう、僕、この気持ちどうしたらいいの!!?

 顔にこもった熱がじんじんと耳まで赤く染める。自分の頬を自分の手で冷やしながら、うーうーと唸っていると、ヴァルにおでこをぴんと弾かれた。

「うっ……痛いよ、ヴァル」
「何、一人で百面相してんだ」
「……だって」
「全部含めて、まんまと青銀竜の長にからかわれたんだよ。俺もお前も」
「えー……なんで?」

 何の意味があるの、そんなことして。
 僕の疑問に、グノが答えてくれる。

「テティは移ろうものに惹かれる性質。変化、動揺、困惑すべてに寄り添う」
「つまり?」
「人の言葉でいえば、ただ人を揶揄うのが好き、それだけ」

 な、なるほどぉ……。単純明快だ。何の意味も無かった。


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