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ルート・オブ・アッシュの‘見習い’魔女
ルート・オブ・アッシュの‘見習い’魔女2
しおりを挟むそれから日が暮れないうちにと思ってか、王子の黒子のような従者たちは瞬く間に準備に取り掛かり、完璧なまでに整えられた天幕の中は、一体どこの王宮か貴族の客間かというような仕様になっていた。
上を見上げれば、あくまでも天幕の筈なのに床には絨毯が敷かれ、その上に毛皮の敷物が敷かれ、そして天蓋付きの巨大なベッドが鎮座ましましていて、ラシルはこめかみを押さえた。
「王子様は…お幸せですねぇ」
曲がりなりにも一国の王族と比べるのは間違っているかもしれないが、こんな立派なベッドなど、贅沢好きの師匠でも持っていない。
「俺? うん、そうだね。概ね幸せかな」
厭味のつもりで言ったのだが一向に効き目はなかったようなので、ラシルは諦めて天幕に中に入った。これだけ綺麗にしてもらっていたら、床で寝ようが平気であろうというものだ。さすがに王子と同衾するつもりは毛頭なかったが、それはどちらかというと王子様と同じベッドで寝るなんてとんでもない、という発想に過ぎない。
ふと思いついた質問を投げかけてみる。
「あのぅ、王子様は、ええっと…こんなに恵まれているのに、どうして家出なんてしてるんですか…?」
恵まれているから幸せとは限らないし、それがわからないほど子供ではないが、今アシュランは自分が概ね幸せだと言ったし、それは嘘ではないように思えた。
「えー、聞きたいの?」
「…できれば」
ラシルの事情だけ聞いて自分は黙ってるのはどうなの、と心の中で問い詰めてみるがやっぱり口にはしない。できるだけにっこり笑ってみたけれど、きっとラシルの分厚い眼鏡が邪魔をして笑顔に見えるかどうかはちょっと謎だった。
アシュランは、気まずそうに苦い顔をした。
「あんまり…楽しい話じゃないんだけど」
そりゃあ楽しい話だったら家出なんてするわけがない。あ、ちょっと待ってすごく深刻な話だったら? とラシルは動揺したが今更撤回もできない。かろうじて心の中で覚悟を決めて、大丈夫です、と頷いて見せた。
「……ものすごく嫌な縁談が来ちゃったんだよね」
苦虫を噛み潰したような、思い出したくないといった体で話すのが、縁談?
「…嫌なら…お断りすればいいのでは…」
それはそうだろう。一国の王子とあれば次々政略目的の縁談が舞い込んでもおかしくはない。だが一人につき相手も一人しか選べない以上、嫌なら断るしかないのでは。
ラシルはそう思ったのだが、アシュランはくるりとラシルの方を向いて言い聞かせるような口調になった。
「あのね、断るには理由が要るでしょ? 政略結婚っていうのは条件で篩いにかけられるもんだし、俺の気持ちなんてお構いなしで決まっていく話を、簡単に断れると思う?」
「……そういうものなんですか?」
「そういうものなんです」
ということはつまり。
少なくとも最有力候補、最高に条件が整った相手ということだ。
では。
「…じゃあ、王子様がどうしても断りたい理由って、何ですか?」
何気なく問うただけなのだが、アシュランはそれこそ物凄く嫌な顔をした。そしてぱちん、と指を鳴らすと天幕の隅っこから従者の黒い袖がにゅっと出てきてラシルは仰け反った。
「もちろん口外無用なんだけど、そんなに知りたいなら見せてあげるよ。お相手の肖像画」
手渡されたのはどうやら見合い写真ならぬ肖像画だったようで、一枚の絵のために重厚な装丁を施した豪華な本のようなそれを、アシュランはラシルに差し出した。
「ええと…失礼して、拝見します」
見ていいものかどうか迷ったが、王子自らが差し出したのだから見ない手はない。ラシルも何となく推測できるその理由とやらを確かめたかった。
ゆっくりと分厚い一枚の表紙を捲ると、果たして。
ラシルは一瞬見て、それから日頃からは考えられないような素早さでぱたんと表紙を閉じた。
「ね? わかるでしょ?」
アシュランの声もどこか殺気立っているような気さえする。
「…ええと、外見だけなら王子様とちょっと釣り合わないかな、と思います…」
「そうなんだよ、その他諸々の条件が釣り合ってなかったらよかったのにねぇ」
他人事のように嘯いて、アシュランは豪華なベッドに寝転がった。
ラシルはあまり人の容姿に興味はないが、それにしてもこの綺麗な王子に嫁がせるのは親であっても勇気がいるような女性だった。そして縁談用の肖像画であれば、十中八九何割増しかで美化されている筈で、政略結婚とはこんなにも残酷なのかとラシルは慄いたのだった。
「でも、失礼ながら外見はともかく、気立てのいいやさしい人かもしれませんよ!」
万に一つであっても絵より本人の方が(少しは)美しいかも、という可能性もある。美醜というのは見る人によって随分変わってくるものだから、好みであるかどうかが一番ではないのか。
そんなようなことを一生懸命慰めるように言ってみせるが、アシュランは呆れたようにラシルを見るばかりだ。
「周りもそう言ったし俺もそう思って、とりあえず逢うだけって逢ってみたら…予想以上だったんだよ」
「もう逢ったんですか!?」
それは想像していなかった。
「頑丈な城の廊下が抜けるんじゃないかと思うような轟音を響かせて歩いてきたし、森を抜けるにあたってはその姫の体が通らない場所があるということで、樹を五本ぐらい切り倒しちゃったんだって。まぁ、もちろん姫が通れなかったというよりは姫を運ぶ輿とそれを運ぶ従者の幅を含めてってことだと思うけどね」
いくら手付かずでも貴重な樹齢何百年という樹を五本も。
アシュランでなくても呆れる話だ。
「しかも趣味は食べ歩きで諸外国から下町まで美味しいと噂を聞けばどこへでも行くんだって。もちろん、自分で歩いてじゃないよ? 輿や特注の馬車に乗ってお供を連れてさ。この小さな国にそんな贅沢する財産があると思うのかなぁ」
まぁ、あれだよね、ヴィダルに来て生活したら嫌でも痩せるかもね。自棄になったようなアシュランの物言いだが、どうしても自分と結婚する、という表現はしたくないようだった。
「そ、そんなお姫様でもお断りできないような立場なんですか…?」
立派な体格だけなら百歩譲ってともかく(生活習慣やアシュランの魅力で痩せようと努力するかもしれないし)肖像画のお姫様は、どう見てもアシュランの母上より年上だろう、と思われた。
それを、王子が家出するまで断ることもできないとは。
「考えればわかるよね? 王国ヴィダルのような小さい国なんてどこの国から見ても取るに足らないじゃない。で、このお姫様はどこにも貰ってもらえなかったからあのお年まで一人だったと。だから俺に体よく押し付けて―――結婚しなかったら国を滅ぼすぞ、とやればいいわけでしょ?」
「……そんなの、酷い!」
聞きながらラシルは猛然と腹が立ってきた。
「そんなの勝手です! その国の王様も家来の人たちも、何でそんな勝手なことをさせてきたんですか! お姫様もお姫様よ! わ、わたしのお師匠様が女子はいくつになっても美しくいる努力をしなきゃいけないって、口癖のように言ってるんです! わたしは味噌っかすですけど、お師匠様の美しさを見たら努力しない人は許せません!」
実のところ、師匠であるリコの若さと美しさの秘訣はわからない。あの異様な若さを考えれば魔法の力が働いているかなという気もしないでもないが、それだって非常に努力をして手に入れたルート・オブ・アッシュの魔女という肩書きの賜物だろう。
アシュランは、興奮してまくし立てたラシルに驚きつつ、ベッドの上で起き上がった。
「…ありがとう。そんなに怒ってくれたのは君が初めてだ」
意外なほど素直に礼を言われて、ラシルは照れくさくなって俯いた。
「……もちろん、見た目だけで人を評価するのはよくないですけど……心が美しければ姿にも現れるって、お師匠さまがいつも言ってるし……」
「そうだね……」
そしてアシュランはベッドを降りるとラシルに近寄ってきた。
「ところでラシルはどうしてそんな隅にいるの?」
そう言って手を差し出す。意味がわからないままラシルは無意識にその手を取ってしまった。
「あの、この辺で寝たらお邪魔にならないかと思ったんですけど…」
何かまずかっただろうか。
アシュランはラシルが載せた手を掴むとそのままの勢いで立ち上がらせ、それからふわりとその体を抱き上げた。
「きゃあっ!」
いわゆるお姫様抱っこというやつで、ラシルは動転した。
「わあ、軽い。あの姫だったら絶対無理だよねぇ」
アシュランは軽い口調でラシルの動揺をものともしない。
「王子様! な、何! 何するんですか!?」
「あのねぇ、そんなところに女の子を寝かせるなんて、俺の美意識が許すわけがないだろう。こんなに大きなベッドがあるんだから、一緒に寝たらいいじゃないって言ったでしょ?」
だから一緒に寝ようよ、とアシュランは真面目に言っている。
「いや、駄目です! 駄目です! 王子様と一緒に寝るなんてとんでもない…! あっ…!」
必死でもがいていたラシルがはっとした。
いやあのもしかしてもしかしなくても、お師匠様とメンディスがするようなことをするとかしないとかそういうことなの!?
具体的にはわからないまでも妙な想像が働いてラシルは真っ赤になった。アシュランは目ざとく気づいてからかう口調になる。
「あれ? 何か期待しちゃった? じゃあ、期待に応えようか」
ラシルをベッドに寝かせると、そのまま覆い被さるようにして囁いた。顔が目の前にある。
「近い近い! 近いです! 期待なんてしてません! 何を期待するんですかぁ!」
真っ赤になりつつ泣きそうな声になったラシルに、アシュランは体を起こして笑い出した。
「冗談だよ。世界で貴重な見習い魔女さんにそんな不埒なことをしたら捕まっちゃうでしょ。一緒に寝るだけだよ」
ほうう、っと深い溜息がラシルの口から漏れた。
安堵したのはオトナの関係を強要されそうになったことから逃れられたからだけではない。美しい顔が間近に、メンディスほどの渋い低音ではないにしても甘くやさしい声が耳元で、そんな心臓に悪い状態から解放されたからだった。
(王子様と一緒にいると…心臓がいくつあっても足りません…!)
心の片隅で、さっき見た縁談相手の肖像画を思い出して、あのお姫様もこの王子に逢ったのなら痩せたくなったり綺麗になりたくなったりしないかしら、そうしたら少しは、などと思ってみて胸がちくりと痛んだ。
ん?
何だろうこの痛みは、ああそうか今さっきどきどきした心臓の名残だ、と思って納得した。
アシュランはラシルの横に寝転んで、丁寧に上から掛け布団をかけてくれた。
「あのぅ、さっきせっかく編み直してもらったけど、髪解いていいですか? 引きつって頭が痛くなっちゃうので」
「ああ、もちろんだよ」
ラシルはちょっとだけ頭を上げて髪を結んでいた紐を解く。ふわりと編み癖のついたウェーヴの黒髪がベッドに広がる。アシュランの頬にも少し当たって、微かに彼は動揺した。
「…その眼鏡も、寝る時ぐらいは外した方がいいと思うんだけど」
と、ラシルの目元を指差して、ラシルがああ、と気づく前に取り上げた。
「ああっ! 自分で! 自分で外します! さすがにわたしだって寝る時まで眼鏡はかけてない…!」
「はいはい、もう取っちゃったから、いいでしょ」
ラシルが慌てる間にさっと取り上げてベッド脇のテーブルの上に置く。向き直ってラシルを見たアシュランの顔が――――固まった。
「……えー、そういうの反則…」
何故か赤くなって小さく呟いた声はラシルには聞こえなかったらしい。
そして眼鏡を外されたラシルには、アシュランの頬が赤くなっていることなどまったく見えていなかった。
「…おやすみ」
「はい、おやすみなさい!」
元気に返事したラシルをよそに、そうっとアシュランは腕を回して掛け布団の上からラシルの肩を軽く、あくまでも軽く包み込んだ。警戒されるかと心配したがラシルは一度安心したので気にもしていないようだった。母親や父親がするような感じと受け取ったのかもしれない。或いは一日森を歩いて疲れていたせいか。実際、あっという間に小さな寝息が聞こえてきた。
(うわー、警戒心ゼロだよ、この子)
貴族の娘たちなら、このくらいの歳になるともうかなり色気づいて、身なりにそれはそれは気を遣い化粧も研究を重ね、あの手この手で王子を陥落させようと躍起になっている。夜会や舞踏会に呼ばれることが年々苦痛になってもいる。
だから、ラシルの純朴さが新鮮だった。その純朴さと、ラシルの素顔とのギャップに尚更動揺した。
だが王子もそれなりに疲れていたようで、やがて快い睡魔が襲ってきた。
そしていつの間にか天幕の明かりは消されていた。
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