私と騎士様の危い愛

月野さと

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5話

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 ジルと呼ばれている男性についていく。
 すると、歩いて15分ほどの場所にある、洋館についた。玄関を開けて入り、電気をつける。
「失礼します。お邪魔します………」
 なんとなく、そう言ってから入ると、ジルは私の方を見た。
 私も、彼の顔を見つめる。
 しかし、何も言わなかったので、私も黙っていた。何か考えているのか、それとも、入ってはいけなかったのか?と戸惑って立ち尽くしていると、彼は、エントランスの灯りを点けて、廊下の灯りを点けて、手前の部屋のドアを開けて言った。
「どうぞ。この家には使用人なども居ない。俺1人で生活をしている。」
 入って大丈夫なのだと、ホッとして1歩踏み出してから立ち止まる。
 歩くとスリットから布がはだけて、足の付け根から下を露出してしまう!思いっきり歩こうとすると、ショーツも履いていないので、際どい所まで見えてしまう!!
 今までは暗い夜道だったし、早く奴隷商人の店から遠ざかりたかったので、気にしていられなかったけれど、こうして明るい家の中では、とてもじゃないけど、恥ずかしかった。
 歩き出して、太腿を晒してしまってから、慌てて手で隠す。ひぃ~ん!と、赤面してワタワタしていると、その姿をジッと見ていたジルは、後ろを向いて、スタスタと奥の別の部屋に歩いて行ってしまった。そして声がした。
「そこの部屋にいなさい。服を持って来よう。」
 姿が見えなくなったので、私はササっと目の前の部屋に入った。
 とてもシンプルな、応接室のようだった。
 大きな窓もあって、カーテンが上品で落ち着いた深い緑色をしている。そこのソファーに座ってみる。…が、やはり、座ると生足が付け根から露出されてしまうので、ピシっと直立して、彼を待った。
 程なくして、彼は服を持ってやって来た。
「とりあえず、バスローブを持ってきた。まずは、シャワーを浴びて着替えると良い。案内する。」
 そう言われて、大人しく後ろをついていく。

 
 バスルームに入って、熱いシャワーを浴びながら思った。
 あの、ジルさんって人は、普通の人っぽい。一緒にいた騎士さんも普通の青年だった。もしかして、ただの良い人?私‥‥助かったのかな?
 そう思ってみたけれども、もう一人の騎士が言った言葉を思い出す。
 『家事と夜伽の両方、やらせればいい!』
 そうだ。勘違いしちゃいけない。このジルさんが、ご主人様なんだ。あの変な男じゃなくて良かったじゃん!もしも、ジルさんに嫌われて捨てられたら…また、あの変な男に買われちゃうかもしれない!それなら、ジルさんのほうがマシだ!! 
 もう、この世界で生きていくしかないんだもの!なんとか、この男性の奴隷として、生きて行こう!
 そう決心した。

 
 その頃、ジルヴィスは自分の部屋に戻っていた。
 明かりをつけるのも億劫で、入り口の扉に寄りかかり、ぼーっと部屋を眺めていた。
 酒を飲みすぎた。
 そう認識する。
 まっすぐに歩こうとして、歩けていないような気がする。体がなんとなく揺れて、フワフワとした気持ちになる。
 ドサッと倒れ込むように、ソファーにダイブする。
 すると、首にかけてあったチェーンについた、鍵がこぼれ出た。

 それは、戦場で、ルシオが最後にジルヴィスにわたしたものだった。
 『ジル‥‥ごめん‥!‥』
 親友の最後の言葉を思い出し、眉間に皺を寄せ、その鍵を握りしめる。
「‥ルシオ‥どうして‥!」
 堪えきれずに、涙が頬を伝い、こぼれ落ちる。
 
 ルシオとジルヴィスは、騎士学校からの親友だった。気さくで人と話すのが得意なルシオと、人付き合いが苦手なジルヴィスは、性格が対照的ではあったけれど、いつも一緒に居た。学生の頃から優秀だった2人は、卒業後は王城勤めになり、聖騎士となった。
 この国での聖騎士とは、神殿に仕える高位騎士にあたり、神聖な祭事や、神官でもある王族の護衛なども行う。それぞれ、王都に邸宅を持つことが許され、支給される。2人は、そんなエリートコースだったのである。将来有望な騎士として、周囲からももてはやされ、どちらが先に隊長になるのか?と、さらなる上を目指して2人は切磋琢磨し合っていた。
 毎日一緒に呑みに行って、休日すらも一緒にいた2人の関係が、変わったのは、ルシオが結婚した頃からだった。
 ジルヴィスの、幼馴染だったアニエスとルシオが結婚した。
 所帯を持ったルシオとは、飲みに行く回数も減り、休日に会う事も無くなった。しごく当然な流れで、仲が悪くなったわけでは無いが、少し寂しく感じてはいた。
 そして、とうとう、ルシオが隊長に任命された。
 周囲からは、「やっぱり、所帯を持った方が管理職になる。おまえも結婚した方がいい。」なんて言われるようになったが、俺はルシオの実力だったと思っている。人当たりの良いアイツのほうが、人の上に立つのに向いている。昔から、そう思っていた。
 これからは、ルシオを支えて行こう。そう、心を新たに仕事をこなしていた。そうして、ルシオの部下として1年が過ぎた頃、戦争が始まった。
 戦争が始まって、1ヵ月で激化し、騎士団全員が戦場に向かうことになったのだ。

「最前線に、我が部隊が加わることになった。」
 ルシオがそう言った時、正気か?と思った。もともと、我々は聖騎士である。砦の隊とは違い、大きな戦で最前線に出たことなど無い。なにか言おうとしたけれども、ルシオはジルヴィスの顔を見なかった。
 理由は分からない。 
 戦場に行く1ヵ月前から、ルシオはジルヴィスを避けた。避けられているとわかって、あえて自分から近づこうともしなかった。
 
 長い間、ずっと、どんなことも何だって話し合って来た仲だった。けれど、このとき初めて、ルシオはジルを避けた。おそらく、隊長になり、色々と話せないこともあるのだろうと思った。
 そして、戦地に行き、ルシオは命を落とした。

 ジルヴィスの中で、疑問はいくつか残った。
 最後に言った、謝罪の意味は、なんだったのか。
 そして、なぜ、無謀過ぎる作戦に出たのか。
 
 どうしたって、わからなかった。






 

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