吸血鬼と愛の鍵

月野さと

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第15話 方法

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 ジルベール・ロジャーは、自分の館にリリアナを連れて行った。

「温かいミルクティーを入れてあげる。そこに座って。」
 自宅につくなり、自らの手でお茶を入れて、リリアナに差し出す。
「温かいものは、落ち着くよ。」
 私は、それを受け取って、1口飲んでからテーブルに置いた。

「私・・・・吸血鬼だったの。」
 そう、告白すると、ジルベールは正面に座って、お茶を飲んでから言う。
「うん。知ってた。」

 え・・・?

「吸血鬼はね、だいたいわかるんだ。匂いっていうのかな、ハッキリ言えないけど血が騒ぐと言うか、なんとなく判ってしまうんだ。だけど・・・・」
 ジルベールはリリアナを見て、同情するような目を向けた。
「君は、そのことに気がついていない様子だったから。ちょっと戸惑った。」

 ジルベールと初めて会った時のことを思い出す。
 その後のことも・・・彼は、私が吸血鬼だと知って、急に近づいて来たということだったんだ。
 彼は、ダンピールだから。
 吸血鬼を倒す役目を背負った、ダンピールだから。

「私を・・・殺すの?」
 少しだけ唇が震える。
 ジルベールは、静かにリリアナを見た。
 その目は、同情しているのが解る。
「私・・・吸血鬼になんて、なりたくなかった。このまま、ずっと永遠に生きていくなんて・・・そんなの怖い。血を吸うなんてっ・・・そうしないと生きていけないとか、そんなの嫌!」

 感情的になってしまって、一気に言うと、ジルベールは少し黙った。
 何か思う所があるように、視線をそらして、ゆっくりと話し出した。

「夕方にね、君の家に行ったんだ。」
「え?私の家?」
「事情を両親から聞いたよ。君の母親は、酷く混乱して取り乱していた。」

 ジルベールは、自分がダンピールであることを伏せたものの、国から吸血鬼退治を任されていることを説明して、事情を聞いた。
 すると、伯爵夫人は泣きながら助けを求めた。
『リリアナを、リリアナを助けてください!あの子は何も知らないの!』
『血が必要なら、私の血をリリアナに飲ませます!他の人を襲わせたりなんかさせません!だから、だから、あの子をこのまま、見逃してください!』
 
「お母様・・・・。」
 母を想像して、胸が痛む。
「君のことはだいたい解った。だけど、吸血鬼をそのまま野放しにすることは出来ないんだ。」
 ジルベールは、そう言ってお茶のカップを置いて、私を真っすぐに見た。
 私は頷く。
「・・・はい。そうだと思います。」
 母の言う通り、なんとか血を家族に分けてもらったとしても、永遠に死なない私は、いつか他の人の血を求める。
 シャティも言っていた。人の血を吸うのが嫌なのは、最初だけだと。

 私は、いつまで正気で居られるのだろう?

「ジルベール様。私を退治してください。人間じゃなくなるなんて、耐えられない。」
 必死で理性を保って、リリアナはジルベールを見た。
 ジルベールは、頷く。
「君を、吸血鬼の血から解放する方法を言うね。」

 怖い・・・心臓がバクバク言って、体がこわばる。 
 吸血鬼退治の物語を読んだことがある。
 胸に杭打ちか?十字架に縛られて火あぶりか?普通にギロチンか?
 いずれにしても、良い死に方では無さそうだ。

「僕に抱かれることだ。」

「・・・・・え・・?」

 ちょっとだけ、頭が真っ白になって、ジルベールを見上げる。すると、彼はもう1度言った。
「ダンピールの精を受けると、血が浄化されて人間に戻る。正確には吸血鬼になった時の前の状態に戻る。つまり、死体に戻るということだね。」

 吸血鬼になった前の状態。そうか、崖から落ちて死亡した、あの時に戻るのか。
「だから、痛みは無いよ。そこは安心して欲しい。ただね・・・・君は好きな人が居るだろう?」
「・・・・」
「好きな人が居るのに、人生最後に僕に抱かれないといけない。」

 頭の中に、ルナルドの顔が浮かぶ。
 急に、体中に鳥肌が立つ。
 彼以外の男性に触れられる・・・それが、私の最後になる?

 ジルベールは、淡々と言う。
「方法は他にもある。やはり火炙りだ。でも、これはかなり辛い。思っているより厳しい方法だよ。」

 ジルベールの言う通り、火炙りは生きたままなので辛そうだ。
 例えば、どんなに強い意志で挑んだとしても、ジワジワと体を焼かれていくのは、想像するだけでも恐ろしく、根を上げてしまわずに最後まで我慢できる気がしない。

「リリアナ嬢。時間をあげるから、心の整理をしてきてくれないか?」
 ジルベールは立ち上がって、ゆっくりと歩いてくると、私の隣に座った。
 そして、私の手をとり、手の甲にキスをする。
「最後の時まで、僕は君に優しくする。好きな人を忘れろとは言わない。割り切って覚悟を決めてきて欲しいんだ。」

 何もかもを知って、この人の優しさを知る。
 そうか、最初からそうだったんだ。
 この人は、なんて優しい人なのだろう?
 私を気遣ってくれる。
 
 私は、ジルベールの手を握る。
「きっと、必ず。気持ちを整理して来ます。待ってくれて、時間をくれて、ありがとう。」
 
 そう言うと、ジルベールは悲しそうに微笑んだ。
「僕が君にしてあげられることは、それくらいしか無いから。」


 
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