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第13話
しおりを挟むソファーに林さんを寝かせて、グラスに日本酒をそそぐ。
ガチャリと扉が開いて、神崎さんが、脱衣所からリビングに入ってくる。
「あれ?林さん、寝た?」
拍子抜けしたような顔を見せる。
わざと、じとーーーっと視線を送る。
「何?」
神崎さんは、スッキリした顔で聞いてくる。
「女の敵。」
「はぁ?なんだそれ。」
私は、自分のグラスを持って、ベランダに出る。
ここからは丸子橋が見える。素敵な眺めだった。みんなで神崎さんの家に集まってしまう理由も、景色が1つある気がする。
ちびちびと、日本酒をやりながら考える。
神崎さんが、林さんを振ってくれた時、実はちょっとホッとした。私は、酷い女だ。
職場で見ていても、いつも2人は一緒に居て、お似合いだったから。そうゆう事もあるのかなとは、考えなかったわけじゃないけど、神崎さんを取られてしまうような気がして・・・・。って、取られるってなんだ?
「綾瀬。風邪ひくぞ。」
そう言って、神崎さんは、自分のパーカーを私にかける。
「ふぅ、春とはいえ、まだ冷える。」
腕をさすりながら言う、神崎さんの顔を見上げる。
私の視線に気が付いて、こちらに目を落とす。そして、少し首をかしげる。そうゆうふうにされると、何でも聞いて良いみたいに思ってしまう。
「どうして、振っちゃったのか、聞いてもいいですか?」
「・・・なんだ、聞いてたのか。」
「林さんと、すっごい息ピッタリだし、お似合いだと思います。それに、美人だし、公私ともにサポートしてくれそうだし。」
「そうだろうな。」
「そうですよ。」
そこで、お互いに黙り込んだ。
ヤバイ、気まずい感じになってしまった。
「綾瀬はさ、兄貴に似てるんだな。」
「え?なんですか、急に。私が兄に似てる?初めて言われました。」
「似てるよ。おせっかいで、一生懸命で、うるさくて、困ってるヤツ見ると助けたくなる。晃と一緒。」
・・・ウルサイって何よぉ。兄程ではないはずだ。と思う。
「俺とは全然違う、そうゆう所が、凄く好きだった。」
神崎さんは、私を見ながら、懐かしそうに笑った。
「・・・神崎さん、よっぽど兄が好きだったんですね。もしかしてそっちですか?」
怒るかと思ったけど、神崎さんは鳩が豆鉄砲くらった目をする。そして、ため息をこぼす。
手すりに肘をついて、手に顎を乗せて言った。
「綾瀬は?あの・・・なんだっけ、青山先生?付き合ってるのか?」
今度は、私が鳩が豆鉄砲状態になる。
「はぁ?!何言ってるんですか!先生は先生でしかないです。」
「そう?医者とディナーなんて聞いたことないけどな。ああゆうのタイプか?」
「あの人、40代のオジサンですよ?タイプも何も考えた事もない。」
「ふ~ん。」
興味無さそうに、そう言うと、私の持っていたグラスを取り上げる。
そのまま、グラスの日本酒を一気に飲まれた。
「あ!あたしの日本酒!」
そう言って、伸ばした手を掴まれて引っ張られる。ドンっと、神崎さんの胸に顔面をぶつけてしまう。
地味に、鼻が痛い~~と思っていたら、神崎さんは言った。
「あったかい・・・。おまえ、体温高いな。」
そう言って、ポンポンと私のあたまを撫でると、部屋の中へ入っていった。
神崎さんは、何も言わずに、林さんを横抱きにして抱き上げる。
その姿を見て、胸がズキズキする。
林さんをベッドまで運ぶと、掛け布団を持ってやってきて、私の方を見る。
「林さんと一緒に、ベッドで寝ろよ。俺はソファーで寝るから。」
私は、目を反らして、部屋の壁にある電気のスイッチに手を置く。
「電気、消しますよ?」
「うん。ありがとう。」
明かりを消すと、月の明かりがカーテンの隙間からこぼれる。
なんとなく、窓の所まで行って、カーテンを少しだけ開ける。
「月が、綺麗ですね。」
「・・・・そうだな。」
あの夜も、月が綺麗だった。ついポロリと、言葉がこぼれてしまう。
「ホタル。」
「ん?」
「神崎さんと、お兄ちゃんと、3人でホタル狩りした日も、綺麗な月だったなって。」
私の居るところからは、暗くて神崎さんの表情は見えない。
だから、言えそうな気がする。
「今日は、ごめんなさい。」
本当は、私は神崎さんにとって、迷惑な存在なのかもしれないと、少し思う。
「神崎さんは、誰にも言いたくなかったんですよね?私が、私の思い上がりで、メチャクチャにして、傷つけた気がして。」
静かな闇の中、彼は何も言わなかった。
「でも私は、あなたが苦しんでるのを、黙って見ていられない。」
あなたを助けたいなんて、思い上がりだ。だけど、我慢できない。
「私だって、心配なんです。神崎さんが、今、1人で思いつめていないか?助けてくれる人は居るのか?ただ、傍にいて抱きしめて、慰めてくれる人はいるのか?あなたを見てると、抱きしめて支えたくなるんです。」
ずっと、いつも、あなたが、どこかで、1人で泣いてるような気がして。
「泣きたい時や苦しい時には、傍にいたいんです。私じゃなくてもいいんです、他の誰かでもいいからっ!」
神崎さんの足が、月明かりの中に現れる。
それから、ゆっくりと、月明かりの中に、あなたはスッポリと入ってきた。
彼の目は、潤んだようにキラキラしていた。
「ほら・・・やっぱり。泣いてる。」
「泣いてない。・・・泣かせるようなこと、言うなよ。」
そう言って、私の頬を撫でて、涙を指で拭ってくれる。
「綾瀬・・・。」
「はい。」
「さっきの、愛の告白っぽかった。」
え?と、自分の言ったことを想いだしてみる。瞬間に恥ずかしくなって、赤面する。
少し笑って、あなたは言った。
「他の誰かじゃなくて、おまえがいい。」
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