女神なんかじゃない

月野さと

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16話 決意

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ベッドの中で2人、
抱き合って、ぼうっとしていた。

アーサーは、ずっと、私の頭を撫でていた。
私はずっと、彼の胸に耳をくっつけて、心臓の音を聞いていた。

どのくらい、そうしていたのだろう。
突然、ドアをノックする音がした。

「陛下、お目覚めでしょうか。」
 ゴードンの声だった。
 いつもは、ウィルか女官が来るのに、ゴードンが来るのは珍しい。
「ゴードンか。」
 アーサーの顔が、いつもの仕事の顔になる。
「はい。ゴードンでございます。陛下に謁見をと魔術師団が来ております。」

「・・・。」
 少しの沈黙。

 部屋にある時計を見ると、もうお昼近かった。
 ・・・朝ご飯を食べ損ねた。などと、サラは思った。
「わかった。すぐに行く。」
 アーサーは、ベッドから降りる。

 暫くしてから、テルマさんやウィルさんが入室して来て、簡単な食事と着替えの手伝いをしてくれた。
 沈黙を破ったのは、ウィルだった。

「レオン団長から、サラ様にもご同席願いたいと。」
 アーサーはウィルを見る。アーサーは、ため息をついて続けた。
「だろうな。しかし、サラは同席させない。」
 そう言われて、私は頬張っていたサンドイッチを急いで飲み込む。
「え?でも、私は団長がお呼びなら、行きますよ?」
 
「サラ」
「はい?」
「おまえは、この国の人間ではない。こちらの都合に合わせる必要はないのだ。」
 急に突き放されたように思えた。
「・・・・関わるなってこと?」
 恐る恐る聞いてみる。
「よく考えて発言しろということだ。」
 よく考えろ?
「あたし・・・そんな考え無し?」
 傍にいたテルマさんが、あわてて、小声で「サラさま!」と止めるように言ったけど、止まらなかった。
「アーサーは、何考えてるのか分からないよ!ちゃんと言ってよ!」
 朝、好きって告白したとき、何も言わなかったのは・・・よく考えて発言しろ?私が何も考えていないって言いたい?
 ・・・なんか、悲しくなってきた。
「そうだよね!迷惑ばっかりかけて、女神とか言われても何もできない役立たずだもんね!」
「サラ!そうじゃない!」
 立ち上がった私の腕を掴む。大きくて冷たい・・・大好きな手。
 その手を、思いっきり、渾身の力を込めて振り払う。

「私は私の勝手にするよ!この国の人間じゃないんだから!」
 思いっきり扉を開けて、部屋を飛び出す。
 
 あの人が好きだ。
 私は・・・・あの人が好きだ!
 もっと、傍に行きたい。一緒にいたい。
 できる事なら、私も何か手伝いたい。
  
 自分の気持ちが止められなくて、苦しい。





◇◇◇◇◇


 執務室には、レオン魔術師団長と副団長。騎士団、そしてゴードンさんや、神殿の人たちが集まった。


「本日、急遽お集まりいただいたのは他でもありません。陛下の魔力についてです。」
 レオン魔術師団長が切り出す。
「今朝、この国の周辺に居た魔獣たちは、姿を消しました。」
 神官長が声を上げる。
「何?それば、どうゆうことだ?」

 レオン団長は、アーサーの顔を見る。アーサーは無表情だった。
 そして発言を続ける。
「女神からの祝福を受け、陛下は地上最大の魔力を手にいれました。その魔力は魔獣や魔法省の人間であれば感じ取ることができます。魔獣は、その魔力の強大さに警戒して、この国から遠ざかったと思われます。」
  アーサーは、サラと朝まで何度も抱き合ったことで、魔力量が人間の域を越えてしまっていた。自分を抑えられなかったことを後悔した。

 ゴードンが口を開く。
「それでは、この国は魔獣の脅威から脱したと?」
 レオン団長が首を振る。
「いいえ。今は警戒しているにすぎません。そこで、神話の通りに国の周囲に結界を張りたいと考えております。」
 アーサーは何も言わずに黙って聞いているだけだった。
 サラも、黙って話を聞いていた。
 ・・・結局、サラはアーサーの言うことを聞かずに、会議に参加していた。

「しかし、それほどの大きな結界というと、神の力ほどの途方もない量の魔力が必要なのでは?」
 騎士団長が言った。それにレオン団長が答えた。 
「その魔力を、現在陛下は保有されていると判断しています。」
 魔術師団員が頷く。
「しかしながら・・・・一つ問題もあります。」
「問題?」
 不穏な言葉に、ゴードンさんがすぐに反応する。
 レオン団長はゴードンの方に向きなおる。
「予測ですが、陛下が魔力を全て使いつくしてしまうことです。」
「なんだと!!」と、騎士団長が立ち上がる。

 ゴードンが、落ち着いて聞く。
「陛下のお命にかかわるという事か?」
「その通りです。しかし、すぐに女神様が陛下に魔力を与えて下されば、問題ないかと。」
 そこで、レオン団長が私を見る。
「女神様。あなた様にしか出来ないことです。どうか、我が国の為に、お力添えを。」
 そう言って、レオンさんから頭を下げられた。
 その場にいた、全員が私を見る。 

 アーサーに魔力を与えるってことは・・・えーと。
 想像して、サラは赤面する。

 アーサーが、口を開いた。 
「まぁ、待て。今回の件については、よくわかった。決断は後日としよう。」

 その言葉に全員が、驚いて声を上げる。
「陛下!このような好機に、判断を先延ばしにするなど!」
「そうです!可能な限り早急に!」
「国の平和がかかっております!」

 青い瞳が、凄みのある鋭い目つきに変わる。そのオーラに誰もが黙る。

「今日の会議は、これで終了する。」
 アーサーが、そう言って立ち上がる。
「お待ちください!陛下!」
 瞬間にレオン団長が叫んで、私の方を向く。
「女神様!あなたのお考えを!あなたは力になりたいと仰いましたよね。」
 続けて神官長が言う。
「女神様!どうか、我々の為にお力を。」

「やめないか!!」
 アーサーが大きな声で制止した。

「私は・・・私は、この国の為に出来ることはしたい!」
 ハッキリと言い切った。
「おおお!女神様!」
 神官長が喜びの声を上げる。
「やめろ。この話は終わりだ。サラも、発言を慎め。」
 アーサーは立ち上がって、厳しい顔つきになる。
 サラはアーサーを見返す。
「どうして?私がこの国の為に、何かできるなら・・・」
「やめろと言っているんだ!!軽率に発言するんじゃない!」
「軽率?!・・・私は、あなたの力になりたいだけだよ!」
「もういい!!黙れ!」
 今まで見たこともない顔で、物凄い大声で怒鳴られた。

 その場に居た、全員が静まり返る。

「テルマ!サラを部屋に下がらせろ!」
 アーサーの剣幕に、震え上がったテルマさんが、慌ててサラの腕を引く。

 そうして、強制的に追い出された私は、トボトボと自室に向かった。


 長い廊下の窓から、赤い山が見える。
 その周辺には、荒れた大地。

 ボーっとその風景を眺める。


『どれだけの民を救えることか』
 そう言って、微笑んだアーサーの顔を思い出す。

 どうして?協力させてくれないの?
 どうして、何も言ってくれないの?


 コツコツと、足音が近づいてきた。
 レオン団長と魔術師団だった。
「女神様。我々は、追い出されてしまいましたので、とりあえず帰りますが、陛下の説得をお願いします。」
「レオン団長・・・・。」
 涙目で見上げると、団長はたじろいだ。
「な・・なんです?」
「私なんかでは、力になれないのでしょうか?アーサーに嫌われちゃったかな。」
「・・・・・」
 大きなため息を1つ吐いて、レオン団長が言った。
「陛下は、あなたを守ろうとしているんですよ。」

 ・・・え?

「私は、陛下のあんな様子を見たことが無い。国の為なら、どんな手も使ってきた人だ。あなたは知らないでしょうがね。」
 涙を拭いて、レオン団長を見上げる。
「あの方は、自分の隣に立つということがどうゆう事なのか、あなたが理解していないことに気が付いてるのです。」

 アーサーの隣に立つことが、どうゆう事なのか・・・・。

 レオンは、目を細めて、サラを見る。
「私達には、そんなことは関係ない。女神だろうと何だろうと、使える物は使うだけです。その結果、あなたがどうなろうと知ったことではない。」
 そう言い放つ、レオン団長の目は、最初の頃のような冷たい感じは無かった。

「陛下の隣に立つには、覚悟が必要です。」
 その声に、優しさがあった。
「今のあなたでは、ダメなのです。」

 それでは失礼する。とレオンは、立ち去った。
 その後ろ姿を、見えなくなるまで見つめた。


 国を背負ってるアーサーの、隣に立つということ。

 どんな覚悟が必要なのか、想像もつかない。

 好きだなんて言って、何の覚悟もないことを、アーサーは分かってた?
 だから、何も答えてくれなかったの?


 ・・・違う。答えられなかったんだ。


 私は、私の地位を獲得しなきゃいけない。

 認めてもらわなきゃ。




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