女神なんかじゃない

月野さと

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19話 出陣

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 一室に魔術師たちが、集まっていた。
「団長!南のガルーダ王国からの攻撃です!」

 攻撃?振り返ると、レオン団長の眉間に皺が寄っていた。
「・・・奇襲か。」
 魔術師たちが、バタバタと動いて、地図を開いたり、魔道具を使って、どこかとコンタクトをとっている。魔術師の人が告げる。
「既に、ミカタン州が壊滅的だという知らせです。」
「・・・・陛下には連絡済みか?」
 レオンの声に、静かな怒りが含んでいる。
「はい。至急、軍を南のラウジ州に向かわせたいとのことです。陛下から魔術師団には軍の移送と、兵の招集依頼です。」
「解った。ミカタン州は諦めるしかなさそうだな。」


「どうして?」
 そこまで話を聞いて、声を出してしまった。
「どうして、諦めるの?」
 その場に居た魔術師が教えてくれる。
「今回の奇襲は深夜だったそうです。攻め込まれた事を連絡してきたのは隣のラウジ州知事でした。ミカタン州は、既に落ちたと思われます。兵を向かわせ、これ以上の侵攻を止めるのが、我々の仕事になるかと。」

 レオンは頷く。
「しかし、何故、このように一瞬で奪われることとなったんだ?!」

 団長が、魔道具を使い、壁にスクリーンのような物を映し出す。

 月明かりの夜。
 龍のような空飛ぶ生き物に乗った、魔術師が次々と現れる。
 そして、大きな檻を落とした。檻の中には、小さい子供の魔獣が入っていた。
 同時にガルーダ兵は、大きな建物を一気に攻撃していた。ドンンドン!!と火の手が上がる。
 その後、暫くして大きな魔獣たちが群れをなして現れる。

 子供を奪われた魔獣たちが、怒り狂い暴れる。

 物凄いスピードで町中が焼かれ、人々が逃げ惑い、焼き尽くされていく。

「惨い・・・。軍の基地を魔術師が攻撃して、同時に魔獣に街を襲わせたのか・・・!」

 魔術師団の全員が、沈黙した。
 顔を背けて、悔しさに顔を歪める魔術師もいた。
「早く行きましょう!団長。」
 レオンは頷く。 
「魔獣退治と、ガルーダ王国との闘いになる。すぐに陛下の元へ急ぐぞ。」




◇◇◇◇◇


 久しぶりの王城へ、瞬間移動する。

 転移魔法は、魔法陣が書いてある場所のみである。しかし、軍隊のように大勢を移動させる時は、強い魔力を含んだ魔道具を使用するらしい。戦いに行く魔術師団は、万全の装備を手早く済ませて物々しい雰囲気だった。

「陛下。魔術師団は、すぐに出陣可能です。」
 執務室に入るなり、レオンはひざまずき、そう申し出る。
 ゴードンさんは、普段通りだったけれど、アーサーとウィルは、軍服を着ていた。

「ガルーダ王国に、これ以上の侵攻を許さない。私も出向く。」
「陛下、自らですか?」
 アーサーが頷く。
「こたびの襲撃は、いささかいつもと違う。迅速な指揮が必要だ。」

 レオンが頷く。
「魔獣退治とガルーダとの戦となりますね。確かに陛下の魔力は心強い。」
 そう言うと、レオンはサラの方を見た。
 不適にアーサーが笑う。
「女神のおかげで、地上最大の魔力を保有しているからな。魔獣をけちらしてやろう。」
 アーサーもレオンさんも、凛々しい顔になっていた。


 魔獣とは聞いていたものの、サラは、さっき初めて映像で見た。
 あんなに大きくて、恐ろしいものだとは思わなかった。あんなものと人間が戦えるのだろうか?と半信半疑になる。しかも、人と人との闘いって・・・殺し合いだ。
「・・・」 

 作戦をさっさと立てて、大きな魔法陣へと移動する。

「では、陛下。ご武運を。」
 ゴードンさんが、いつものように言う。
「後の事は頼む。」
 アーサーがそう言うと、団長が魔術師らしい杖を手に、何かを唱える。魔法陣から光が溢れていく。

 戦いに行くんだな。
 なんてぼーっと考えてから、このまま、暫く会えないんだと気が付く。
 もしもなんて、あるわけないと思いながらも、何故か心がざわつく。

「アーサー!!」
 サラは、思わず駆け寄って、アーサーに抱き着く。
 アーサーは驚いて、慌てて私の体を突き飛ばす。

 ゴードンとテルマさんが必死に、私を抑え込む。
 顔を上げると・・・もう、そこにはアーサーと魔術師団は消えてた。


「あなたという方は!なんということを!!思いもよらない行動を慎んでください。」
 ゴードンが、汗をぬぐう。
 テルマも、いつになく声を荒げた。
「サラ様!なんと危険な事を!一緒に戦場に行く所でしたよ!!」
 迷惑をかけてしまったことに気が付いて、下を向く。
「だって・・・だって、アーサーに何かあったら。」

「何かあるわけがありません。」
 すくっと、立ち上がったゴードンが言う。
「陛下に何かあれば、私はこの命を絶つ覚悟です。」
 息を飲んで、ゴードンさんを見上げる。
「レオン団長も、ウィルも、その命に代えても陛下をお守りするはずです。あの者たちも同じ。この国を守るために陛下の理想の国を作る為に、生きているのです。」

 ・・・・。
 私は、何ができるんだろう?
 子供のように、いつまでも何もできずに、泣いてばかりは嫌。

 涙を拭いて、立ち上がる。

「ゴードンさん。」
「はい?」
「私に政治を教えてください。」
 少しの沈黙があった。
「・・・・構いませんよ。では、私の助手として陛下がご帰還されるまで働いてください。」
 ゴードンはニヤリと笑った。




◇◇◇◇◇


 その頃、ミカタン州の隣、戦況の確認できる街へアーサーたちは到着する。

 レオン団長と、ウィルが、アーサーを見る。
 5秒ほど、止まっていたアーサーは、手をギュッと握りしめる。
「ヘルン州知事とコンタクトをとる。」と動き出す。


 状況を確認すればするほどに、ミカタン州は諦めざるおえないようだった。魔術師団が、結界を張りながら、魔獣たちの鎮圧に向かった。
 しかし、ガルーダ王国も軍を引く様子は無かった。

 地図を眺めながら、アーサーは考える。
「ガルーダ王国の、指揮官は誰だ?」
「カイン王太子です。」
 アーサーはこめかみに手をやる。
 ウィルが少し嫌そうに言う。
「カイン王太子というと、血も涙もないという冷酷非道の悪名高い男ですね。」
「力で追い返すしか無いようだな。」

 アーサーは腕を組んで考える。

「レオン。」
「はい。」
 一瞬、間を置いて、アーサーは言った。
「奇襲をかける。」
「・・・・自ら行かれるのですね?」
「1日で片づけたい。」
「御心のままに。」

 魔獣狩りに、アーサーが行く予定だったが、作戦変更となった。魔術師団だけで魔獣狩りに行き、敵国ガルーダを追い返しにアーサーが行く。魔術師団としては、気合を入れなおす必要があった。

 
 その日、アーサー王の最初の戦いは、明け方の奇襲となった。アーサーの戦史上、奇襲は初めてのことで、相手も予想していなかった。そして、圧倒的な力で容赦がなかった。アーサーの強大な魔力に恐れをなして、逃げていく者も多く、あっという間に戦いは終わった。


 しかし、
「深追いはするな」という指示に、背いた若い魔術師が暴走した。

 そこにレオン団長が駆けつける。
 駆けつけた場所に居たのは、カイン王太子だった。

 窮地に追い込まれたカイン王太子は、強力な死の魔法を使った。
「もがき苦しめ!」

 とっさに、レオンは部下の若い魔術師をかばう。


 
「だ・・・・団長ーーーーーーーーーー!!!」


 
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