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29話 サミュエルの防衛戦
しおりを挟む夢で見た!この人だ!!
そう思った時だった。
サラの目の前まで、ツカツカと歩いてきたカイン王太子は、ガシッと、サラの腕を掴む。
「!!」
同時に、サミュエルも立ち上がる!
ハッと気が付いて、サラはサミュエルに手を伸ばして制止する。
「大丈夫!・・・この方は、以前お会いした方。」
カイン王太子は、サミュエルを横目に見る。
興味無さそうに、すぐにサラの方を向く。
「これは失礼した。まさか、夢の中の娘が、現実に存在するとは。」
「・・・私も驚きました。」
カイン王太子の手が離れて、サラはにこりと笑う。
ホッと胸をなでおろし、サミュエルも再度立膝をつく。
サラの方に目をやるが、こちらを見ない。
サミュエルは、全神経を尖らせて、あらゆる状況に対応しようと決心する。
「不思議なこともあるものです。」
サラはそう言って、そのまま貿易の話に移そうとする。
しかし、冷たい声が上から降ってきた。
「貴様は何者だ?」
カイン王太子は、不審そうにサラに問う。
サラは、柔らかく笑って見せる。
「私は、商人です!」
しかし、鋭い目で、サラを見つめてくる。
「白い竜は、この大地に伝わる龍神だ。」
コツコツと、靴音を響かせながら続ける。
「その竜の背に乗って、夢に出て来たものが商人だと?」
突然、
カイン王太子は、サラの首を掴み叫んだ。
「貴様は何者だ!!何しにここへ来た!!」
咄嗟に、サミュエルが魔法で攻撃する。
その瞬間、カイン王太子は、それを跳ね返す。
ドガ!!!!
サミュエルは吹き飛んだ。
壁に激突したサミュエルを見て、カイン王太子は笑った。
ガラガラガラ・・・崩れ落ちる壁のレンガと共に、サミュエルが床に落ちる。
口には血が滲み、腹を抱えて、「ぐっ・・!」と呻く。
その姿を見て、カイン王太子は、ほう?と笑う。
「これはこれは、魔術師だったのか!今の攻撃を受けて即死しないとは、なかなかの魔術師とお見受けする。」
すぐに、サミュエルは兵士に捕らえられる。
サミュエルは焦っていた。
おそらく、肋骨が数本折れている。
痛みをこらえて、頭を上げようとすると、ふらつく。
くそ!脳震盪など起こしている場合ではない!
このままではマズイ。早く退避しなければ・・・。
カイン王太子は、サラの首を絞めて上に持ち上げる。
「これほどの魔術師を連れて、1人で乗り込んでくるとは、貴様は何者だ?」
サラは、必死に声を絞り出す。
「わ・・・わたしは・・・、あなたと戦う気は・・・な・・・」
急に手を離されて、地面に落ちる。
その瞬間、
サミュエルは瞬間移動してサラの所に行き、サラを抱えて瞬間移動しようとした。
・・・が、カイン王太子の魔法で弾き飛ばされる。
ドガン!!!!
と、凄まじい音とともに、壁にめり込むサミュエルを見て、サラは慌てる。
「やめて!話を聞いて!私はあなたに会うために来ただけなの!彼は関係ない!」
「ほう。」
サラの前でしゃがみこみ、顔を覗いてくる。
「私に会って、なんとする?」
ごくりと、サラは唾を飲み込む。
「・・・あなたの・・・あなたの持っている、女神の真珠が欲しい。」
カイン王太子の顔が、ますます険しくなる。
「何故、真珠の存在を知っている?」
なんとか、信じてもらおうとサラは、必死で話す。
「竜に聞いたから。」
サラの答えに、眉をひそめられる。
気に入らないというように、カイン王太子はサラの髪を掴む。
「・・・・わからんな。あれは王家の人間が代々所持しているが、何の役にもたたない。ただの真珠だ。」
サミュエルが、密かに呪符を唱え始めたことに、誰も気が付かない。
持ってきていた魔石の3つが、光を持ち始める。
もう、最後の手段だ。くそっ!王太子の魔法スピードに叶わない・・・・。
先の対戦で、団長、よくコイツから逃げ切れたな・・・。
カイン王太子は、ふと、サラの指を見てから、急に笑い始めた。
「フフ・・・フハハハハ!」
何事だろうと、サミュエルもサラも、王太子を見る。
「そうか!!おまえが“女神”か?その指輪は女神の指輪だな!」
サラの髪を、右手で掴んで引っ張り上げる。
左手で頬を掴んで、顔を近づけさせる。
「お前は私のモノになれ!そうすれば真珠をおまえにやろう。おまえを手に入れて、私がこの地上最強の魔力保持者になるのだ!」
恍惚の顔を見せる王太子に、サラは心を決める。
「・・・いいわ。貴方の物になってあげる!」
カイン王太子を睨みつける。
サミュエルさんを、助けなきゃ。
「だから、私の魔術師に手を出さないで!彼を開放して、真珠を渡してくれるなら、言う事を聞きます!」
こうなったら、真珠を先に手に入れて、先に女神の能力を消してしまえばいい。
・・・ただじゃ、済まないだろうけれど。
そう、サラは覚悟を決めて、深呼吸をする。
王太子はニタリと笑う。
「いいだろう。あの男を開放してやる。だが、おまえを、たっぷりと可愛がってやってからだ。」
くいっ、と顎を持ち上げられる。
ゾワリと、鳥肌が立つ。
「え・・あ、いや、そうじゃなくて、先に彼を開放してもらいます!」
き・・・気持ち悪い!!!
ヒュン!と音がして、
サミュエルが、王太子とサラの間に瞬間移動する。
王太子に背を向けたまま、サラを抱きかかえる。
その瞬間、
王太子の剣が振り下ろされた。
ザシュ!!!と、鈍い音が響く。
「・・・・しつこいぞ、おまえ。」
サラは、倒れこむミュエルを抱きとめる。
ドサ!!っと2人で倒れこんだ。
「・・・・?」
背中がヌルりと滑る。
サミュエルの背中に、大きな剣の傷と、大量の血がついていた。
服の上からでもわかるほどに、背中は大きく切れている。
生暖かい、赤い血がドクンドクンと、大量に流れ出していた。
「サ・・・サミュエル・・・さん?」
ガクガクガクと、体が震えだす。
目の前に仁王立ちするカイン王太子が、剣を振り上げる。
「始末してやる。」
「い・・・いやぁ!!!サミュエルさん!!」
その瞬間だった。
魔石から、強い光の柱が立つ。
ビシュン!!
という空気を切る音が響く。
目の前に、レオン団長とアーサーが現れた。
瞬間に、現れたアーサーから、強い風が巻き上がる。
強い魔力で、数メートルほど、カイン王太子が跳ね飛ばされた。
驚いた兵士たちは、あっけにとられる。
カイン王太子も、驚いた様子だった。
先に口を開いたのは、カイン王太子だった。
「貴様は・・・・!」
アーサーは、サミュエルを見て、すぐに抱える。
「レオン!行くぞ!」
サラを、もう片方の腕で抱き抱える。
レオン団長が、魔法陣を出現させる。
床に転がっていた魔石を魔法で一瞬で拾い上げてから、
そのまま、瞬間移動した。
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