女神なんかじゃない

月野さと

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31話 上に立つ決意

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 目を覚ますと、ふかふかで、大きなキングサイズのベッドの上。
 強い日差しが、窓を叩いているようだった。 
 眠るまで一緒に居てくれた、アーサーの姿は無かった。

 頭がぼーーっとしたまま、ベッドを降りる。
 就寝着のままで部屋を出ようとして、テルマさんが現れた。

 いつもの、ひまわりのような笑顔で「昼食の時間まで寝ててもよかったんですよ。」と言われる。

 ぼーーっとしたまま、着替えをする。

「サミュエルさんは?」

 静かに、恐る恐る質問する。
 サラの質問にテルマは、微笑んで答える。
「もうすっかりお元気になられたようで、執務室で皆様と会議中ですよ。」

 どんなに辛い事があっても、
 どんなに酷い失敗をしても、
 当たり前のように、“続き”があるわけで。
 容赦なく、“続き”の朝はやってくるのである。

 サラは執務室へと歩き出す。
 執務室の前まで来ると、ガチャリと扉が開いて、ウィルが出てきた。
 そして、彼は、私を確認すると、月明かりのように微笑んだ。

「サラ様。陛下に御用ですか?」
「ウィルさん!あの・・・サミュエルさんの所に、私、行きたくて。」

 その時、開けっ放しだった執務室から、レオンとサミュエルが出てきた。
 サラはサミュエルの顔を見た瞬間、勢いよく駆け寄る。

「サミュエルさん!!!」
 ドン!!!と体当たりされて、サミュエルは少しふらつく。
「よかった!!うわーーーん!」

 顔をサミュエルの胸に埋める。
「本当にゴメンなさい。私のせいで、私のせいで、私なんかの・・・」
 執務室の扉の前で、そんなことになっており、ゴードンもアーサーも目を丸くする。
 ゴードンは、目だけを動かして、アーサーの顔色を伺う。
 アーサーは、ただ状況を見守っていた。
 サミュエルは、サラの肩を掴んで引き離す。

「“私なんか”とは、言ってはいけません!」

 サミュエルの顔を見上げる。
 サラの目を捉えるように、しっかりと見ている。
 彼からそんな真剣な顔で見られるのは初めてだった。

「僕を、ダメ人間の為に命をかけた、阿呆にしないでくださいね。」
 そう言うと、すぐにニコリと笑う。
 それから、サミュエルは騎士のように礼をとった。
「アーサー陛下の隣に立ち、この国を治める聡明なあなたの為ならば、この命、いくらでも差し出しましょう。」
 
 サラは、首を激しく振る。

「嫌だ!私は、私は誰も失いたくない!あなたも誰も傷つけられたくない!もしも、私の為だと言うなら、私の為に絶対に死なないで!!!」

 大粒の涙を流しながら、サミュエルを見返す。
 サミュエルは、挑戦的な目で笑いながらサラを見ると、「仰せのままに」と言った。
 立膝をつき、サラの右手をとり、手の甲にキスをする。

「この国を導く女神様の為に、不死身の魔術師となるべく励みましょう。」


 それでは。と、団長と副団長は、退出していった。


 サラの中で、何かが変わっていく気がした。

 自分は、何をすべきなのか。
 私は、何がしたいのか。

 2人を、見えなくなるまで見つめていた。

 できることなら、”この国を導く女神”という立場になりたい。
 サミュエルさんが、命をかける価値のある人になりたい。


 見上げると、アーサーがいつの間にか近くに立っていた。

 真剣な目で、アーサーは言った。
「私の妃として、王妃としての行動をとるんだ。この国の国土と国民を守り、平和で豊かな国を、私は作り上げてみせる。」

 ウィルもゴードンさんもテルマさんも、誇らしげに微笑んで頷く。

 この国の国土と国民・・・。

「アーサー、お願いがあるの。」

 サラは、アーサーを真っすぐに見つめる。

「この国に結界を張って欲しいの。」

 この国を守ろうとしている、アーサーを守りたいから。
 常に最前線にいる、魔術師団を守りたいから。
 国境にいた、酒場のおばさん、州知事との約束。
 守りたいものが出来た。

「私は、私の大事な人を守りたいから。」

 跪き、アーサーの手をとる。その手の甲にキスをする。

「私を本物の女神にしてください。」
 

 アーサーは、何も言わずにサラの手を引っ張り上げて、そのまま抱きしめた。
 サラも、アーサーを強く抱きしめる。

 サラの言葉と行動に、テルマは感極まって涙を流した。

 

 
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