女神なんかじゃない

月野さと

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34話 建国記念日

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 サラがベットから出れたのは、2日目の朝だった。

 何度、目を覚ましても、目の前にアーサーが居て、腕と足か絡まっていた。すり寄ると、抱きしめられる。何度も何度も愛し合って、幸せだと再び眠りにつく。彼の愛に溺れた。

 何度目かで目を覚ますと、そこにはアーサーが居なかった。


 トントン。

 と、ドアを叩く音がして、部屋を見渡す。
 返事をすると、テルマさんが入ってきた。
「おはようございます。サラ様。」
 そう言って、食事とお茶を乗せたワゴンを運んでくる。

「アーサーは?」
 ぼーーっとする頭で、聞いてみる。

 テルマはベッドの横にワゴンを置いて、温かいスープを器に移し始める。部屋に、美味しい香りが広がった。
「陛下は、式典の準備をされると伺っています。」
 式典・・・・そうだ。
 14日後に、建国記念日がある。

 国に強大な結界を張り終えたアーサーは、女神から魔力を与えられて復活。今や、この世界でウォステリア国は、各国から一目置かれ始めていた。神をも味方につけて、地上最強の国として君臨しようとしていた。
 そんな国の建国記念日が、1週間後にあるというので、盛大なお祝いとなりそうだった。テルマさんは、女神様のお披露目もあるとワクワクしていたけれど・・・。

 サラは、具沢山のスープに口をつけて、一息つく。
「うーん、ボロが出ないように、女神っぽく振る舞わないとなぁ。」
 マナーや振る舞いの勉強を、また再開しなくては。
「ふふ。サラ様は、最初の頃よりマナーなども見に着きましたし、大丈夫ですよ。」
「そうかな?」
 自分では、成長してるかどうか、よくわからない。だから、人の評価は嬉しい。

 ふと、気になったことを質問する。
「さっき、ドアが開いた時に、部屋の前に騎士が2人もいたけど、何かあった?」
 するりと、ベッドからおりて窓から外を見ても、騎士の多さに驚く。
「騎士団が増員して警備してる?建国記念日のせい?」
 なんの気なしに聞いたのだけれど、テルマさんが少し言いずらそうに言葉を選びながら、言う。
「はい。それもあるんですけど・・・」
 
 何やら言いずらいのだろうか?と思いながら、ソファーに移動して座る。
 テーブルに置かれたブドウを摘まむ。
 すると、迷っていたテルマが思いもよらないことを言った。

「ガルーダ王国の、王が来るそうです。」
 

 ・・・へ?

 ブドウを落としそうになる。

「どうして?」
「それが、建国祝いにとのことです。式典に参列されるそうです。」
「だって、友好関係には無いでしょう?」
「はい。初めてのことです。」
「・・・アーサーは受け入れたんだね?」

 あのカイン王太子の居る国。襲撃をしてきた、ガルーダ王国。そのカイン王太子の父親である王が、来るんだ。
 ・・すごく、嫌な予感しかしない。
 私が、何かの役に立てるとは思わないけれど、不安になって、じっとはしていられない。

「すぐに着替えて、アーサーの所に行くわ!」
 テルマは、梅干しみたいに顔をすぼめる。
「サラ様~。妃らしく、何もしない方が宜しいかと。」
「解ってる!様子を見に行くだけだから!」



 アーサーは、式典の行われる聖堂に居た。

 レオン魔術師団長も、アモン騎士団長も居た。
 警備の配置などを話している様子だった。

 3人を見て、サラは駆け寄ってしまう。
 すぐに3人は気が付いてこちらを向く。

「アーサー!団長たち!」
 お姫様でも妃らしくも無く、アーサーの所まで走って行く。
「ガルーダ王が来るって、大丈夫なの?」
 団長たちの顔が、引き締まる。
「大丈夫だ。」
 と、アーサーは答える。見上げると、余裕そうに笑うアーサーの顔があった。
 アモン騎士団長が、ニコニコと笑って言う。
「そうですよ。騎士団と魔術師団が、お二人をお守りします。」
 レオン団長は無表情で、説明する。
「入城できる人数を制限させましたし、カイン王太子と違って、現ガルーダ王は無茶な人間ではないと考えています。今までも慎重さを見せていた王です。」
 両団長の話を聞いて、サラは自分の不安をぶつける。
「でもでも、結界を張ったから、作戦を変えてきたってことなんじゃ・・・。」
 その言葉に、アーサーが答える。
「結界を張ったことで、魔獣は入り込めない上に、外側からの魔術師による攻撃ができなくなったからな。何か態度を変えてくるだろうな。」
 だよね。と、サラは思う。
「じゃぁ、建国記念日の式典出席と見せかけて?」

 アーサーは、サラの頭に手を乗せる。
「かもしれないが、そうではないかもしれない。それを探る為に会うのだ。おそらく、あちらも探る為に来るのだろう。何かをする為ではないと考えている。」
 女神が降臨したことが知れ渡り、結界を張り、王の魔力が増大した。ガルーダも身の振り方を模索しているのだろうと。

 アーサーは、これを期に、友好関係を築けるか模索するつもりだと言った。
「まぁ、ムリかもしれんがな。」
 不安そうに3人を見つめるサラの背中に手をまわして、誘導するようにアーサーは歩きだした。
「そもそも、我が国の魔術師団は世界一と言われている。騎士団と合わせて、武力は右に出る国は居ない。だから、心配することは無い。」

 アーサーに言われて、レオン団長は頷いて、不適に笑う。
 騎士団長が、ニコニコと首をかしげてサラに言う。
「不意をついて奇襲をかけられない限りは、我が国に、面と向かって勝てる国などではありません。やられたら、倍返しにしてやります。そのための日々の鍛錬と、まぁ魔獣狩りという実践が生かされているのでしょうが。」

 レオン団長が、サラの表情を見て言う。
「何が心配なのかわかりませんが、貴方は我々を信じれば良い。信じて、貴方は貴方が成すべき事をすれば良いのです。」


 確かに。
 私は、みんなを信じれば良いんだ。

 うん。信じられる。この人たちは強い。
 私は自分自身のこと、頑張らなきゃ。

 レオンさんは、言い方キツイけど、本当に信頼できる素敵な人だ。
 ただひたすらに、尊敬の眼差しを送ってしまう。 

 うん、そうだ。
 私は、私たちは、相手を信じて、自分を信じて、
 自分の成すべきことを精一杯やりとげるだけだ。

 きっとそれが、未来を切り開くということなんだ。



 


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