女神なんかじゃない

月野さと

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45話 戦い

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 突然の襲撃に、アーサーが防御の壁を維持したまま、攻撃を仕掛ける。
 瞬間に爆風が巻き上がった。

 レオン団長が魔術で反撃しながら叫ぶ。
「全員、陣形を整えろ!」
 敵30名にこちらは魔術師団7名だ。応戦しながら指示に従う。

 そこに居たカルロ王子も、微力ながら戦闘に加わっていた。
 アーサーは、サラを庇いながら魔術を使い攻撃した。
「サラ!離れるな!」
 しかしながら、こちらは魔術師7人とアーサーとレオン、ガルーダ王の私兵数名。カイン王太子ら30人を相手に、アーサーも必死そうだった。
 そこへ、前に出てきたのは、ガルーダ王だった。剣を使い、魔力を発動させ、カイン王太子に切りかかる。
 カイン王太子が、反撃する。
「父上、これでおしまいです!」
 物凄い光と風が巻き上がると、ガルーダ王が吹き飛んだ。
「父上!!!」
 カルロ王子が、反射的にガルーダ王のもとに走った。サラも、ガルーダ王の所に走る。
 アーサーが、カイン王太子と対峙する。

「ガルーダ王!」
 大量の血を流して、壁にめり込んでいた。
「大丈夫ですか?ガルーダ王!」
 サラの問いかけに、ガルーダ王がサラの腕を掴む。
「・・・・サラ殿。」
 ヒュー、ヒュー、と苦しそうに喉を鳴らしながら、王は続ける。
「あなたは、アーサーの為に、死んではならん。絶対に・・・!」
 その目は、懇願するような眼だった。
「・・・はい。必ず。」
 そう答えると、ガルーダ王は咳き込んで、吐血した。
「父上!!!」
 カルロ王子が、父王を抱えて叫んだ。


 その瞬間、アーサーの攻撃をよけたカイン王太子が、こちらに飛んで来る。ガルーダ王に攻撃を仕掛けてきたが、カルロ王子と、レオン団長が既所で応戦する。アーサーの周囲に、カイン王太子の魔術師4人が束になってかかってくる。もはや、人手が足りない。
 サラは、ガルーダ王にしがみつくようにして庇う。ガルーダ王が、サラに手を差し出す。
 振り向くと、血だらけの王が言った。
「これは、あなたにお返しする。」
 女神の指輪だった。それを受け取って、サラが口を開いた瞬間だった。カイン王太子が、カルロ王子とレオン団長を吹き飛ばした。
 振り返ると、カイン王太子が後ろに立つ。サラは、ガルーダ王を庇うようにして縮こまった。
「死ね!!!」
 剣を振り下ろされる瞬間、アーサーが間に入り、剣を受ける。
「くそが!!」
 物凄い魔力と魔力のぶつかり合いで、剣から光と風が巻き起こる。剣と剣が重なったまま、どちらも引かない。しかし、アーサーが力を増大させていく。
「諦めろ、魔力量で私にはかなうまい!」
 アーサーは一気に魔力を爆発させる。

 ドン!!と光の塊を、カイン王太子にぶつけて吹き飛ばす。

 瞬間に、黒ずくめの王太子の私兵たち10名が、アーサーの周りを囲む。
「!!魔術師団避けろ!!」
 アーサーは、叫びながら剣を横に素早く閃かせた。凄まじい光と魔力が刃となって飛ぶ。カイン王太子の私兵10人とも倒れ、壁には横に亀裂が入り、壁も崩れた。
 レオン団長と全魔術師団は、なんとか上手くかわした。
 その後も魔術師団は、敵と応戦するも、減ったとはいえ20人は厳しかった。カイン王太子は、次の瞬間には、アーサーに切りかかってくる。

「アーサー!」恐怖でサラは目をつぶってしまう。



 
 その頃、ウォステリアでは。
 誰もいない執務室へ侵入した者が居た。
 いつもは鍵がかかっているのにも関わらず、その瞬間は空いていたのだ。
 足音も無く忍び込むと、いくつかの書類の中からガルーダ王国との条約が明記されたものを見つける。それを手に取ると、すぐに魔法でメラメラと燃やし始めた。
 
 その瞬間に、サミュエルと、アモン団長が入室してくる。その後ろには、ゴードンも居た。
「現行犯だな。クリス一兵卒くん。覚悟はいいかな?」
 サミュエルがそう言うと、クリスは慌てたように、振り返った。アモン団長は、険しい顔だった。
「クリス・・・君はガルーダのスパイだったのか。」
 すぐに、サミュエルが魔法でクリスに手錠をかけて拘束する。クリスはガチャガチャと外そうとした。
「あ~。それ魔法封じがかけられてるから、取れないですよー。君、魔力を隠して、あらゆる審査を抜けてきたわけだ?なかなかやるね。俺たちも反省しなきゃ。」
「サミュエル副団長、騎士団長として、本当に面目も無い。」
「いいえ、これは騎士団の問題ではないです。騎士団入団時には魔力無しか、魔法省が確認してるはずですから。」
 ゴードンが、咳ばらいをする。
「どうやって、全ての目をかいくぐって来たのかは、こやつを拷問すればわかるでしょう。」
 怖いことをサラリと当然の事のように言うゴードンに、アモンもサミュエルも、一瞬固まる。クスクスと、クリスが笑いだす。
「拷問などしなくても、全てお話しますよ。」
 深い青色の目を、3人に向ける。

 そうして、クリスは、3人に全てを話した。
 自分は奴隷だったこと。能力を買われて、カイン王太子に雇われたこと。
「全てがどうでも良かった。ただ命令に従ってた。俺は、魔力を封じる・・隠す能力がある。」
「そんな能力、聞いたことないな?」
 サミュエルが不思議そうに言う。クリスは、笑った。
「俺は、前ガルーダ王の孫です。叔母は聖女でしたし、母も不思議な能力を持っていました。」
 ゴードンが、息を飲む。サミュエルも、アモンも言葉が出なかった。つまり、つまり、このクリスという青年は・・・・。アーサーの従兄弟ということになる。
「信じられないと思いますけど、事実です。第2王女だった母は、小国へ嫁いでいて、現王に殺されずに生きのびていたのです。それを、わざわざ探しに来たのが、あいつ、カインですよ。」
 クリスは、床に落ちた灰を眺める。
「正直言って、どうでもよかった。だから従った。」
 サミュエルは、ポリポリと頭をかく。そして思った。このクリスと言う青年は、今朝、完全に魔力を隠さなかった。気が付いて欲しいと言わんばかりに、魔術師レベルの魔力保持者であることを見せつけていた。捕まりたかった?
 そんな事を考えていたら、アモン騎士団長が、ツカツカとクリスの前まで行って、拳を振り上げると、思いっきり、ぶん殴った。
 クリスは、床に倒れこむ。
「サラ様は!お前を友達のように思って!お前を信じていたんだぞ!あんなに純粋な心をお持ちの方を、よくも騙せたものだ!!」
 クリスは、目を閉じたまま、起き上がろうともしなかった。そして、少し口元だけ微笑む。

「俺は、あの子が好きだ。」
 クリスの突然の言葉に、3人はあっけにとられる。そんなことは気にも留めずに、クリスは続けた。
「サラ様は、サラは、普通の女の子だった。本当は怖がりなのに、強がってる。自分が無謀で、ダメで、どうしようもないって思ってる。だけど、頑張って目の前の、くだらない小さいモノとも、大きなものとも戦ってる。」
 クリスは、床に顔を付けたままで、少し目を開けた。そのまま続ける。
「ガルーダもウォステリアも、どうでもいい。だけど、サラを守りたい。」
 目を開いて、3人を真剣に見つめて言った。
「今日、カイン王太子が、ガルーダ王を殺す。自ら王になって、アーサー王を倒し、ウォステリアも手に入れる気だ。倍以上の人数で、女神を守りながらのアーサー王に隙が出来ると考えている。」

 それを聞いて、サミュエルはゴードンに目配せする。
 そして、魔法省に急いで帰った。



 



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