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65話 レオンの決断
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翌日、
サラは、居てもたっても居られなかった。
魔法省までやって来たレオン団長に話があると呼び出した。
レオンはサラの話を聞きながら、応接室の椅子で紅茶を一口飲んだ。
「レオン団長は、好きな方がいらっしゃるのですか?」
「・・・」
レオンは、顔をヒクつかせて、視線をサミュエルの方に向ける。
サミュエルは、「あ~、他の仕事しようかなぁ~。」と、そそくさと部屋を出て行こうとして、立ち止まる。サラ様が来るとか、何用かと思ったけれども、恋バナかぁ~。・・・て、あれ?と、サミュエルは、振替ってマジマジとサラを見る。
レオンが、サミュエルの行動が気になり、声をかける。
「どうした?」
サミュエルが、頭をかきながら答えた。
「あ~いえ、なんか、こうしてココに来るなんて、昔のサラ様に戻ったように思えて。」
「え?!私は、前もこうやって来ていたのですか?」
サラは、思い切ってテルマさんにお願いして、許可を得て、やっと来たわけなのだが。
「確かにな。許可なくココに来ては問題起こしていたな。記憶が無くても、その性格は健在ということか。」
レオンは、サラを見て、少し笑う。
その優しい笑顔に、サラは勇気を出す。
「あの、出すぎた事とは思うのですが、私はエブリン様に救われました。だから、彼女の為に何かしたい。それに、あのパーティーでの彼女を見て思ったんです!すっごく素敵だなって!ハッキリとした物言いや、真っ直ぐな考え方、すごく素敵で心を打たれたんです。私も、あんな女性になりたいと。だから、ここにこうして来たのです!」
瞬間に、サミュエルとレオンは、噴き出して笑い出した。
「え・・・なんで笑うんですか?」
「いえいえ、申し訳ない!いや、だって・・・ねぇ団長?」
「くくくっ、いえ、サラ様は、あれを憧れると仰るので。」
レオンは、ひとしきり笑ってから説明する。
「以前のサラ様は、エブリン様に似ていましたので。ああなりたいという事は、以前のサラ様に戻るだけなのです。」
笑い過ぎのレオンは、紅茶を一口飲んで、ポロっとこぼした。
「あぁ、そうか。以前のサラ様はエブリン様に似てた。だから俺は、サラ様を放っておけなかったのかもしれないな。」
その一言で、解ってしまった。
レオン団長は、エブリン様に好意があること。
突然、レオンが言った。
「サミュエルには話しましたが、来年、私は団長を退いて、魔法省を出ます。」
「え?」
頭が真っ白になる。魔法省を出る?
「団長はサミュエルに譲って、北のトルネ山に近い隣国に向かう予定です。」
レオン団長は淡々と話し、サミュエルさんが下を向く。
「何故・・・ですか?」
トルネ山の麓には魔獣が居る。そんなところに行く理由がわからない。レオンは、サラの目を見てから返事をする。
「私は、陛下に次ぐ魔力を保有しています。今この国は平和で、女神様から助けて頂いた命(魔力)を持て余しています。隣国ではまだ魔獣たちに困っている街があります。そこへ行こうと思っています。」
サラは顔から血の気が引くのを感じる。
「魔獣狩りをするということですか?お一人で?他に方法は無いんですか?」
魔獣を見たことは無い。だけど、想像もつかない程に恐ろしいはずだ。それに、今の地位を捨ててまで行くだなんて・・・。こんなに、みんなから好かれている人が・・・。
「私は、元々は平民なのです。」
一瞬で、いつも堂々としているレオン団長を思い出す。立ち居振る舞いだって、貴族たちと一緒にいても、アーサーと並んでいても、引けを取らない程に凛としている。
私の考えていることを見透かしたように、団長は話を続ける。
「5歳の時に、両親を魔獣に食われて1人になった私を、討伐に来た当時の魔術師団長に拾われたんです。」
レオン団長は、サラと話すのはこれが最後と言わんばかりに、語り出した。
当時の魔術師団長は、ガタイの良い熊のような男だった。
性格は温厚で、人望も厚い伯爵位を持っていた。息子を病気で早くに無くして落ち込んでいた奥様も、喜んで幼いレオン団長を引き取ったそうだ。
年々、レオン団長の魔力量が増え、使い手としても実力を上げていく中、当時の王が、人望も厚く力もある魔術師団長を疎ましく思い始める。団長を含む魔術師たちが謀反を起こそうと思わないように、団長夫人を人質として城に囲うという話になり、城に強制的に連れて行かれた翌日、手をつけられそうになった団長夫人は自害した。それに激怒した当時の魔術師団長は1人で城へ乗り込み、王に弱味を握られていた副団長に殺害された。
魔術師たちは、王を恐れながらも、団長を失って行動を起こせずにいた。当時、アーサーやゴードン一家にかくまわれたレオンが、いつか魔術師をまとめて、魔法省を作るのを待った。
「私は、前国王を弑逆し、この国が平和になることが願いでした。それが達成された今、この地位や立場に執着心もありません。」
サラは、何も言えなかった。
もう先を決めてしまったであろう、この人に、私なんかが何か言える立場じゃない。
レオンは何も言わないサラを見て、微笑む。
「以前のサラ様なら、きっと、ここで何か言ってくるのでしょうね。今のあなたで、助かりました。」
それは、つまり・・・・。
エブリン様のように、真っ直ぐな感情をぶつけられたら、困るということ?
引き止めたら、もしかしたら・・・。
「そうだ。サラ様にお渡しする物がございます。」
ふと思いついたように、レオンが言った。
空中から小瓶を取り出す。中には、赤みがかった茶葉がはいっているようだった。それを、サラの前に出して、コトリとテーブルに置く。
「これは、以前、あなたから預かったものです。女神の魔力を含んだバラを、茶葉にしました。」
手に取ってみる。ローズティーなのだろう。量は多くないけれど、綺麗な色をしていた。
「実験する予定でしたが、叶わず・・・量は少ないですが、お茶として楽しむことは可能かと。」
逆餞別だとでも言いたげな。
別れの空気が、漂っていた。
サラは、居てもたっても居られなかった。
魔法省までやって来たレオン団長に話があると呼び出した。
レオンはサラの話を聞きながら、応接室の椅子で紅茶を一口飲んだ。
「レオン団長は、好きな方がいらっしゃるのですか?」
「・・・」
レオンは、顔をヒクつかせて、視線をサミュエルの方に向ける。
サミュエルは、「あ~、他の仕事しようかなぁ~。」と、そそくさと部屋を出て行こうとして、立ち止まる。サラ様が来るとか、何用かと思ったけれども、恋バナかぁ~。・・・て、あれ?と、サミュエルは、振替ってマジマジとサラを見る。
レオンが、サミュエルの行動が気になり、声をかける。
「どうした?」
サミュエルが、頭をかきながら答えた。
「あ~いえ、なんか、こうしてココに来るなんて、昔のサラ様に戻ったように思えて。」
「え?!私は、前もこうやって来ていたのですか?」
サラは、思い切ってテルマさんにお願いして、許可を得て、やっと来たわけなのだが。
「確かにな。許可なくココに来ては問題起こしていたな。記憶が無くても、その性格は健在ということか。」
レオンは、サラを見て、少し笑う。
その優しい笑顔に、サラは勇気を出す。
「あの、出すぎた事とは思うのですが、私はエブリン様に救われました。だから、彼女の為に何かしたい。それに、あのパーティーでの彼女を見て思ったんです!すっごく素敵だなって!ハッキリとした物言いや、真っ直ぐな考え方、すごく素敵で心を打たれたんです。私も、あんな女性になりたいと。だから、ここにこうして来たのです!」
瞬間に、サミュエルとレオンは、噴き出して笑い出した。
「え・・・なんで笑うんですか?」
「いえいえ、申し訳ない!いや、だって・・・ねぇ団長?」
「くくくっ、いえ、サラ様は、あれを憧れると仰るので。」
レオンは、ひとしきり笑ってから説明する。
「以前のサラ様は、エブリン様に似ていましたので。ああなりたいという事は、以前のサラ様に戻るだけなのです。」
笑い過ぎのレオンは、紅茶を一口飲んで、ポロっとこぼした。
「あぁ、そうか。以前のサラ様はエブリン様に似てた。だから俺は、サラ様を放っておけなかったのかもしれないな。」
その一言で、解ってしまった。
レオン団長は、エブリン様に好意があること。
突然、レオンが言った。
「サミュエルには話しましたが、来年、私は団長を退いて、魔法省を出ます。」
「え?」
頭が真っ白になる。魔法省を出る?
「団長はサミュエルに譲って、北のトルネ山に近い隣国に向かう予定です。」
レオン団長は淡々と話し、サミュエルさんが下を向く。
「何故・・・ですか?」
トルネ山の麓には魔獣が居る。そんなところに行く理由がわからない。レオンは、サラの目を見てから返事をする。
「私は、陛下に次ぐ魔力を保有しています。今この国は平和で、女神様から助けて頂いた命(魔力)を持て余しています。隣国ではまだ魔獣たちに困っている街があります。そこへ行こうと思っています。」
サラは顔から血の気が引くのを感じる。
「魔獣狩りをするということですか?お一人で?他に方法は無いんですか?」
魔獣を見たことは無い。だけど、想像もつかない程に恐ろしいはずだ。それに、今の地位を捨ててまで行くだなんて・・・。こんなに、みんなから好かれている人が・・・。
「私は、元々は平民なのです。」
一瞬で、いつも堂々としているレオン団長を思い出す。立ち居振る舞いだって、貴族たちと一緒にいても、アーサーと並んでいても、引けを取らない程に凛としている。
私の考えていることを見透かしたように、団長は話を続ける。
「5歳の時に、両親を魔獣に食われて1人になった私を、討伐に来た当時の魔術師団長に拾われたんです。」
レオン団長は、サラと話すのはこれが最後と言わんばかりに、語り出した。
当時の魔術師団長は、ガタイの良い熊のような男だった。
性格は温厚で、人望も厚い伯爵位を持っていた。息子を病気で早くに無くして落ち込んでいた奥様も、喜んで幼いレオン団長を引き取ったそうだ。
年々、レオン団長の魔力量が増え、使い手としても実力を上げていく中、当時の王が、人望も厚く力もある魔術師団長を疎ましく思い始める。団長を含む魔術師たちが謀反を起こそうと思わないように、団長夫人を人質として城に囲うという話になり、城に強制的に連れて行かれた翌日、手をつけられそうになった団長夫人は自害した。それに激怒した当時の魔術師団長は1人で城へ乗り込み、王に弱味を握られていた副団長に殺害された。
魔術師たちは、王を恐れながらも、団長を失って行動を起こせずにいた。当時、アーサーやゴードン一家にかくまわれたレオンが、いつか魔術師をまとめて、魔法省を作るのを待った。
「私は、前国王を弑逆し、この国が平和になることが願いでした。それが達成された今、この地位や立場に執着心もありません。」
サラは、何も言えなかった。
もう先を決めてしまったであろう、この人に、私なんかが何か言える立場じゃない。
レオンは何も言わないサラを見て、微笑む。
「以前のサラ様なら、きっと、ここで何か言ってくるのでしょうね。今のあなたで、助かりました。」
それは、つまり・・・・。
エブリン様のように、真っ直ぐな感情をぶつけられたら、困るということ?
引き止めたら、もしかしたら・・・。
「そうだ。サラ様にお渡しする物がございます。」
ふと思いついたように、レオンが言った。
空中から小瓶を取り出す。中には、赤みがかった茶葉がはいっているようだった。それを、サラの前に出して、コトリとテーブルに置く。
「これは、以前、あなたから預かったものです。女神の魔力を含んだバラを、茶葉にしました。」
手に取ってみる。ローズティーなのだろう。量は多くないけれど、綺麗な色をしていた。
「実験する予定でしたが、叶わず・・・量は少ないですが、お茶として楽しむことは可能かと。」
逆餞別だとでも言いたげな。
別れの空気が、漂っていた。
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