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この片思いは、きっと叶わない。
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今日は4月1日。エイプリルフール。
エイプリルフールとは、毎年4月1日には嘘をついても良いという風習のことである。(Wikipediaより)
ねえ!ねえ!ねえって!
何だよ煩いなあ……
「ねえ、お兄ちゃん!」
「何だよ沙也加。朝から煩いなあ……」
「ね、今日何の日か知ってる?」
「3月……じゃない。4月1日か……エイプリルフールだろ?」
「知ってたのか、つまんないの」
いや、もう今月から高校生だからな?
「いや、流石に知ってるだろ?」
「お兄ちゃんが知ってたら、お兄ちゃんにドッキリ出来ないじゃん!」
「知ってる?って聞いた時点でもう終わりだよ」
「……お兄ちゃんの意地悪」
「事実だからな?」
「チッ」
「ちょっと待て、お前舌打ちしたよな!な!?」
「煩いいいいい!お兄ちゃんの馬鹿あああああ!」
「唐突に妹に罵倒された!?」
俺は妹と言い合いをしながら2階の自室を出て妹を追いかけて階段を降りた。
「ちょっと悠依斗ー今日出かけるんだってー?」
「そうだけど……え、なに母さん」
「穂波ちゃんと行くんだって?」
「なんだよ……幼馴染と出かけちゃ悪いのか、母さん」
「ダメじゃないけどね?穂波ちゃんのお母さんがあんたと穂波ちゃんで出かけるって言ってたからさ?デート?って思って」
「んなわけないじゃん」
「うっわーお兄ちゃんつまんないのー」
「ねえ?そろそろ彼女もできるのかしらって思ってたのにねえ?」
……俺にも色々あるんだよ、いいだろ、別に。
「あれ、父さんは?」
「あ、確かにー」
「もう会社行ったわよ?会社員には春休みなんてものはないのよ」
「「へえー」」
「そんなことはいいからさっさと食べなさい。お母さんが仕事に遅れちゃうでしょ?」
「「はーい」」
さて、俺があいつの家に行くっていう約束だったな。
行くか。
「ご馳走様」
「あら、早いのね?」
「迎えに行かなきゃいけないから……って何?」
「いやあ……自覚ないのねえ……」
「は?」
「何でもないわよ?ほら早くしなさい」
「はいはい」
やばいやばい。さっさと行かないとな。
「あれでなんで付き合ってないのか……母さんは分からないわ……」
「大丈夫よ、お母さん。私も分かんないもの」
「「はあ……」」
◇
「じゃあ行ってきます!」
「「いってらっしゃーい」」
あいつ、まだ寝てたりとか……してないよな?
いや、でもあいつのことだからな……
ピーンポーン♪
「あら、悠依斗くんじゃない!穂波はねー……」
「ママ!ちょっと待ってて貰って!」
「って調子なのよ、ごめんなさいね」
「いや、大丈夫ですよ」
「あと1分で行くから!」
「外で待ってます」
「あら本当?ごめんなさいね……」
「いえいえ」
女子って準備に時間掛かるんだなあ……
ま、いっか。別に急いでもないし。
「悠依斗!ごめん!待たせた……っ!」
「あ、いや、大丈夫」
か、かわいっっっっっっっ!?
清楚でかわいい子って穂波みたいな感じなのかっ!?
「か、かかっこいっっっっ……やっば、惚れる……」
「は?なんて?」
「ななな、なんでもないっ!なんでもないからっ!」
……んなわけあるか。真っ赤だぞ?
◇
「お前、もしかしてこれ食いたいのか?」
「…………悪い?」
「いや、いいけど」
駅前の店の前で穂波が止まったからそうかと思ったが……ここか……
俺、甘い物好きじゃないんだけどなあ……
「え!じゃあ行きたい!いい?」
嬉しそうに期待を込めた目で見られちゃあ、断れるわけないだろう?
「はいはい。いいよ、行こうか」
「やっった!ありがと!行こ!!」
ま、頑張って食うかな。
◇
「ねえもう無理ー」
「お前がそのパフェ食いたいって言うから頼んだんだろ?」
「でもさあ……」
はあ……面倒だが。
「ほら」
「……?」
「食え」
そう言って穂波の眼前にスプーンを近づける。
「俺も食ってやるから、食べろ」
「…………はあい」
と言って自分でクリームを掬って口に入れた。
俺が突き出したスプーンを引っ込めて食べようとすると、
「あ……」
そう言って俺のスプーンをグッと力強く引き寄せて食べた。
は……?あーんしたぞ、こいつ……かわいいかよ!?
「好き」
「ーーーーーーーーッ!?ゴホッ……ゴホッ…………」
咽せてこっちを涙目で見つめてくる。
「なに」
「は!?」
「……嘘」
「は?」
「今日はエイプリルフールだろ?だから嘘だってば。ほら、食え」
「悠依斗の馬鹿あああああ!」
「煩い」
「分かったわよ!食べるわよ!もうっ!」
今のが本当は嘘なんだけどな。
告白されて断るのも、揶揄うのも。お前が好きだからなんだけどな。
片思いだろうからな。心に仕舞っておこう。
そう思って俺は苺を一粒口に放り込んだ。
~穂波side~
「好き」
「ーーーーーーーーッ!?ゴホッ……ゴホッ…………」
は…………え………え!?
「なに」
「は!?」
「……嘘」
「は?」
「今日はエイプリルフールだろ?だから嘘だってば。ほら、食え」
揶揄ったよね!?あーもう!期待した私が馬鹿だったわ!
「悠依斗の馬鹿あああああ!」
「煩い」
「分かったわよ!食べるわよ!もうっ!」
嘘じゃなかったらよかったのに。
ずっと好きなのに。
あいつが他の子を振る度に、(良かった。付き合わないんだ。)って、毎回ホッとしてたのに。
片思いだろうから。
あいつが他の子と付き合うことになったら笑顔で言うんだ
おめでとう
って。
この片思いは、きっと叶わないだろうから。
エイプリルフールとは、毎年4月1日には嘘をついても良いという風習のことである。(Wikipediaより)
ねえ!ねえ!ねえって!
何だよ煩いなあ……
「ねえ、お兄ちゃん!」
「何だよ沙也加。朝から煩いなあ……」
「ね、今日何の日か知ってる?」
「3月……じゃない。4月1日か……エイプリルフールだろ?」
「知ってたのか、つまんないの」
いや、もう今月から高校生だからな?
「いや、流石に知ってるだろ?」
「お兄ちゃんが知ってたら、お兄ちゃんにドッキリ出来ないじゃん!」
「知ってる?って聞いた時点でもう終わりだよ」
「……お兄ちゃんの意地悪」
「事実だからな?」
「チッ」
「ちょっと待て、お前舌打ちしたよな!な!?」
「煩いいいいい!お兄ちゃんの馬鹿あああああ!」
「唐突に妹に罵倒された!?」
俺は妹と言い合いをしながら2階の自室を出て妹を追いかけて階段を降りた。
「ちょっと悠依斗ー今日出かけるんだってー?」
「そうだけど……え、なに母さん」
「穂波ちゃんと行くんだって?」
「なんだよ……幼馴染と出かけちゃ悪いのか、母さん」
「ダメじゃないけどね?穂波ちゃんのお母さんがあんたと穂波ちゃんで出かけるって言ってたからさ?デート?って思って」
「んなわけないじゃん」
「うっわーお兄ちゃんつまんないのー」
「ねえ?そろそろ彼女もできるのかしらって思ってたのにねえ?」
……俺にも色々あるんだよ、いいだろ、別に。
「あれ、父さんは?」
「あ、確かにー」
「もう会社行ったわよ?会社員には春休みなんてものはないのよ」
「「へえー」」
「そんなことはいいからさっさと食べなさい。お母さんが仕事に遅れちゃうでしょ?」
「「はーい」」
さて、俺があいつの家に行くっていう約束だったな。
行くか。
「ご馳走様」
「あら、早いのね?」
「迎えに行かなきゃいけないから……って何?」
「いやあ……自覚ないのねえ……」
「は?」
「何でもないわよ?ほら早くしなさい」
「はいはい」
やばいやばい。さっさと行かないとな。
「あれでなんで付き合ってないのか……母さんは分からないわ……」
「大丈夫よ、お母さん。私も分かんないもの」
「「はあ……」」
◇
「じゃあ行ってきます!」
「「いってらっしゃーい」」
あいつ、まだ寝てたりとか……してないよな?
いや、でもあいつのことだからな……
ピーンポーン♪
「あら、悠依斗くんじゃない!穂波はねー……」
「ママ!ちょっと待ってて貰って!」
「って調子なのよ、ごめんなさいね」
「いや、大丈夫ですよ」
「あと1分で行くから!」
「外で待ってます」
「あら本当?ごめんなさいね……」
「いえいえ」
女子って準備に時間掛かるんだなあ……
ま、いっか。別に急いでもないし。
「悠依斗!ごめん!待たせた……っ!」
「あ、いや、大丈夫」
か、かわいっっっっっっっ!?
清楚でかわいい子って穂波みたいな感じなのかっ!?
「か、かかっこいっっっっ……やっば、惚れる……」
「は?なんて?」
「ななな、なんでもないっ!なんでもないからっ!」
……んなわけあるか。真っ赤だぞ?
◇
「お前、もしかしてこれ食いたいのか?」
「…………悪い?」
「いや、いいけど」
駅前の店の前で穂波が止まったからそうかと思ったが……ここか……
俺、甘い物好きじゃないんだけどなあ……
「え!じゃあ行きたい!いい?」
嬉しそうに期待を込めた目で見られちゃあ、断れるわけないだろう?
「はいはい。いいよ、行こうか」
「やっった!ありがと!行こ!!」
ま、頑張って食うかな。
◇
「ねえもう無理ー」
「お前がそのパフェ食いたいって言うから頼んだんだろ?」
「でもさあ……」
はあ……面倒だが。
「ほら」
「……?」
「食え」
そう言って穂波の眼前にスプーンを近づける。
「俺も食ってやるから、食べろ」
「…………はあい」
と言って自分でクリームを掬って口に入れた。
俺が突き出したスプーンを引っ込めて食べようとすると、
「あ……」
そう言って俺のスプーンをグッと力強く引き寄せて食べた。
は……?あーんしたぞ、こいつ……かわいいかよ!?
「好き」
「ーーーーーーーーッ!?ゴホッ……ゴホッ…………」
咽せてこっちを涙目で見つめてくる。
「なに」
「は!?」
「……嘘」
「は?」
「今日はエイプリルフールだろ?だから嘘だってば。ほら、食え」
「悠依斗の馬鹿あああああ!」
「煩い」
「分かったわよ!食べるわよ!もうっ!」
今のが本当は嘘なんだけどな。
告白されて断るのも、揶揄うのも。お前が好きだからなんだけどな。
片思いだろうからな。心に仕舞っておこう。
そう思って俺は苺を一粒口に放り込んだ。
~穂波side~
「好き」
「ーーーーーーーーッ!?ゴホッ……ゴホッ…………」
は…………え………え!?
「なに」
「は!?」
「……嘘」
「は?」
「今日はエイプリルフールだろ?だから嘘だってば。ほら、食え」
揶揄ったよね!?あーもう!期待した私が馬鹿だったわ!
「悠依斗の馬鹿あああああ!」
「煩い」
「分かったわよ!食べるわよ!もうっ!」
嘘じゃなかったらよかったのに。
ずっと好きなのに。
あいつが他の子を振る度に、(良かった。付き合わないんだ。)って、毎回ホッとしてたのに。
片思いだろうから。
あいつが他の子と付き合うことになったら笑顔で言うんだ
おめでとう
って。
この片思いは、きっと叶わないだろうから。
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