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19章「大きく揺れる世界」
第187話「定期報告で知る真実」
#第187話「定期報告で知る真実」
ハンター協会ビルの上層階。いつもの定期報告の日、俺、ひより、ルナ、ラム、リンの五人(3人+2体)は朝倉さんのオフィスにいた。エリナさん、透子さんも同席している。
報告は順調に進んでいたが、どこか空気が重い。朝倉さんの表情が冴えない。いつも冷静な人なのに、今日は何かを迷っているようだった。
その後、エリナさんが朝倉さんに俺たちに真実を告げるように促した。そして朝倉さんは少し躊躇したものの横須賀ダンジョンの状況、そして今後予想される事態の説明を始めた。
まずは朝倉さんはタブレットの映像を見せてくれた。横須賀ダンジョンの映像だろう。モンスターがダンジョンの外に出る映像。その次は街で暴れまわる映像。これはやばい、3階層のモンスターに対しては自衛隊でもかなり苦戦しているのが分かる。
ちょっと間違えば更に被害が広がっていたことは容易に想像できる。自衛隊基地がすぐ近くにあったからこそ何とか対応できた感じだ。
「……これは横須賀ダンジョンの映像だ。報道では“イレギュラーな事故”とされているが実際には違う。これは日本だけの問題ではない。世界中で同様の現象が起きている」
「世界中で、ですか?」
俺は思わず聞き返した。
「そうだ。これまでの理論では、1~3階層のモンスターを定期的に討伐してエネルギーを一定以下に保てば、外への氾濫は防げるはずだった。だが横須賀ダンジョンでは完全な管理下にも関わらず外部にモンスターが出た」
「つまり……横須賀ダンジョンの件は事故ではなく、必然とも言ってもよい事象ということですか?」
「そうかもしれないんだ。まだ確証はないが、少なくとも“例外”ではない。同じようなケースがここ数年、複数の国で確認されている。日本はまだ1件しかないが、海外では複数報告されている国も多数ある。そしてその頻度が確実に増えている。今後は世界中では当然のことながら、日本でも増えていく可能性が高いと予想されている」
俺の隣でひよりが不安そうに眉を寄せた。
「そんなに頻発しているなら、報道されてもおかしくないですよね?世界でのダンジョン氾濫情報はほとんど見てないのですが」
「現実に報道されていないからな。実のところ我が国を含め他国でも政府が報道を制限している。あれが大々的に流れればパニックになる。ダンジョン周辺の住民が一斉に避難し経済が崩れる可能性がある。株価も暴落するだろう。マスコミも大騒ぎして大変なことになる。下手をすれば暴動が起きるかもしれない。そうなれば国がもたないかもしれない。それはどこの国でも同じだ。どこかで何かが起きればそれが連鎖して世界的な恐慌になる可能性もある」
朝倉さんの声には、淡々とした響きの中に切迫感があった。
「では今後はどうするんですか?報道規制にも限界がありますよね」と俺は聞いた。
「とりあえずは横須賀ダンジョンの件は事故として国民には忘れてもらうというのがベストの方向性かな。そして今後は都市部のダンジョンを中心に、1~3階層の出入り口を常時監視することになる。すなわちハンターを常駐させ出入り口に近づくモンスターは全て討伐する」
ルナが腕を組んで言葉を選ぶように発言した。
「報道規制からのダンジョン対応、それは仕方がないとは思います。でも全ダンジョンで常時監視をやるのは無理なのでは?相当な人員が必要になると思いますよ」
「ああ、限界がある。人員が足りない可能性がある。だからこそ……」
朝倉さんは、こちらを真っすぐ見た。
「場合によっては、レン君たちにも協力をお願いすることになるかもしれない。少なくとも3階層はレベル4以上の人員が必要だ」
「監視活動を私たちがですか?」
「そうだ。もしかしたら人手の少ない地方をお願いする可能性もある」
「分かりました。人が足りない場合は対応を検討します」
とんでもない話になってきた。まさか横須賀ダンジョンのような事故が世界中で起きているとは。そしてその対策のためにかなりの人員が必要らしい。俺たちにも要請が入る可能性もある。
でもこれは日本を救うための話だ。動くのは当然だろう。5階層以下のダンジョン攻略を止めることになるかもしれないけどそんなことは言ってられない事態だ。できる範囲で対応したい。
「あとは最悪の場合を想定してだが――外に漏れたモンスターの討伐を依頼することになるかもしれない」
「えっ? それって……自衛隊の仕事じゃ?」
「もちろんだ。しかし自衛隊だけで全国をカバーするのは不可能だ。熊のように山に隠れてしまうような奴が出てくるかもしれない。そうなると集団で戦う自衛隊では厳しい。個で強い戦力が必要だ」
「それはもしかして、ラムとリンに討伐を依頼する可能性があるということですか?」
朝倉さんは、言葉を慎重に選ぶように続けた。
「そういうことだ。もちろん無理にとは言わない。君たちに義務はない。だが、状況は理解しておいてほしい。近いうちに“非常時”が訪れるかもしれない。場合によっては君たちが唯一の希望になるかもしれない」
静まり返った室内に、空調の音だけが響いた。
俺はゆっくりと頷く。
「……分かりました。すぐに答えは出せませんが、考えておきます」
その時、リンが小さく「わたしは守りたいです」と呟いた。リンとしても今の世界に出てきたばかり。この世の中を守りたいという気持ちは強いのだろう。
その声に、朝倉さんの硬かった表情がほんのわずかに和らいだ気がした。
でもダンジョンの外に出てきたモンスターは強力だ。ラムとリンが本当に対応できるのかも分からない。ラムとリンはダンジョン外でも力を保持しているとのことだけど他のモンスターの状況はよく分からない。
俺は何があろうと絶対にラムやリンを犠牲にするようなことはしたくない。単純にラムとリンにお願いするのはかなり不安だ。
ハンター協会ビルの上層階。いつもの定期報告の日、俺、ひより、ルナ、ラム、リンの五人(3人+2体)は朝倉さんのオフィスにいた。エリナさん、透子さんも同席している。
報告は順調に進んでいたが、どこか空気が重い。朝倉さんの表情が冴えない。いつも冷静な人なのに、今日は何かを迷っているようだった。
その後、エリナさんが朝倉さんに俺たちに真実を告げるように促した。そして朝倉さんは少し躊躇したものの横須賀ダンジョンの状況、そして今後予想される事態の説明を始めた。
まずは朝倉さんはタブレットの映像を見せてくれた。横須賀ダンジョンの映像だろう。モンスターがダンジョンの外に出る映像。その次は街で暴れまわる映像。これはやばい、3階層のモンスターに対しては自衛隊でもかなり苦戦しているのが分かる。
ちょっと間違えば更に被害が広がっていたことは容易に想像できる。自衛隊基地がすぐ近くにあったからこそ何とか対応できた感じだ。
「……これは横須賀ダンジョンの映像だ。報道では“イレギュラーな事故”とされているが実際には違う。これは日本だけの問題ではない。世界中で同様の現象が起きている」
「世界中で、ですか?」
俺は思わず聞き返した。
「そうだ。これまでの理論では、1~3階層のモンスターを定期的に討伐してエネルギーを一定以下に保てば、外への氾濫は防げるはずだった。だが横須賀ダンジョンでは完全な管理下にも関わらず外部にモンスターが出た」
「つまり……横須賀ダンジョンの件は事故ではなく、必然とも言ってもよい事象ということですか?」
「そうかもしれないんだ。まだ確証はないが、少なくとも“例外”ではない。同じようなケースがここ数年、複数の国で確認されている。日本はまだ1件しかないが、海外では複数報告されている国も多数ある。そしてその頻度が確実に増えている。今後は世界中では当然のことながら、日本でも増えていく可能性が高いと予想されている」
俺の隣でひよりが不安そうに眉を寄せた。
「そんなに頻発しているなら、報道されてもおかしくないですよね?世界でのダンジョン氾濫情報はほとんど見てないのですが」
「現実に報道されていないからな。実のところ我が国を含め他国でも政府が報道を制限している。あれが大々的に流れればパニックになる。ダンジョン周辺の住民が一斉に避難し経済が崩れる可能性がある。株価も暴落するだろう。マスコミも大騒ぎして大変なことになる。下手をすれば暴動が起きるかもしれない。そうなれば国がもたないかもしれない。それはどこの国でも同じだ。どこかで何かが起きればそれが連鎖して世界的な恐慌になる可能性もある」
朝倉さんの声には、淡々とした響きの中に切迫感があった。
「では今後はどうするんですか?報道規制にも限界がありますよね」と俺は聞いた。
「とりあえずは横須賀ダンジョンの件は事故として国民には忘れてもらうというのがベストの方向性かな。そして今後は都市部のダンジョンを中心に、1~3階層の出入り口を常時監視することになる。すなわちハンターを常駐させ出入り口に近づくモンスターは全て討伐する」
ルナが腕を組んで言葉を選ぶように発言した。
「報道規制からのダンジョン対応、それは仕方がないとは思います。でも全ダンジョンで常時監視をやるのは無理なのでは?相当な人員が必要になると思いますよ」
「ああ、限界がある。人員が足りない可能性がある。だからこそ……」
朝倉さんは、こちらを真っすぐ見た。
「場合によっては、レン君たちにも協力をお願いすることになるかもしれない。少なくとも3階層はレベル4以上の人員が必要だ」
「監視活動を私たちがですか?」
「そうだ。もしかしたら人手の少ない地方をお願いする可能性もある」
「分かりました。人が足りない場合は対応を検討します」
とんでもない話になってきた。まさか横須賀ダンジョンのような事故が世界中で起きているとは。そしてその対策のためにかなりの人員が必要らしい。俺たちにも要請が入る可能性もある。
でもこれは日本を救うための話だ。動くのは当然だろう。5階層以下のダンジョン攻略を止めることになるかもしれないけどそんなことは言ってられない事態だ。できる範囲で対応したい。
「あとは最悪の場合を想定してだが――外に漏れたモンスターの討伐を依頼することになるかもしれない」
「えっ? それって……自衛隊の仕事じゃ?」
「もちろんだ。しかし自衛隊だけで全国をカバーするのは不可能だ。熊のように山に隠れてしまうような奴が出てくるかもしれない。そうなると集団で戦う自衛隊では厳しい。個で強い戦力が必要だ」
「それはもしかして、ラムとリンに討伐を依頼する可能性があるということですか?」
朝倉さんは、言葉を慎重に選ぶように続けた。
「そういうことだ。もちろん無理にとは言わない。君たちに義務はない。だが、状況は理解しておいてほしい。近いうちに“非常時”が訪れるかもしれない。場合によっては君たちが唯一の希望になるかもしれない」
静まり返った室内に、空調の音だけが響いた。
俺はゆっくりと頷く。
「……分かりました。すぐに答えは出せませんが、考えておきます」
その時、リンが小さく「わたしは守りたいです」と呟いた。リンとしても今の世界に出てきたばかり。この世の中を守りたいという気持ちは強いのだろう。
その声に、朝倉さんの硬かった表情がほんのわずかに和らいだ気がした。
でもダンジョンの外に出てきたモンスターは強力だ。ラムとリンが本当に対応できるのかも分からない。ラムとリンはダンジョン外でも力を保持しているとのことだけど他のモンスターの状況はよく分からない。
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