転生したら嫌われ者No.01のザコキャラだった 〜引き篭もりニートは落ちぶれ王族に転生しました〜

隍沸喰(隍沸かゆ)

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第一章

9話 脱獄常習犯



 今、この男。なんと言った。


 男同士で結婚なんて……。


 いや。ゲームの世界観的には有りだった筈だ。色々な種族が混在して各層に住んでいる。

 獣人は動物との婚姻が可能だったりするし。

 勇者・ウォルズが犬に導かれて獣人の少女を救った回があって、犬が彼女と結婚していると知り驚いていたことがあったから間違いないだろう。

 それに、シストの王族の証が指輪であり、それを奪い、使用して物語を進める回があったため、その手の方では盛り上がっていた。

「冗談だ」

 博士は陽気に笑う。

 ほっとして、博士のゲームの中では見たことのない様子にレアだと考えて眺めていた。

 どうやら少しは気に入られたらしい。取り入ればジノと会わせて貰えるだろうか。

 そう考えた途端、

「君には私のお気に入りを見せてあげよう!」

  と、博士は肩を組んできて高らかに言った。




。.。:+* ゜ ゜゜ *+:。.。:+* ゜ ゜゜ *+:。.。.。:+* ゜ ゜゜ *+:。.。:+* ゜ ゜゜ *



 真っ白のドームのような空間にやって来る。天井が高く、開放感が凄かった。同時に閉塞感も感じるのだから、感覚がおかしくなりそうだ。WoRLD oF SHiSUToの世界観は自然にそれをするから凄い。

 周囲には白い服を着た助手と見廻り達が立っている。

 博士の隣に、見廻りの服を着た自分がいたことに、ジノは目をひん剥いて食いついて来る。

「貴様、また俺を騙したな」

 と掴みかかろうと暴れるジノに、博士ははははと笑った。

 自分に言っているのだと考えているらしい。

「紹介しよう、私の伴侶のヴァンくんだ」

 え。冗談って。

 あ、いや、これはジノをからかっているのか。

 ジノにはさらに険悪に睨まれてしまった。ヴァントリアが実験に加担していると思われているらしい。ヴァントリアだから仕方がない。

「では始めようか」

 実験が行われ、ジノの叫び声が木霊する。積もる残響が不協和音を生み、すぐにでも耳を塞ぎたくなった。

 ジノの身体に黒い霧が流れ込んでいく。

 地面から伸びた管が直接ジノの皮膚を割って流し込まれているのだ。そのおびただしい数の管を見るだけでゾッとする。管の中の霧を見ただけで倒れる者まで現れた。

 一体あれがなんなのか分からないが、ジノの苦しみ方が尋常じゃないのを見れば、とてつもなく嫌なものであることが理解できる。

「やめてくれ!」

 博士に掴みかかって懇願するが、なぜだい、と値踏みするようにジッと見つめられる。

「だって……」

 自分は博士側の人間だと思われている。ここでバレたらふりだしに戻るか、44層の檻にそのまま入れられてしまうかだ。44層は氷でできた空間じゃないが、ヴァントリアは脱獄ばかりしている常習犯だ。脱獄系の魔法なら朝飯前だろう。

 けれど、ジノを放っておくことはできない。

 返答に困っていると、博士は再びジノに向きなおる。

 ――――ダメだ、こんなの。止めないと。

 ジノの叫び声が脳に直接届けられるようで、とてつもない悪心を起こした。

「やめて、やめてくれ。頼む。やめてください博士!」

 必死に頼むと、博士は手をあげて止めさせる。

「看守にしては囚人に優しいな」

 その言葉に、ハッと顔を上げる。

 バレたか!?

 しかし。

 その顔は、あの博士の顔とは思えないほどに優しかった。

「何を言ってる」

 ジノが息を荒げながら唸る。

「そいつは優しくなんかないヴァントリア・オルテイルだ……ッ!!」

 げ。

 慌てて「バカ!」っとジノの口を塞ぎに行くがもう遅い。

「君は王族の権限を剥奪され43層にいたはずでは……」

 博士の急変した声に、ぎくっとする。

 これは、もう隠しきれない。



「俺はこいつを攫いに来ただけだ!」

 と、ふんぞりかえり、ヴァントリアの傲慢さを思わせる態度で、ジノの拘束を得意の脱獄系魔法で解いた。

 弱小でしょぼい魔法しか使えないが、こんな小汚い魔法が使えるのも、脱獄常習犯のなせる技だ!

 なぜ魔法が、と周囲の助手達が騒つく。

 それに対して、やはり引っかかるよな、と感じるが。

 突然――背後から強い力を受け、前の床に顔面を強打した。

「どうもありがとう」

 ジノの声だ。どうやら彼に押し倒されたらしい。

 反転させられ、「衰弱する前にその顔が拝めて最高だったよ」と告げられる。首を狙われ、え、となる。

 途端、破裂音がドームに響き渡り、顔の横で煙が上がった。

「動くな餓鬼、私の伴侶に手を出してただで済むと思うな」

 博士が銃口をこちらに向け、もう一度引き金を引こうとする。

「やめろ撃つな!」

 ジノを押し退け、庇うように彼の前に立ちはだかると、後ろでジノは固まって動かなくなる。

「催眠薬だ」
「その後はどうする、また実験するんだろう」

 サングラスの奥の瞳が険しく歪められる。

「邪魔する者は容赦しない」

 銃口がこちらを向き、滝のような汗が吹き出る感覚があった。こちらの世界が現実の世界だと理解が追いついていなかったが、確かに、身体は順応しているらしい。

 博士の指が動く寸前で、右腕に強い力が加わり、身体が大きく逸れる。

 そのまま、身体がふわりと浮いて。

 博士が、チッと舌打ちをするのが見えた。

 振り返れば、ジノが自分の腕を引っ張り、宙に浮いている。彼の身体能力で高い跳躍をしたらしい。

 二階の柵を飛び越え、出口らしい扉を蹴破り廊下を疾走する。ヴァントリアの脱出魔法より断然優秀だ。

「まだそんな力が残っていたか、さすが私の最高傑作」




 博士の声が廊下にも轟く。


「捕らえろッ!!!!」



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