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第二章
12話 どの薬を飲んでも
そう言えば、とゲームの内容を思い出した。
シストの王族の証でもエレベーターで行く事が出来なかった45層。しかしヴァントリアは行き来を可能にしていた。
45層で彼が登場し、とてつもないチートな敵を味方に付けていた。確かそれはこの45層に囚われていた囚人だった。
その囚人が何者なのかはわからないが、敵ではなく味方になるのなら好都合だ。
ジノを探しながら、彼も探そう。
それにしても、灯りがなかったら本当の闇だな。
廊下の奥へ進むごとに灯りは減っていく。魔法の炎で辺りを照らすが、闇が光を飲み込み、すべてを明るく照らし出す事はできない。
それでも、大変そうだな、とドキドキしながら進んだ。ちょっとしたアトラクションに入った気分で。
.。.:✽・゜+.。.:✽・゜+.。.:✽・゜+.。.:✽・゜+.。.:✽・゜+
目の前にいた筈のヴァントリア・オルテイルの姿が突然消えた。
ジノは麻酔により眠っている。
「実験は後にして、ヴァントリア・オルテイルを捕えろ」
呼び集めた兵士と見廻りに命令する。
「シスト様に連絡を入れろ。対応を決めてもらう」
「承知致しました」
部下が手首の白いブレスレットにボソボソと呟く。
すると、宙に映像が浮かんですぐに彼の声が聞こえてきた。
「何事だ」
相手は都市の支配者だ。いつもより声を意識して報告する。
「テイガイア・ゾブドです。報告致します。ヴァントリア・オルテイルが脱獄しておりました。対応はどう致しますか」
「……私が行こう」
――――な!?
美しい声で紡がれた彼の言葉に、度肝を抜かれる。
王自ら赴くと言うのか。
「彼はいい実験材料になるだろう」
そう言い残され、シスト様との通信は途絶えた。
いつもなら王族の解剖だの王族をベースにした実験体が欲しいだの言っているが……あまり乗り気になれない。
少し不服そうなのを見てか、助手が「大丈夫ですか」と声を掛けてくる。
それを無視し、ふらふらと覚束ない足取りで自室へ向かう。
お茶を飲もうとカップを手に取れば、先刻までここで必死にお茶を淹れてくれた人物の顔が浮かぶ。
頭を振って、自分はジノの実験に専念しようと薬を調合しようとするが。
どれをどう調合すればいいのか何度も訪ねてきては首を傾げ、結局手取り足取り教えてやったことを思い出す。
目を伏せて、一息吐いて、今度は報告書でも作成しようと、机に向かい、椅子に座ってペンを取る。
机の上にはお茶と、差し入れの見目好い団子がちょんと置いてあった。
口にして美味しいと褒めた後の、きらきらとした笑顔で「本当ですか……!」と尋ねてきた彼の姿が脳裏を焼いた。
「ああ……」
とうなだれる。何をしようにも彼の一生懸命な姿が脳を支配している。
そんな脳を責めるように頭をがしがしと掻く。
「何なんだというのだ……」
外へ出て落ち着こうと部屋を後にすると、廊下でばったり、忙しそうにしている助手に会った。
一番弟子のラルフ・レーラインだ。
彼はぽかんとして、「顔が赤いですよ、何か薬でも試されたのですか」と尋ねてくる。
「そうだ」
何も試してなどいないが。
そうですか、と忙しなく戻ろうとする彼を引き止める。
「ヴァントリアには興味がないので43層へ戻す」
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