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第二章
13話 呪いの荊棘
炎で照らしながら歩いていたが、周りから獣の呻き声のようなモノが聞こえてびくびくしてしまう。誰がアトラクションだなんて言ったんだ。俺か。
ガシャンと音がして、「ひっ」と悲鳴を上げて、そちらを照らすと。
鉄の格子にまとわりつく、大量の顔。涎と汗と血走った目がギョロギョロと動いていたが、全ての目が一斉にギョロッとこちらを向く。
口をパクパクして。眺めていたら。
ガシャンと威嚇するように体当たりされて、「ぎゃああああああああああああッ」と全力疾走で逃げて、コケる。
その衝撃で魔法も消え、ひいいい、と慌てて照らすと。また目前の檻に何かいて悲鳴をあげる。
「美味しくないよ不味いよ命落とすよ博士くらいしか食べられないよ!」
手をブンブン振り回すが、それはピクリとも動かない。
そうっと近づき、もっとよく観察しようと照らしてみる。
——あ、見つけた。
そこには、頑丈な拘束具で捉えられている囚人がいた。
彼こそが探していた当人。ヴァントリアのチートな囚人である。
「おーい」
話しかけるが返事がない。
まさか死んでるのか?
ヴァントリアはどうやって助けたんだろう。
囚人——イルエラ。
頑丈な拘束具で拘束されていて、無口。
そう言えば無口なのは首と口が一緒くたになった首輪の枷の所為だった。
そうだ、拘束具には鍵があった筈だ。
ヴァントリアが主人公から奪い、所持していたもので……と、ここでハッとする。
主人公が手に入れたアイテムで次々とステージを進めるなか、それを奪われ行動の制限を与えられる、その回。主人公が奪われたもの……それは、シストの指輪!
――――「見つけたぞ……ヴァントリア」
背筋をすうっと冷気が撫で付けた。
バッと飛び退いて、突然現れたそいつから逃れようとするが。彼は飛び退いた先に現れる。
——速い——と考える間に腕を掴まれ、地面に引き倒される。
耳に唇が擦れる程の近さで囁かれる。
「脱獄したらしいな、王族の証がない分制限されて大変だっただろう」
「離せ……ッ」
何故シストがここに。
45層はシストでも入れない筈じゃ。
「どうやってここに入り、どうやって拘束を解いた」
「何?」
「お前の持っていた王族の証がない限り入れないし、出られないうえ、それを持たずに入った者や王族の血を持たない者は入ったとたんに自動的に拘束される。お前も拘束された筈だ」
確かに、最初は拘束されていたが。自分でもよくわからない。ここは、素直に答えたほうがいいだろう。
「拘束は解いてもらったんだ」
「嘘はつかない方がいい」
「嘘じゃ——」
「——ここで自由に歩けるものなどいないし。拘束を解ける者など存在しない。あれを見ろ。」
ぐいっと後ろ襟を持ち上げられ、上を向かされる。
シストが見ろと言った先には、荊棘の塊がある。
「あれは呪いそのもので出来ている。この層は呪いで満ちている。王族の証の中でも、お前の持っていた王族の証のみが呪いを弾く。子供の頃お前は呪われていた。だから私の父がお前に与えた。王族の証の中でも貴重なモノだったのに。残念だったな」
何を言っているのかさっぱりだ。
呪いなんてゲームの世界に出てきたっけ。いや、確か出てきた。ジノの実験に使われていたあの管から流れていたモノは呪いだった筈だ。
地面から伸びていたのはここから吸い上げていたからか。
「呪われたら最期。呪いの拘束は誰にも解くことが出来ない。貴様はそれを解かれたと言うじゃないか、そんな話がありえるか。少しはマシな嘘をつけ。拘束されないよう、反呪いのアイテムを誰かから盗み取ったんだろう?」
「自分でも分からない。けど、さっき本当に……」
「黙れ」
自分から聞いてきたくせに。
肩を掴まれ、再び、ガッと地面に押さえ付けられる。
その手には王族の証の指輪があった。
「欲しいか」と問われ。牢の中を見る。
中には拘束された囚人がいる。
早く助けてやりたい。
「何を見ている」
どうすれば助けられる。彼は檻の中だし、鍵である王族の証も持っていない。どうすれば。いっそヴァントリアお得意の脱獄系魔法を使ってみるか。あそこまで頑丈だとザコのヴァントリアの魔法じゃ無理そうだけど。
じっと牢の中を見ていたからだろう。
「そんなに牢に入りたいのか、なら入れてやる」
とシストが苛立ちを露わにして、俺を無理矢理、牢の入り口の前へ立たせる。
「奴はハイブリッドの失敗作だ。他の種族を喰らい、その衝動に逆らえない上、まだ力は謎に溢れていて危険だ」
シストの表情を伺えば、彼はそれを見て口角を上げた。
「手が付けられない者は45層の呪いで力を奪っている。この層で奴に襲われる事は無いだろうが、呪いを受けて衰弱して最終的には死ぬ。苦痛に自分の身を引き裂く者。呪われていることにすら気付かず本能のまま暴れる者。お前はどちらになるだろうな」
この層が血の匂いや腐臭などの死の匂いがするのはその所為なのだろうか。
自分が最期にジノに刺されて死ぬことも、周囲の人々から命を狙われていることも分かってる。
死に方が変わるだけで、死を怖がるのは今更だと思う。
ここが呪いの層だと言うのなら、イルエラも呪いを受けているってことだ。
檻に入れられることは好機だ。
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