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第二章
15話 囚人イルエラ
「お、お嫁さんにしてください!!!」
――――なんて言って、シストがポカンとしている隙に奪うのだが。
無理がある。
よく考えたら牢屋の中だし取りに行けないし……それにシストだって主人公に言われたなら笑い飛ばしていただろうが、あのヴァントリアに言われたら……気持ち悪がって殺す。絶対殺される。どうしようヤバい。逆にOKされてもヤバくない?
慌ててシストの姿を探すが、姿は見られない。良かった、とほっとする。
だが指輪はないし、どうやって助けよう、とうなだれていると。
目の前の淡い光に照らされた地面に、ひたりと裸足の足がやってきた。
子供の足だ。
もしかして、ジノ!? と顔を上げると、フードを深くかぶった見知らぬ子供が立っていた。
その子供を見ると、何とも言えない感覚が湧き上がってくる。 闇の根底を見ているような、淵に立たされているような、あるいは、もう落ちていっているような感覚。
「君は……?」
こんなキャラ見た事ない……。
牢屋の外に伸ばしていた手に、幼い手が触れる。一瞬、ゾッとする。
嫌なものが流れ込んでくるような感覚に襲われて、直ぐにでも振り払いたくなったが、それを子供相手にすることは出来ない。
ちらりとその子の様子を伺う。
何者なんだと考えていると、子供は指輪を取り出して、俺の薬指につけた。
こ、これって。
――――王族の証。
どういうことか子供に聞こうと、指輪から目を逸らし目線を向けるが、子供は「自分には必要ないからあげる」と言い残し、スッと姿を消す。
ゆ、ゆゆゆゆ、ゆう、れ
ばったーん、と効果音が付くくらいには激しく地面にぶっ倒れたのであった。
◇◇◇
意識が戻ってからは、冷静に考えるように努めた。
そ、そりゃ幽霊は闇そのモノって感じがしてもおかしくないよな、出入りだって簡単だろうし。
自分の拘束を外したのは幽霊の一人で、ポルターガイストかもと考える。
それに、確かゲームではヴァントリアも彼等をゴーストと呼んで使役していた気がする。だから幽霊に助けられてもおかしいことはないけど……。
指輪を改めて見るとかなり古いものだった。
しかもシストのモノよりもかなり装飾が凝っている。
普通、王族の証には赤い宝石が埋め込まれているが、これは青い宝石だ。
何故だろう。
もしかして……ヴァントリアみたいに、この層に落とされた者が一生手放さず、死んでいって。この指輪だけが呪いを受け続けて青く変色したのでは。
ゾゾゾオッと悪寒が走り。
赤が嫌いな王族が青にしただけだな、と自分は天才だ! と考え直した。
よし、兎に角利用する以外手はない、と囚人の拘束具へ近づく。
「え~っと鍵穴は」
口に出したとたん、ガンッと音がする。
下半身が鉄で覆われていた為、鉄で固められていると思っていたが、どうやら空洞らしい。
「まず口の拘束を外すか」と探していると、頭の方の鍵穴を先に発見した。
指輪の宝石と装飾の部分をはめ込むと、そこから拘束具に白い光の模様が走り、消えていく。
ヘルメットのような拘束具を外すと、そこには真っ白な髪に、歪な形の角があった。
クリスタルの様に美しい。
キラキラと輝くそれに、思わず「綺麗だ」と呟く。
激しくガンガンとならされていたそれが止み、静けさが周囲を覆った。
「げ。怒ったのか? ごめんごめん男に言われても嬉しくないよな。変な意味はないから安心してくれ」
と今度は目の拘束具を外す。
目が合い、黄緑色のそれに見入ってしまった。
ぼんやりとした目。
徐々にピントが合うように開かれていき、大きく見開かれた目に、くぎ付けになった。
「お前……」と呟くと、彼の目が金色に輝く。
その様を見て、また思わず「……太陽みたいだ」と呟く。
その言葉に光をなくし、ガッと目を見開く囚人。
「あれ、また宝石みたいに戻った。が、がっかりはしてない! その目でも綺麗だって。怒るなよ。早く口の拘束具外さなきゃ……。考えてる事が分かんないのって怖いな」
ゲームの中やアニメの中だと分かるのに。
確かヴァントリアは文句を言わせない&呪いで支配するために首輪の枷は外さなかったんだよな、と思いながら。指輪を差し込むと、ガチャリと解錠される。
「——ッ何をしているお前は何者だここにはどうやってきたお前も奴の手先か奴はどこにいる先刻まで一緒にいた奴は誰だ何故拘束を解く私を何に利用する気だお前は何を考えている何をさせるつもりだ私の拘束を解いていいことなんてないだろう一体何者なんだ何が目的だ答えろ——ッ!!」
男は無口キャラの印象だったが、口枷を外したとたんマシンガンみたいに次々と質問しだした。更に声もデカい。
「落ち着け」
拘束具を外していきながら、叫ぶ声と会話する。
「ここにはどうやって来たッ!! 何故拘束されていない!」
「何か目が覚めたらいたんだよ。拘束はゴーストが解いてくれた」
「解ける筈がない!」
「でも解かれたぞ。て言うか、バレるからそろそろ静かにしてくんないかな」
「叫び声なら他の奴らも上げているし監視や見回りの奴はいない!」
無口な印象だった彼とは到底思えない。
「お前おしゃべりなんだな」と笑うと、「悪いか」と睨まれる。
「賑やかでいい」
そう言うと、口を開いて何か言おうとしたが、それをやめてそっぽを向いて黙り込んでしまった。
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