リクゴウシュ

隍沸喰(隍沸かゆ)

文字の大きさ
209 / 299
アノン

12

しおりを挟む

 瞬間、全員が顔を青ざめて立ち止まり、黙り込んだ。
「向は来てないんだぞ!」
「あ、アライアを待とうよ、追いつくって言ってたでしょ!」
 ラヴィラが麗土の肩をぽんぽんと叩く。エリティがそれを見て、泣きそうになり、戸惑いながら言った。
「ま、待ってょ。アライアは敵なんでしょ?」
 真っ青になって口を開け放つ麗土。
 ラヴィラは冷静に外の景色を眺めながら言った。
「……でも、敵じゃなかったら? だって、私達逃げられたんだし、手助けたくさんしてくれたよ? 私達を捕まえさせても、アライアには何の意味もないよね?」
 みんなが黙り込む中、ずっと真っ青な顔をしている麗土が震えながら、目を見開きながら言い出した。
「な、なあ、アライアが味方だったとしてさ、俺の弟は、来てなくて、隠れてたとしてさ。俺達が乗ってたエレベーターに、来なかったじゃん。でも、隣のエレベーター使ったじゃん。施設の人達がさ。それってさ、それって」
 シェルビーは動揺しきって膝をガクガクと震わせていた。

『シェルビーは優しいよな』



『俺は地下から逃げられたらそれでいいかな』



『俺達が無事に逃げられたら、地上で準備して、仲間もつくって助けに来よう』



『地上にいる人達も信用できない。皆気を付けて』



 二人で一緒のベッドで寝た記憶が思い出される、あの日の夜が。



『シェルビーの手は……』



『あったかい……』


 あの感触が。
 あの表情が。
 あの声が。

「俺が行く」
 シェルビーが呟くと、麗土達は俯けていた顔を上げて、シェルビーを見た。
「俺が助けに行く。絶対に追いつく、絶対に、守る。だからお前達は逃げてくれ、もし俺達が追いついて来なかったとしても、戻ってきちゃダメだ。外で仲間を集めて、いつか俺達を助けにきてくれ。何年かかっても構わない、俺達も逃げ出すことを諦めない、絶対に死なないし、死なせない」
 それを聞いて、ラヴィラの目から大量の涙が流れる。それを拭うのも忘れて、必死に叫んだ。
「馬鹿なこと言わないで! 戻っちゃダメよ! もし、もしも捕まってたら――」
「――行け! 走れ! 振り向くな! 俺も、振り向かない、俺はアライアを助けにいくって決めたんだ!!」
「でももし敵だったら!? それとももう、向も、アライアも手遅れだったら!?」
「それでも俺は行く!!」

 アライア。

 アライア。

 信じてあげられなくてごめん。

 あの時俺が、あそこに残っていれば。

 いや、あそこに残っていたら、みんなここまで来れなかった。

 それにきっと俺が残っていたとしても、あっちの状況は変わらない。

 麗土は後悔しているシェルビーの悲痛な表情を見て、彼の手を握った。額に当てて、目をつむる。
「頼む。シェルビー……」
 シェルビーは自分の手を退けて、額を重ねた。
 ラヴィラがそれを見て、呟いた。
「信じてる、生きて」
 そして、涙を拭ってから、周囲の状況が心配になるほど、めいっぱい叫んだ。
「私達も頑張るから、私達を信じて、絶対に生きて!!」
 エリティの手を掴み走り出す。
 シェルビーは麗土の背を押し出した。
「行くわよ、行くわよ二人とも! 振り向いちゃだめ、絶対に、止まっちゃダメだから! 戻っちゃダメだから!」
 その言葉を背に聴きながら、シェルビーはアライアと向を助けるために、排水溝の中へ戻っていった。



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~

ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。 そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。 そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

処理中です...