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アノン
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しおりを挟む瞬間、全員が顔を青ざめて立ち止まり、黙り込んだ。
「向は来てないんだぞ!」
「あ、アライアを待とうよ、追いつくって言ってたでしょ!」
ラヴィラが麗土の肩をぽんぽんと叩く。エリティがそれを見て、泣きそうになり、戸惑いながら言った。
「ま、待ってょ。アライアは敵なんでしょ?」
真っ青になって口を開け放つ麗土。
ラヴィラは冷静に外の景色を眺めながら言った。
「……でも、敵じゃなかったら? だって、私達逃げられたんだし、手助けたくさんしてくれたよ? 私達を捕まえさせても、アライアには何の意味もないよね?」
みんなが黙り込む中、ずっと真っ青な顔をしている麗土が震えながら、目を見開きながら言い出した。
「な、なあ、アライアが味方だったとしてさ、俺の弟は、来てなくて、隠れてたとしてさ。俺達が乗ってたエレベーターに、来なかったじゃん。でも、隣のエレベーター使ったじゃん。施設の人達がさ。それってさ、それって」
シェルビーは動揺しきって膝をガクガクと震わせていた。
『シェルビーは優しいよな』
『俺は地下から逃げられたらそれでいいかな』
『俺達が無事に逃げられたら、地上で準備して、仲間もつくって助けに来よう』
『地上にいる人達も信用できない。皆気を付けて』
二人で一緒のベッドで寝た記憶が思い出される、あの日の夜が。
『シェルビーの手は……』
『あったかい……』
あの感触が。
あの表情が。
あの声が。
「俺が行く」
シェルビーが呟くと、麗土達は俯けていた顔を上げて、シェルビーを見た。
「俺が助けに行く。絶対に追いつく、絶対に、守る。だからお前達は逃げてくれ、もし俺達が追いついて来なかったとしても、戻ってきちゃダメだ。外で仲間を集めて、いつか俺達を助けにきてくれ。何年かかっても構わない、俺達も逃げ出すことを諦めない、絶対に死なないし、死なせない」
それを聞いて、ラヴィラの目から大量の涙が流れる。それを拭うのも忘れて、必死に叫んだ。
「馬鹿なこと言わないで! 戻っちゃダメよ! もし、もしも捕まってたら――」
「――行け! 走れ! 振り向くな! 俺も、振り向かない、俺はアライアを助けにいくって決めたんだ!!」
「でももし敵だったら!? それとももう、向も、アライアも手遅れだったら!?」
「それでも俺は行く!!」
アライア。
アライア。
信じてあげられなくてごめん。
あの時俺が、あそこに残っていれば。
いや、あそこに残っていたら、みんなここまで来れなかった。
それにきっと俺が残っていたとしても、あっちの状況は変わらない。
麗土は後悔しているシェルビーの悲痛な表情を見て、彼の手を握った。額に当てて、目をつむる。
「頼む。シェルビー……」
シェルビーは自分の手を退けて、額を重ねた。
ラヴィラがそれを見て、呟いた。
「信じてる、生きて」
そして、涙を拭ってから、周囲の状況が心配になるほど、めいっぱい叫んだ。
「私達も頑張るから、私達を信じて、絶対に生きて!!」
エリティの手を掴み走り出す。
シェルビーは麗土の背を押し出した。
「行くわよ、行くわよ二人とも! 振り向いちゃだめ、絶対に、止まっちゃダメだから! 戻っちゃダメだから!」
その言葉を背に聴きながら、シェルビーはアライアと向を助けるために、排水溝の中へ戻っていった。
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