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リョウゲ
最終話
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「黄泉」
「白馬?」
「白馬とだけは間違えて欲しくないな」
「青海か。……って、会議兼儀式兼宴会はどうした?」
青海が襖の向こうから現れて、黄泉の隣に座った。
「全部茶王に押し付けてきた」
「聖唖様やアリシアがいたら私も頑張ったかもしれないが」
「そうだね。私もかな。感謝するべきなのは茶王じゃなくて聖唖さんとアリシアだからね」
「あの二人が来るかと思って楽しみにしていたのにな」
「まあ、仕方ないよ。あの二人は忙しいだろうからね」
「私たちは暇だよな。これから」
「何を言ってるのかな。カナキリを保護する使命があるじゃないか」
「面倒だ」
「そう言う指示を出すのも君なんだから。しっかりしなさい」
「面倒だ」
「頑張ったら聖唖さんが頭撫でてくれるかも」
「使命大歓迎」
「抱きしめてくれるかも……」
「使命……おいで」
青海と黄泉はぽうっと空を眺める。晴れやかな空だ。生来鉛色だと誰が言ったのか。私か。
「また会いたいな」
「能力協会に入ったんだし会いに行っても問題ないと思うな。今度こっそり行ってみようか」
「聖唖様は忙しいんだろう? すれ違ってしまうんじゃないか?」
「大丈夫。二人の連絡先知ってるし」
「二人?」
「アリシアと聖唖さん。一緒の任務が多いらしいよ。まあアリシアは頭もいいし強いし、或る意味聖唖さんのパートナーとしては一番相性がいいのかもね。話も合うみたいだし。たまによくわからない話を二人でしてて、話に入れなくなるんだよね」
「貴様、しっかり会いに行ってるじゃないか。抜け駆けするな」
「抜け駆けって……黄泉は白馬に夢中だったくせに。今でもか」
「……貴様。部屋に入る前の私の姿を見ていなかったのか」
「落ち葉を見ながら寂しそうにしてたところ? 辺りを見渡して泣きそうになってたところ? それとも、毎朝墓参りをしてから施設参りをして灰を食べてるところかな?」
「な、なぜそんなことを――」
「砂金姉さんの部屋。あそこって快適だろう?」
「青海貴様ああああああああっ!」
「いやあ。ちょっと怖いくらいだよ。面倒臭がりな黄泉が毎日毎時間屋敷中をうろちょろうろちょろ。そんなに探さなくても、白馬ならうざいくらいに君の傍に来てるよ。そして俺を睨んで、赤鳥が君を睨んで」
「砂金姉さんも私を睨んでいて、銀杏姉さんは?」
「銀杏姉さんは、皆の姿を見て笑ってるかな」
「そうだな。……想像がつくよ。いい光景だな。そうだといいな」
「みんないるよ」
「そうだな」
青海と黄泉は見つめあって微笑みあった。
きっと、ずっと一緒にいられる。この場所にさえいられれば。
最悪の時だったが、今は、最高だった思い出も甦る。すべてが嫌なわけじゃなかったからだ。
それが表情に出ていたからか、後からやって来た者が言った。
「君等……」
「うわ、伯父さん!? いつからそこに!? 会議兼儀式兼宴会はどうした!?」
「うん。話の雲行きが怪しくなってきたのでな。全て長達に押し付けてきた」
「話の雲行きが怪しいだと? まさかまたタフィリィを――」
「それか変な実験に手を貸す気かもね……」
「うぐ。私たちは絶滅危惧種のリョウゲだからな。貴重と言ったら貴重だ。実験したがる奴がいてもおかしくはない」
「あのな。能力協会はカナキリを保護している組織なんだぞ。ディーヴァの保護をしている組織も、能力協会とは協力関係にあるし。実験も含めて、彼らが利用されないように、普通に暮らせるように教育するために保護している組織なのだぞ。他の種族だけは実験していい利用していいなんて思ってはいないさ。カナキリとディーヴァの出現が速かったからそれを保護する組織も早く出来上がったと言うだけのことだ。ヴァラヴォルフやコノカはもともと隔離されていたし、情報が入ってからやっと協会で保護できるか話し合われて、助けに行くことが決まったんだ。能力協会は主にカナキリを保護しているが、ヴァラヴォルフもディーヴァも関係なく会員として働いているからな。リョウゲだけ仲間外れってことはないさ」
「では、いったい何が問題なのだ。我々も保護されて会員になって救われた、つまり同じように救ってあげろと言うことなんだろう?」
「リョウゲだけでなくカナキリも散々苦しめて殺してきたのに、今度はその化け物達を救って自分達も幸せになるなんて変な話だよね」
「まあなんだ。うちにはそんな奴等ばっかりだ。気にするな」
「それで、話の雲行きが怪しいとは? 何の話をしていたんだ。はぐらかしていないか? 私達に隠さなくてはならないような内容だったのか?」
「あ、ああ。まあ。いつの間にかそんな話に変わってしまって。私も長の一人ではあるからな、意見は出せるのだが、多数決を取られるとさすがに……な」
「つまりすでに決定してしまったと言う話なんだね。ほら、決まってしまったことなら私達にもそのうち報告されるだろう。隠しても意味はないよ」
「ああ。まあ。今回の報告係は私だったわけだが」
「ん? さっきは長達に押し付けてきたと」
「ああ、そのための口実にしてきたと言う意味だ」
「…………いいからさっさと言え。ここまでのやりとりがもう既に面倒だ」
「……………………の……が決まった」
「ん? なんだ?」
「聞こえるように言ってよ。報告係なんだろう?」
「…………………………………………君……の……が決まった」
「拡声器でも持ってくるか?」
「私が術をかけようか?」
「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………っ………………………………………………っッ……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………つつツツ………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………ッ君達の婚約が決まった!!」
「よく聞こえなかったなもう一度」
「私たち婚約者だって」
「よく聞こえないなもう一度」
「…………」
「………………」
「………………っ」
「……………………」
「……………………」
「君達の婚約が決まったッ!!」
「白馬?」
「白馬とだけは間違えて欲しくないな」
「青海か。……って、会議兼儀式兼宴会はどうした?」
青海が襖の向こうから現れて、黄泉の隣に座った。
「全部茶王に押し付けてきた」
「聖唖様やアリシアがいたら私も頑張ったかもしれないが」
「そうだね。私もかな。感謝するべきなのは茶王じゃなくて聖唖さんとアリシアだからね」
「あの二人が来るかと思って楽しみにしていたのにな」
「まあ、仕方ないよ。あの二人は忙しいだろうからね」
「私たちは暇だよな。これから」
「何を言ってるのかな。カナキリを保護する使命があるじゃないか」
「面倒だ」
「そう言う指示を出すのも君なんだから。しっかりしなさい」
「面倒だ」
「頑張ったら聖唖さんが頭撫でてくれるかも」
「使命大歓迎」
「抱きしめてくれるかも……」
「使命……おいで」
青海と黄泉はぽうっと空を眺める。晴れやかな空だ。生来鉛色だと誰が言ったのか。私か。
「また会いたいな」
「能力協会に入ったんだし会いに行っても問題ないと思うな。今度こっそり行ってみようか」
「聖唖様は忙しいんだろう? すれ違ってしまうんじゃないか?」
「大丈夫。二人の連絡先知ってるし」
「二人?」
「アリシアと聖唖さん。一緒の任務が多いらしいよ。まあアリシアは頭もいいし強いし、或る意味聖唖さんのパートナーとしては一番相性がいいのかもね。話も合うみたいだし。たまによくわからない話を二人でしてて、話に入れなくなるんだよね」
「貴様、しっかり会いに行ってるじゃないか。抜け駆けするな」
「抜け駆けって……黄泉は白馬に夢中だったくせに。今でもか」
「……貴様。部屋に入る前の私の姿を見ていなかったのか」
「落ち葉を見ながら寂しそうにしてたところ? 辺りを見渡して泣きそうになってたところ? それとも、毎朝墓参りをしてから施設参りをして灰を食べてるところかな?」
「な、なぜそんなことを――」
「砂金姉さんの部屋。あそこって快適だろう?」
「青海貴様ああああああああっ!」
「いやあ。ちょっと怖いくらいだよ。面倒臭がりな黄泉が毎日毎時間屋敷中をうろちょろうろちょろ。そんなに探さなくても、白馬ならうざいくらいに君の傍に来てるよ。そして俺を睨んで、赤鳥が君を睨んで」
「砂金姉さんも私を睨んでいて、銀杏姉さんは?」
「銀杏姉さんは、皆の姿を見て笑ってるかな」
「そうだな。……想像がつくよ。いい光景だな。そうだといいな」
「みんないるよ」
「そうだな」
青海と黄泉は見つめあって微笑みあった。
きっと、ずっと一緒にいられる。この場所にさえいられれば。
最悪の時だったが、今は、最高だった思い出も甦る。すべてが嫌なわけじゃなかったからだ。
それが表情に出ていたからか、後からやって来た者が言った。
「君等……」
「うわ、伯父さん!? いつからそこに!? 会議兼儀式兼宴会はどうした!?」
「うん。話の雲行きが怪しくなってきたのでな。全て長達に押し付けてきた」
「話の雲行きが怪しいだと? まさかまたタフィリィを――」
「それか変な実験に手を貸す気かもね……」
「うぐ。私たちは絶滅危惧種のリョウゲだからな。貴重と言ったら貴重だ。実験したがる奴がいてもおかしくはない」
「あのな。能力協会はカナキリを保護している組織なんだぞ。ディーヴァの保護をしている組織も、能力協会とは協力関係にあるし。実験も含めて、彼らが利用されないように、普通に暮らせるように教育するために保護している組織なのだぞ。他の種族だけは実験していい利用していいなんて思ってはいないさ。カナキリとディーヴァの出現が速かったからそれを保護する組織も早く出来上がったと言うだけのことだ。ヴァラヴォルフやコノカはもともと隔離されていたし、情報が入ってからやっと協会で保護できるか話し合われて、助けに行くことが決まったんだ。能力協会は主にカナキリを保護しているが、ヴァラヴォルフもディーヴァも関係なく会員として働いているからな。リョウゲだけ仲間外れってことはないさ」
「では、いったい何が問題なのだ。我々も保護されて会員になって救われた、つまり同じように救ってあげろと言うことなんだろう?」
「リョウゲだけでなくカナキリも散々苦しめて殺してきたのに、今度はその化け物達を救って自分達も幸せになるなんて変な話だよね」
「まあなんだ。うちにはそんな奴等ばっかりだ。気にするな」
「それで、話の雲行きが怪しいとは? 何の話をしていたんだ。はぐらかしていないか? 私達に隠さなくてはならないような内容だったのか?」
「あ、ああ。まあ。いつの間にかそんな話に変わってしまって。私も長の一人ではあるからな、意見は出せるのだが、多数決を取られるとさすがに……な」
「つまりすでに決定してしまったと言う話なんだね。ほら、決まってしまったことなら私達にもそのうち報告されるだろう。隠しても意味はないよ」
「ああ。まあ。今回の報告係は私だったわけだが」
「ん? さっきは長達に押し付けてきたと」
「ああ、そのための口実にしてきたと言う意味だ」
「…………いいからさっさと言え。ここまでのやりとりがもう既に面倒だ」
「……………………の……が決まった」
「ん? なんだ?」
「聞こえるように言ってよ。報告係なんだろう?」
「…………………………………………君……の……が決まった」
「拡声器でも持ってくるか?」
「私が術をかけようか?」
「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………っ………………………………………………っッ……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………つつツツ………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………ッ君達の婚約が決まった!!」
「よく聞こえなかったなもう一度」
「私たち婚約者だって」
「よく聞こえないなもう一度」
「…………」
「………………」
「………………っ」
「……………………」
「……………………」
「君達の婚約が決まったッ!!」
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