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イルヴルヴ
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目が覚めた時には、聖茄の姿はどこにもなく、自分も見知らぬ部屋に寝かされていた。自分を見下ろす研究者たち。身体を動かそうとして、自分は拘束されているのだと気が付く。
ああ。
戻ってきた。
戻ってきたのか。
でも、聖茄はどうなったんだ。
あの子は無事なのか。
心残りはそれだけだ。
あの子が何もされていないのならば、私は安心して彼らに身をゆだねられる。
◇◇◇
アシャの実験が行われている無人島。
ユヤによってアシャがその島へ運ばれたその日に、聖茄は研究者や警備員たちを殺してアシャを追っていた。
聖茄は追っ手から逃れるため、また、アシャを救うため、森の中に身を潜める。
そんな彼の前に現れたのは、2号と呼ばれるあの青年だった。
聖茄が逃げようと走り出すと、2号はその前に瞬時に現れて聖茄の動きを止める。
「俺は貴様等の味方だ」
「そんなわけがあるか」
「…………信じないならいい。俺は黙って貴様の手助けをしよう」
「…………」
聖茄は2号を信じなかった。
彼女――彼は一人で、森の中を駆け回った。
アシャの捉えられている、施設を目指すために。
◇◇◇
アシャは実験が終われば無人島の施設内の森に放たれる。施設の周辺でアシャは目隠しを外され、数時間だけ自由になれた。
何故なら彼女の食事で施設の費用が尽きかけていたからだ。
自然を相手に食事をしろと研究者たちはアシャに命令した。彼等は彼女を持て余していたのだ。
できるだけ多くの命を奪わないよう、アシャは餌をオオカミと人間だけに絞った。
人間とは時々実験体用として島に連れて来られる人間のことだ。その島の食物連鎖の頂点であるオオカミたちと同じくその失敗作の人間を餌とした。
狩りをする時、彼女はオオカミの姿に変身するようになっていた。何モノも混じらない純粋なオオカミの姿だ。
日光と月光に輝く美しい黄金の毛と。
闇の中に怪しく光る七色の瞳。
全長45米の巨体。
その姿を目にして、研究者たちは彼女を《イルヴルヴ》と呼ぶようになった。
島は広く、森は深く、アシャと聖茄は出会うことがなかった。
ついに島のオオカミは絶滅の危機に陥り、アシャはオオカミを喰らうことをやめて他の命や無機質なモノにまで手を出した。
彼女の空腹は研究者の力ではどうにもならなかった。
草木を喰らい。
大地を喰らい。
川をも喰らい。
アシャは食物連鎖の頂点に立った。
アシャは生きる為にあらゆるモノを喰らう。
アシャから作り出された実験体たちは、アシャの失敗を踏まえ、限られたモノしか食べられなくなっていた。研究者たちの目的は各国に売りさばく兵器を作ることだ。
彼等の食欲は人間へのみ向けられた。
ここで、彼等と彼女を区別するために新しい呼び名が付けられる。
アシャは《ヴァイアヴォルフ》と呼ばれ、他の者も総称して《ヴァラヴォルフ》と呼ばれた。ヴァラヴォルフは狼へ変身し、人間を喰らう化け物だった。
その頃から、研究者たちには実験体(ヴァラヴォルフ)たちの制御ができなくなっていた。新しい実験体はコントロールできるように改良する必要があった。彼らを手放し、アシャの身体の一部を使い、新しい実験体を生み出す実験が行われた。
自由となったヴァラヴォルフたちは自ら知識を付けていき、生きた人間を喰らうことをやめた者が現れた。そんな者たちが増え、掟を作り始めた。
しかし、それに納得しない者たちは群れから離れ、新しい群れを作っていく。
彼等は生きた人間を食べる自分たちは《イブリヴォルフ》であると名乗った。
アシャはそんなことを知らず、ただただ実験の日々に明け暮れていた。
数か月経ったある日、自分に会いたがっていると言う人物がいると、一人の研究者に言われた。
アシャの実験は中断され、その人に会いに行くこととなった。
ああ。
戻ってきた。
戻ってきたのか。
でも、聖茄はどうなったんだ。
あの子は無事なのか。
心残りはそれだけだ。
あの子が何もされていないのならば、私は安心して彼らに身をゆだねられる。
◇◇◇
アシャの実験が行われている無人島。
ユヤによってアシャがその島へ運ばれたその日に、聖茄は研究者や警備員たちを殺してアシャを追っていた。
聖茄は追っ手から逃れるため、また、アシャを救うため、森の中に身を潜める。
そんな彼の前に現れたのは、2号と呼ばれるあの青年だった。
聖茄が逃げようと走り出すと、2号はその前に瞬時に現れて聖茄の動きを止める。
「俺は貴様等の味方だ」
「そんなわけがあるか」
「…………信じないならいい。俺は黙って貴様の手助けをしよう」
「…………」
聖茄は2号を信じなかった。
彼女――彼は一人で、森の中を駆け回った。
アシャの捉えられている、施設を目指すために。
◇◇◇
アシャは実験が終われば無人島の施設内の森に放たれる。施設の周辺でアシャは目隠しを外され、数時間だけ自由になれた。
何故なら彼女の食事で施設の費用が尽きかけていたからだ。
自然を相手に食事をしろと研究者たちはアシャに命令した。彼等は彼女を持て余していたのだ。
できるだけ多くの命を奪わないよう、アシャは餌をオオカミと人間だけに絞った。
人間とは時々実験体用として島に連れて来られる人間のことだ。その島の食物連鎖の頂点であるオオカミたちと同じくその失敗作の人間を餌とした。
狩りをする時、彼女はオオカミの姿に変身するようになっていた。何モノも混じらない純粋なオオカミの姿だ。
日光と月光に輝く美しい黄金の毛と。
闇の中に怪しく光る七色の瞳。
全長45米の巨体。
その姿を目にして、研究者たちは彼女を《イルヴルヴ》と呼ぶようになった。
島は広く、森は深く、アシャと聖茄は出会うことがなかった。
ついに島のオオカミは絶滅の危機に陥り、アシャはオオカミを喰らうことをやめて他の命や無機質なモノにまで手を出した。
彼女の空腹は研究者の力ではどうにもならなかった。
草木を喰らい。
大地を喰らい。
川をも喰らい。
アシャは食物連鎖の頂点に立った。
アシャは生きる為にあらゆるモノを喰らう。
アシャから作り出された実験体たちは、アシャの失敗を踏まえ、限られたモノしか食べられなくなっていた。研究者たちの目的は各国に売りさばく兵器を作ることだ。
彼等の食欲は人間へのみ向けられた。
ここで、彼等と彼女を区別するために新しい呼び名が付けられる。
アシャは《ヴァイアヴォルフ》と呼ばれ、他の者も総称して《ヴァラヴォルフ》と呼ばれた。ヴァラヴォルフは狼へ変身し、人間を喰らう化け物だった。
その頃から、研究者たちには実験体(ヴァラヴォルフ)たちの制御ができなくなっていた。新しい実験体はコントロールできるように改良する必要があった。彼らを手放し、アシャの身体の一部を使い、新しい実験体を生み出す実験が行われた。
自由となったヴァラヴォルフたちは自ら知識を付けていき、生きた人間を喰らうことをやめた者が現れた。そんな者たちが増え、掟を作り始めた。
しかし、それに納得しない者たちは群れから離れ、新しい群れを作っていく。
彼等は生きた人間を食べる自分たちは《イブリヴォルフ》であると名乗った。
アシャはそんなことを知らず、ただただ実験の日々に明け暮れていた。
数か月経ったある日、自分に会いたがっていると言う人物がいると、一人の研究者に言われた。
アシャの実験は中断され、その人に会いに行くこととなった。
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