リクゴウシュ

隍沸喰(隍沸かゆ)

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エンタイア

20

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 施設の外――森の中を駆けていると、開けた場所――焼け焦げた大地の、木も草もない更地のような場所へやって来ていた。
 逃走している方向に、赤い魔法陣が現れ、ゼノ達は勢いを殺し立ち止まる。
 ――魔法陣の発生した場所へ、一瞬にしてヒグナルが現れる。
 魔術で転移したらしい。
 スマホのGPS機能をゼノとアリシアに見せてから言った。
「お前達の居場所は分かっていたよ。逃亡体験は楽しかったかい?」
「そこをどけヒグナル」
「いいよ。……なんてね」
 ヒグナルはスマホをポケットに直しながら笑った。
「――ヒグナルッ!!」
 ゼノはヒグナルに飛び掛かる。大量の魔法陣がゼノの周りを囲むように展開され、鎖で繋がれた槍が飛び出す。
 ゼノの身体はそれらに貫かれ、拘束される。
「君に必要なのは瀕死の状態じゃない」
 ヒグナルは鎖を手で愛でるように触れて言う。
「拘束だ……」
 ゼノは空間を操り、自分の身体を透過し、拘束を解く。ガラガラと音を立て鎖と槍が地面へ落ち、ゼノはその上に立った。
「空間を操っているのか……では何故すぐに逃げない? なるほど。まだ未熟なんだね」
「たとえ未熟であろうとお前から逃れて見せる」
「今のお前を逃がすと碧徒さんを怒らせてしまうな」
 ゼノが飛び出すのを見て、ヒグナルは待ち受ける。彼の拳が自分の腹に入った瞬間――胸の辺りに魔法陣を出現させ、槍がゼノを貫く――――
 ――――が、ゼノは腕のみの透過を解除しており、その他の身体は透過していて槍からの影響はなかった。
 ヒグナルはゼノの腕を掴み、片足を一歩下げ、身体を捻り、引っ張ろうとするが――腕だけが引っ張り取られ、その腕から青緑色の血液が噴出しヒグナルを取り込もうとする。
 ゼノの腕は既に元通りに治っており、ヒグナルは飛行の魔術を使ってゼノの青い血液から逃れた。
 やがて血液は静まり返り、地面に溜まる。それをゼノが自分の腕に傷をつけて回収する。
「――シギュルージュはそう簡単に利用するものじゃないよ。扱い方には気を付けた方がいい。いつか制御出来なくなって自分の身を滅ぼすだろうからね」
「オレの腕を引っ張ったのはお前だ。無理に引っ張らないことだな」
「……生意気な子だ。躾が必要なようだね」
 赤い魔法陣から、赤い光を帯びた鎖が出現し、ゼノの身体に巻き付く。ゼノは身体を透過させているが、何故かその鎖を通り抜けさせることが出来なかった。
「君のその空間を操る力はイダと言う力で君の中の未知の物質を操ることで出来た代物だ。そして魔術はイダと言う力で物質を操るために作られた。君のそれは魔術と言っていい」
「……この鎖は魔術で出来ているから透過が効かないと?」
「――――私はさっきまで鎖を具現化させていたんだ。だが今は君の使う空間魔法と原理は同じさ」
「どうかな。お前の力がオレに追いつけないなら、お前とオレの力は同じ力とは言い難い」
 ――――ゼノの元から、鎖が離れていく。それはただ離れるのではなく、ヒグナルの魔法陣に向かって巻き戻されるように戻っていった。
 ヒグナルはそれを見て絶句する。
「時間を巻き戻したのか――!!」
「そうだ。空間を操るとお前は言うが、オレは時空を操っている」
 異次元空間もその一種だった。
 ゼノはヒグナルの後ろに異次元空間を出現させ、取り込もうとするが、ヒグナルは飛行の魔術でそれから逃れる。しかし巻き戻され、元の位置に戻されそうになる。それをヒグナルは――時空を操る魔術を駆使して避けきる。
「――!!」
 ゼノが目を見開き放心していると、ヒグナルはそれを見て嘲笑する。
「時空の魔法は私も得意中の得意でね。むしろ先輩かな」
 赤い巨大な魔法陣が上空を覆う。

「――宇炉うろ《虚》魔法……」

 眩い光が辺り一面を包み込み、ゼノはアリシアの手を取り、時空を操る力を発動させる。
 ゼノとその周り以外は、地面も木も――何もかもこの世界から消失していく。
「なんて力だ」
 飲まれそうになる力を引き込み耐え続け、その魔法の終わりが来る。
 施設にまで到達してはいないものの、辺り一面の地面と木々が消失し、地面は抉り取られていた。抉られた穴から、地下施設が丸出しになっており、ヒグナルは「おっと」と言いながら、時間を巻き戻す魔術で木々も大地も戻していく。
 その様も壮大で、ゼノは勝てっこないと言い出しそうになった。
「お前に……勝つ」
 その声は弱弱しかったが、目の中の芯の強さは失われてはいなかった。
 ヒグナルとゼノは時空の力と力をぶつけ合う。ヒグナルはゼノの壊した地面や木々も巻き戻しているため、彼の方が優勢と見れた。しかし、ゼノは逆に巻き戻すと言う枷が外れたことにより強力な力を扱うことが出来た。
 ――彼らの力は今、ほぼ互角と言えよう。
 ぶつかり合った空間と空間が逸れ、木々を巻き込み消えていく。
 それをヒグナルが戻しているうちに、ゼノは強力な空間を生み出し追撃する。ヒグナルはそれを時間の魔術で一緒に巻き戻し威力を弱める。そして自身も空間の魔術を使いそれを相殺する。
 二人の戦いには終わりがないように見えた。
 しかし。
 ヒグナルの方が知恵はあった。
 ヒグナルの空間の魔術は破壊ではなくある一点の転移に使われた。
 アリシアの姿が見えないことに気が付いたのは――ヒグナルからの攻撃が止み、こちらが一方的に攻撃するようになってからだった。
 ヒグナルが身を守るために使っている空間の魔術――その向こう側に真紫の髪の毛が見えたのだ。
 ゼノは力の発動を押さえ込み、もう一度その姿を確認する。自分の後ろに振り返り、あれがアリシアであることがやっと分かった。
 アリシアの髪がヒグナルの手で引っ張り上げられ、アリシアの身体がゼノへ向けて吊るされる。
「その力、本当に素晴らしいよ。私と同じように時空を操るなんて、本当にお前の力は素晴らしい。だからこそのがすことは出来ない。今ならアリシアもお前も許してあげよう」
 ヒグナルに警告され、ゼノは大人しく彼の元へ近づく。アリシアは首を振り「逃げて」とか細く声を上げるが、ゼノの耳には届かない。
 いや、届いてはいたが、それに答えるつもりがなかった。
 ゼノは、ング・エンタ第六研究基地C棟の地下室へ、
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