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ディノル
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その研究員と楽ドは捕えられていた子供たちを解放した。真っ赤な髪の毛の姉妹が、楽ドにお礼を言う。
「ありがとうございました」
「あいがとごーまう」
「皆一緒に逃げるぞ!」
「はい……!」
その子の可愛さにデレデレする楽ドの背に稲がぎゅ……とくっ付いてくる。
「お、おい……」
「…………だめ」
「何が!?」
一方その頃、捕えられたオルトシアたちは見事に脱走していた。しかし敵はうじゃうじゃと湧き出てくる。どこからか歌声が聞こえ始め、オルトシアと茶飯は苦戦を強いられていた。
廊下を走っている最中、ガラスの壁から部屋の中が見え、茶飯は絶句する。その様子を見たオルトシアが尋ねた。
「茶飯、どうした」
「つ、妻が、子供も……私たちの子供もここにいる!」
「助けよう」
あっさりとそう言うオルトシアに、茶飯は緊張した顔を緩ませて頷く。しかし、その会話を聞いていた小麦色の肌の男が、部屋に入り、一人一人失敗作だと言って殺していく。
茶飯が追いかけようとしたが、他の敵が邪魔をして助けに行けない。
茶飯の子供の眉間に銃口が突きつけられる。引き金を引こうとしたその時、子供は横にそれて、妻の胸が銃口に迫った。
子供を守ろうとし、小麦色の肌の男に飛び掛かろうとしたのだ。
妻の胸から血液が飛び散り、茶飯は口を大きく開けて叫び散らした。
「若葉ああああああああああああ!!」
「落ち着け茶飯、今は……子供を助けるぞ!」
オルトシアの協力の下、茶飯の子供を助けることが出来た。
◇◇◇
楽ドたちとオルトシアたちは合流してディヴァート・ウェザを後にしていた。大体あの子とオルトシアとあの研究員の美少年のおかげで助かった。
美少年が逃がした実験体や、茶飯の子供は療養させると彼の仲間・武軍に頼み、軍隊に入ることとなった。茶飯は妻を助けることはできなかったが、子供は助けられた。茶飯はオルトシアたちと行動する必要はなくなった。しかし、楽ドたちを軍に連れ帰る使命があると共に行動することとなった。
楽ドたちの向かう先、中立の町照国町に向かうため、武軍の本拠点である鹿児島中央駅を通らないよう迂回して下荒田から南林寺町に来ていた。
その道中で休憩となり、チビたちは美少年・ゼルベイユと遊ぶと言いどこかへ出かけ、楽ドは荷物を置いた建物――通称秘密基地――から近い周辺を探索していたが、あの子が付いてきて二人きりで行動することになる。
楽ドは瓦礫の中にまぎれた苔まみれの石像を見つけてじっと観察する。どうやらユヤの破壊攻撃でどこかの街から吹っ飛んで来たらしい石像だった。もちろん楽ドにもさすがにそんなことは分からず、手を合わせて祈ってみる。
「それは田の神様だ。祈っても意味はないと思う」
あの子がそう言って近づいてきて、
「し、知ってらぁ! ただちょっと凄いなぁって思っただけで……」
楽ドはむすっと唇を尖らせ視線を横へ逸らす。
「何が凄いんだ?」
「だって、昔の人はこの荒れた土地で米作ってたんだぞ。昔はこんなんじゃなかったんだろうけどさ。今は国外からの密輸で手に入れてるんだぞ? 戦争ばっかしてるからだよなぁ」
「密輸? 輸入じゃないのか?」
「そりゃ国内のどこかでも作られてるんだろうけど、圧倒的に量が足りないからな。そこで国外。だけど相手国でも貴重なの。それに軍隊を名乗れるようなグループが買い占めてる。だから俺達みたいな弱小からグループが出来たり、それが成長したりしないように阻止してるんだよ。どんなに強い大人でも空腹には勝てないしな。弱い時に戦うか、戦う以前に餓死させる気でいるんだよ。まあグループが成長しないんじゃ武器は手に入らないからな」
「あるぞ?」
「ナイフや銃なんかは比較的手に入りやすい方なんだよ。落ちてたり、勇気がある人が死んだ軍人の懐漁ったりして手に入れる。銃は弾なしとか壊れてるとかで当たりはずれがあるけどな。まあほとんど持ってないよな。ハンドガンくらいなら使えるかもしれないけど、他は使えるって人があんまりいなさそうだし。それに弾なしでも使えなくても見た目だけで一時的な脅しに使えるかもしれないな」
「武器なんていらないだろう? 石ころ投げれば死ぬ。素手でも死ぬ」
「おい。それはお前だけなんだよ。いや、当たりどころが悪ければ死ぬかな? 俺達でもおっきな石ころで頭叩けば脳震盪くらいなら……」
「……? 爪で死ぬだろう?」
「それはひっかく方で? 刺す方で?」
「叩く方だ」
「うそつけ」
子供はムッとして傍の壁に、ハエを払うかのような軽さで爪を叩き付ける。大気が震えるような音を立てて、払った方向へ吸い込まれるように一瞬にして建物が粉々に砕け散る。瓦礫さえ砕けて砂の山になってしまった。大気を震わせてくれちゃったせいだろうか、自分の身体がぷるってる気がする。二度目だぞこれ。
「ありがとうございました」
「あいがとごーまう」
「皆一緒に逃げるぞ!」
「はい……!」
その子の可愛さにデレデレする楽ドの背に稲がぎゅ……とくっ付いてくる。
「お、おい……」
「…………だめ」
「何が!?」
一方その頃、捕えられたオルトシアたちは見事に脱走していた。しかし敵はうじゃうじゃと湧き出てくる。どこからか歌声が聞こえ始め、オルトシアと茶飯は苦戦を強いられていた。
廊下を走っている最中、ガラスの壁から部屋の中が見え、茶飯は絶句する。その様子を見たオルトシアが尋ねた。
「茶飯、どうした」
「つ、妻が、子供も……私たちの子供もここにいる!」
「助けよう」
あっさりとそう言うオルトシアに、茶飯は緊張した顔を緩ませて頷く。しかし、その会話を聞いていた小麦色の肌の男が、部屋に入り、一人一人失敗作だと言って殺していく。
茶飯が追いかけようとしたが、他の敵が邪魔をして助けに行けない。
茶飯の子供の眉間に銃口が突きつけられる。引き金を引こうとしたその時、子供は横にそれて、妻の胸が銃口に迫った。
子供を守ろうとし、小麦色の肌の男に飛び掛かろうとしたのだ。
妻の胸から血液が飛び散り、茶飯は口を大きく開けて叫び散らした。
「若葉ああああああああああああ!!」
「落ち着け茶飯、今は……子供を助けるぞ!」
オルトシアの協力の下、茶飯の子供を助けることが出来た。
◇◇◇
楽ドたちとオルトシアたちは合流してディヴァート・ウェザを後にしていた。大体あの子とオルトシアとあの研究員の美少年のおかげで助かった。
美少年が逃がした実験体や、茶飯の子供は療養させると彼の仲間・武軍に頼み、軍隊に入ることとなった。茶飯は妻を助けることはできなかったが、子供は助けられた。茶飯はオルトシアたちと行動する必要はなくなった。しかし、楽ドたちを軍に連れ帰る使命があると共に行動することとなった。
楽ドたちの向かう先、中立の町照国町に向かうため、武軍の本拠点である鹿児島中央駅を通らないよう迂回して下荒田から南林寺町に来ていた。
その道中で休憩となり、チビたちは美少年・ゼルベイユと遊ぶと言いどこかへ出かけ、楽ドは荷物を置いた建物――通称秘密基地――から近い周辺を探索していたが、あの子が付いてきて二人きりで行動することになる。
楽ドは瓦礫の中にまぎれた苔まみれの石像を見つけてじっと観察する。どうやらユヤの破壊攻撃でどこかの街から吹っ飛んで来たらしい石像だった。もちろん楽ドにもさすがにそんなことは分からず、手を合わせて祈ってみる。
「それは田の神様だ。祈っても意味はないと思う」
あの子がそう言って近づいてきて、
「し、知ってらぁ! ただちょっと凄いなぁって思っただけで……」
楽ドはむすっと唇を尖らせ視線を横へ逸らす。
「何が凄いんだ?」
「だって、昔の人はこの荒れた土地で米作ってたんだぞ。昔はこんなんじゃなかったんだろうけどさ。今は国外からの密輸で手に入れてるんだぞ? 戦争ばっかしてるからだよなぁ」
「密輸? 輸入じゃないのか?」
「そりゃ国内のどこかでも作られてるんだろうけど、圧倒的に量が足りないからな。そこで国外。だけど相手国でも貴重なの。それに軍隊を名乗れるようなグループが買い占めてる。だから俺達みたいな弱小からグループが出来たり、それが成長したりしないように阻止してるんだよ。どんなに強い大人でも空腹には勝てないしな。弱い時に戦うか、戦う以前に餓死させる気でいるんだよ。まあグループが成長しないんじゃ武器は手に入らないからな」
「あるぞ?」
「ナイフや銃なんかは比較的手に入りやすい方なんだよ。落ちてたり、勇気がある人が死んだ軍人の懐漁ったりして手に入れる。銃は弾なしとか壊れてるとかで当たりはずれがあるけどな。まあほとんど持ってないよな。ハンドガンくらいなら使えるかもしれないけど、他は使えるって人があんまりいなさそうだし。それに弾なしでも使えなくても見た目だけで一時的な脅しに使えるかもしれないな」
「武器なんていらないだろう? 石ころ投げれば死ぬ。素手でも死ぬ」
「おい。それはお前だけなんだよ。いや、当たりどころが悪ければ死ぬかな? 俺達でもおっきな石ころで頭叩けば脳震盪くらいなら……」
「……? 爪で死ぬだろう?」
「それはひっかく方で? 刺す方で?」
「叩く方だ」
「うそつけ」
子供はムッとして傍の壁に、ハエを払うかのような軽さで爪を叩き付ける。大気が震えるような音を立てて、払った方向へ吸い込まれるように一瞬にして建物が粉々に砕け散る。瓦礫さえ砕けて砂の山になってしまった。大気を震わせてくれちゃったせいだろうか、自分の身体がぷるってる気がする。二度目だぞこれ。
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